スマイリーと仲間たち

【この小説が収録されている参考書籍】

【この小説が載っている参考書籍】

評判

スマイリーと仲間たちの評価:

4.78/5点 レビュー 23件。 B ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.78pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全28件 21〜28 2/2ページ
No.8
(5pt)

スマイリーとの決別?

私の読んだのはハードカバー(村上博基訳、早川書房)なのですが、多くの方にこの傑作をお勧めしたいと思い、こちらでレビューさせていただきます。

最初に「寒い国から帰ったスパイ」を読んで衝撃を受け、それ以来ジョン・ル・カレの小説のほとんどを読んでいます。私の好みというのもあるかと思いますが、彼の小説には出来不出来があるように感じます。しかし、本書を含む「スマイリー三部作」は大傑作と思います。

話は東西冷戦の時代、ずんぐり太った中年の亡命ソビエト女性マリア・オストラコーワが無作法なソビエト人の大男からパリの貧民街で声をかけられ、近くのカフェに連れ込まれるところから始まります。男はモスクワに残してきた彼女の娘で「犯罪人の」アレクサンドラを引き取りフランスに帰化させる手続きをとるように言います。オストラコーワは早速ソビエト大使館に行き必要な手続きを済ませますが、その後いくら待っても大使館から連絡がなく大使館に赴いても玄関払いされてしまいます。そこで、以前に聞いたことのあるロンドン在住の亡命エストニア人グループのリーダー、ウラジミール将軍に手紙を書きます。すると、ある晩将軍の代理の男(マジシャン)が訪ねてきて彼女の話を親切に聴いてくれます。なぜ大男は彼女に娘の帰化申請をさせたのか。この謎がサーカス(英国情報部)を引退したジョージ・スマイリーを再び舞台に引き出し、最終的には東西ベルリンをつなぐチェックポイント・チャーリーでソビエト情報部の宿敵カーラを待ち受けるスマイリーの姿につながることになります。

この小説で私が特に強い印象を受けた場面がいくつかあり、ロンドンのハムステッド・ヒースでのウラジミールの無残な惨殺死体、オットー・ライプチッヒ(マジシャン)のボートの中での惨殺とボートの縁に吊るされた証拠品(写真)、モスクワルールの黄色のチョーク、それに超人的な頭脳を持つ元サーカスの女性スタッフ(ソビエト専門家)コニー・サックスの亡霊のような姿など。スマイリーを含め主要な登場人物は総て何かに強く取りつかれた人間であり、それ故に幸せとは無縁です。そして、全篇をつらぬく通奏低音はスマイリーの妻アンの存在です。

最終場面でスマイリーが宿敵カーラを迎えた瞬間に私達はル・カレの冷戦スパイ小説の完結とスマイリーとの決別を予感します。しかし、実は私達はポイント・チャーリーで諜報員の帰還を待つ「寒い国から帰ったスパイ」の巻頭に戻っているのです。このようにして、私達はル・カレのスパイ小説の無限の連環に引きずり込まれて行きます。

スマイリー三部作のうちこの本を最初に読まれる方は、残りの二冊(ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイとスクールボーイ閣下)も合わせて読まれることをお勧めします。また、登場人物が多くて複雑ですので登場人物リストが付いていない場合は自分で作りながら読まれると判りやすいかと思います。なお、(私にとって)非常に読みにくいル・カレの英語をプロとはいえ、このようにこなれた日本語に翻訳されている訳者に敬服します。
スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439)) Amazon書評・レビュー: スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))より
4150404399
No.7
(5pt)

惜しい、最終章

イギリス諜報部、サーカスからリタイアしたスマイリーと、ロシアの黒幕、カーラの最終決戦。
スマイリーは別居した奥さんとヨリを戻すのか。追い出された組織と、どう協力するのか。
これまでのストーリーが伏線となって、スピーディに展開します。
あんまりネタパレはできないけど、「そうなるのか」と納得するし、なによりスマイリーというスパイのお手本みたいな冷静で頭脳明晰な人物が、それ以上に人間としての力を持っていたことが、うまくいかされています。
フィクションですが「ベルリンの壁崩壊の裏には、こういう事件もあったかも」とも思わせるのも、作者の腕なんですね。
人生、たった一度の勝負であきらめちゃダメ、というメッセージが伝わります。
それにしてもスマイリーみたいな人間になりたいものです。
残念ですが、このシリーズはおしまい。
読まないとソンするシロモノです。
もちろん前作、全前作を読んでからね。
スマイリーと仲間たち (1981年) (Hayakawa novels) Amazon書評・レビュー: スマイリーと仲間たち (1981年) (Hayakawa novels)より
B000J7YJUG
No.6
(5pt)

人間としての交渉術の勝利

最近、スマイリーと仲間たち、何回も読みなおしている。
カーラと同じ武器を使う事で、スマイリーも道徳的にあやういラストになるとか何とかいろいろ大きなテーマはあろうが、・・・むしろ冷戦時代、亡命者たちの組織が、諜報活動といえば聞こえはいいが、ポン引き、ヤクザ、売春婦、詐欺師、泥棒商人の連環のなかで、モスクワセンター最深部まで目が届いている事にまず驚き、

そういう塵あくたな連中を、労働党政権のエリートたち、あるいは政権以前のエリートたちのように見下すことなく、そっとその真偽を見極め、信義、信頼、誠実で重要情報を拾い上げるスマイリーはえらいなと、まず感心した。

類書としてカリエールの「外交談判法」とか、吉村昭「落日の宴」(幕末の対露外交を担当した川路聖謨)とかあるが、結局は、人と人が交渉するとき、 国威や地位、財産をつかっても浚えるものは限られ、己の器量、人格以上のものは得られない。他者に対する事の難しさ、大切さ、その素晴らしさをうたった、人間賛歌の小説だと最近、つとに思う。
BBCのアレックギネスのドラマ見ても、何かBGMに清澄で誇らしげなメロディを感じるしね。

いやまじで、CIAあたりは自分たちがアラブ浸透に失敗していると思うなら
もう一度、ヒューミントとは何か、「スマイリーと仲間たち」の読書講習会でも開くべきだな
スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439)) Amazon書評・レビュー: スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))より
4150404399
No.5
(5pt)

名著!

