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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数271件
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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「想像は人を喰らう」
という作中の言葉に示される通り、ちょっとしたボタンの掛け違いが悲劇を生むのですが、現実にも起こりそうな話で怖いです。 第3者の立場から見れば、このような思い込みは、時に間抜けにすら感じるものですが、 血の繋がらない他人を片親に持つ2組の兄妹、兄弟。 ある日突然、自分達と(戸籍上では家族である)他人との仲介役であるはずの存在(血縁関係がある方の親)をなくしてしまう。 また彼らが全て物事の分別に未熟な未成年である事。 ある意味特殊な人間関係が複数存在するという違和感こそありますが、読者に「思い込みも已む無し」と納得させるだけの設定になっています。 タイトルの「雨」に象徴される通り作品を通して非常に暗いです。 視野を狭め判断を誤らせる大雨。 そんな雨が流れを作り、一方の流れがもう一方を巻き込み、どんどん低みへと濁流となって流れていき、止める事ができない。 未熟な精神が生み出してしまった化け物ともいえる濁流に、少年達は為す術もなく追い詰められていきます。 作者が読者を騙すテクニックに優れた作家である事は承知していながらも、読中は重苦しさを感じずにおれません。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
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伊坂さんの作品の中では、珍しく世界観も日常的であり、気楽に読める作品ではないかと思います。
何しろ、主人公達が難しい話を始めようものなら、 「なんてことは、まるでない」 と、話の流れを打ち切ってしまうのですから(笑) 大学生達が繰りなす青春小説としての体裁をとっていますが、タイトルの砂漠に対して大学時代をオアシスと比喩しているように、作者は大学生をただ生暖かく見守っているようには思えません。 大卒社会人と学生さんでは、読後の印象が違うかもしれないですね。 個人的には、大学生にお薦めしたい本です。 今作にも、お馴染みの型破りキャラとして西嶋という男が登場します。 西嶋は「あのね、俺達がその気になればね、砂漠に雪を降らす事だって、余裕でできるんですよ」 と嘘ぶく訳でなく、真剣にそう語る男。 これまでの伊坂作品において、こういう型破りキャラは、読み手にナイスガイという印象を与え、伊坂自身も愛し「こういう奴いたら最高でしょ」的なメッセージを発していたように思います。 確かに彼は、風貌はいまいち冴えないようですが、行動や思考は、滑稽とも思えるが一貫しており、キャンパスNo.1の美人を彼女にし、幾度と無く奇跡を起こして友人の危機を救います。 各所のレビューでも軒並み「最高」との評価が多いようですが、どうなんでしょう。 私は、伊坂さんは彼を「ダメ男」として描いている気がしましたが。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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山葉圭史という主人公の名前を見た時「翔んだカップル」を思い出すようなら相当のおっさんでしょう(笑)
連作になっている短篇集で、「幽霊人名救助隊」と同路線の作品かなと思います。 伊坂幸太郎氏の「死神の精度」に似ている、というレビューをよく見かけます。 私も、伊坂さんを意識して描かれたのではないかなぁという印象を少し持ちました。 作品を通して語られる「未来予知」というシュールなテーマも、どことなく伊坂作品に似た印象を与えてしまいます。 実際作者にそういう意図があったのかは定かではありませんが、ただ、読み手に伊坂さんを連想させたら「負け」でしょう。 幾重もの伏線が張られていて・・・といった趣向の作品ではないと思います。 「伊坂と比べると・・・」的な評価をされてしまうのではないかと危惧します。 「似て非なるもの」として読むべきだと思うのですがどうでしょうか。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「僕らは友だちになれるだろうか」
同い歳の父親に出逢えたら友だちになれるかなんて考えた事もなかったけど・・・なれないような気がするなぁ(笑) 主人公と危篤状態の父、主人公とそのひきこもりの息子、そして不思議なワゴンを運転する事故死したはずの父子。 この三組の父子がそれぞれ抱える「後悔」を描いた物語です。 不思議なワゴンに乗り、現在と過去を行き来し後悔をやり直していくのですが、面白いのは、やり直しが現在に反映されないという点です。 現在の自分のターニングポイントとなった地点に降り立ち、それを目の当たりにする事により、何がいけなかったのかを確認します。 現在に戻っても状況に変わりはないのですが、それを打破すべく新しい一歩を踏み出すという、希望の予感に満ちたまとめ方で、非常に爽やかな読後感です。 昔、これに似た設定の映画がありましたが、こちらの方が日本人の感性に合っているように思います。 主人公と妻のくだりも描かれますが、ここが18禁風味で残念。 ここさえなければ、学校の推薦図書にもなりそうな良作です。 惜しい。 |
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途中まで、ジュブナイル青春小説という印象を持ちながら読み進めたのですが、なんのなんの。
上下巻合わせて千頁超えのかなりの長編小説であり、中だるみするかと思ってすらいたが、なんのなんの。 気がついたら、この世界観にどっぷり浸かっていた、そんな感じでした。 主要登場人物が8人と多目。 彼らは、優等生であり受験を控えた高校3年生という事もあり個性的とまでは言えませんが、それぞれに背負わなければならない過去や悩みを抱えています。 忘れていた誰かの事を思い出す度に一人ずつ消えていくのですが、そこに無慈悲さはありません。 自分の番を迎えた時、彼らは自身の悔やむべき過去や内面の弱さと対峙します。 この時、彼らは主人公なのです。 作者は全ての各登場人物をとても大事に丁寧に描いていますね。 作品の構成上、次に消えてしまうのは彼(彼女)だなと分かってしまうのですが、何か寂しい気持ちになって読んでいたのが印象的です。 これだけ多くの登場人物に感情移入できた作品も珍しい。 正直、ミステリだという事も忘れて没頭していました。 ミステリの部分も、仮想現実の世界という非現実的な前提こそあるものの、そこにさえ納得できれば、数多く散りばめられた伏線もその回収の方法もお見事。 何より、中後半までの流れから、これだけ読後感のよい作品にまとめあげているのはさすがです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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教師のサイコパスものです。
