壷中の回廊
- 疑心暗鬼 (54)
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歌舞伎に詳しくなる | ||||
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三部作最後の『愚者の階梯』を先に読んだが、ミステリーとしてはこちらの方がよくできている。 舞台は歌舞伎の殿堂である「木挽座」、といえばモデルは歌舞伎座しかないのだが、関東大震災後に建築された歌舞伎座がよく描かれており、また、大衆の人気を博していた浅草の映画館や新進の築地小劇場にも触れられており、大正から昭和にかけての東京の演劇界の雰囲気が感じられて興味深い。 とりわけ、歌舞伎役者の階級社会が詳しく描かれているが、こんな感じである。 「歌舞伎役者には江戸の昔から名題、相中、中通り、下立役といった階級があり、明治になってそれが名題、名題下、上分、相中、新相中の五階級になったが、国家が厳然と定めた等級も別に存在する。それは義務づけた納税額による等級で、一等から八等まで分かれていた。」 現在でも、梨園の名家の御曹司の襲名披露は先頃の市川團十郎襲名のように賑々しく行われているが、階級制度はなお健在なのであろうか。 こうした梨園の階級制度と格差社会を打ち破るべく、当時の労働運動の波が歌舞伎座にも押し寄せ、幹部役者も巻き込んだ労働争議に発展しそうになることが事件の様相を複雑にし、ミステリーを面白くしている。 全体を通じて作者の歌舞伎への愛が感じられる作品となっているが、末尾の桜木治郎の独白は余韻の深いものである。 「喧騒に満ちた猥雑なまでに活気の漲るあの場所は、一方で滅入るほどに狭苦しくて、埃っぽい、饐えた臭いの澱んだ空気がこもっているのだ。それなのに皆なぜあんな場所に留まって、そこから出て行こうとしないのか、ここで見ていると実に不思議な気がしてくる。/だが己れの出番が来てちゃんと役を果たすまでは、皆そこから出てはならない、それが芝居の約束事なのである。」 歌舞伎の劇場と芝居について述べたこの言葉は、人生そのものの隠喩であろう。 ちなみに、著名な狂言作者の末裔で坪内逍遙の弟子とされる主人公の桜木治郎は、あの河竹黙阿弥の養子である河竹繁俊がモデルであろうか。今年は河竹黙阿弥没後130年で、新年から多数の作品が上演されていることを付記する。 | ||||
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読むのに時間がかかりました。時代や歌舞伎の世界というのは好みなのですが、今ひとつのめり込めなかったです。 労働の苦労を知らない女優志望のヒロインが安易に共産主義の思想に共感しているのも、あり得るかもしれないけれど、納得できないところがあります。 ただミステリーの謎がとけるときの伏線は、どろどろしていて、そこはちょっと面白かったです。 やっぱり好きな作家さんなので、引き続き読んでいきたいです。 | ||||
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久しぶりに素晴らしいミステリーに出会いました。 何よりも無駄なシーンが全くなく、すべてがラストの大団円に集約されて行きます。 作者の推敲が行き届いていることが感じられます。 物語は昭和初期と言うことで、科学捜査は一切ない時代の殺人事件ですから、合理的でスキのない推理が必要です。 探偵役は、大学講師の桜木治郎です。 舞台は、木挽座という歌舞伎の世界です。 ただ、昭和初期と言う時代で、関東大震災から復興しながらも世界恐慌が発生し不景気の真っ最中です。 この作品では、木挽座(旧劇)と築地小劇場(新劇)の二つの世界が交わります。 旧劇の方に桜木治郎を置き、新劇の方には妻の従妹大室澪子を配します。 この二人の人間関係からの情報と警察の捜査がすべて揃う時、事件の全容が見えてきます。 個人的にこの本を読んで良かったと思えることは、この昭和初期の人々の考え方が良くわかることです。 それは、今まで歴史の本の中ではなかなか読み取れなかったものです。 私たちの親たちの時代を理解することは、親たちの考え方を理解することに繋がると思います。 いろんな意味で、素晴らしい作品でした。 | ||||
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関東大震災の7年後、1930年2〜5月の東京を舞台に、 大学講師で江戸の狂言作家の末裔が、歌舞伎役者の毒殺事件に行き会い、 図らずも探偵の役割を担うことなり、更なる悲劇の後、思わぬ幕引きになるまでを、 昭和恐慌やメーデー、特別高等警察を背景に、旧劇と新劇を絡めて描かれている、となるのか…。 安倍政権の「安保法制」が、自民党独断で閣議決定から国会通過まで、横行されそうな今、 どうも時代がだぶって見えるような気がしないでもないが、 今の方が、若者が無関心なので、一気に世論が引きずられる可能性もありそうな…。 と、読みながら、作品の時代背景と現代とを、比較してしまった。 違和感を感じるほど、当時の若者の発想や心理が、時差に則して描かれている、ように見受ける。 伏線の描き方が、それとにおわせないところは、見事、と言えそう。 歌舞伎を知らずとも(嫌いでも)、全く問題なく読める。 2週間。 | ||||
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