■スポンサードリンク


(短編集)

君にさよならは言わない2



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
君にさよならを言わない 2 (宝島社文庫)

君にさよならは言わない2の評価: 4.46/5点 レビュー 13件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.46pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(3pt)

続きの幽霊たち

2003年に電撃文庫から出た『Astral II』の改題・復刊。多少の加筆修正がなされているという。
 3話+αから構成されており、いずれも前作同様に幽霊と、その成仏を巡る物語となっている。
 ラストもあいかわらず感動的。
 ただ、電撃文庫のときに2冊で終わった理由もわからなくないような……。
君にさよならを言わない 2 (宝島社文庫)Amazon書評・レビュー:君にさよならを言わない 2 (宝島社文庫)より
4800259290
No.1:
(3pt)

幽霊の遺した未練を叶えて回る心優しい少年の短編集。ラブコメ要素を入れてきたのは良いが、話によっては展開に若干苦しい場面も感じられる

電撃文庫から10年以上前に刊行された作品「Astral」の復刻作品・第二弾。交通事故で生死の境を彷徨った結果、幽霊が見える様になった少年・須玉明の
物語。個人的に短編集が好きな事もあるが、それ以上に最近のゴテゴテしたラノベに比べると落ち着いた雰囲気が気に入って拝読

物語は夏休みのある朝、主人公の須玉明がかつて母親と過ごし、そして捨てられた日々を振り返る様な夢から醒める場面から始まる。久しぶりに思い出した
苦い過去に引きずられる様に昔母親と暮らしていたマンションへと赴く場面から始まる。自分が住んでいた頃とさほど変わらない様子を見せるマンションで
何でこんな場所に来てしまったんだと苛立ち、立ち去ろうとした明だったがその瞬間一人の二十代半ばとおぼしい女性の幽霊と目が合ってしまう。自分が
見える人間が現れた事に驚きながらも声をかけてきたその女性の幽霊は館川小梅と名乗ると、かつてここで共に暮らしていた娘の様子を見てきてほしいと
明に頼んでくる。それなら自分で行けばいいじゃないかと渋る明だったが、小梅は地縛霊でこのマンションから二十年も出られないでいるらしい。生前は
ファッションデザイナー志望で専門学校に通っていた小梅は同じ学校に通う男と深い仲になった結果妊娠したが、男にチャンスが巡ってきた事もあって
別れる事になり親からも勘当された状態で子供を産む事を決意したらしい。やがて生まれてきた娘・鶯と過ごした幸福な日々を明に語って聞かせる
関わり合いになってしまった以上、見捨てる事も出来ず、成人しているであろう鶯が小梅が別れた実の父親に引き取られた事を教えられ、様子を見に行く
事になるが、そこは想像以上の高級住宅街であった。インタフォンを通じて鶯に同窓会のお知らせを持ってきた知人のふりをして電話番号を聞き出そうとした
明だったが、運悪くその場に一人の男と連れだって鶯が戻って来てしまう。何の為に鶯の電話番号を聞き出そうとしたのかと気色ばむ男を宥めながら鶯は
その男と明後日結婚式を行う為に実家に挨拶に来たのだと明に教えてくれる。自分に幽霊が視える特殊な能力があると鶯に明かした明はマンションで
小梅が地縛霊となっており、一度だけ会いに行ってほしいと頼むが、母親の名前を出した瞬間鶯は怒りを露わにしあんな人は母親ではないという
ある日突然、男を連れてきてこの人と暮らすからお前はもう要らないと一方的に絶縁されたという鶯の言葉に、自分も母親から捨てられた明は小梅に対し
どういう事なのかと問い詰めるが、小梅の口から明かされたのは突如舞い込んだ不運から愛する娘を想うが故に取ったやむに已まれぬ事情であった…

今回も短編三作から構成。2003年に刊行された旧作は読んでいなかったのだが、文中にスマホの存在が描かれるなど、多少改稿してある様子が伺える
話の方は結構バリエーションに富んでおり、登場する幽霊も地縛霊に生霊となかなか凝っている