主人公であるサイコパス蓮実が、学校を舞台に大量殺戮を行うのですが、彼にとってこれが初犯ではありません。 これまでに、学生時代の親友、恩師、両親といった、最も親しくあるべき人達を殺してきています。 とんでもない殺人鬼です。 蓮実はIQが異常に高いという事もありますが、苦悩する場面というのが殆ど無く、決断が速いです。 物語に中だるみする箇所もなく、次から次へと矢継ぎ早にという表現がぴったりで、読み手も休む間がありません。 上巻・下巻に分かれる結構な長編作品ですが、意外と一気に読めてしまうのはそのためだと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「政治への無関心に対する警告」、もっと巨視的に言うと「流されず自分の考えで判断する事の大切さ」がテーマかと思います。
不景気だったり失業率が過去最高を記録したりと不安だらけで先行きの見えない社会情勢を打破するべく登場したカリスマ政治家・犬飼。 ムッソリーニに比喩される彼の元、大衆は一斉に同じベクトルを示し大きな流れを生み出す。 超能力を有する兄弟が、そんな状況に不安、疑問を感じ、立ち向かっていくという物語。 その超能力ですが、それを武器に、破茶目茶に大暴れする訳ではなく、兄が「他人に自分の意図通りの事を話させる腹話術」、弟が「10分の1以下の確率勝負に必ず勝利する」という、巨大な流れに対し一個人が何ができるのかと考えた時に如何にもショボイのですが、これが何とも伊坂氏らしい。 持っている能力も違うが、同じ方向を向きながらも、兄が「考える人」、弟が「考えない人」と、取り組み方が正反対なのも面白い。 また、安藤に相反する考えの持ち主として、ドゥーチェという店のマスターを登場させているが、二人の会話を通して数多くの伊坂語録を登場させます。 中々読み応えがあります。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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戦時下の日本において秘密裏に設立された、魔王・結城中佐率いるスパイ養成機関(D機関)の暗躍を描いた短篇集です。
その結城中佐だが、帝都物語・加藤保憲(というか嶋田久作)を彷彿とさせる表紙のイラストが何とも魔王という表現にイメージぴったりです。 最初の作品である「ジョーカー・ゲーム」を読めば、結城中佐及びD機関の異様さが朧気にも理解できるようになっていますが、D機関の色々な側面を見せるために短編集という構成は非常に効果的だったと思います。 メンバは「見えない存在」である事に徹するため、心理描写が殆ど無いのですが、それが独特の緊迫感を生んでいます。 人物造形が弱いとも言えますが、それがかえって魔王・結城中佐の存在を際立たせていると言えます。 面白かったですが、シリーズの第1発目という事で、導入部という意味合いもあるのでしょう、その分意外性は少なく、読後カタルシスを得られるかと聞かれると疑問です。 ただ設定自体非常に好みなので続編への期待は大きいです。 続編も短編のようですが、最終的には、結城中佐が窮地に追い込まれるプロットで、是非長編で読んでみたいですね。 |
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「メルカトルかく語りき」がアンチフーダニットに特化した短篇集だったのに対し、この作品はアンチミステリなのは当然の事、メルの鬼畜っぷりがよりクローズアップされた7つの作品からなる短篇集になっています。
重要なのは、この作品の中で発生する7つの事件は、作者がわざわざタイトルに示した通り、メルカトルと美袋のために用意された事件であって、島田潔や御手洗潔のために起きた事件ではないという事でしょう。 この辺、しっかり割り切って読めれば面白いといえるのではないでしょうか。 辻褄は(ほぼ)合ってます ところで、集英社文庫の表紙のイラストがメルのイメージなんでしょうか。 個人的には「メル=イケメン」という設定に一番驚愕・唖然としています。 チビ・デブ・ハゲのイメージしか持てていなかったので・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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バッタは密集したところで育つと、黒ずんで凶暴な飛びバッタ(グラスホッパー)となるらしい。
同じように密集した世界で生活する「人間」だから、その中には凶暴な連中もいる。 伊坂氏十八番の、数人の視点から物語を紡ぐ形式の物語です。 今作は複数の「殺し屋」です。 これまで読んだ伊坂作品には、それぞれテーマがあって、こっそりとメッセージを記していた様に思います。 殺し屋による殺人が繰り返される中、この作品は、作者が結局何を訴えたいのか汲み取る事が出来ませんでした。(力不足) 最後のオチにも驚かされましたが、読み手によって色んな解釈ができる、そんな難しくて奥の深い作品な気がしました。 これだけ読後色々考えた作品は久しぶり。 面白かったというより、印象・思い出に残る作品になりました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「土か煙か食い物」のスピンオフ的な作品になっていて、ルンババの少年時代の話です。
「あの人」との出会いのエピソードなども描かれていたりして、「土か煙か~」を読んでからの方が楽しめると思います。 大量の密室殺人が起こりますが、設定自体が冗談としか思えず、読み手を置いてけぼりの謎解きも相変わらずです。 この作品も推理小説として読むべきではないでしょう。 ただ、「土か煙か食い物」と比べて「非推理小説臭」が読み手にも伝わりやすい気がします。 この作品における「密室」とは、「閉ざされた心の空間」の事であり、人生において、自分の眼前に立ちはだかり密室を作っている壁を如何に乗り越えていくかがテーマです。 作者が伝えたい事は、容易に汲み取る事ができるでしょう。 あとは舞城氏独特の表現方法が、好みか好みでないか・・・ですね。 |
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