リトル・シスター

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リトル・シスターの評価:

3.80/5点 レビュー 30件。 B ランク

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平均点3.80pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全40件 21〜40 2/2ページ
No.20
(4pt)

善良ではなく‘すれっからし’だからこそ心から愛おしく思えるかわいい女の物語。

当代一の人気を誇る日本人作家の村上春樹氏が私淑する往年のハードボイルド・ミステリー作家チャンドラーの名作群を新たに訳出し現代に甦らせる事に挑んだ好企画の第3弾です。本書のあとがきで村上春樹氏は今回の訳題に至った経緯について依頼人の女オーファメイが「妹」を意味する事から相応しいと考えられたと理由を述べられていますが、それは勿論100%正しいだろうと思いながらも旧題「かわいい女」にも意訳とは言え内容的に見てシンプルながらも捨て難い良い味があるなと今回久々に読み返してみて改めて感じました。今回の訳題「リトル・シスター」も決して悪くはないのですが、前回の「さよなら、愛しい人」の今風のネーミングの新鮮さに対して逆にスマートさが平凡に感じられややインパクトに欠けたかなと思います。
事務所に訪れた田舎出の若い娘オーファメイから失踪した兄オリンの行方を探して欲しいとの依頼を受けた私立探偵フィリップ・マーロウは20ドルという端金しか報酬を見込めない仕事だったが興味を抱いて引き受ける。やがて彼が住んでいた下宿に調査に向かったマーロウはいきなりアイスピックで刺し殺された死体と遭遇するのだった。
帯に書かれた村上氏の言葉「チャンドラー節」をもじって言うと今回も「奇矯なマーロウ節」は健在で、お笑いの世界ではお馴染みの‘ひとりボケと突っ込み’はその最たる物でしょう。ミステリーの部分ですが、解説によると本書は著者が映画の仕事に追われていた時期に書かれた物だそうで著者自身も嫌いな作品だと述べられているという話が成程と肯ける随所に整合性の取れない荒さが目立つ不完全な出来だと思います。意外な犯人の趣向もちゃんと用意されているのですがあまりにも犯人が超人的で現実味に乏しく、また一部の殺人の謎が解決されないまま完結しています。しかし多くの欠点にも拘らず本書が魅力的なのは本筋の犯罪の謎とは別の、ヒロイン・オーファメイの実体が善良ではなく‘すれっからし’だからこそ心から愛おしく思える切ない哀しみと全てを知りながらも怒りも責めもせずに彼女を許すマーロウの思いやり深い真実の優しさにあると思います。
村上春樹氏というビッグなネームバリューの力もあって今迄にない多方面から注目されるこの画期的な試みは海外翻訳小説の人気を高める好機になっていると思います。段々と華々しい話題作は減って来ているとは思いますが、折角ですので村上氏には埋もれたチャンドラーの残りの四作品全ての紹介をぜひ実現して頂きたいと願っています。
リトル・シスター Amazon書評・レビュー: リトル・シスターより
4152091789
No.19
(4pt)

チャンドラー節を村上春樹訳で・・・

『かわいい女』として日本では知られていた”The Little Sister”の村上春樹訳。
原文を大事にする村上氏らしく『リトル・シスター』と題されています
(本来はオーファメイ・クエストを指す「妹」という意味ですが)。

こういったハードボイルドが特に好き、というわけではないのですが、
チャンドラーの一連の作品には、アメリカ西海岸特有の
乾いた無常感が実に巧みに描出されていると思います。

ハリウッドの華やかさの陰にひそむ残酷さ、
高価な蘭の花のように優艶で、しかも抜け目ない女性たちなどが絡む
錯綜した事件の謎にマーロウが単身で挑みます。
思わせぶりで少々気取ったせりふにやや疲れを覚えながらも、
チャンドラーの魔法にかかったように最後まで読んでしまいました。

チャンドラーが意図した即物的な非情さを
村上氏の訳はうまく捉えていると感じました。
アメリカ文学を深く愛する村上氏にとって
チャンドラーはフィッツジェラルドとはまた違った意味で
大切な作家なのでしょう。
「あとがき」も村上氏のファンにとっては嬉しい充実した内容です。
チャンドラーの翻訳はこれからも続けられるそうで、今後の刊行にも期待します。
リトル・シスター Amazon書評・レビュー: リトル・シスターより
4152091789
No.18
(5pt)

