雪に撃つ

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雪に撃つの評価:

4.07/5点 レビュー 14件。 D ランク

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平均点4.07pt

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全22件 21〜22 2/2ページ
No.2
(4pt)

「雪まつり」、清潔であかるい場所

シリーズ最新作「雪に撃つ 道警・大通警察署」(佐々木譲 角川春樹事務所)を読みました。警部補・佐伯の物語を読むのは、「真夏の雷管」(2017/7月)以来になります。
 「さっぽろ雪まつり」の数日前、長万部駅。札幌へ逃亡するベトナム人女性たち。自動車窃盗事件に遭遇する佐伯とその部下の新宮。一方、少女の家出事件に巻き込まれる生活安全課少年係の小島百合。そして、(待ってました)巡査部長・津久井は、降る雪の中、ある発砲事件を追跡します。それぞれが追いかける事件は、「さっぽろ雪まつり」前夜祭の張り詰めた騒乱に向けて、次第にそのピースを寄せ合いながらきな臭い事件へと収斂していきます。
 蔓延る<少女虐待>(近頃は、物語の中でいくつそれらの事件を読むことになったろう)、この国に食いものにされる<留学生、外国人労働者たち>。ダーティな国家としての日本の有り様は、かつては他国の「絵空事」のように思えた時期もありましたが、昨今のいくつかのリアルな事件を見聞きすることによって、むしろ物語のほうが手ぬるいのではと思えるほど、この国は腐敗していると感じることが多くなりました。リアリティがフィクションを装い、フィクションを矮小化していきます。
 私は、道警シリーズよりもシリーズ以外の北海道を舞台にした著者の警察小説(「暴雪圏」、「北帰行」)をこよなく愛してきましたが、今回はとても地味で静かな展開ではあるものの、読後感はとてもいい。その理由は、主要登場人物たち4人の心情がいつにも増して抑制されていながら鮮やかに描かれていることに尽きるのだと思います。
 特に、佐伯。
 多くを語ることなく<留学生、外国人労働者たち>に思いを伝え、現実世界でのいくつかの決断を静かに遂行しようとする彼の姿には、やはり共感を禁じえない。それは、誰もがそうやって生きていたいと思いながら、誰もがそのようにはふるまえない、そんな不器用な世界の住人を垣間見るからなのでしょう。佐々木譲は、意図的に言葉と感情を抑制することによって、何かを伝えようとしています。その何かは、口に出した瞬間、アラジンの魔人のように消えてしまいます。
 読書後、関連があるのかないのか、ためらいがちなマイルス・デイヴィスの"Bye Bye Blackbird"が聞こえたような気がします。雪まつりのあかりに照らされる札幌は、私たちにとっての「清潔であかるい場所」であってほしい。
 (*2021年の「さっぽろ雪まつり」は見送りになったそうですね。)
雪に撃つ (ハルキ文庫 さ 9-10) Amazon書評・レビュー: 雪に撃つ (ハルキ文庫 さ 9-10)より
4758444854
No.1
(4pt)

「雪まつり」、清潔であかるい場所

シリーズ最新作「雪に撃つ 道警・大通警察署」(佐々木譲 角川春樹事務所)を読みました。警部補・佐伯の物語を読むのは、「真夏の雷管」(2017/7月)以来になります。
 「さっぽろ雪まつり」の数日前、長万部駅。札幌へ逃亡するベトナム人女性たち。自動車窃盗事件に遭遇する佐伯とその部下の新宮。一方、少女の家出事件に巻き込まれる生活安全課少年係の小島百合。そして、(待ってました)巡査部長・津久井は、降る雪の中、ある発砲事件を追跡します。それぞれが追いかける事件は、「さっぽろ雪まつり」前夜祭の張り詰めた騒乱に向けて、次第にそのピースを寄せ合いながらきな臭い事件へと収斂していきます。
 蔓延る<少女虐待>(近頃は、物語の中でいくつそれらの事件を読むことになったろう)、この国に食いものにされる<留学生、外国人労働者たち>。ダーティな国家としての日本の有り様は、かつては他国の「絵空事」のように思えた時期もありましたが、昨今のいくつかのリアルな事件を見聞きすることによって、むしろ物語のほうが手ぬるいのではと思えるほど、この国は腐敗していると感じることが多くなりました。リアリティがフィクションを装い、フィクションを矮小化していきます。
 私は、道警シリーズよりもシリーズ以外の北海道を舞台にした著者の警察小説(「暴雪圏」、「北帰行」)をこよなく愛してきましたが、今回はとても地味で静かな展開ではあるものの、読後感はとてもいい。その理由は、主要登場人物たち4人の心情がいつにも増して抑制されていながら鮮やかに描かれていることに尽きるのだと思います。
 特に、佐伯。
 多くを語ることなく<留学生、外国人労働者たち>に思いを伝え、現実世界でのいくつかの決断を静かに遂行しようとする彼の姿には、やはり共感を禁じえない。それは、誰もがそうやって生きていたいと思いながら、誰もがそのようにはふるまえない、そんな不器用な世界の住人を垣間見るからなのでしょう。佐々木譲は、意図的に言葉と感情を抑制することによって、何かを伝えようとしています。その何かは、口に出した瞬間、アラジンの魔人のように消えてしまいます。
 読書後、関連があるのかないのか、ためらいがちなマイルス・デイヴィスの"Bye Bye Blackbird"が聞こえたような気がします。雪まつりのあかりに照らされる札幌は、私たちにとっての「清潔であかるい場所」であってほしい。
 (*2021年の「さっぽろ雪まつり」は見送りになったそうですね。)
雪に撃つ Amazon書評・レビュー: 雪に撃つより
4758413673