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(短編集)
不純文学 1ページで綴られる先輩と私の不思議な物語
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不純文学 1ページで綴られる先輩と私の不思議な物語の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.20pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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斜線堂先生の他の本をオススメされ、気になっていたのですが、SFミステリーに最近ハマり出したので、こちらを購入致しました。 SFやミステリーだけでなく、様々な要素のある短編が120本以上も入っており、点と点が線になる瞬間が凄く気持ち良かったです。 ただラストが綺麗に終わると思っていたのですが、あまりスッキリしていなかったような…読者に委ねるラストなのかな…?他にもTwitterに載っているようで、他にも見てみたいような、でもきっとこれで完結なんだろうな…と少しモヤモヤしてしまいました。 | ||||
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初めて読む作家さんだが「ショートショート」と聞いて、否応なしに飛び付いた。日本におけるこのスタイルの第一人者・星新一の描く世界に触れたのが中学生時代だったからもう30年以上前になるのだが、それでも「ショートショート」と聞くと「取りあえず読んでみよう」となるぐらいにはハマっていた。 作品のタイトルすらろくに読まずに「ショートショートだから一編数ページといった所だろう」とタカを括って読み始めた物だから収録されている全作品が見開きに収められている構成に驚いた。しかもその見開きの右半分はタイトルのみ。左半分の1ページ、最長でも17行という長さに一つの話が収められているのである。これはもう「ショートショート」どころか「ショートショートショート」とでも称するべきスタイルなんじゃないだろうか? 話の方は「私」の独白によって構成されている。その独白によって語られるのは「私」とその想い人である「先輩」との関係、ただそれだけである。驚いた事に(さっきから驚いてばかりだけど)全ての話が一貫した世界観で語られる訳でなく、時に平凡な大学生の日常を描く事もあれば、突然宇宙に飛び出し、はたまた人類の終焉を迎えたりとページを捲る度に世界観も、「私」と「先輩」の関係もリセットされる。 そんな短さで毎回世界観をリセットしてたら話として成立しているのか、と思われる方もおられるかもしれない。だが、各話で「私」と「先輩」がどの様な関係にあり、その関係にどんな変化が生じ、「私」が「先輩」という人物をどう捉えるに至ったのかというこの作品で一貫して「描かねばならない部分」だけはしっかりと読者に伝えられる仕様となっている。 ただ、その分削る事が出来る部分を削ぎ落す作業だけは徹底している。「私」も「先輩」もその容姿に関する情報はほとんど描写されない(ごく一部の「私」の身体が変質してしまう作品においては最低限何が起こったか、ぐらいは描かれるけれども)。台詞に至っては「私」ないしは「先輩」が漏らした一言がぽつっと挟まれる程度で会話文という物は登場しない。 星新一は登場人物の名を「エヌ氏」「アール氏」として具体的な名を与えず、また固有名詞も排除し、金額を表すにあたっても「大金」などと時代や風俗に左右されない表現を徹底したが、この作品も同様に、いや会話文すら排除したという点においては星新一以上に「具体的描写」というものを排除し尽くしている。 その結果、何が起きるかと言えば読者がその想像力をフルに稼働させる事が求められる様になる。「私」は「先輩」はどんな人物なのか、各話で描かれる世界はどんな様子なのか、「私」と「先輩」はどんな会話を交わしているのか……全ては読者ごとに異なるし、その想像力に徹底的に委ねられる。 これは中々に面白い。よくあるライトノベル批判に「イラストに頼り過ぎて読者の想像力を衰えさせる」などというのがあるが、どっこい普通の小説にしても細かい描写によって読者の想像力が介在する余地を削っている部分は存外に多い事が、この描写という物を徹底的に排除した作品によって浮き彫りになっているからだ。 言うなればこの作品はエタノールから余計な水分を抜き取った蒸留酒の様な物ではないだろうか?読みながら想像力をフル稼働させて自分の脳裏に各話ごとの情景を補っていくという作業はこれはこれで楽しい物がある。読み手一人一人の頭に他には無い世界を誕生させていく趣向の作品だとも言える。自分の脳裏に浮かんだ情景を楽しむ作品だと言って良いかもしれない。これから本作品を手に取る方がどんな世界を誕生させるか……それを考えるのもまた楽しいでは無いか、そんな事を思わされた一冊だった。 | ||||
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