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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数88件
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久しぶりに気持ちのいい作品だった。良著。
物語の舞台は18世紀後半のロンドン。 貧富格差が大きく、正義でさえ金で買えてしまう醜い時代背景。 まだまだその社会的地位が高くなかった医療界、その中でも宗教的理由からか卑下されていた解剖医達が主人公。 日の当たらない職業に従事する仕事バカ達だが、みな優秀、だがみなどこか不器用でみな程よく不幸だったりする。 誰もが容易に感情移入できるタイプだ。愛すべきバートンズの面々。 この作品の好感度が高い第一の理由だ。 そして、解剖学という馴染みがなく取っ付きにくいテーマながら、専門用語の羅列で困惑させることもなく、その描写により不快感を与えてしまうこともない。 難解なテーマをライトに描いていて読みやすい。しかし軽くはないのだ。作者の表現力が高いのだろうと思う。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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青春ミステリ。
前半はまぁ当然かも知れないが青春一色で、しかもラノベっぽい軽さを感じてしまい退屈でした。 主人公を取り巻く状況、特に人間関係、その扱われ方とかセリフ等には、読み出した時点からどことなく違和感を感じてはいました。 しかし、そんなどこか理屈っぽい男女関係の描写も「ラノベだな~」で片付けて読み進めてしまいました。 そんな違和感がことごとく伏線だった事には「やっぱり」よりも驚きの方が大きかったですが・・・まぁ兎に角計算尽くされた作品でした。 物語の核となるのはヒロインの転落、消失事件です。 校内には監視カメラが張り巡らされており且つ衆人環視による言わば「密室状態」だと。 実際密室には程遠い穴だらけだった気がしますが、やたらとその「密室」を強調しているので少し苦笑でした。 この不可能w状況からのハウダニットを前面に押し出すのですが結果的に正直小粒です。 「作品に仕込まれた最大の仕掛けから読み手の目を背ける事に成功している」なんてレビューも散見されますが、私はそうは思いません。 そんな事しなくても読み手は騙せます。それくらい良く出来ています。 そうです、この作品の見せ所は別にあるのです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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碓氷優佳シリーズの2作目。
「殺人事件が起こるまで」を描いたかなり変則的な倒叙型ミステリです。 前作の「扉は閉ざされたまま」も面白かったですがこれも負けず劣らず面白かった。 実際「殺人事件が起こるまで」しか描かれていませんので、物足りなさを感じてしまいそうなんですがそうでもない。 主な登場人物は3人。「殺したい男(加害者)」「殺されたい男(被害者)」「それを邪魔する碓氷優佳(探偵)」 加害者と被害者の思惑は一致、しかし加害者はその事に気付いていない訳で、加害者は被害者の掌で踊らされているといった印象。 つまり「加害者VS探偵」ではなく「被害者VS探偵」という、これまでに見た事もない構図になっています。 加害者を操り犯行を行わせる展開はよくありますが、この作品では、更に探偵役が加害者を巧みに操り阻止してゆきます。 そして最終的には被害者をも操ろうとします。 まだ事件は発生すらしていないのです。そんな事件の発生を予見し邪魔するキレキレの女探偵、しかもその「邪魔」が読み手にも全く不自然に見せないところが驚愕です。 ある意味最強の探偵と言えるのではないでしょうか。 それに探偵視点で描かれていないのも上手いと思います。 彼女の思考がトレースされていると、驚きも半減以下ですからね。 彼女の意図が明らかになった時など、社長と一緒にびっくりさせてもらいました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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序盤は、恋愛要素のない古典部や小市民シリーズといった印象で「またこのパターンか」であり、恋愛要素がない分何とも地味に感じる。
しかし途中で「なるほど」とある事に気付くのだ。 これなら恋愛要素など必要ないしかえって邪魔かな・・・と、これで十分面白いと思ってました。 しかししかし、ここまでは大部分の読者が気付く様に出来ているとのこと。 つまりこの作品、予想を大きく上回る作品だったと言うことです。そして私は大部分の読者止まりの男なのであった。 最後の一行。 どんでん返しに持っていったのが「儚い羊たちの祝宴」だったが、この作品は隠しているのだ。 所謂リドルストーリー。 巷によくある読み手に全てを委ねる投げっぱなしのものではない。 何て緻密に計算された構成。初めて読んだな、こんな作品。 「インシテミル」や「折れた竜骨」など好きな作品はあるものの、ライトノベル作家という印象が強かったこの作者さん。 正直、古典部や小市民シリーズは、ライトノベルの延長上だと思っている私。 第一作目を読んだのでまぁ続きも・・・っていう感じで手にとっただけで実際まだシリーズ全てを読み終えていない。 正直食欲がわかない感じ。 軽く見ていたわけではないが、この作品を読んで、物語だけでなく作者の評価も反転。 こういう作品、もっと読みたい。 |
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「王手飛車取り」の続編となるこの作品。
