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とも さんのレビュー一覧
ともさんのページへレビュー数45件
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湊かなえは、間違いなく人間嫌いである。
完全な厭世化であり、性悪主義であり、そうして子供嫌いである。 それを隠すこともなく、どうどうとブレる事もなく作品で言い切り続ける態度はあっぱれである。 当作品のテーマは家庭内暴力。 昔流行った「積木くずし」よりは、おそらく内容は浅い。 が、彼女の人間嫌いが徹底している分、救いがなく清々しい。 その悪意の分、一歩突っ込んだ心理描写となっている。 「人はひとりで生まれてきて、ひとりで死んでいく」は使い古された言葉なれど、当作品を読んでいると つくづくと、家族と血縁といっても真には何を考えているかは分からない。 そうして最終的には、家族といっても所詮は他人である、ということを言いたかったんではないであろうかと思えてくる。 あくまでも湊かなえらしい後味の悪い、そうしてその悪さが期待を裏切らない 湊かなえらしい作品であった。 了 |
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嫌いな作家である。
が、何故かまた読んでしまう作家である。 この作品は各章が、「母性について」「母の手記」「娘の回想」という3人(?)の視点から語られる3つのショートストーリーを1セットに、計6章+終章という構成で成り立っている。 従って、表題の通り 母と娘の話である。 そうして登場する人物は、この2人に纏わる近しいヒト、主に家族と呼ばれるヒトのみである。 ここには、巷の小説でよく登場してくる異常者や偏執狂、殺人鬼が出てくる訳ではないしホラー的な作品でもない。 登場人物それぞれが、聖人君子とまではいかないまでも、それほど異常でも特別変わっているわけでは無い。 にも関わらず、これが同じ時を過ごし同じものを見聞きした母と娘との話か!というくらいに食い違うのである。 些細な思い込みやスレ違い、食い違い広がり深まって行く到達点がこうなるのかと、薄ら寒くさえある。 特筆すべきは、母の実母の存在か。 ある意味彼女のみは聖人かもしれない。が、その聖人性が関わるすべての人に悪影響を及ぼしており、ある意味では 良い人であるが故に 逆に言えば悪魔的でさえある。 どちらにしても、相も変わらず 人に対する悪意に満ち満ちた作品である。 では何故読んでしまうのかといえば、他人事として「まだましか」と思える期待を持って読み始め、その期待を裏切らない安心感と、 「他人の不幸は蜜の味」、それだけの為に読んでいるのかもしれない。 了 |
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現在の事件と歴史の真実を並行して進めながら解決に導く構成はいつもながら。
現在の事件を並行させているのは 高木光琳のまねなのか、それとも歴史の真実を暴くストーリーだけでは、読み手を疲れさせたり、飽きさせる。その配慮のためなのか、単に職業作家として頁数を稼ぐためなのか、どちらにしても 歴史部分以外は余談でしかないので、本題にのみ焦点を合わせる。 今回のテーマは、天智天皇の死にまつわる歴史の前後に起こった史実と異なる事実を予想する作品となる。 このあたりの時代がテーマになると、物証となるものが文献以外に無いために 学者もその物証と歴史の流れの齟齬を埋めるのに四苦八苦しているであろうが、もしその物証なきこと イコール事実ではない、という言い切りが出来れば、向上心のない職業学書としては それほど楽な職業はない。 井沢はよくこの点を浮き彫り師にて、否定するのだが それでも切り崩せないのは それほどに抵抗勢力が強いということか。 日本の大学生が勉強しない理由の一つに、この現実性が伴わない学会全体を取り巻く排他主義があるのではないだろうか。 井沢の推理は、全てが彼個人のオリジナルではなく、大半が一般人の研究をかき集め、そこから新論を打ち立てる手法で、要は大部分がぱくりである。ただし、否定ではなく正しいと思えば堂々とパクり、そこからさらに昇華させるさまは、ある意味あっぱれである。 ということは、前おきはそこそこにして、本題にはいる。 当作は天智天皇の死にまつわる歴史の前後に起こった史実と異なる事実を予想する作品となる。 暗殺されたとする理論を打ちたて、そのなかで誰がなぜ殺したを追求していくなかで、兄弟寺の延暦寺と三井寺の確執、近江京から平城京から平安京への遷都理由、日本書紀・古事記の嘘、百人一首の第一番歌(天智作)が貧乏臭い訳、天皇陵が京都山科とぽつんと片田舎にある理由、当時の中国(唐)、韓国との外交関係(任那、新羅)、天皇の諱、諡(持統、継体など)、日本最大の池があった巨椋池の謎と、ひとつの嘘(天智の死)のほころびからどんどんと話を広げていくさまは圧巻とも言える。 メインテーマの暗殺の首謀者の結論部分が不明瞭でこじ付け感があったため、評価は低めしたものの、古代の息吹きが感じられる秀作であった。 了 |
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以前に読んだこの作家の作品「メルカトル~」は、兎に角 下品で胸糞の悪くなる作品で途中で放棄、二度とこの作家の作品を読むことはないと思っていたが、ひょんなきっかけからこの作品を手に取ってしまった。
