方舟さくら丸

【この小説が収録されている参考書籍】

【この小説が載っている参考書籍】

評判

方舟さくら丸の評価:

4.20/5点 レビュー 25件。 B ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.20pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全32件 21〜32 2/2ページ
No.12
(5pt)

安部公房がノーベル文学賞だよな〜。

やっぱ、すごいわ。この作家は。

村上春樹は大好きだけれど、ノーベル文学賞の器ではない。

安部公房が賞をもらっていたら・・・。

もっともっと彼の小説が読みたい。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.11
(5pt)

安部公房がノーベル文学賞だよな〜。

やっぱ、すごいわ。この作家は。

村上春樹は大好きだけれど、ノーベル文学賞の器ではない。

安部公房が賞をもらっていたら・・・。

もっともっと彼の小説が読みたい。
方舟さくら丸 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸 (新潮文庫)より
4101121222
No.10
(4pt)

嘘と饒舌の戦記

「ワイドスクリーン・バロック」というジャンルがある。いや、あった。
1970年代にSF作家ブライアン・オールディスが提唱した概念。
いわく、それひとつで一本の小説が書けそうなアイデアを幾つも幾つもこれでもかとぶち込みつつも、
あくまでもステレオタイプなエンターテイメントを装い、
読者を幻惑・混乱させる濃厚で軽薄でめちゃくちゃな小説。(この理解であってるかな?)

『方舟さくら丸』はまさにそれ。ストーリー自体は単純明快。
オタク気質なピザ青年がとっておきのヒキコモリ場所を確保したのもつかのま、
そこにビジネスの匂いを嗅ぎとった山師どもが押寄せ、青年はやむなく閉鎖を決断する。
ただそれだけの話。深みも渋みもありゃしない。
だから読者がここで楽しむべきなのは、
インチキ昆虫「ユープケッチャ」に関するもっともらしいウンチクだとか、
ありふれた地図を利用したヴァーチャルトリップの実際だとか、
終末論を用いた人身掌握のノウハウだとか、
老人vs女子中学生の新たなるエデンの園の妄想だとか。

ここにはペテン師しか登場しない。
ペテン師達は互いに相手をコントロールしようとあらゆる詐術を駆使する。
これはパワーゲームの物語。そしてノンストップの饒舌でつづられた物語。

かつての失敗作『人間そっくり』から、演劇経験を経て、
『箱男』や『密会』で培われた安部の饒舌のスタイルは一旦『さくら丸』に結実する。
未消化で軽薄でそれでいて意味ありげなアイデアの数々の矢継ぎ早の投入に、
読者が目を白黒させる隙も与えず、饒舌は鮮やかな道しるべを示しつつ終幕に誘う。

文学史的には評価イマイチなれど、
シュールでポップな楽しい「後期」安部公房を知るには最適の一冊だと思うんですけどネ。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.9
(5pt)

孤独で論理的な「ぼく」

「ぼく」は、核戦争の海を悠然と進んでいく巨大船の船長だ。
 
 核戦争が、巨大な廃坑を、終末の世界の中で、時の海を進む船に変える。「ぼく」は、なぜそのようなことを思い付いたのだろうか。安部の創作メモの中の「ぼく」にとっては、それは啓示だったことが分かるが、実際に私たちが出会う「ぼく」は、「なぜ」ということには、答えない。核戦争は先手必勝という結論にいずれ辿り着く、終末は避けられないというロジックだけが示される。
 
 創作メモの中の啓示に打たれた「ぼく」は、乗船者を決めることが、人の生死を決定する「神の力」の行使であることをはっきりと自覚し、それを楽しむ。「ぼく」は、傲慢である。しかし、ここで出会う「ぼく」はそうではない。初めて乗船者を決めた日に、やっとそのことに気付く。そして「自分をひねりつぶしたい」程、後悔するのだ。そして、「ぼく」は、ある決断をする。
 
