日の名残り
評判
日の名残りの評価:
4.45/5点 レビュー 402件。 A ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1,047件 441〜460 23/53ページ
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日の名残りの評価:
4.45/5点 レビュー 402件。 A ランク
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そしていずれの作品を読んだ後も、その才能に疑い無き事を確信させられた。
※以下ネタバレあり
物語の序盤においては、英国の伝統的な執事の人柄、そして古き良き英国情緒が淡々と語られ、悪くはないが地味な作品だと感じながら読み進めた。
しかし、半分を過ぎるころには、英国に興味が有る、或いは理解しようとする人間は勿論、そうでない人達も一読する価値の有る作品であると確信するに至った。
丸谷才一氏の解説について、違和感を抱いた部分について触れたい。
語り手であるスティーブンスが自らが信じる執事としての美徳をもって忠誠を捧げたダーリントン卿は、「戦後、対独協力者として葬り去られる程度の人物に過ぎなかった」し、その程度の人物に盲従していた「スティーブンスが信じてゐた執事としての美徳とは、彼を恋ひ慕つてゐた女中頭の恋ごころもわからぬ程度の、人間としての鈍感さにすぎない」ものであったと、作者カズオ・イシグロは突き放して見ているのか?
私はそうは思わない。
確かにダーリントン卿は、ベルサイユ条約の苛烈な処置により立ち直れないほどの窮状にあったドイツに対し同情し、救済の手を述べようとする紳士としての善意が、アメリカ人客ルーイスにより物語中に「ナイーブなアマチュア」として揶揄された通り、結果的にナチスに利用されることになった。
卿は他にも、時流に影響を受けユダヤ人執事を解雇し1年後にその間違いを悔いたり、物語中に間違いを起こしている。
故に、卿は愚かな三流の人物として唾棄されるべき存在なのか?
人は自ら考え、判断し、時に間違いを犯す。そして、再び自ら考え、判断し、その間違いを認め、悔いる。
間違いを犯さない人間が正しく美しいのであれば、ヒトラーに対して断固たる態度を取ったチャーチルもそれ以前の間違いにより、名誉挽回の機会は与えられなかったのではないだろうか?
(更に言うと、卿の過ちが致命的で許されないとするなら、大戦中にナチスドイツと同盟を結んだ日本も「その程度の国家・民族に過ぎなかった。以上」という事になる)
スティーブンスは主人に仕える執事としての本分を全うする事に人生を捧げた。
これを愚にもつかぬ主人に盲従し、思考放棄した愚か者と見るべきなのであろうか?
彼は、やはり執事であった実父の死に際より、自分に思いを寄せる女中頭より、何より、執事としての任務、品格を優先させた。
それ自体、他ならぬ彼自身の判断によるものである。
彼もまた、「品格ある」執事として生きる道を自らの人生として選んだ。
それでも、人生の夕暮れに差し掛かった時に、自らの人生を振り返り、あり得た別の人生を想い、涙を流すのである。
日の名残りが残る夕暮れの桟橋のラストシーンが心に迫り、スティーブンスの様な年齢に達した人は自らの人生を重ね、まだ若きものはその年齢に達した自分を思い描く。
間違いや後悔が無い人生はないだろうが、それでも老英国執事が最後に現在のアメリカ人の御主人の為に、ジョークを勉強しようと決意するところ、微笑ましく、また執事としてのプロフェッショナリズムに生きた彼の人生に他に選びようが無かった事を納得させる、秀逸な表現であると思う。
とても切ない物語であり、驚愕や号泣するものではないが、題名の通り、心に切ない名残が残る作品である。