個人的には巻頭の幼い頃に愛娘と別れざるを得ず、そのまま20年間マンションに縛り付けられる地縛霊となった母親・小梅の物語が最高の出来。内容は
割りとベタな泣かせ話なのだけど、溺愛しながらも別れざるを得なかった娘の門出である結婚式を一目見たいと願う母親と、新しい男と暮らす為に勝手に
自分は捨てられたのだと思い込み母親を憎んでいた娘の関係を自分自身に重ね、地縛霊である小梅がマンションを離れてしまえば存在を消されてしまう
事を知りながら何とか結婚式場の教会へと向かわせ、想いを叶えてやろうとする明の奮闘が描かれている。覚悟の上とはいえ、存在が消えていく中で
花嫁姿の娘と向き合い鶯が立派な大人になった事を知り、これから夫となる人と新しい人生を歩む事を告げられた事で安心して天に召されていく小梅の
姿を描いた場面では不覚にも涙が零れそうになった

二本目は明のバイト先であるバーガーショップの仲間で、明の義妹である柚の友人でもある鈴置杏奈を軸とした物語。彼女を目当てにした客も来る程の
美少女である杏奈が兄と不可解な別れ方をした元恋人・寧子を復縁させようとするものの、その行動が小学生の様な姿の幽霊に阻まれ続ける展開
本作では幽霊は生者に対して直接的な行動を取る存在として描かれなかったけど、今回登場する小学生女子の幽霊は生者の首を絞めてきたりと
中々におっかない存在。その正体は六条御息所みたいな生霊なのだけど、誰の生霊なのかは割りとあっさり明かされる。年上の素敵な女性でかつては
デブとバカにされていた杏奈に綺麗になる方法を教えてくれた寧子への想いと、虐められていた頃に唯一の味方だと縋っていた兄・雪秀への想いの
矛盾から生霊が産まれる展開は良いけど、解決方法がちょっと単純すぎるというかあっさりし過ぎていて中盤までの盛り上がりに比べるといささか
拍子抜けしたというか、尻すぼみな展開になったのがちょっと残念

三本目は明自身と義妹の柚の物語。ちなみに柚の妹キャラで、なおかつメガネっ娘ってのはちょっと珍しい。直球で好意を示すのではなく、義兄への仄かな
想いを押し殺し続ける義妹ってのはなかなか良かった。柚の明への想い自体は二本目の杏奈の話で結構描かれるので(杏奈が明にチューすると笑顔の
まま、夕食を塩パンだけにするってのは容赦なくて笑わせてくれた)。話の方は明と柚・杏奈、そして柚への好意が隠せていない明のクラスメート井倉が
江の島近くの海岸に出掛けた際に、お盆なので現世に帰ってきたという印象の薄い女性の幽霊・三森こずえと明が出会う物語。話の方は幽霊モノとしては
かなり微妙。周りへの印象が薄いっていうこずえの設定自体は良いが、読者に与える印象まで薄くしてどうすんの…?幽霊基本的に話の筋に関係ないし
基本的にブラコン娘である柚が完全に話の軸で、しかもピンチに陥った柚を助けるのがこずえじゃなくて別の霊だし。その霊にしたって伏線無しにポンと
出してしまって感動よりも、「え?このタイミングでそのキャラ出すの?」という違和感しかなかった。全体的に幽霊を軸にするのか、ラブコメを軸にするのか
中途半端で何がしたかったのかよく分からない

一本目は非常に良かったのだけど、二本目、三本目と次第に話の出来がイマイチになっていった印象。短編集なのだからその話のゲストキャラを軸に
話を展開させるべきなのだろうけど、明のキャラを掘り下げたり、明に想いを寄せる柚の姿を描こうとするあまりゲストキャラの存在感が吹っ飛ぶのでは
どうにも短編集として描く意味が薄れてしまうのではないかと思われた。サービス過剰過ぎて読んでいて疲れる作品が多い最近のラノベに比べれば
ずっと落ち着いた大人向けの雰囲気を損なっていないのは良いのだが、話の完成度が完璧だと言えるのが一本目だけ、というちょっと物足りなさが
残ってしまった第二巻であった
君にさよならを言わない 2 (宝島社文庫)Amazon書評・レビュー:君にさよならを言わない 2 (宝島社文庫)より
4800259290

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!