オーファメイ・クエストの描写はやはり素晴らしい

「訳者あとがき」で書いているんですが、ぼくも、この作品の素晴らしさは、マーロウに捜査を依頼しにやってくる、オーファメイ・クエストの描写だと思います。そして『ロング・グッドバイ』『さよなら、愛しい人』の時ほど清水俊二訳との違和感は感じません。

 チャンドラー本人にとっても、満足できるような作品ではなかったようですが、『ロング・グッドバイ』のような、不意の完成といいますか、プログラムピクチャーの中で出来てしまった世紀の大傑作のような佇まいとは違う、まだ、才気はあふれているけどなかなか認められずにヤサぐれている感じも残っている良さがあります。楽しみの読書なのであまり細かくは読んでないのですが、清水訳の大きな誤訳もいきなり見つけてしまいましたが、恐ろしいのは、名調子の清水訳だと、なんとなく意味が通ってしまうことだとも、と感じました。
 
 個人的には、作品の中で重要な役割を果たすライカが何型なのかな、というのが改めて気にかかりました。室内の人物をフラッシュなしで撮れるライカといえば、スローシャッターの付いたIIIc(Leica IIIc 、1940年発売)でしょうかね。で、レンズはSummar 2.0/5cm(1937)あたりかな、とか想像を膨らませます。
 
 ちなみに1969年に製作された『かわいい女(Marlowe)』では、ブルース・リーが原作にはない殺し屋役で出演していたことでも有名で、カンフーアクションで頭上の電灯を割るシーンなんかもあります。原作も映画も、いろんな要素がごちゃまぜになった、不思議な味わいの作品です。
リトル・シスター Amazon書評・レビュー: リトル・シスターより
4152091789
No.17
(4pt)

オールド・フォレスター・グリーンラベル

マーロウが大好きなバーボン。
やはりアメリカの私立探偵にはバーボンがよく似合う。
スコッチは銘柄すら出てこないけれども、オールド・フォレスターは極めておいしそうに感じられる。
真相はシンプルな結末だけれども、饒舌すぎる展開は読み手を引きつけるものだ。
リトル・シスター Amazon書評・レビュー: リトル・シスターより
4152091789
No.16
(4pt)

作品が醸し出すムード・雰囲気で読ませる、“マーロウ”というブランド小説

『ロング・グッドバイ』『さよなら、愛しい人』に続く、村上春樹の新訳レイモンド・チャンドラー第3弾。7冊あるマーロウものの長編の5作目にあたる、’49年の作品。本書は『かわいい女』として’59年に清水俊二によって訳出されているが、私は読んでいないので、比較ではなく純粋に『リトル・シスター』の読後感想を綴る。

ロサンゼルスの私立探偵フィリップ・マーロウのもとに、中西部カンザス州の地方都市マンハッタンから来たオーファメイという若い娘が訪れる。彼女は20ドルで行方不明の兄・オリンを捜して欲しいと言う。娘の容姿・態度・話に興味を持ったのか、それとも単なる気まぐれか、マーロウが規定報酬の半額で引き受けるところからこの物語は幕を開ける。早速オリンの最後の立ち寄り先である簡易アパートに足を運んだマーロウは死体に出くわす。さらに調査を続けるとまたもや男の死体が。やがてマーロウは、いわくありげな女優や映画エージェント、ギャング、不審な医師らが棲息する虚飾の街ハリウッドの“裏通り”に迷い込むことに・・・。

本書は、オリンの目論見や、オーファメイの真の意図は明らかになるものの、展開が早く、人と事件が複雑に入り組んだプロットで、「黒幕の存在」とか「誰が誰を殺したか」というような謎解きのカタルシスは得られない。

どうやら、その観察眼、含みのある独白、女優や警察や依頼人などとの間のジョークと皮肉を交えたキレのいい会話といったような、あまりにも有名なハードボイルド私立探偵フィリップ・マーロウの“存在感”と、それによって作品全体が醸し出す独特のムード・雰囲気で読ませる、ブランド小説であるようだ。

村上春樹は<訳者あとがき>の結びで「このあともマーロウものの翻訳を更に続けていきたいと思う。」と言っているが、私としては個人的にシリーズ第1作で、現在絶版・入手困難な、マーロウ初登場の『大いなる眠り』(’39年)を訳してもらいたいと思う。
リトル・シスター Amazon書評・レビュー: リトル・シスターより
4152091789
No.15
(5pt)

マーロウ、おまえはいったい何を言っているのだ?

