千年の黙 異本源氏物語
評判
千年の黙 異本源氏物語の評価:
4.08/5点 レビュー 26件。 A ランク
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全40件 21〜40 2/2ページ
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千年の黙 異本源氏物語の評価:
4.08/5点 レビュー 26件。 A ランク
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第一部「上にさぶらふ御猫」は定子中宮さまの猫が行方不明になった背景を探るもので、当時の風習や政治権力のバランスなどを縫いながらの謎解きで、あてきという女童の視線が、物語を生き生きさせています。童子岩丸とのほのかな初恋も含めて、この部分は文体も、荻原規子さんの古代ファンタジーの風合いを感じます。
けれど小説として凄いと思ったのは、つづく「かかやく日の宮」の部分です。源氏物語中のこのタイトルの巻が行方不明になった(実際に現存していない)、という事件ですが、彰子中宮の入内にまつわる世の中の政治のからくりの非情さとともに、それに押しつぶされまいと、作家の自覚を固める式部の人間像が心を打ちます。物語が宮中で人気を博し、手写本がつぎつぎと出回ってゆく、現代とは全くちがった文学事情の中で、式部は「物語が愛される、そして伝わってゆく(あるいは改変される)とはどういうことか」を思い、慄然とするとともに、物語に寄せる人々の思いをあだやおろそかにうけとめてはいけない、と考えます。
さらに、物語とは耳障りよく愛されるべきか、それともそれに(政治的な思惑ふくめ)逆らってまで真実を書き留めたいのか、とも。
そうして最後の第三部「雲隠」では、式部のこの覚悟が、「かかやく日の宮」の巻を紛失せしめた犯人にみごとなしっぺ返しを・・・
しかも、これで終わりかと思うと、最後にさらにどんでん返しがあり、式部の幼い娘が知らずにはたした役割など伏線が鮮やかに回収されます。
これはあくまでミステリなのですが、千年ののちまで伝わってきた『源氏物語』への大きな大きなオマージュと思い入れで幕を閉じます。深い余韻が残りました。
『源氏物語』の異本と銘打つだけあって、『源氏』を好きな人には、当時の宮中の読者の熱い反応などこたえられない楽しみがありますし、式部によりそって、物語について深く考えてゆく、そうした物語論としての楽しみも大きいです。
(解説にも『源氏物語』はいまでこそアカデミックな作品になっているが、当時の宮中の女たちにもてはやされた作り物語で、同人誌のようなものでもあった、という言葉がありますが、その側面にも切り込んでくれたミステリとして、興趣は尽きません。)