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(短編集)

刀と傘 (明治京洛推理帖)



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刀と傘 (明治京洛推理帖)の評価: 3.74/5点 レビュー 19件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.74pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全19件 1~19 1/1ページ
No.19:
(4pt)

明治ミステリー

架空の人物と実在の人物で5つのミステリー事件を捜索させるのが面白かったし、タイトルの意味が読んだらわかります
刀と傘 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:刀と傘 (創元推理文庫)より
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No.18:
(5pt)

単に時代設定を維新前後に置いただけではなく、度肝を抜かれたとしか言いようがない

幕末から明治初頭を舞台にした本格ミステリの連作短編集。
第19回本格ミステリ大賞受賞作である。伊吹作品は初読。

とある書評でこの著者の新作が高評されていて興味を持ち、文庫化されてた2018年発表の作品を入手したという格好。
明治維新前後、慶應3年から明治6年にかけての日本の激動の時代を背景にした本格ミステリという触れ込み。いやいやどうなんだか?などと甘く考えて読み始めて度肝を抜かれました。

この連作短編、単に時代設定をそこに置いただけではない。当時の時代ならではの世間の状況や、市井の人々のものの考え方、政治的画策や立場による確執やらをあぶりだす。そして、それら故の事件への動機、機会、そして犯行の手口へ繋がっていく、という趣向なのだ。なかなか凝っている。

それとですね、ミステリ小説よりサスペンスに振った作品に多いと思うが、登場人物たちにはわかっていない事情や事実を読者は知っている(歴史的事実として知っていたり、著者が予め明らかにしていたり)といった、登場人物と読者との間の情報の非対称性が前面に出ている作品を思い浮かべるとよい。本作はその逆張りともいえるのでは?
例えば「監獄舎の殺人」。探偵役の慧眼によって動機が明らかにされるわけだが、読んだ瞬間の反応は(当方の歴史的知見が浅いからかもだが)、はあっ?!であった。
その後きっちりと背景含め説明が加えられるので読者としてもナルホドと納得するわけだが、現代人の思考回路ではこんな動機はありえないし思いもよらない。
当方、いわゆる理系な人間で教科としての歴史には弱いほう。そうはいっても、明治維新前後の政治的や軍事的なあれこれのごたごたの基礎知識くらいはあるつもり。しかしこんな動機にたどり着くのは到底無理であった。そういう意味でも度肝を抜かれたとしかいいようがない。

いや、ちょっと良いものを読ませてもらいました。
視野が広がるってこういうことか。書評恐るべし。
刀と傘 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:刀と傘 (創元推理文庫)より
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No.17:
(5pt)

期待を大きく上回る読みごたえに大満足。実に味わい深い連作ミステリ短編集でした。

期待以上の読みごたえで、ミステリの出来栄えに唸らされました。

一番の読みごたえを感じたのは、鹿野師光(かの もろみつ)と江藤新平(えとう しんぺい)という主要登場人物のふたりの関係が変化していくところですね。
ふたりそれぞれに抜群の推理を閃かせる切れ者なんだけど、それぞれの正義というか思いが相容れないところから亀裂が入り、やがて衝突するようになっていく。後半の話に行けば行くほど、両者の軋轢(あつれき)による緊張感が高まっていきます。
最後の「そして、佐賀の乱」の話など、ぞくぞくするくらいスリリングな展開で、圧倒されました。

タイトルの『刀と傘』は、鹿野師光が持つ黒の西洋雨傘を指しているのでしょう。
本文庫の目次の隣のページに、〈LE ROUGE
ET LE NOIR 〉(ル・ルージュ・エ・ル・ノワール。訳すと〝赤と黒〟。)と、フランス語のタイトルが記されています。「〝赤〟は血の赤で、〝黒〟は闇の黒なのかな」とか、色々考えちゃいました。

それから、末國善己による巻末「解説」。読みごたえありましたね。ネタバレはしてないけれど、話のエッセンスやらポイントやら、かなり踏み込んで語っています。
わたしは本文に行く前に目を通したんですが、作品を読み終えた後に解説文読んだほうが良かったかなと、今はそんなふうに思ってます。てか、作品読み終えた後にもう一回、じっくりと読んだわけなんだけど。