事件の真相は正直なところ「なんのこっちゃ!」と思った。通常の探偵小説とは違って種明かしが繰り返されればされるほど煙が濃くなる。カタルシスはまるでない。それから哀しいのがマーロウの繰り出すジョークの何割かは何が面白いのかがわからないのだ。誰かに聞くのも野暮な話ですしね。でもマーロウって結構お茶目かもと読んでいて嬉しくなったりもした。メロドラマ一辺倒だった田村正和が「うちの子にかぎって」で見せた意外にはまる滑稽な演技を初めて目の当たりにしたようなおかしみだ。チャンドラーの書く文章は凄いなあと賛嘆しながら楽しめる時間と冒頭にも書いた「なんのこっちゃ!」が入り乱れる変な読書だった。村上春樹の茶目っ気も感じました。最後に訳者あとがきを読みながら胸をなでおろした。やっぱりそうですよね。私だけじゃなかったのですね、と。
リトル・シスター Amazon書評・レビュー: リトル・シスターより
4152091789
No.14
(4pt)

新訳かわいい女

旧訳は抄訳とのことで、原文を調べてみると確かに、ちょこちょこ省略して翻訳してある。今回の新訳はおそらく完全訳であろう。
本作は、チャンドラーの長編群の中では凡作の部類に入るのかもしれないが、不思議な魅力がある。冒頭文など魅力的で、映画を観ているような錯覚を起こす。
チャンドラーはハリウッドで色々な映画の脚本執筆を少なからず手掛けたようだ。話の舞台がハリウッドというだけでなく、文体にもシナリオ執筆の経験が影響しているのだろうか。
リトル・シスター Amazon書評・レビュー: リトル・シスターより
4152091789
No.13
(5pt)

リトルシスター、面白かった。ちょっと複雑。

本のタイトルは、リトルシスターが合ってると思います。この本には、かわいい女は出てきません。美女で悪女は出てきますが。買ってだいぶ放置していたのですがNHKで、ロンググッドバイが始まったので読み始めました。
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704635
No.12
(5pt)

翻訳がすばらしい

さすが村上春樹、翻訳がすばらしい。翻訳ではなく、春樹自身の小説のように読める。
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704635
No.11
(4pt)

村上春樹訳の3作品の中では最もテンポが良い作品

ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)、さよなら、愛しい人に続く、フィリップ・マーロウものの村上春樹訳の第3弾。前の2作品は、読んだことがあったが、これは初めて読んだ。意外にそういう読者も多いのではないか。
 前の2作品に比べて、テンポが良い。逆に言えば、少し雑な構成なのかもしれない。村上春樹の訳者あとがきが、例によって本作品の位置づけ、読みどころを語ってくれる。
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704635
No.10
(4pt)

村上訳っていうことで◎

既訳は「かわいい女」としていたが、これは確かにおかしい。オリジナルタイトルが"The Little Sister"っていうんだから、これは「妹」以外にありえない。兄弟姉妹の順序は、メイヴィス(リーラ)、オリン、オーファメイの順になる。

 読んでいくと「???!!!」って思う箇所が何度かあるが、そこはそれ、村上も書いているが、これがチャンドラー節なのだそうだ。特にこの作品については、チャンドラー自身があまり乗り気でなかったようで、手抜きになっているンじゃあないかって思う個所がある・・・・・。

 映画女優になった姉の金を頼って、くそ田舎からまずは兄貴が、その後、行方不明になったその兄貴を探しに我らがリトル・シスターがLAにやってきたところからお話は始まる。それにしても何ともはや、この妹というのが・・・・
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704635
No.9
(5pt)

20年ぶりに読みましたが、良かったです

村上春樹による新訳版のレイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウものの第3弾。もともとは「かわいい女」というタイトルだったが、今回は「リトル・シスター」。こっちのほうがいいね。

とにかく、今から25年以上前になるけど、レイモンド・チャンドラーにははまって、マーロウのシリーズも全て読んでいたが、実は、このリトル・シスターはあまり好みじゃなかった。「長いお別れ」や「さらば愛しき人よ」(村上春樹による新訳では「ロング・グッドバイ」、「さよなら、愛しい人」だけど)は、大好きで何度も読みなおしているんだけど、この「リトル・シスター」は、それこそ20年以上ぶりに読んだ。

