芙蓉の干城
評判
芙蓉の干城の評価:
4.40/5点 レビュー 5件。 C ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全4件 1〜4 1/1ページ
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芙蓉の干城の評価:
4.40/5点 レビュー 5件。 C ランク
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最後の『愚者の階梯』、最初の『壺中の回廊』と読み進めてきたが(いずれもレビュー済み)、歌舞伎ファンや歴史好きには興味深い歌舞伎ミステリーである。
レビュータイトルは食わせ者の笹岡警部の漏らした言葉だが、満州国建国と国際連盟脱退、さらには五・一五事件と続く当時の危ない世相は、刑事にさえここまで言わせたとしてもおかしくなかっただろう。
実際、本文中に引用される「ゴーストップ事件」(1933年)は、大阪の天六交差点を信号無視して横断した軍人を交通係の巡査が派出所に連行したところ抵抗されて喧嘩となったというもので、軍が「皇軍の威信に関わる」として警察に謝罪を求めたことから、軍部と警察(内務省)の対立にまで発展した。
本書の物語は、主人公桜木治郎の妻の従姉妹の澪子が木挽座で見合いをするところから始まるが、見合い相手の軍人が昭和維新をめざす青年将校で、その支援者と愛人が同日の観劇直後に死体で発見されるという偶然から澪子と主人公が事件解明に関わっていくという筋立てである。
戦争前夜の世相を背景に、青年将校を支援するいかがわしいフィクサーと歌舞伎役者を絡めたミステリーはなかなかよくできている。
また、この物語でも稀代の女形荻野沢之丞が物語の進行に重要な絡み役として登場するが、その養子宇源次、さらにその子の藤太郎ともども妖艶な舞踊が見事に描かれ、歌舞伎女形の魅力に魅せられる。
タイトルの『芙蓉の干城』(ふようのたて)の意味は最後に明らかにされるが、「干城」(かんじょう)とは元来は皇帝を守る武士や軍人のことで、上記の青年将校はまさに「皇国の干城となる」と言い残して大陸へ旅立っていく。ちなみに、西南戦争の政府軍側で熊本城を死守した谷干城は「たにたてき」と読む。
澪子と青年将校が銀座の資生堂パーラーや日比谷公園の松本楼でデートする場面は、場違いな感じながら昔の白黒映画のシーンのようで面白く感じたことを付記する。