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ニコラス刑事 さんのレビュー一覧
ニコラス刑事さんのページへレビュー数154件
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まぁ、次々と殺されますね。探偵どもしっかりしろよと云いたいですが・・・。クローズド・サークルの定番メニューのストーリーで、読む方としては楽しみながら読み進むわけですが。根底にあるのは壮大なイデオロギーでこれがアリかそうでないかは別として、トリックの使い方が普通とは逆の理由で使われているなどある意味新鮮で面白く感じました。限定された人数でストーリーが始まるので犯人を予感させる部分があり、そのあたり微妙なところがあったのですが、うまく話をすり替えて誤魔化してました。誰が犯人か話し合っていて当然話題にしなければいけない問題をまったくしないのは不自然ではありますが、そう感じさせない巧妙さがあるのでその辺には目をつぶりましよう。島に10人いて、全員殺害されれば残った人物が自動的に犯人となるわけですが、その辺のところの着地はどうするのかと思いながら読んでましたが。フム、一応納得させられましたので良しとしましよう。探偵たちも個性豊で最後の二人のキャラの設定など中々凝った登場人物を創造していて、この辺も物語に奥行きを与えていて好感が持てました。ミステリーのトリックとかのウンチク話や泡坂妻夫の本のことなども出てきてニヤリとさせられました。事件そのものは残酷ですがクローズド・サークルものとしては及第点の出来でしよう。他は好みの問題でポイントが高くなるかそうでないかの違いと思います。ずっと未読で気になっていたのですがやっと宿題を終えた気分です。
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始めに記しておかなければいけないことは、好き嫌いの判れる内容であり作家であろうと云う事。有り体に言えば横溝正史プラス京極夏彦の世界なのだけれど、自分とすればこういった世界を舞台というか背景にした探偵小説は好きなので楽しみながら読み終えた。憑き物落としとして神々櫛村に根ざした谺呀治家の次女紗霧の周辺で起こる怪異と連続殺人。その犯人を指摘するのが小説家で地方の民話などを取材のため全国を放浪する刀城言耶と云う物語。神隠しに遭ったように消える子供や、得体の知れない何かに尾けられる少女。生霊を見たという村人達。禍々しい不可思議な出来事がそれ自体が起こりうると信じられている憑き物筋の村。憑き物とか憑き物落としといった伝承についての薀蓄なども村の医者や和尚などから語られ、プチ京極夏彦なところもオモシロイが、なんといっても色々な怪異を描写する作者の筆の巧みさと物語の世界観を捉えた文体の良さがありこの物語をミステリアスな世界に仕立て上げている。殺人のトリックとか動機とかそういった面はそう重視せず不可思議な物語を楽しむべきと思う。ホラーとミステリーの融合といった文句もあまり気にしないほうが楽しめる。すべて科学的に白黒付けられたら世の中つまらない。曖昧な謎の部分が世の中には有っても良いと思う。そういった意味からも面白い題材を選びミステリアスな物語を書いているこの作家の創作の姿勢は私自身は好みである。
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まず始めに、評価を高くしたのは好きな作家だからです。(笑)。
あらすじはこのページに載っていますので参照して下さい。 さて、閉鎖空間で起きた殺人。純粋なフーダニットの世界です。読み進むのが楽しい。残ったメンバーが意見を述べ合い推理を繰り広げる。誰が・・・。何故?そして謎の組織。テロリストグループの本当の目的が明らかになるラスト。一粒で二度美味しい作者のサービス精神が遺憾なく発揮された良質のミステリーでした。 食事係の男が実は本部の人間であり、彼の示唆により出来事を整理して考えを進めていくと見えてくるもの・・・。一度目の殺人と、二度目の殺人の意味するところは・・・。それはアリかそうでないか、そんなことは瑣末なことで単純にミステリー小説を楽しむべきです。3時間ちょっとで読み終えました。 楽しいひと時でした。ラストの彼女の予定とは?ちょっとブラックで怖いですネ。 |