とまれ、幕末から明治初めの空気感もよく描けてたし、先述した主役のふたりのキャラも魅力的だったし、それぞれの話が一筋縄ではいかないひねりもよく利いていたし、とても読みごたえのある連作ミステリ短編集でした。
刀と傘 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:刀と傘 (創元推理文庫)より
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No.16:
(4pt)

時代ミステリ

「黒牢城」を読んで歴史ミステリに興味がでてきたので。
切れ味の鋭い本格ミステリ短編集。新人賞受賞作「監獄舎の殺人」がいちばん面白かった。最終話の「そして、佐賀の乱」は読むのが辛くなるほどに心に迫る話だった。しかし、主人公だけ台詞の方言があるのはなにか理由があるのだろうか? いっそ全員方言なしでもいい気がして不思議。
刀と傘 (明治京洛推理帖) (ミステリ・フロンティア)Amazon書評・レビュー:刀と傘 (明治京洛推理帖) (ミステリ・フロンティア)より
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No.15:
(1pt)

おもしろくないなぁ

ミステリー好きとしては、全くつまらない。
伏線をあちこちに置いているせいで途中で結末がわかってしまう。
本のタイトル自体が結末を誘導している。
結末を読んで、やっぱりと思ってしまう。実につまらない。
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No.14:
(2pt)

本作は今一つだか、次作以降に期待が持てそうな気が

この作品集だけですと、正直なところ、意余って力足らず、という印象です。
主役格の二人の役割があいまいでストーリーを分かりにくくしている。
アリバイトリックが多いのですが、誰が何分までどこにいて~という記述が煩雑で読みにくく、謎解きの納得感が無い。表を用意しろとは言いませんが、例えばこの時間のアリバイさえ崩せれば、、、といった謎解きの焦点が明確なら、謎が解けたときにすっきりしそうですが。
人物の心理面の掘り下げが浅いので、登場人物の行動に説得感が無い。犯人の動機も腑に落ちませんし、主役格二人のそれぞれの正義感と友情との葛藤のようなテーマも見え隠れするのですが、そもそもどんな人かよくわかるように書けていないので、一つ一つの行動が場当たり的に思えてしまいます。
時代がかった難しい漢字を多用するのですが、文体自体が現代風なので、単に読みにくいだけの文になってしまっている。なんだかワープロの文字変換で出てきた難しい漢字を使っているだけに思えてしまう。
と、いろいろ書きましたが、単純なホームズ/ワトソンの関係にない主役格二人の異なる正義感の葛藤や、そこから生まれる行動の違い、時代に翻弄される姿など、雰囲気は良いと思うので、次作以降に期待しています。
刀と傘 (明治京洛推理帖) (ミステリ・フロンティア)Amazon書評・レビュー:刀と傘 (明治京洛推理帖) (ミステリ・フロンティア)より
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No.13:
(4pt)

ドラマ化するなら……

本を読んでいる間、江藤新平が長谷川博己で、鹿野師光が濱田岳をイメージしました。
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No.12:
(3pt)

江藤新平

初めての作家の初めての作品を読了。幕末から明治にかけて時代背景で、江藤新平が、色々な事件を推理し、解決していくミステリー。時代劇的でもあったけど、興味深い作品です。
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No.11:
(4pt)

史実に基づくミステリー

江藤新平を中心に、尾張藩士出身の架空の人物が明治前後の時代で活躍。
大きな時代の動きの中のある動きを、一志士達が歴史の片隅でになった役割が本当にあった出来事のようにに仕上がっている。
ミステリーだけでとらえれば、特段の仕掛けがない部分もあるが、江藤新平の人間的な偏屈さなど歴史的な局面から読んでも面白い。
表舞台には立たずとも、歴史の狭間で役割を全うした人物達にの悲壮が伝わる。
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No.10:
(2pt)