 「ぼく」は、とても孤独な人間だ。本を読むのが好きで、論理的な問題を好む。「ノアの箱船」は、啓示では決してなく、論理だったのだろう。核戦争は避けられない。それではどうやって死なずに、生きるのか?論理で「ぼく」は、船長になる。私たちは、デパートの屋上で、人を探す「ぼく」に出会うが、なにも「ぼく」は孤独な世界から抜け出して、他者と関わる世界にたち向かおうとした訳ではない。船を動かすには船員が必要だ。だから、「ぼく」は人を探す。これもまた、論理なのだ。
 
 「ぼく」は、物語の舞台を提供する者に過ぎないのかもしれない。また、それを背景にして動き回る人間たちを映し出す「鏡」に過ぎないのかもしれない。「ぼく」を取り巻く人間たちの間でこそ、国家論等のテーマが渦巻く。
 だが、孤独で論理に従って動く「ぼく」には、妙に惹かれるところがある。現代に生きる私たちの運命を体現したようなところがある。上手く言葉にできないのだけれど。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.8
(5pt)

先見の眼持っている作家

思わずにやりとしてしまう船の仕掛け。

ユープケッチャの奇妙な新鮮さ。

初めは仲間だと思っていたが雲行きの怪しくなってゆく大男。

さくら男の一見頼りなさそうであるが、生活をともにしていると次第に頼もしくなってゆく過程。

ところがぼくは最後までさくら男の存在が邪魔であるという、読者に与えるもどかしさ。

ぼくは最後までさくら女がほしかった。

しかし結局は離れてゆく。

毎回、安部の作り出す登場人物たちの微妙な間柄が好きだ。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.7
(5pt)

核シェルターをめぐる心理戦

《豚》もしくは《もぐら》がぼくの綽名である。

すごくイメージが湧きやすい自己紹介だと思いませんか?

安部公房はこういうポップな表現が卓越していると思います。

ずば抜けた頭脳の持ち主で、その発想も奇抜。

なのに、まったく読者を拒絶していない。

そして、この『方舟さくら丸』は安部作品のなかでも、

特に没頭しやすい作品だと思います。

この作品で、主人公は、

自ら核シェルター設備を整えた、地下採石場跡の巨大な洞窟を住処とし、

それをノアの方舟にみたてて乗船適格者を探しているのですが、

徐々に他者によって聖域を侵されはじめます。

その過程が、会話文をふんだんに盛り込んで描写されており、

登場人物たちが、自身の腹の内を隠しながら他者の思惑を探る、

すごく人間臭いやりとりが面白くて、読み出すと止まりません。

ユープケッチャ。万能便器。オリンピック阻止同盟。

斬新な概念が最後まで尽きることなく溢れていて、

なぜだかニヤケながら読んでしまう。

奇想に心をくすぐられる、安部文学の入門書的小説です。
方舟さくら丸 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸 (新潮文庫)より
4101121222
No.6
(5pt)

核シェルターをめぐる心理戦

《豚》もしくは《もぐら》がぼくの綽名である。

すごくイメージが湧きやすい自己紹介だと思いませんか?

安部公房はこういうポップな表現が卓越していると思います。

ずば抜けた頭脳の持ち主で、その発想も奇抜。

なのに、まったく読者を拒絶していない。

そして、この『方舟さくら丸』は安部作品のなかでも、

特に没頭しやすい作品だと思います。

この作品で、主人公は、

自ら核シェルター設備を整えた、地下採石場跡の巨大な洞窟を住処とし、

それをノアの方舟にみたてて乗船適格者を探しているのですが、

徐々に他者によって聖域を侵されはじめます。

その過程が、会話文をふんだんに盛り込んで描写されており、

登場人物たちが、自身の腹の内を隠しながら他者の思惑を探る、

すごく人間臭いやりとりが面白くて、読み出すと止まりません。

ユープケッチャ。万能便器。オリンピック阻止同盟。

斬新な概念が最後まで尽きることなく溢れていて、

なぜだかニヤケながら読んでしまう。

奇想に心をくすぐられる、安部文学の入門書的小説です。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.5
(5pt)

