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揺らぐ街



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揺らぐ街

揺らぐ街の評価: 3.60/5点 レビュー 5件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.60pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

書け、書き続けよ、クマガイ

ファンが多い“マタギ三部作”のイメージが強い著者」だが、登場人物の柱となる二人が女性編集者と女流作家か。
 まさか20歳くらい若い異性の隣接職種者か同業者に“ホ”の字という訳でもあるまいし、それならそれで別に好いのだけれど、やはり何か違和感があるなあ。

 震災後あちこちで「書けなくなった」と洩らしていた熊谷達也さんに、光文社の編集者が「被災地とまるっきり関係ない訳でもないから何か書きませんか」と励ましたか、「こういう時代だからこそ、女性ファンも増やして出版不況打開に一役買いましょうよ」と言ったかどうかは知らないけど。

 時には愚痴とも思える書けなくなった個人的葛藤や苦悩、編集者が作家と小説を売るため如何に涙ぐましい共同戦線を張っているかが、それとなく、あるいは熱く、全篇に鏤められている。
 そして、山下亜依子と桜城葵が二人三脚でお互いの自己実現を図りつつ、消えて行こうとする男性作家を懸命に後押ししようとするストーリーはそれなりに起伏があり、読ませてくれる。

 注目はP231~、桜城葵の喋りに託した箇所。
 「(略)実に下手くそな文章がこの世にどれだけ溢れ返っているか、あらためて気づいて愕然としたわ。(略)よくまあこれでプロの作家だと胸を張っていられるわねって(略)」。
 要するに、震災後、あの大禍に見合うような文章を自身が書けなくなったし、それについて書かれた他者の文章も大抵はダメダメだと判断せざるを得ないということではないのかと思う。

 震災前、高村薫さんと熊谷さんの対談において、前者が純文学とエンターテインメントの文体と文章は何かが違うというようなイノセントな疑問を呈していたのに対し、後者は無頓着な発言をしていた憶えがある。
 明治期に西欧文化の一環として入って来た詩や小説、戯曲といった作品を原語から日本語に置き換える翻訳作業を通し、作家≒文学者的であったが、時代が進むに連れ役割分担が漸次明確化かつ細分化したから、ソシュールの言語学やトドロフの文体論などの素養が当たり前。
 未曾有の災害を機に、熊谷さんは覚醒したのかもしれず、今後の作品の中にこそライフ・ワークになるものが出て来ることを切に願います。
揺らぐ街Amazon書評・レビュー:揺らぐ街より
4334911137

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