自分があまり好みじゃなかった理由は、当時はあまり良くわからなかったけれど、今回、村上春樹のあとがきを読んで、なんとなく納得。確かに彼が書くように、この本には当時のチャンドラーの疲労感というか「悪い気分」が表れていて、まだ子どもだった私には共感できなかったからだ。

今回、疲れ果てた中年になってから、改めて読んでみると、マーロウの態度にも共感できる。読めて良かったと思う。

この村上春樹による翻訳のシリーズ、楽しみにしているのだが、次は何だろう。「大いなる眠り」か「プレイバック」かな?
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704635
No.8
(5pt)

当時のハリウッドの情景が、いきいきと浮かんできます

チャンドラーが好きで一連の長編は何度も読み返しています。英語の原文版も買って読んでいます。
ただ、"The Little Sister"(かわいい女)については、せいぜい二回くらいしか読んでいません。
どんなストーリーだったか思い出そうとしても、アイスピックを使った殺人事件やセクシーなハリウッド女優が
出てきたことくらいしか覚えていません。

そんなわけで、今回村上訳を新鮮な気持ちで読むことが出来ました。読了しての感想ですが、ストーリーはやっぱり複雑というか、
事件の概要がいまひとつ明確になりません。マーロウの推測で大体はわかるのですが、やはりすっきりしない。これは訳者の違いというより、
原典でそうなのですね。あとがきにもありましたが、事件の中心となる兄弟の順番さえはっきりしません。
清水訳では、オリン>メイヴィス>オーファメイの順ですが、村上訳では、メイヴィス>オリン>オーファメイの順と仮定しています。
何を判断基準にするかで、どちらにも解釈可能になるくらい、チャンドラーが明確に述べていないためです。
あるいは、チャンドラーがもともと書いていたものを、大胆に削ってそのままにしたのかもしれません。

ただ、村上訳のおかげで、メイヴィスがとても魅力的な女性に思えました。逆にドロレスの魅力は清水訳よりも減じました。
こういうのは訳の違いなのかなあ。村上氏は、現在入手可能になった豊富な情報も背景に現代的な訳をしていますし、
一方清水氏は、1930年代に日本向け字幕担当としてまさにハリウッドのパラマウントで働いていた実体験が訳に生きている気がします。
(チャンドラーがハリウッドで働いていた時期とは数年差があるはずですが、当時のハリウッドを身をもって体験しているということは
訳す場合に役だっているはずです)

いずれにせよ、今回再認識したこの作品の魅力は、当時の勃興して隆盛になりかけている当時のハリウッドが、実にいきいきと
描かれているところです。
女優も、俳優も、プロデューサーも、オーナーも、トラブル解決エージェントも、実にいきいきと描かれています。たんなる暴露譚には
ならないところは、チャンドラーの筆力であり、そこで、もがき苦しんだ自身の実体験も大きく影響していることでしょう。

個人的に面白かったのは、ストーリーの中で、スーウェル・エンディコットという地方検事が出てマーロウと顔を合わせます。
ん、どこかで聞いた名前だぞ? と「ロング・グッドバイ(長いお別れ)」を開いてみると、やはりいました。
ハーラン・ポッターの依頼で、マーロウの弁護を引き受けた弁護士と同姓同名です。おそらく検事から弁護士になったということでしょう。
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704635
No.7
(4pt)