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評判の良い「退出ゲーム」の続編にあたる四つの短編からなるこの本は、いわゆる青春ミステリーなのだけれど、このジャンルもいろんな書き手がいていろんな作品があるし、日常の謎を扱ったものも数多くある。しかし結局読み手との感性の相違が作品を選ぶことになる。自分としてはこういった作品は◎で米沢穂信の「古典部シリーズ」と同じぐらい気に入った内容の本である。話の作り方が素晴らしく物語の世界がとても素敵だ。過去の記憶のなかにある話から当時の隠された真実を明らかにする、ありきたりのある意味手垢のついた手法であり話だがプロセスが面白い。それを担う役が初恋ソムリエとはとてもユニークで面白い発想だと思う。ハルタとチカのコンビや他の仲間たちみんながしっかり青春しているなと清々しい気分になれる作品である。ひと月に三度も席替えが行われた謎。市内のミニFM局から流れる番組と地学研究会が絡む謎。音楽室に忍び込む謎の人物。初恋の記憶に隠された犯罪など、軽いタッチだが中味は本格派といったところで楽しめる一冊でした。
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児童養護施設・七海学園に勤める北沢春菜を主人公にした物語。私自身は不勉強で行政面でのこういった機関の縦や横の繫がりとかまるで解からないのだけれど、登場人物のなかに児童福祉司で児童相談所に務める海王さんと云う人物がいて、そのずば抜けた洞察力で子供たちの抱える様々な謎や不思議を話すと見過ごしていた些細な手がかりから隠された真実を解き明かしてくれるという探偵役の設定になっている。前作の「七つの海を照らす星」は未読だけれど多分この海王さんと春菜の探偵物語なんだろう。事情のある子供たちが暮らす養護施設を舞台にする、古書店でも駅前の便利屋でもないその作家独自の世界を構築する意味ではとても良い視点といえる。だが、子供たちを描いていけば当然内容は暗く重くなるわけでそういった雰囲気を払拭するキャラクターも用意してあるが、真正面から子供の抱える事情に向き合った内容とかストーリーになっているので胡坐をかいて読んでいたのが気付けば正座して読んでいたといった気分になるほどだ。春の章・夏の章・初秋の章・晩秋の章と繫がっていくが文化祭の日に起きた校舎屋上からの転落事件が最後の晩秋の章で明らかになる構成だ。それぞれの章に物語があり消えた人物や母親の隠された意図、出口に固まっていた子供たちの前に姿を現さずスタジアムのグランドから消えたサッカーチームのメンバー10人などミステリアスな出来事を絡めて最後の章に至る。しかし、最後の章のドンデン返しは予想していなかったので正直驚いた。全体を見渡しても良く出来たミステリーと云える。テーマはハナミズキとアルバトロス。初めて読んだ作家だが読み始めは会話の部分で誰が誰に話しているのかちょっと解かりずらく感じて自分とは合わない作家なのかと思いながら読み進めたが、読み終えてみるととても魅力的な資質を持った作家であると認識した。この本は未読のひとにはぜひおススメしたい。
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【ネタバレかも!?】
(3件の連絡あり)[?]
ネタバレを表示する
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文章が際立って美しい。形容する言葉が美しく深い。老弁護士が回顧する少年時代の頃とひとつの事件。チャタム校の校長を父に持ち生まれ育った少年ヘンリー。 あの八月の午後バスから降り立ったミス・チャニング
やがて悲劇の起こることとなる美しい田園の村。回顧の中から時折関係者の当事の言葉、裁判の様子などを織り交ぜながら物語は語られる。最後まで伏せられた真相。移り行く季節のなかで15才の少年ヘンリー自身の心の内や未来への思い。 黒池で起きる悲惨な事故。あの日黒池でほんとうは何があったのか。 ナイフ・ロープ・瓶入りの砒素。 ゆるやかな時間の流れのなかで、ある季節のおぼろげな記憶を思い起こす老弁護士ヘンリー。 トマス・H・クック 素敵な作家だ。この本に出合えて良かった。 読み終えてから多島斗志之の「黒百合」を思い出した。共通項が何点かあるからだ。 それは幼い頃の記憶、池、秘密、そして最後のページの衝撃。 |
