雪
評判
雪の評価:
4.03/5点 レビュー 38件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1〜6 1/1ページ
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雪の評価:
4.03/5点 レビュー 38件。 B ランク
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あと、細かいことだが、一つ誤訳と思えるものを見つけたので、指摘しておく。
宵の口に仕事帰りのハンセンさんがバーンホフ駅まで車で迎えにきてくれたんです。(下巻p.19)
「バーンホフ Bahnhof」というのは固有名詞ではなく、ドイツ語の普通名詞で「駅」のこと
なので、これは単に駅と訳すのが正しいはずだ(旧訳p.304ではそうなっている)。ふつうは
先行訳があれば参照するものと思うが、なぜあえて違う訳にしているのだろうか。
最後に、「訳者あとがき」についてだが、近現代トルコの政治史についてかなり詳しく解説
してくれている反面、訳者の態度が、本書の内容や作者に対して妙に厳しいというか、
殆ど断罪のようにすら思える部分があることが気になった。以下、いくつか例を挙げる。
本書は、パムク自身が”政治的メッセージはない”と述べる通り、明確な政治的主張どころか、
社会問題の提起さえ行われないまま終幕を迎えている。(p.410)
「雪の結晶図」はその存在自体が歪である。この芸術的に見れば醜悪な結晶図の存在は、
「真の詩人」であるKaと、「朝も夜も何時間もぶっ続けで働く事務員のような、ひどく単純な
魂しか持たない小説家」である作者パムクの二人が、政治に傾倒し、苦悩する人々のことを
最後まで理解し得なかったということを象徴しているように思われる。(pp.412-413)
こうして政治と詩という皮をはぎ取っていくと、本書で最後に残るのはただ一つ、(中略)
つまり、人は幸せにならなければならないという結論だ。(pp.413-414)
Kaを糾弾した<群青>や、Kaを密告者として蔑むイペキやカルスの人々とは違って、
作者パムクだけはKaをいっさい責めようとはしない。なぜなら、パムクの作品に一貫して
見られる主題めいたものがあるとすれば、それは幸福の追求にほかならないからである。(p.414)
これほど否定的な内容の「訳者あとがき」を読んだ覚えはあまりないのだが、上下巻を
読み終えてそれなりの感慨に浸っているところに、何だか出来の悪いレポートを無理やり
読まされたような、後味の悪さを覚えた。(そもそも、作者が明確な政治的主張をしたり、
結局は幸福を得られずに死んだKaを、それ以上責めたりする必要があるのだろうか?)
訳者がいかなる主観的見解を持とうと自由だが、「雪の結晶図」を大した根拠もなく「醜悪」
と決めつける一方で、専ら主人公や作者の倫理的姿勢ばかりを糾弾するかのような文章を、
「訳者あとがき」の形で読者に押し付けるのは、いささか僭越ではないかとすら思う。