1980年代の「飢餓同盟」

初期の作品と比べるとアイテム数が断然豊富で日本の経済的繁栄を如実に映していると思いました。

 核戦争を生き延びるための方舟という舞台設定も時代を映しているのですが、船長の切実さは作品全体をおおうところまでいっておらず、どこか子供の遊戯めいた雰囲気の中物語が進行します。

 侵入者のせいで夢、希望、計画がけっきょくはかなく裏切られ頓挫してしまうというのは安部公房のいつものパターン。数々の短編と「飢餓同盟」を連想しました。ただ方舟の目的自体が現実的であると同時に非現実感を伴なうものであるせいか、物語の結末は明確な絶望までには至っていません。希望を裏切る現実そのものが生気を失っていて半透明であるところが安部公房の新境地だった気がします。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.4
(4pt)

ユープケッチャかわいい。

近々起こるかもしれない核戦争の脅威、その中で生き残るための地下シェルター、「ぼく」はその地下シェルターで「生きのびるための切符」を配る船長なのだが、、、
現実の世界とは隔離されたシェルター内は、一種のユートピアのようにも思えるのだが、そこに人間が集まれば、結局地上の世界となんら変わりのないものとなってしまう。むしろ、より人間のエゴが醜くむき出しになり凝縮され、グロテスクなものとなってしまう。安部氏のブラックユーモアがよく表されているように思う。しかし、氏特有のシュールな世界が好きな人にはちょっと物足りないかもしれない。とにかく、一読を。「ユープケッチャ」をお一ついかがですか?
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.3
(5pt)

人間のむなしさ

安部氏の作品の特徴は、超現実的な設定を、あくまで現実的な迫力を持って描ききることにある。そういう意味では、本作品はシュールレアリズム的なツールは他の作品に比べ登場しないのだが、その分逆により我々の世界をより痛烈に描いているといえる。
 本作品の焦点は何といっても、地下の「方舟」とそこに集まる人間同士の関係性にあるのではないだろうか。「方舟」というタイトルは、かの有名な「ノアの方舟」を自然と想起させるが、ノアの乗船者は動物たちなのに対し、安部氏の描く方舟は人間同士が乗り合わせている。人間は集団でなければ生きられないが、集団であるがゆえにその内部の葛藤や混乱は避けられない。そこに人間という動物のアイロニーを感じさせる。
 ところで本書に登場する「ユープケッチャ」という虫は、自分の糞を餌にして生き続ける閉鎖体系の象徴である。人間のむなしさは、この虫のように生きられないことなのかもしれない。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.2
(5pt)

閉塞してゆく空間

この小説ではトイレがかなり重要な位置を占めている。特製の巨大なトイレ、人の死体までをも流してしまうトイレは、「水に流す」といった浅はかで馴れ合いの日本人の感覚を風刺しているものであるように思われる。そしてシェルターを作った男自身がそれに嵌まり込んで身動きを取れなくなってしまう。それが現代の日本の行く先を象徴しているように思われて仕方がない。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413
No.1
(4pt)

現代でも通じる核退避壕の物語

まずユニークな小物に物語冒頭からぐいぐいと惹きつけられる。同じところをぐるぐる回り続ける不思議な虫ユープケッチャ。”ぼく”がありあわせの物を工夫して作った侵入者撃退装置。これらの小物の設定はアイデアが豊富で多彩な安部ならでは。こうした細部の設定に拘るからこそ巨大な地下壕といった設定も生きてくる。核戦争を想定しての地下壕はやや時代遅れの感もあるが、地下壕での人間関係は現代的で飽きさせない。
方舟さくら丸 Amazon書評・レビュー: 方舟さくら丸より
4106006413