揺らぐ街
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「潮の音、空の青、海の詩」で、川島聡太の元恋人として回想に出てきた亜衣子さん、その個性的な印象を与えながら、実際には登場してなかった謎の人物。その亜衣子さんこと山下亜衣子と、仙河海出身の作家、武山洋嗣の物語。視点を都会から見た震災に変えてみた物語である。日本の中心から見ることで震災の意味を捉え直すことができる。 しかし、聡太は早坂希よりも幅広く物語に関わってきているなあ。もっとも川島家も深く関わる家系である。また菊田家の菊田守が文藝界編集長だとは。多くの登場人物が絡み合いながら広がって行く。 | ||||
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ファンが多い“マタギ三部作”のイメージが強い著者」だが、登場人物の柱となる二人が女性編集者と女流作家か。 まさか20歳くらい若い異性の隣接職種者か同業者に“ホ”の字という訳でもあるまいし、それならそれで別に好いのだけれど、やはり何か違和感があるなあ。 震災後あちこちで「書けなくなった」と洩らしていた熊谷達也さんに、光文社の編集者が「被災地とまるっきり関係ない訳でもないから何か書きませんか」と励ましたか、「こういう時代だからこそ、女性ファンも増やして出版不況打開に一役買いましょうよ」と言ったかどうかは知らないけど。 時には愚痴とも思える書けなくなった個人的葛藤や苦悩、編集者が作家と小説を売るため如何に涙ぐましい共同戦線を張っているかが、それとなく、あるいは熱く、全篇に鏤められている。 そして、山下亜依子と桜城葵が二人三脚でお互いの自己実現を図りつつ、消えて行こうとする男性作家を懸命に後押ししようとするストーリーはそれなりに起伏があり、読ませてくれる。 注目はP231~、桜城葵の喋りに託した箇所。 「(略)実に下手くそな文章がこの世にどれだけ溢れ返っているか、あらためて気づいて愕然としたわ。(略)よくまあこれでプロの作家だと胸を張っていられるわねって(略)」。 要するに、震災後、あの大禍に見合うような文章を自身が書けなくなったし、それについて書かれた他者の文章も大抵はダメダメだと判断せざるを得ないということではないのかと思う。 震災前、高村薫さんと熊谷さんの対談において、前者が純文学とエンターテインメントの文体と文章は何かが違うというようなイノセントな疑問を呈していたのに対し、後者は無頓着な発言をしていた憶えがある。 明治期に西欧文化の一環として入って来た詩や小説、戯曲といった作品を原語から日本語に置き換える翻訳作業を通し、作家≒文学者的であったが、時代が進むに連れ役割分担が漸次明確化かつ細分化したから、ソシュールの言語学やトドロフの文体論などの素養が当たり前。 未曾有の災害を機に、熊谷さんは覚醒したのかもしれず、今後の作品の中にこそライフ・ワークになるものが出て来ることを切に願います。 | ||||
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仙河海シリーズ第6作目。3.11に向けて描かれた群像劇は、ここで一旦止まって、このあと明治時代(「浜の甚兵衛」)へ時間軸を移すことになるので、どうなのだろうか、ちょっとまとめ的な意味も持たせたのだろうか。 私の予測はそうではない。これがまとめならば、少しさみしい。今回は、思い切り作者の周りの世界を描いたようだ。今回は、シリーズで唯一最初から最後まで3.11後の時間軸になっている。しかし、視点は東京から見た仙河海になっている。シリーズ最後の本で、また現代に戻る予感がある。主な登場人物は3人。東京出身東京在住の編集者、但し川島聡太の元カノ山下亜依子(38)、神奈川出身東京在住作家の桜城葵(37)、仙河海出身仙台在住の元作家の武山洋嗣(28)。年齢は3.11現在。主人公は亜依子だが、語り部的な位置。モデルがいるのかどうかはわからない。しかし、真の主人公といえるあと2人にはモデルがいる。 桜城葵と武山洋嗣は、どちらも作者の分身である。葵はN賞(直木賞であることは明らか)作家でコンスタントに物語を紡いできたが、3.11のあと、新作が作れなくなり、仙河海にボランティアに通っていて、新たな境地を見つける。武山は、押し切られる形で作家カムバックをしたが、出来上がったのは仙河海市をモデルにした仙賀崎シリーズだった。熊谷達也本人は、葵よりも気仙沼に関係しているし、武山のように生まれた土地ということもない。だから2人の葛藤は、ふたつとも作者の葛藤だったということになるだろう。 亜依子の編集者としての仕事描写は、身近な人物なだけに作者も困ったのではないか?作品の中では、亜依子をモデルにした葵の小説つくりは頓挫してしまったが、本当はこの作品、実在モデルがいるのではないか? 仙河海シリーズも6冊目である。だとすれば、ここで書かれている、震災文学は売れないという悩みはホンモノなのかもしれない。それは気負ってこのシリーズを始めた作者自身の戸惑いも見せているのかもしれない。でもね、こういう「ワインズバーグ・オハイオ」形式の群像劇は売れなくても残ってゆくと、私は思う。 新たに分かった人間関係をメモ。 ・武山の家は唐島にあった。代々牡蠣漁師。 ・川島の父親は遠洋マグロ船漁労長だった。 ・菊田守一(遠洋マグロ船漁労長)の息子は「文藝界」編集長、菊田守。守の祖父はカツオの一本釣り。 2018年5月読了 | ||||
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私は『邂逅の森』で熊谷達也にはまった。 土俗的と言えなくもないが、そんな単純なものではなかった作品。 その頃のイメージが強すぎるのかもしれないが、 ここのところの熊谷作品は、どうも「芯」が弱く感じる。 本書も、物語としてはそこそこ面白い。 冒頭で東日本大震災が、東京から描かれる。 内容は、女性編集者や作家がからんで、 書けなくなった作家や、何も感じない作家などが登場する。 いちおうテーマは「再生」ということになるのだろう。 ただ登場人物がややステレオタイプと言えなくもない。 ややノンフィクションめいた色彩もあるので、 ヘンにストーリーをこねくり回さずに直球勝負しても良かった気もする。 ダメな小説だとは言えないが、感動に震えるところまではいかない。 このテーマを扱う以上、そこまで求めるべきだと私は思う。 熊谷作品を好きなだけに、「え?」という感じの1冊。捲土重来を期待したい。 ★3・5といったところだが、次作に期待して★4つにおまけ。 | ||||
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この作品は、出版社の女性編集者と二人の作家という設定で物語が作られているが、 前回の「希望の海」と今回の作品共々出版社と編集者に踊らされている作者の姿がが見て取れる。 仙河海市出身の作家が、被災前日までの事を作品にしたという件は、「微睡みの海」を連想させるし、 マラソンランナーは希さんを連想させ、新たな発想がどこにも感じられない。 次回作もこのような展開をするのであれば、「邂逅の森」他の森三部作以来、読み続けてきた熊谷作品を 中断せざるを得ない。 | ||||
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