善良ではなく‘すれっからし’だからこそ心から愛おしく思えるかわいい女の物語。

当代一の人気を誇る日本人作家の村上春樹氏が私淑する往年のハードボイルド・ミステリー作家チャンドラーの名作群を新たに訳出し現代に甦らせる事に挑んだ好企画の第3弾です。本書のあとがきで村上春樹氏は今回の訳題に至った経緯について依頼人の女オーファメイが「妹」を意味する事から相応しいと考えられたと理由を述べられていますが、それは勿論100%正しいだろうと思いながらも旧題「かわいい女」にも意訳とは言え内容的に見てシンプルながらも捨て難い良い味があるなと今回久々に読み返してみて改めて感じました。今回の訳題「リトル・シスター」も決して悪くはないのですが、前回の「さよなら、愛しい人」の今風のネーミングの新鮮さに対して逆にスマートさが平凡に感じられややインパクトに欠けたかなと思います。
事務所に訪れた田舎出の若い娘オーファメイから失踪した兄オリンの行方を探して欲しいとの依頼を受けた私立探偵フィリップ・マーロウは20ドルという端金しか報酬を見込めない仕事だったが興味を抱いて引き受ける。やがて彼が住んでいた下宿に調査に向かったマーロウはいきなりアイスピックで刺し殺された死体と遭遇するのだった。
帯に書かれた村上氏の言葉「チャンドラー節」をもじって言うと今回も「奇矯なマーロウ節」は健在で、お笑いの世界ではお馴染みの‘ひとりボケと突っ込み’はその最たる物でしょう。ミステリーの部分ですが、解説によると本書は著者が映画の仕事に追われていた時期に書かれた物だそうで著者自身も嫌いな作品だと述べられているという話が成程と肯ける随所に整合性の取れない荒さが目立つ不完全な出来だと思います。意外な犯人の趣向もちゃんと用意されているのですがあまりにも犯人が超人的で現実味に乏しく、また一部の殺人の謎が解決されないまま完結しています。しかし多くの欠点にも拘らず本書が魅力的なのは本筋の犯罪の謎とは別の、ヒロイン・オーファメイの実体が善良ではなく‘すれっからし’だからこそ心から愛おしく思える切ない哀しみと全てを知りながらも怒りも責めもせずに彼女を許すマーロウの思いやり深い真実の優しさにあると思います。
村上春樹氏というビッグなネームバリューの力もあって今迄にない多方面から注目されるこの画期的な試みは海外翻訳小説の人気を高める好機になっていると思います。段々と華々しい話題作は減って来ているとは思いますが、折角ですので村上氏には埋もれたチャンドラーの残りの四作品全ての紹介をぜひ実現して頂きたいと願っています。
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704635
No.6
(4pt)

チャンドラー節を村上春樹訳で・・・

『かわいい女』として日本では知られていた”The Little Sister”の村上春樹訳。
原文を大事にする村上氏らしく『リトル・シスター』と題されています
(本来はオーファメイ・クエストを指す「妹」という意味ですが)。

こういったハードボイルドが特に好き、というわけではないのですが、
チャンドラーの一連の作品には、アメリカ西海岸特有の
乾いた無常感が実に巧みに描出されていると思います。

ハリウッドの華やかさの陰にひそむ残酷さ、
高価な蘭の花のように優艶で、しかも抜け目ない女性たちなどが絡む
錯綜した事件の謎にマーロウが単身で挑みます。
思わせぶりで少々気取ったせりふにやや疲れを覚えながらも、
チャンドラーの魔法にかかったように最後まで読んでしまいました。

チャンドラーが意図した即物的な非情さを
村上氏の訳はうまく捉えていると感じました。
アメリカ文学を深く愛する村上氏にとって
チャンドラーはフィッツジェラルドとはまた違った意味で
大切な作家なのでしょう。
「あとがき」も村上氏のファンにとっては嬉しい充実した内容です。
チャンドラーの翻訳はこれからも続けられるそうで、今後の刊行にも期待します。
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704635
No.5
(5pt)

オーファメイ・クエストの描写はやはり素晴らしい

「訳者あとがき」で書いているんですが、ぼくも、この作品の素晴らしさは、マーロウに捜査を依頼しにやってくる、オーファメイ・クエストの描写だと思います。そして『ロング・グッドバイ』『さよなら、愛しい人』の時ほど清水俊二訳との違和感は感じません。

 チャンドラー本人にとっても、満足できるような作品ではなかったようですが、『ロング・グッドバイ』のような、不意の完成といいますか、プログラムピクチャーの中で出来てしまった世紀の大傑作のような佇まいとは違う、まだ、才気はあふれているけどなかなか認められずにヤサぐれている感じも残っている良さがあります。楽しみの読書なのであまり細かくは読んでないのですが、清水訳の大きな誤訳もいきなり見つけてしまいましたが、恐ろしいのは、名調子の清水訳だと、なんとなく意味が通ってしまうことだとも、と感じました。
 
 個人的には、作品の中で重要な役割を果たすライカが何型なのかな、というのが改めて気にかかりました。室内の人物をフラッシュなしで撮れるライカといえば、スローシャッターの付いたIIIc(Leica IIIc 、1940年発売)でしょうかね。で、レンズはSummar 2.0/5cm(1937)あたりかな、とか想像を膨らませます。
 
 ちなみに1969年に製作された『かわいい女(Marlowe)』では、ブルース・リーが原作にはない殺し屋役で出演していたことでも有名で、カンフーアクションで頭上の電灯を割るシーンなんかもあります。原作も映画も、いろんな要素がごちゃまぜになった、不思議な味わいの作品です。
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704635
No.4
(4pt)