何だかまどろっこしいなあ

新聞のエンタメ書評で褒められてました。期待して読みましたが、うーん。マニアにはウケるでしょうが、万人向きではない気がします。

 五話の連作短編ですが私は一話読んで挫折。もういいやと。犯人当てのミステリー、こんなに読みにくく、ややこしくしないといけないですかねえ。
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No.9:
(5pt)

新人とは思えない見事な構成

倒幕後から明治初期を時代背景にした全5作の連作ミステリー。密室殺人、眼前で毒殺された死刑囚の謎、倒叙もの等バラエティーに富んでおり、全作品ともミステリー好きには溜まらない謎解きがしっかり用意されています。

一方、探偵役は近代日本の司法制度の礎を築いた江藤新平と尾張藩士鹿野師光のコンビですが、この彼らの出会いから別れまでが、全編を通じて描かれています。そこにはこの激動の時代だから故の二人の関係性が、物悲しく炙り出されており、何とも言えぬ感傷が残る幕切れでした。
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No.8:
(4pt)

明治維新前夜から維新後を描いた意欲作

明治維新前夜と維新後という舞台選定が非常に面白みのある切り口であり、かつ「法学の誕生」(内田貴)で述べられているような、西洋価値観の流入(導入)により試行錯誤した時代背景も織りなしながら、しっかり時代の空気を漂わせることに成功している作品である。
受賞作である第3章「監獄舎の殺人」が第1作にあたり、その後、第1章と第2章が発表され、単行本用の書き下ろしとして第4章と第5章が加えられたためか、やや全体を通しての不自然さがあるのは否めないものの、歴史を後世から「神の視座」で語るのでなく、当時を生きた人々の考えや苦悩を踏まえて語ろうとする姿勢は好感が持てる。次回作以降に期待が持てる作品と言える。
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No.7:
(3pt)

ミステリというよりは狡猾な正義(?)と篤実な正義とを対比させ、読者に選択を迫った感がある連作時代ミステリ短編集

江藤新平及びその友人(ある時期は部下)の師光を探偵役とした「佐賀から来た男」、「弾正台切腹事件」、「監獄舎の殺人」、「桜」及び「そして、佐賀の乱」の5つの短編から構成される連作時代ミステリ短編集。勿論、時代は幕末~明治初期である。

作者は江藤新平が好きではないらしく、上昇志向の強い傲慢な男として描かれる。一方の新政府の官吏の師光は篤実で情も深い。各編の謎はシンプルで(ただし、注意深く読む必要がある)、江藤の合理的な謎解きを武士の矜持を保っている師光が"内心の呟き"や"秘かな言動"で補完するという体裁。即ち、閃き・合理性・狡猾さという点では江藤が勝るが、真の洞察力(あるいは思い遣り)では師光が勝るという創りになっている。作者の明治維新観・正義観がそのまま反映されていると言える。これを含め、明治維新前後の世情が全編に反映されている点が本作の特徴だろう。それが、主に各編の動機に繋がっているので、上述した通り、注意深く読む必要があるのである。ただし、例えば、「***藩の***」という記述があった時、「***藩」が幕府側なのか薩長側なのか直ぐには分らないので、全編を全て理解するのは中々骨である。

ミステリ的趣向と時代描写(特に江藤の都合)とのバランスが悪く中途半端な印象を受ける作品。ミステリというよりは江藤流の狡猾な正義(?)と師光流の篤実な正義とを対比させ、読者に選択を迫った感がある短編集である。
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No.6:
(3pt)

小品の佳作

実在の人物を絡めた面白い時代設定です。ミステリーとしては、あまり凝った内容はなく、個々の話には無理して基本設定に組み込んだ印象のものもありますが、結構、楽しめます。
実在の江藤司法卿ではなく、元尾張藩の主人公は武士らしい潔さが印象的です。特に2019年このミス国内1位作品の後味の悪さにいら立った後に読んだ為、良い口直しとなりました。
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No.5:
(3pt)

〈お約束〉という思考停止

「マニアの間で、年間ベスト級の作品と評判」だという噂を小耳に挟んだので、読んでみることにしたのだが、あまり評価できなかった。
噂が事実なら「どうしてこの程度の作品を、そこまで高く評価してしまったのか」と考えて、いちおうの解答が見つけられた。
それが「お約束という思考停止」である。