その前作と合わせ技の趣向が凝らしてあって、「いつ気付くか」がこの作品のひとつのテーマになっているように思います。 個人的に好きです。こういう趣向。 単体で読んでも楽しめなくはないですが、はっきりこの作品は「王手飛車取り」を読んでから、しかも直ぐではなく少~し時間を空けて読むべき作品ですね。 これがこの作品を100%楽しめる一番の読み方かと。 ヒントが小出しになっているのがまた憎たらしいですね。 しかもはっきりネタばらしするわけでもありませんし。 まぁ余り早く気付いたらそれはそれで面白味が減ってしまうのかもしれませんが・・・ 私は「王手飛車取り」を好みでなかったため高評価しませんでした。なもんで積読期間2年。2年はちょっと空き過ぎでしたね。 気付くのが遅かったもんで、気付いた時にはそれはもう関心しましたよ。 前作の評価を上げようかと今検討中です。 前作「なんでこんなラストにしたの?」って思っていたりしたのですが、ここまで考えられてのものだとしたら納得ですし素直に凄いなと思います。 前作を読んで間が空いてしまっている方は、この作品を読む前にネタバレサイトなどで前作のラストを確認してから読んだ方がいいかもしれませんね。 特に前半の数章を読んでどこか「違和感」を感じなかった方、まだ遅くありません。(前作の)レビューサイトへGO!! 作者の意図に気付かずに読み終えてしまうことのないように(笑) なんか内容とはかけ離れたレビューになってしまいましたが、ミステリとしても質が高いですよ。 前作のような非人道的なえげつなさは若干薄れてはいますが・・・ |
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貴族探偵と言われて最初メルさんを想像してしまいましたが、麻耶さん独特の探偵論から産まれた究極の探偵といったところでしょうか。
「人は僕を『貴族探偵』と呼ぶね」って、そう呼ぶ奴の顔を見てみたい気がします(笑) ・・・実際自分で言っているだけで誰かがそう呼んだシーンはなかった気がする。 全てをワトソン的立場の使用人に面倒見てもらう探偵、そしてその使用人の名前が、山本、田中、佐藤って・・・ありきたりな、そして投げやりな・・・頑張ってるのは彼らなのに・・・ あと短編向き探偵と言えるでしょうね。この設定で長編は無理でしょう(笑) メルさんの短篇集の時にも感じましたが、麻耶さんの短編集って面白いですね。長編よりも。 元々一筋縄ではいかない作品ばかりなのですが、短編だと一作ごとに振り返りや整理が容易に出来ますからね。 派手なトリックを楽しむ作品ではなく、遊び心満載のロジックを堪能できる作品です。 5作品ともかなり読み応えがありますよ。 絶対神メルさんの推理は、時に強引だったり無茶苦茶だったりしますが、この作品における使用人達の推理はまさに理にかなっており、パズルとしてはこちらの方が断然楽しめるように思います。 新しい探偵小説の見せ方とでもいうのでしょうか。 この作者の一種特異な企みには脱帽するばかりです。 私が好きなのはやはり「こうもり」 満点評価した「蛍」でも似たトリックがありましたが、また騙されてしまった。 好きなんですよね、このパターン。 フェア・アンフェア論争があったようですが、嘘はついてないんですもん。勿論フェアですよ。 |
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重松清の流星ワゴンを思い出してしまった。
こういうタイムスリップものは、タイムパラドックスの矛盾、即ち歴史が書き換わる事による危機を打開する事に躍起になる作品が多いですが、この作品の場合は、こういうまどろっこしい事を一切排除して、一部の登場人物の未来を劇的に変えています。 若かりし頃の父拓実とタイムスリップしてきた拓実の子供であるトキオの不思議な生活の描写が作品全体の9割以上を占めます。 正直若かりし頃の父拓実のダメっぷりに終始イライラさせられっぱなしでした。 トキオの父となった現在の拓実に間しては、短いながらも冒頭からの話で読者にもその変貌ぶりがわかるよう記述されていますが、余りにもダメ男時代の描写が長く、読中は「イマイチかも」と思いながら読んでいました。 それを見事に覆してくれたのが最後の一行で、その最後の1行に星2つプラスです。 読み手に「ループ」を連想させるその一言は、感動的というだけでなく、物語にスケールを加えてくれたように感じます。 劇的なほどに効果的。 拓実は今後あそこに通う事になるのだろうか。 そう考えるだけでどこかほっこりします。読み手にそう考えさせる事を演出した作者に拍手です。 |
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一番肝心な謎は最後まで明かされませんが、その他の部分は、裏表紙もしくは読み始めて序盤の内にはっきりします。
「高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代ライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果す」 この設定だけでドキドキさせられます。 そして、事件が解決したにも関わらず残るページ数。それを考えても、事件の推理よりも人間ドラマを重視した作品と言えます。 ラストの数十ページは、かなり読み応えがあります。 最大の謎については想像するのは容易、そしてその内容についても予想通りだったのですが、その表現方法が予想を遥かに超えていでグッときてしまった。 読後には白夜行を彷彿させるようなせつなさが残ります。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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ローンによる多重債務と自己破産がテーマになっています。
92年の作品ですから、丁度バブルが弾けた頃ですね。 自己破産件数が顕著な増加を見せ社会問題となったのが96年ですから、若干時代を先取りした作品だったと言う事になりますか。 あれから20年以上経過しているのですが、10人に1人が消費者金融を利用している計算になるとか・・・ 消費者金融云々の話だけでなく、個人的に、日本人には「経済無知」が多い気がしますねぇ。 積極的に学ぶ意志を見せなければ、しっかり学べる場所すらないですし・・・ そういった意味でも、意義のある作品だと評価したいです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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