読み進める上で前述の作品とは打って変わって、本格推理に変貌を遂げていた。 概要とすれば2部構成となっている。 第一部は、主人公で冴えない自殺を考えて鄙びた温泉宿に来た青年と隻眼の探偵少女が出会うところからスタート。 連続殺人事件に遭遇し いったんは解決を迎えるだけの話であるが、内容的にもなにかしっくりとせず、また文体筆致も読み進めづらく、面白くはない。 それが、第二部は突然18年後にぶっ飛ぶのだが、前部とすべてがガラリと変わる。 ストーリーとしては、18年前 事件解決後に自殺に失敗したものの記憶喪失になって別人と暮らしてきた主人公と新聞で事故死した名探偵となった隻眼の少女、という前提からはじまるのであるが、始めからは雰囲気がガラリと変わる。 郷愁もあり再び温泉に向かう主人公が出会うのは、瓜二つの隻眼の少女の娘。そこでまた事件が始まり。。。 後半はとにかくスピーディーで、過去と現在の問題が同時並行で進んでいく。そうして前半の違和感も徐々に払拭されていくのだが、これこそ本格推理という具合に、意識は犯人探しにやっきりになっている。 どんでん返しがあることが予測できるので、その伏線を意識して読み進めるも 結末は凌駕するはず。 奇を衒った様相は 正に現代版横溝正史で、あくまでレベルの高い本格推理小説と呼ぶにふさわしい、なっとくの1冊であった。 了 |
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『TENGU』、『GEQ』と読みつないできた作品と比較をすれば、小さくまとまった作品といえよう。
世界観、テーマ、科学的推論、どれもが小さい。 だからといって、この作品が即に駄作か、というとそうでもないのである。 プロローグの主人公を未知の生物目線にすることで、どのような生き物であれ 少なくともこの作品で何かが存在することを擦り込まれる。 というか、題名のとおり、初っ端に登場するのが 河童(カッパ)目線なのである。 だから、物語が始まる時には既に、未知の生物の存在は当たり前のこととして読み始めているのである。 そうして、人が襲われたときの警察の初動捜査が殺人事件であることを知っているわれわれ読者は、その組織で一匹狼の刑事や、フリーの記者、地元民が知らぬ間に協力して、突き止めようと立ち向かう。 紆余曲折の末、この怪物が 〇〇であることを突き止め・・・と続くのだが。 後半は、既に怪物の正体が明らかにされているのでたいした緊迫感はない。 が、ストーリー性以外でも 登場人物それぞれの成長やがあり、物語に引き込む力強さなど、単なる謎解き殺人ミステリーから一歩突っ込んだ作品で、十分に秀作といえよう。 了 |
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井沢元彦は、パクリ作家です。
ただただ、人の説を学説をひたすらにパクりまくる。 とはいえ、そのどれもが面白いのである。 当作は、歴史上の歌人 猿丸と歌聖 柿本人麻呂が同一人物である、という説を押しまくる。当説は作中でネタバレしているが、大昔に読んだ梅原猛の『水底の歌』が題材になっている。 なれど、主人公に折口信夫をおきながら、ところどころに金田一京助はじめ、東条英機や南方熊楠を配置させたり、百人一首と万葉集にいろは唄を混ぜるなど、興味を引き物語に引き込む手法は、ある意味本当の意味での小説家かもしれない。 無理にSF仕立てにしているところやミステリー調にしているところは頂けないが、そんな些事を消し去る暗号など、とにかく飽きさせない。 ふと思い出すのが、一時期のめり込んだ自称ハードボイルドの落合信彦なんかと同んなじ匂いで、ただただ楽しめる小説であった。 |
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日本の叙述レトリックの代表的作品ということで期待し過ぎた為か、思いのほかガッカリ。
2人の女性がハサミを刺されて殺害される未解決事件の犯人ハサミ男が、次のターゲットに狙いを付けて殺害タイミングを謀っているところから物語はスタートする。 が、殺人を予定した日に ターゲットが現れずに探しに出たところで、ハサミを刺されて殺されている被害者を発見することになり 第一発見者としての立場になってしまい、という流れで話は進んでいく。 なので特に後半からのどんでん返しはお約束通り、張り巡らされた伏線もも後半にはきっちりと収束しプロットも完璧ではあるのだが、悲しいかな当作品は既に15年以上も前の作品で既に様々なレトリックが巷に氾濫しつくしている現在で、少々古臭い感は拭えない。 さらに言えば、こじつけや無理矢理感もあり、とはいえ犯人へと導く伏線があからさま過ぎて途中で犯人が分かってしまう様な表現も数箇所あり、そういった意味で完成度に甘さも見られる。 ここ最近の日本の小説のレベルは飛躍的に進歩し、既に海外の作品を読んでも楽しめないくらいの高みへと昇っている。なかでも推理小説での技術躍進は著しく、それを顕著に指し示している作品なのではないだろうか。 |
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結局よくわからなかったが、やっぱりびっくりか??