「お約束」とは何か。

例えば、ラノベなどでは主人公が、ふとしたことで異世界に転生したりする。普通に考えれば、そんなことは起こらないので、少し前までのハードSFなどでは、その理由を擬似論理的に構築し、描写の妙を尽くすことで、「ありそうなこと」にする努力がなされたりした。つまり、読者を説得する努力がなされた。

しかし、今の時代、そのような説明は、無駄なだけではなく、野暮なものとさえ思われてしまうだろう。なぜなら、読者の多くは、そんな「理屈」など求めていないし、楽しみもしないからである。
つまり「そんなことはどうでもいい」のであり、だから「理屈はどうあれ、転生したってことでいいじゃない。所詮はフィクションなんだからさ」ということである。
多くの読者は、小説を「娯楽」目的で読んでおり、そうした物語に「理屈」など求めてはいけないのだ。そんなことに紙数を費やすのではなく、主人公やヒロインをめぐるドラマチックな物語を、しっかり書いてほしいのである。
だから「とにかく転生しちゃった、でいいじゃない」、そこはもう〈お約束=暗黙の了解〉ってことにしましょうよ、その方が経済的だ、ということになったのだ。

そして、ラノベはもちろん、それを経た現代の娯楽作品の多くには、そうした経済原理に従っての、多くの「お約束」が導入されている。だからこそ、現代の娯楽作品は、よりスピーディーになった。

しかし、こうした〈お約束〉は、いまや多くの享受者にとって「見えないもの」になってしまっている。
本来は「見えるけど、見ないことにしよう」という〈お約束〉だったものが、次第に不可視化されてしまったのだ。
その結果「見えないものは思考できない」ということになってしまっているのである。

本作『刀と傘』について言えば、論点となるのは「狂人の論理」だ。

これは本格ミステリ独特のガジェットで、要は「まともな人間ならそうは考えないけれど、常識に縛られない狂人ならば、異様な形式論理も成り立ってしまう」というものである。
例えば、ある有名短編の「狂人の論理」は「戦場において、一度砲弾が落ちた場所は、他の場所より砲弾が落ちにくい」という、確率論的に誤った理屈であった。
これは理性的には間違いなのだが、たしかに理性が機能停止している人になら「ありそうな話」であるからこそ、本格ミステリにおける「奇妙な行動(非合理的な行動)」を説明する原理として、採用可能なのである。

しかし、斬新な「狂人の論理」を読者に呑ませるには、作者に相応の筆力が求められる。
もともと無理のある理屈を、無理が無いと思わせなくてはならないのだから、作者には「白を黒と言いくるめるレトリック」が求められたのだが、作家たちの苦闘を経て、本格ミステリの長い歴史のなかで、こうした「狂人の論理」がたくさん編み出されていった。

だがしかし、そういう「狂人の論理」が蓄積された結果、それが無自覚に〈お約束〉化してしまった。「不自然さ」に対するハードルが下がってしまい、作者にさほどの筆力がなくても、読者の方で、それを容易に受け入れてしまう「馴れ」が構築されてしまい、「それもありね」とすら思わず、自然に許容するようになってしまったのだ。これは宮台真司言うところの「ネタがベタになる」の一種だろう。
その結果、かつては求められた「心理描写についての繊細なレトリック」が不必要になり、それが失われる結果となったしまった。「本格ミステリにおいては、登場人物はお人形さんでかまわない」という原理が、安易に横行することを許してしまい、「描けていない作品」を、読者の方で先回りして補完するようになった結果、本格ミステリは、進んで「文学性」を放棄することになったのである。

例えば、坂口安吾の本格ミステリ『不連続殺人事件』において、謎解きのヒントとなったのは、本当に些細な「心理的に不自然な行動」であった。そこから、犀利な推理が展開される作品として、本作は名作となり得たのである。

