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夢遊病者の死



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【この小説が収録されている参考書籍】
夢遊病者の死 (角川ホラー文庫)

夢遊病者の死の評価: 4.00/5点 レビュー 3件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

読書の暗い淫楽へ

小説家江戸川乱歩(1894-1965)の作品集。乱歩の作品を読むと、読書の暗い淫楽に耽ることができる。

「石榴」
ジャンケンのように無限遡行の決定不能だ。真実か虚構か、加害者か被害者か。ポー『盗まれた手紙』の中のジャンケンの話を挿入したのは見事だ。そして、読後もそのイメージを広げていくタイトル「石榴」も秀逸の一語に尽きる。本作品集に於ける白眉。

「夢遊病者の死」
「・・・・・・何が悲しいのだ。なんということもなく、すべてが悲しいのだ」鬱屈した青年が反側輾転しながら漏らす口癖は「死んじまえ、死んじまえ、死んじまえ・・・・・・」こんな青年が現代どれだけいるか、想像して戦慄する。

「指」
たった数ページにまで切り詰められた見事なナンセンス・ホラー。

「虫(蟲)」
「・・・、十数年の歳月は、可憐なお下げの小学生を、恐ろしいほど豊麗な全き女性に変えてしまったと同時に、その昔の無邪気な天使は、」柾木の神様でさえあった聖なる乙女は、いつしか妖艶たぐいもあらぬ魔女と変じていたのである」「芙蓉のような種類の女は、二つ面の踊りと同じように、二つも三つもの、全く違った性格をたくわえていて、時に応じ、人に応じて、それを見事に使い分けるものだということを、彼はすっかり忘れていた」虫のように変態していく女への、愛憎と畏怖。女もまた、無限遡行の底無しだ。それを感得できるのは、社会からも女からも疎外された孤独な男だけだ。男だけには、その行き着くところが何処にも無いまま無間地獄へ陥っていく。女は、素知らぬ顔で浮遊している。そこから、男のあらゆる狂おしい異常性欲が創造されていく。タイトルの「虫(蟲)」は、作品のクライマックスで明らかになる。しかし同時にそれは、変態させられ続ける――現象を変態として認識するのは、飽くまで男の視線である――性を負わされた「女」の隠喩ではないか。そしてそれは取りも直さず、「女」を変態させていく「男」の隠喩であるのかもしれない。「虫(蟲)」というタイトルは、実に両義的なものではないか。神様から妖女へそして永久の美がこぼれ落ちていく物体へと変態させられ続けた女を、じっと窃視しその眼差しのみによって変態させ続けた男の物語。
夢遊病者の死 (角川ホラー文庫)Amazon書評・レビュー:夢遊病者の死 (角川ホラー文庫)より
4041053234

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