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久しぶりの森 博嗣氏の本。これは異質のSF作品だった。個人的にはSF物は好みじゃない。有名な「星を継ぐもの」なんてのも未だに未読。しかし、森 博嗣は森 博嗣で相変わらずの会話の面白さが楽しくて、500ページ程あるがほとんど一気に読み終えた。未来の世界は森 博嗣の心の内の世界なんだろうが、私も共感できる世界だ。閉ざされた迷宮の島イル・サン・ジャック。宮殿モン・ロゼの内部のレポートは100年間一切存在しない。サエバ・ミチルは相棒ロイディと招待されたこの島にやって来た。しかし、僧呂長クラウド・ライツの死体が発見され切断された首が現場には見当たらない。そして老人オスカも殺され首がない死体で見つかる。ふたつの事件とサエバ・ミチルの運命。メグツシュカ女王と島の秘密。一夜にして森が海になった伝説の島。ミチルとロイディとの会話の楽しさ。犀川助教授と西之園 萌絵や瀬在丸 紅子と保呂草などのシリーズでお馴染みの理系的な思考と言葉のやり取りがとても面白くて楽しい。ミステリー度は低いけれどひとつの物語として充分な面白さで森ファンにはおススメの一冊。でも森ファンじゃない人からすればこの本のどこが面白い?と云われるのも考えられる。ロイディなら「不確定だ」ときっと云うだろう。
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これは一言で云うと面白い。ミステリーでいうトリックが幾重にもあり、最後の最後までドンデン返しのある仕掛けで書かれている。全体の話としては横溝 正史の世界のようで名作「八つ墓村」を彷彿とさせるものだが、密室殺人、首なし死体、その土地に代々伝わる祟りと亡霊の物語などクラシックと云えばそのとうりだが、良くできたプロットと入念に練られた物語の構成などで一気に読ませる。因習の村、繁栄のための男児の誕生、首なし様の伝説、密室の山、探偵小説、一言のセリフが伏線として存在するなど手が込んでいる。目の肥えた人もそうでない人も楽しめるミステリー小説としておススメの一冊です。
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最初にこの作者の本を読んだのは『GOTHリストカット事件』で、そのダークな世界に絶句したまま読み進めたことだった。今までにない異質な世界の物語で、全く違った面からミステリーを書くその感覚に圧倒されたものだった。この『暗いところで待ち合わせ』も評判は良かったので直ぐに探して読んでみた。良くあるラブロマンスの設定みたいだが、結局筆力があることに依ってその世界をうまく作り上げ、読者をその夢の世界に取り込んで、目覚めさせることなく遊ばせることに成功している。職場に嫌な先輩がいる。逃げることしか考えないいじめられっこのような男。下手をすればこんな男は読者から嫌われる。だがそうならないように書き込まれている。むしろ共感さえ覚えるように。目の悪い少女。彼女の心の内も有り得ない状況なのに説得力のある描写で読み手を納得させる。こうなるとページを捲る手は止まらない。最後まで一気に読み終えた。ずるいよねこんな話は。
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このミステリーがすごい2011年の16位作品。評価は低いが完成度は高い。でも、好みが別れる作風だろうね。特筆は文章の素晴らしさ。ボキャブラリーの乏しい不思議な言語を操るいまどきの高校生ギャルに読ませたい。もっとも、こういったイメージもテレビからのもので、ただ、単に世間を知らないのは私のほうかも知れない。プロローグの出来事から時間を遡り物語が始まる。通俗小説のような、母の愛人だった男と結婚した一人の女の身の回りの様子や生活。関わりのある人物などが静かに語られていく。歳の離れた男は生活面では苦労はさせない、時間もあげるから何をしようと自由だ。愛だの恋だの言わずにプロポーズされ受けた節子。その夫が交通事故で意識不明になる。ホンの脇役と感じた人物からの一枚のメモと共に子供を預けられた時から日常が少しずつ壊れていく。感情的でなく芯の強い女。しかし、そうなるにはそれなりの過去があり、それらは徐々に明らかになっていく。ラストの切ない気持ちは主人公の節子に思いいれたっぷりに読み進めた結果だろう。北海道のある小さな町を舞台にしたそこに生きる一人の女の生き方と一人の刑事。ため息のでる読後だった。
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『シューマンの指』の作者で、先に読んだこの本と、今回読んだこの本のタイトルから正統派のミステリーで