もういちど、読みなおしが必要。 |
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重厚かつ壮大な自然の中、ひとりの男の生涯を記した大作であり小説というよりは文学作品ある。といって、途中 ダレることもなく進むストーリー、スピード感、リアリティーは突出しており、傑作なのであろう。もしこのテーマが金融であったり、現代工業であったり、世界相手であれば、全く作品の様相も異なっていたであろうし、時代背景がせめて江戸、明治まで遡っていてくれたらもう少し歴史的な感慨もあったのであろうがが、悲しいかなそのテーマが大正という中途半端な時期で、マタギという熊撃ちなのが余りに地味で時代錯誤過ぎるが故に、チッポケな内容に感じずにはいられない。要は、内容に全く夢がなく、楽しめないのである。とはいえ、それであっても最後まで緊迫して読み進められる作家の力量は傑出しており、大作と呼べる作品である。
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兎に角、ワクワクする。天草四郎はじめ登場人物は歴史上のスーパースター、それが敵味方に分かれて。何度読んでも楽しめる一冊。
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面白い。初めは、3つのエピソードという全く違うエピソードが流れ、本題に入るとこれまた1つの章に短い別個の短編の破片が複数含まれ、当分はこの形式は変わらない。よって、大まかな登場人物と流れが分かるまでは非常にとっつきづらい。が、これらの関連が見えてくると、そこからは一気読み。まぁ、表題の通り火と台風が主役で、人は脇役という面白い公正ながら、メインの台風が 予測からだんだんと近づき、突入、一過するように登場人物の動きが変化してくその緩急や、一種自然に形成される(台風による)クローズドサークルの中で発生する事件・事故がミステリー的緊迫感を生じ、プロットは言うに及ばず多面的に楽しめる作品。最後の収束まできっちりと書き込まれており、作者の力量に評価。最後のエピソードが、これまた絶品。
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もう一度読めば、もう少し評価は上がるのだろうが、登場人物の呼び方が苗字だったり名前だったり、あだ名だったりで、誰が誰かをリンクさせるのに必死で、内容にのめり込めず。よくある推理小説のように、裏表紙に登場人物と簡単な説明書きがあればもう少し楽しめたのだろうが。
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ちょうどおやじがすい臓癌の疑いと聞いたときに、たまたま手に取ったのがこの本。その時に読んだのが、一話目の「三つ目の鯰」。あまりにもタイムリーでのめりこんでしまった。音楽もそうだが本もその時の気分が大いに左右される。はまればはまる。
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途中まではひたすらだるい。それほどシューマンを好んでは聞かないし、どちらかといえば名前先行の作曲家。そのシューマンを主題に取り上げ内容も専門用語の羅列で私でも辟易して、読み進めるのに1か月で約半分。一念発起して、再度読み流し始めたが 6割くらい過ぎてきたころから急な展開に内容に引き込まれ、その勢いは最後までとどまらない。最後はどんでん返しの繰り返しで、結論まで含め好き嫌いは分かれるかもしれないが、読む価値は十分に有り。
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非常に難しい本だった。理解し追いつくのに精一杯で何とか読みは切ったが、特に気持ち的に入り込めなかったのが残念。
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面白い。飛び抜けて面白い。約30年ぶりに郷愁で読んでみたが、全く古さを感じない。最後に光明があるところも、小松左京らしい。
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バカバカしいなからも思いのほか面白かった。ただし、あくまでマンガレベルではあるが。
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途中までは何でもないストーリーで、単に子供の話かと思いきや、中盤からのスパートたるや 驚くべきスピードで展開、また展開。長い間忘れていた、他人に対する無償の気持ち、というものが思い出せた、のかなぁ。兎に角、どんでん返しの連続で楽しませ、最終的には綺麗に優しく落ち着く理想的な小説だった。
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最初のプロローグで殺人現場に立つ。その後、場面が代わり夫婦の息子が無謀運転による交通事故で死亡するが、運転手は有力者で罪をもみ消されるにいたり、という最初流れであるが、このプロローグが曲者。後半戦は一気に法廷闘争の場面に変わるが、そこで初めてミスリードであったことに気づかされる。その経緯がきれいにまとまりながら終息に導かれていく。罪は罰せられなければならない。が、現実的には誰もが逃げたい気持ちがあるのも確か。その時にたまたま揉み消す力があれば、行使したくなるのもこれまた人間的。確かに飲酒は罪である。が、決して故意でも悪意があるわけでもない。被害者と被告、どちらの立場に立っても理解が出来るが故に悲しい物語でもある。
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