オールド・フォレスター・グリーンラベル

マーロウが大好きなバーボン。
やはりアメリカの私立探偵にはバーボンがよく似合う。
スコッチは銘柄すら出てこないけれども、オールド・フォレスターは極めておいしそうに感じられる。
真相はシンプルな結末だけれども、饒舌すぎる展開は読み手を引きつけるものだ。
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704635
No.3
(4pt)

作品が醸し出すムード・雰囲気で読ませる、“マーロウ”というブランド小説

『ロング・グッドバイ』『さよなら、愛しい人』に続く、村上春樹の新訳レイモンド・チャンドラー第3弾。7冊あるマーロウものの長編の5作目にあたる、’49年の作品。本書は『かわいい女』として’59年に清水俊二によって訳出されているが、私は読んでいないので、比較ではなく純粋に『リトル・シスター』の読後感想を綴る。

ロサンゼルスの私立探偵フィリップ・マーロウのもとに、中西部カンザス州の地方都市マンハッタンから来たオーファメイという若い娘が訪れる。彼女は20ドルで行方不明の兄・オリンを捜して欲しいと言う。娘の容姿・態度・話に興味を持ったのか、それとも単なる気まぐれか、マーロウが規定報酬の半額で引き受けるところからこの物語は幕を開ける。早速オリンの最後の立ち寄り先である簡易アパートに足を運んだマーロウは死体に出くわす。さらに調査を続けるとまたもや男の死体が。やがてマーロウは、いわくありげな女優や映画エージェント、ギャング、不審な医師らが棲息する虚飾の街ハリウッドの“裏通り”に迷い込むことに・・・。

本書は、オリンの目論見や、オーファメイの真の意図は明らかになるものの、展開が早く、人と事件が複雑に入り組んだプロットで、「黒幕の存在」とか「誰が誰を殺したか」というような謎解きのカタルシスは得られない。

どうやら、その観察眼、含みのある独白、女優や警察や依頼人などとの間のジョークと皮肉を交えたキレのいい会話といったような、あまりにも有名なハードボイルド私立探偵フィリップ・マーロウの“存在感”と、それによって作品全体が醸し出す独特のムード・雰囲気で読ませる、ブランド小説であるようだ。

村上春樹は<訳者あとがき>の結びで「このあともマーロウものの翻訳を更に続けていきたいと思う。」と言っているが、私としては個人的にシリーズ第1作で、現在絶版・入手困難な、マーロウ初登場の『大いなる眠り』(’39年)を訳してもらいたいと思う。
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704635
No.2
(5pt)

マーロウ、おまえはいったい何を言っているのだ?

事件の真相は正直なところ「なんのこっちゃ!」と思った。通常の探偵小説とは違って種明かしが繰り返されればされるほど煙が濃くなる。カタルシスはまるでない。それから哀しいのがマーロウの繰り出すジョークの何割かは何が面白いのかがわからないのだ。誰かに聞くのも野暮な話ですしね。でもマーロウって結構お茶目かもと読んでいて嬉しくなったりもした。メロドラマ一辺倒だった田村正和が「うちの子にかぎって」で見せた意外にはまる滑稽な演技を初めて目の当たりにしたようなおかしみだ。チャンドラーの書く文章は凄いなあと賛嘆しながら楽しめる時間と冒頭にも書いた「なんのこっちゃ!」が入り乱れる変な読書だった。村上春樹の茶目っ気も感じました。最後に訳者あとがきを読みながら胸をなでおろした。やっぱりそうですよね。私だけじゃなかったのですね、と。
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704635
No.1
(4pt)

新訳かわいい女

旧訳は抄訳とのことで、原文を調べてみると確かに、ちょこちょこ省略して翻訳してある。今回の新訳はおそらく完全訳であろう。
本作は、チャンドラーの長編群の中では凡作の部類に入るのかもしれないが、不思議な魅力がある。冒頭文など魅力的で、映画を観ているような錯覚を起こす。
チャンドラーはハリウッドで色々な映画の脚本執筆を少なからず手掛けたようだ。話の舞台がハリウッドというだけでなく、文体にもシナリオ執筆の経験が影響しているのだろうか。
リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫) Amazon書評・レビュー: リトル・シスター (ハヤカワ・ミステリ文庫)より
4150704635