週刊文春1981年 総合8位

スマイリーにコンタクトをとろうとしていた工作員が殺害された。諜報員を引退したスマイリーだったが、再び、事件の背後を探るべく活動を始める。そこには、宿敵カーラの影が ・・・

『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』、『スクールボーイ閣下』に続く三部作の完結編。名著といってもよいだろう。個人的には一番良かった。

相変わらずもどかしくもある展開なのだが、丹念な描写が印象的な作品。三部作の中では、老境にさしかかったスマイリーの優秀さや、心の動きがよくわかる仕上がりになっている。スマイリーの尋問シーンは秀逸だし、カーラとの決着をつける際にみせる逡巡が、この長い長い物語を読んできただけに、感動的ですらあった。宿命の出会いを象徴する、スマイリーのライターをどうするのか見所ではあったのだが、想像しえないクールな使い方をしてくれて満足。

なかなか読み込むのに体力がいるシリーズではあけれど、『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』から、なるべく時間を空けず読んだ方がよいと思う。残念ながら私は時間を空けてしまったので、小道具(ライターだけは最初から心にとめておいたんだけど)や登場人物らの関係が、ちょっとぼやけてしまった。

アレックス・ギネス主演で映像化されているんだが、日本では放映されないんだよなぁ。
スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439)) Amazon書評・レビュー: スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))より
4150404399
No.4
(4pt)

スパイと人間性の葛藤を巧みに描いた名作

冷酷非常な諜報の世界と人間性の間の揺れ動きこそル・カレの小説の最大のモチーフであり、このモチーフは本作の最後において最も衝撃的な形で現れる。三部作の読者にとってはかなり衝撃的な結末であり、人間性、特に家族愛というものをあらためて考えさせてくれる。この意味で、本作は単なるスパイ小説にとどまらない魅力を持っていると言える。

 プロットはル・カレの小説の中ではかなり分かりやすい部類に入る。特に前半は推理小説のように読める。三部作の前二作は読んでおかないと本作は理解できないと思われる。訳は秀逸であり、安心して読むことができる。
スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439)) Amazon書評・レビュー: スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))より
4150404399
No.3
(5pt)

類まれな緊張感

例によって派手なアクションは無く、冒頭におきたエピソードに導かれて徐々に大きな絵が浮かび上がってくる展開です。
追いつ追われつの緊張感はまったくありませんが、それなのにスマイリーが謎を追う過程や最期のシーンなど、スパイ小説一般ではお目にかかれないほど類まれな緊張感で全体を引っ張っていきます。
また人物の描写も素晴らしく、各人物の誇りや弱さが直接、間接の描写を幾重にも積み重ねて描いています。
一方、はっきりと答えが提示されず、暗示にとどめられる表現も多いので、起承転結すべてにきっちりとした説明を示して欲しい読者には向いていないと思います。
スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439)) Amazon書評・レビュー: スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))より
4150404399
No.2
(5pt)

三部作の最後を飾る名作!

スマイリー対カーラの最後の対決を描く三部作の最後の作品。それにふさわしい素晴らしいプロットと人間描写。パリに住む亡命ロシア人の女性にソ連当局からの接触。これが機会になってあの冷酷無比の男カーラがその欠点を明らかにしていく。自分の妻アンをカーラの謀略で二重スパイビル・ヘイドンに寝取られたスマイリーは同じく彼の弱点をついた作戦で反撃に出る。最後の50ページはどんな作品の最終章を読むより、鮮やかで刺激的でそして深い。最後はカーラは自分の娘を守るため、スマイリーの前に屈服する。スマイリーはつぶやく「勝ったかもしれない」。そうなのだ、彼は勝ったが、自分の人生を賭けた宿敵との戦いと自分の人生をだぶらせて本当に勝った気がしない。彼、ジョージ・スマイリーという人物を通じて20世紀後半の英国そのものを描くというチャレンジをルカレはやっているのかもしれない。諜報活動の作品を通じながら、ルカレは英国そのものを描いてきたのだ。
今回この3部作を再読することで作品そのものの奥深さをより感じルことができたたように思われてならない。

スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439)) Amazon書評・レビュー: スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))より
4150404399
No.1
(5pt)

宿敵との最後の対決

引退した英国情報部の元チーフ,ジョージ・スマイリーがソ連の情報機関の,通称「カーラ」と呼ばれる管理官と最後の対決をする。・・・しかしこの物語の基調をなすのは,華々しい戦いでもその結果をなす輝かしい勝利でもなく,人間の弱さと悲しさであり,愛情とは何なのか,憎しみとは何なのかという,答の無い問いかけなのではないでしょうか。この本は我が家では,長い期間を置いて何回でも読み返したくなるので,常に本棚の前面に出してあるいくつかの文庫の一冊です。たとえば冒頭近く,亡命ロシア人スパイで「将軍」と呼ばれていた男が惨殺死体で発見され,スマイリーが遺体と対面する場面。曰く言い難い印象で心に残る文章です。
スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439)) Amazon書評・レビュー: スマイリーと仲間たち (ハヤカワ文庫 NV (439))より
4150404399