しかし、今の読者が『不連続殺人事件』を読めば、かなりの確率で「面倒くさい」作品だと感じることだろう。
なぜなら、この名作には表面上の派手さなどはなく、ただ着眼と謎解きという一点に、その魅力が凝縮されているからである。
だが、そうした魅力を感じる知性が、いまや失われるはじめているのではないか。

読みやすい娯楽作品が悪いとは言わない。そういうものも確かに必要だ。
だが、そういうものばかり読んでいれば、読者の思考力もその水準に止まるというのは、理の当然であろう。

本格ミステリは「知性の文学」であると言われる。それは間違いではない。
しかし「知性」とは、何も「形式論理」的なものだけを指すのではない。不自然なものを不自然だと感じ取る感性もまた、「知性」の重要な側面なのである。
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No.4:
(5pt)

時代とミステリー

時代背景に、事件が絡まり、興味ぶかい流れを感じて、一気に読みました。
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No.3:
(5pt)

素晴らしい構成でした

素晴らしい作品でした。作者はこれが初めて出した本なんですね。構成がとても素晴らしかったです。
ただ鹿野との再会〜二度目の別離が少し慌ただしかったので、間にもう1作江藤&鹿野がタッグを組んでの探偵譚を挟んであると良かったのかもしれない。
それでもラストにかけては物語への引き込む力がとても強く、多少の違和感は吹き飛びます。
江藤も鹿野も水と油のように相容れない性質を持っていても、それでもお互いへの親しみを捨て去る事はなく、結果、あの結末へ辿り着くしか道はなかったのかもしれないと、読んでいて心から納得してしまった。

ミステリ部分は、二人とも有能な探偵の才能があり、どちらの視点でもかなりロジカルな推理で解決してくれるので、読んでいてとても楽しい。
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No.2:
(4pt)

二人の男が出会い、訣別し、それぞれの結末を迎えるまでの物語

幕末から明治にかけ、二人の男が出会い、訣別し、それぞれの結末を迎えるまでの物語。
明治ミステリですが、事件の背景に使った程度で時代小説色は意外に薄く、実在の登場人物も江藤新平程度であります。実在するかと思って鹿野師光の名前で検索かけましたよ。
第三話『監獄舎の殺人』はミステリーズ!新人賞受賞作なので普通なら巻頭に置かれるところを時系列順の掲載。おかげで江藤と鹿野の関係性や鹿野の心情の流れはすっきり整理されていますが、普通なら八~十話かけて描く内容を五話にまとめたため、全体に駆け足の印象がやや残念。星4つ。
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4488020062
No.1:
(5pt)

二人の推理が維新の影に墜ちた者たちの悲哀を炙り出す傑作歴史ミステリー

王政復古直後の京で、二人の男は出会った。一人は、できたばかりの新政府に参加している尾張藩の藩士、鹿野師光。もう一人は、佐賀の鍋島閑叟から送り込まれた江藤新平(後の初代司法卿)。この二人の行く手に、いくつもの事件が立ちはだかる。

剃刀のような切れ味の頭脳を持ち、傲岸不遜で目的のためには手段を選ばない江藤。江藤に劣らぬ洞察力と論理的思考力を持ちながらも、あくまで職務と己が使命に忠実な鹿野。

二人の推理合戦が一番の見所だが、敬服、友情、対立などがない交ぜになった二人の複雑な関係が、実にうまく表現されている。

五つの事件を通じて著者が投げかけてくるのは、維新の栄光の反作用として生じた影だ。志半ばで落命した志士、明治初期の権力闘争の捨て駒とされた小役人、新政府に反旗を翻したかつての顕官や徳川方の残党など、影に墜ちた者たちの姿は、深い悲哀に満ちている。

薩長藩閥の打破と司法権の独立という大目標に向かって、すべてを踏み台にして邁進する江藤だが、その度合いが増すにつれ、やがて生じるであろう反作用は激烈なものとなることを示唆している。このあたりの構成もうまい。

歴史ミステリーと呼ばれるジャンルで、連作短編集で、これほどまでに深みと凄みのある作品には、そうそう出会えるものではない。
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4488020062

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