森 博嗣の犀川教授のような深い洞察力の持ち主の大学教授が謎を解くスタイルの物語かも、と思っていたら・・・。まるで違った。(笑) 有り得ないほどの爆笑をもたらす痛快さで、ダメ准教授の桑潟 幸一ことクワコーの日々の生活と、大学で起こる不思議な出来事に振り回される姿を描いたものだった。顧問の文芸部の面々も爆笑ものだが、中の一人ジンジンと呼ばれる神野仁美の名推理で驚くべき真相が最後に用意されている筋立てだ。A館の409号室の窓から転落した国語教授、20年前の首吊り、そして霊が出るとの噂に隠された真相の物語である『呪われた研究室』。そしてポーの名作と同じタイトルの『盗まれた手紙』。さらに文芸部員とクワコーが出入り口を見張っていたにも関わらず人が消えるトリックの『森娘の秘密』の中篇三作が収められている。いまどきの大学生の生態と云うか、はなし言葉などがリアルに綴られていてそこだけでも爆笑だがさらにクワコーこと大学教授の姿が、世の中の人達から見る「大学教授」という概念をまるでぶち壊す有り様で、笑いっぱなしで読み進む事となる。そして著者は山形出身とあるが千葉の県知事からヒットマンが密かに送られているのではないかと本気で心配するほど千葉を馬鹿にした記述があちこちにみられる。とにかく、ユーモア・ミステリーは知っているが爆笑ミステリーは知らなかったので、これはある意味読むクスリといえる。お疲れ気味の人にはおススメしたい。 |
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著者のプロフィールに横溝 正史を尊敬しているとある。そして2000年横溝 正史賞を受賞してデビューした。受賞作は『葬列』。これは先に読んだがクライムロマンと言ったところで、横溝 正史とは相反する内容だった。でもこの本は内容的には尊敬しているとある横溝 正史の世界に似たもので、岡山県のある地方の寒村を舞台にした殺人事件と、それを調べ犯人を明らかにする探偵の物語。横溝 正史を尊敬しているとアドバルーンを上げるのは、例えそれが作家としての足固めの手段の一つとして利用しているとしても、自分のスタンスを明確にしているので、読み手としても収支選択が取りやすいので不都合は無い。つまり同好の志は集まれと手を上げて居る訳だから。さて、この作品は丁寧に散りばめられた伏線と探偵が読み解く真相が破綻無く書き込まれ、主人公的な中二の男子 阿久津 智明の多感な時期の心情がきめ細かく描写されていてとても物語の世界に入り込み易い。事件の三日前から物語が始まるが、じっくりと村とそこで暮らす人々を書き込んでいく。事件の背景となる過去の出来事なども人物描写と絡めてうまく書かれている。個人的な話だがミステリーを読むときに、さあ名探偵よりも先に謎を解いてやろうと一言一句見逃さずに目を皿のようにして読む・・・。そんな読み方は私はしません。むしろ騙される楽しみを味わいたくて読むほうです。ですからハイこれが伏線ですよとミエミエな書き方のものは作者の力量が無いのだなと切り捨てます。上手く読者を騙してくれる作品を愛してやみません。これはそう云った意味からも合格点を付けられるものです。複雑な人間関係とその人物の想いなどがキチンと描かれていて、猟奇的な犯罪の意味もなるほどと合点がいくものです。ただ、隠された部分をもってアンフェアだと言う読者もいるかもしれませんが、そう何もかも明らかにしていてはミステリーは成立しません。足りないピースは推理で補うしかないのです。
昭和の時代の地方の静かな村を舞台にした、思春期真っ只中の少年と仲間。そして起きた哀しい事件。 清々しい読後感も気に入りました。 |
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過去に起きた毒殺事件。一応の決着が付いた事件だったが、あるベストセラー小説を偶然手にした男が30年前のあの事件を題材にしていることに気付く。彼は自身の中に燻ぶっていた気持ちに決着をつける為に調査を始めることにした・・・。あとがきにもあるように謎解きの面白さと、どんでん返しの意外性は新人離れの完成度と感じる。他のレビューにも有るとおり現在進行形の殺人事件の謎解きよりも、過去の事件を掘り起こし関係者の意外な証言を拾い出していき真相に至るミステリー形式のほうが面白いと思う。好みの問題でしょうけど。毒が使われた理由とホワイダニットつまり動機が明らかになる最後まで破綻無くまとめられ読み応えのある内容で楽しめた。今後の活躍を期待したい。
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