月の満ち欠け
評判
月の満ち欠けの評価:
3.43/5点 レビュー 238件。 A ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全474件 141〜160 8/24ページ
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月の満ち欠けの評価:
3.43/5点 レビュー 238件。 A ランク
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帯の映画化と直木賞受賞の文字に惹かれて手に取りました。
巻末の参考文献にイアン・スティーブンソンの『前世を記憶する子どもたち』が挙げられていて作品中にもそれと思われる本が何度か登場しますが、そうした事例の一つを小説という形にしたものが本書であるようです。
文章については作家某のようなものとまるで違うとして貶すようなレビューもありますが、この作家の文章は優れていると思います。特に会話文はすらすらと流れているようでいていわゆる演劇的な演出が施されたような日常会話とはかけ離れた言葉になっているわけではなくて、話者の人柄が滲み出てくるように言葉が選ばれていると思います。
そもそもある作家が谷崎や太宰や川端康成、夏目漱石といった作家たちの文章と違うからと言って評価しないなどということがあるものなのでしょうか。
読み始めると時間の流れに沿って物語が進むわけではないので最初に読んだときは登場人物の関係性が掴みきれず、読み終わってから相関図を作って時の流れと登場人物の関わりを把握しました。こうした作業を行なってでも物語の世界を把握したいと思わせる魅力がこの作品にはあります。
初代瑠璃さんが映画の中の台詞として触れた「神様がね、この世に誕生した最初の男女に、二種類の死に方を選ばせたの。ひとつは樹木のように、死んで種子を残す、自分は死んでも、子孫を残す道。もうひとつは、月のように、死んで何回も生まれ変わる道。そういう伝説がある。死の起源をめぐる有名な伝説」「でも、もしあたしに選択権があるなら、月のように死ぬほうを選ぶよ」という部分は印象に残りました。伝承のようなファンタジーのような話ですが、本当にそういう台詞があったのか作者の創作なのかは分かりませんが面白いと思いました。
物語がいつの話なのかと考えても本筋には関わりのないことなのですが、黛ジュンの『夕月』や『ドクトル・ジバゴ』『アンナ・カレーニナ』という映画が登場するので相関図を作りながら調べてみました。
『夕月』は1968年9月発表。初代瑠璃さんがいつこの曲を聴いたのかはわかりませんが、アキヒコくんと出会った前後ではないかと推測しました。
『ドクトル・ジバゴ』は日本公開が1966年6月。一緒に映画を観たのがこの月ということになると『夕月』はそれから2年ほど後です。
『アンナ・カレーニナ』は何度か映画化されていますがヴィヴィアン・リーが出演した作品が日本で公開されたのは1948年で、タイトルは『アンナ・カレニナ』です。物語の年代に矛盾しないのは1968年5月日本公開の作品で主演はタチアナ・サモイロワです。
物語の時間の流れを考えると封切りでない『ドクトル・ジバゴ』を観て『アンナ・カレーニナ』(アチアナ・サモイロワ)の予告編と続いて本編を観る。その後『夕月』がヒットするという流れになります。
登場人物の年齢は誕生日を迎えているかどうかでも違いますので細かくは追いませんでしたが、27歳で死んで生まれ変わり、次に18歳で事故死して生まれ変わる。当時20歳だったアキヒコ君はこの時点で38歳。三代目が亡くなるのが小学校一年の夏。
四代目がアキヒコ君を訪ねるのが二代目(小山内)瑠璃が死んだ15年後。アキヒコ君53歳。
「あたしは月のように生まれ変わる」「もっと若い美人に生まれかっわってアキヒコ君と出会う」と言った通りに初代瑠璃さんは生まれ変わってアキヒコ君に会おうとします。
初代瑠璃さんがのちに変質者で誘拐犯とされてしまう正木竜之介と結婚したのは竜之介の強引さと「いまとはべつの生活を望んでいるのかもしれない」という思いにとらわれたからでしょう。竜之介が自分の人生の設計図に合致していると判断した美しい人だったのですからそれまでの生い立ちが違ったものであれば違う人生になっていて「命取り」になる流れに身を委ねることもなかったでしょう。
そのようにずるずると引きずられてしまう「運命」やエリートだった男がただ一点設計図通りにいかない事が原因となってやがて身を持ち崩していく様はいかにもありそうであえていうなら自然です。これは作者のうまさだなあと思います。「愚かな女だ」という言葉にもそれが現れています。
先にも触れましたが「そうなんですか」という言葉の意味のずれや「もう一度あたしのことを採点するつもりなんだね」という言葉とアキヒコ君とのやりとりがとてもうまく構成されていて経験の乏しいアキヒコ君、美しい人妻だけど精神のバランスを崩してしまっていたこの時の瑠璃さんという人物がまるで目の前にいてその会話を聞いているような思いにさせられます。
一つだけ最後に引っかかったのは過去の瑠璃さんの人生の全ての記憶を持っているはずの四代目が、出会いの場である高田馬場にまた行ったとある事です。二代目が三度家出して補導されていてその中で高田馬場にはもうそのお店がないことは知ったはずなのに、です。
これから作者の他の小説も読んでみたくなりました。