死神の浮力

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評判

死神の浮力の評価:

3.97/5点 レビュー 139件。 B ランク

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平均点3.97pt

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全263件 261〜263 14/14ページ
No.3
(5pt)

7日目まで死なないことに安心するし、焦る

本書では「死神の精度」の音楽を愛する死神、千葉さんと再会できます。
設定については本書でも説明がありますので「死神の精度」未読でも楽しめるかと。
伊坂先生の本に手をつけたことのない人にもおすすめしたい。(ちなみにわたしも死神の精度以外の伊坂先生の著作は未読です。)

1年前に小説家の山野辺遼の娘(菜摘)が殺される。容疑者の本城は無罪判決で釈放。それは、山野辺遼と
その妻の美樹の、復讐のはじまりでもあった。
そこに千葉が現れ、一週間、山野辺夫婦と千葉は本城を追うことになる…というのがだいたいのあらすじでしょうか。

話が進むにつれ、本城がなかなか死なない不安感と、山野辺夫婦が(千葉さんが監査中なので)死ぬことがないという安心感に、興奮させられます。
三時間、夕食もとらずに読了してしまいました。

一部痛そうだったりハラハラしたりする場面がありますが、千葉さんの人間離れをした(だって死神ですからね)愛嬌ある言葉や仕草によりだいぶ緩和されています。
ミステリーものが苦手な私でも千葉さんがいるとどんなピンチも安心して読めました。
また千葉さんに会いたくなり、「死神の精度」を棚から出す人は少なくないでしょう。
死神の浮力 Amazon書評・レビュー: 死神の浮力より
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No.2
(4pt)

理不尽な出来事と必然の死

一年前、小説家・山野辺遼の娘である菜摘が殺された。そして今、容疑者には無罪判決が下った。容疑者逮捕に至るまでの数々の有益な証拠は、裁判が始まった途端に次々と翻った。その不自然な現象の裏には、ある人物の大いなる決意が込められていた。無罪判決を受けて、山野辺宅にマスコミが大挙として押し寄せるなか、一人の男が現れた。その男は「千葉」と名乗った。というあらすじです。

これまでの伊坂幸太郎さんの著作は全て読んでいて、本書の発売が決定した際には脱臼しそうになる程嬉しかった記憶があります。あの死神・千葉の物語をまた読むことが出来るという感動に打ち震えていました。その震えはやがてゆっくりと止まりました。本書の発売日に脱兎の如く書店に馳せ参じ、脱走兵の勢いで自宅に戻り、一心不乱に読み耽りました。本当に不躾な表現ですが、「伊坂さんも大人になったなぁ」という感慨が起こりました。がっしりと地面に根を下ろして、物語の浮沈による揺れを最小限に抑え込むような、心地よい「平常心」をもって安心して読み進めることが出来ました。

「大人になったなぁ」と感じた要因としては、自らの娘(小学生)を殺害された山野辺夫妻の、憤り、詠嘆、絶望が克明かつ丁寧に描かれているところです。私は20代前半で独身なのですが、この物語に描かれている、子を持つ親の心理・行動には、すんなりと同調することが出来ました。娘が殺害されてからの一年間、感情そのものが消滅したと思いきや、ふとした瞬間に娘の「生」を感じてしまった時に滂沱する様子には、胸が締め付けられる思いでした。

本書の容疑者は、サイコパスであるとされています。確率としては、25人に1人いる「冷淡な脳を持つ人間」です。「あいつは〜だから、〜だ」と、ある定義の中にその対象を押しこめて、その枠内だけで判断することは非常に危険です。しかし、そう判断せざるを得ない程の人間が現実の世界にも一定数存在することは、厳然たる事実です。そのような「通じない」相手になんらかの危害を加えられた場合にどうするのか、本書を通して自らが考えなければならないことです。

余談ですが、死神・千葉の名前の由来は単なる地名の他に、「千」年以上生きていることも含まれていると思います。「葉」はなんでしょうかねぇ。う〜ん、葉っぱを忌み嫌っているとかそんなところでしょうか。

作品の中でとりわけ印象に残ったセリフは、「幸せになるためには、死については考えちゃいけないんです」というものです。確かに、死について長時間考えていると鬱々としてきます。私は就寝前によく、死について考えています。世人が羊の数を数えて眠りにつこうとする段に、私は死神の持つ、鎌の数をひたすらにそして冷静に数えています。一カマ、二カマ・・・といった塩梅です。是非に。

話は戻りますが、人間は自由な時間をなるべく少なくして、あれやこれや考える時間を減らした方が良いのでしょう。小説家の場合、芥川龍之介は「ぼんやりした不安」で自殺していますし、太宰治の場合は自殺がライフワークでした。この二人に共通する点は、「自由業であること」と「幾多の名作を残した天才作家」であることです。一見、時間を自由に使える身分であり、多くの人に評価され、承認欲が満たされている状態というのは、人間が幸福を感じる際に大きなウエイトを占めていると思いますが、二人は自らの意思で命を絶つことを選びました。他人が思いを巡らせても結句、当人達にしかわからないものです。

物語の後半に、山野辺遼の父親が、小学生の山野辺遼のすこやかな寝顔を見て、「あぁ、この子も必ず死ぬんだ」と思い、得も言われぬ恐怖に駆られるという場面があります。「産む」ということは、「殺す」ということでもあります。一方的に生命を与えて、自然のままにその生命を終結させます。そこまで明確な思いを山野辺遼の父親が意識したかどうかはわかりませんが、一つの生命を現出させることに加担した人間として、不安感、背徳感に苛まれたことは確かです。まぁ、あまり深く考えこまないほうがいいのでしょう。幸せになりたいですし。私の場合は小説を読むことが最上の幸せです(恥)。

長々と書いてきましたが、伊坂幸太郎さんは「逃げない」作家だと思います。今作も、人間が生きていく上であやふやなままにしておきたいものに対して、真摯に捉え、丁寧に描き切っています。著者の作品は生涯、読み続けることでしょう。

追記 それにしても作家には映画好きが多いですね。本作もいくつかの映画について触れています。映画は殆ど見ていないので、勝手に想像して補っています。私事ですが、「ポニョ」を最後に、それ以降全く観ていません。ジブリの宣伝ではないので、あしからず。風立ちぬ。
死神の浮力 Amazon書評・レビュー: 死神の浮力より
416382300X
No.1
(5pt)

死神の恩寵、って感じました。不思議ですネ。

伊坂さんの物語には、いつも、作家としての挑戦があり、それがまた面白いからほんとうに好きです。

この作品もそうでした。

エンターテイメントのサスペンスでありながら気楽に読めるファンタジー。

第一級の文学作品を思わせる描写を見せながら、会話は、くすりと笑わせる上品な漫才や落語のよう。

それでいて、生きるために大切なメッセージを、われわれ読者は勝手に読み取ることができる。

で、また、この物語の読了感。わたしには、はじめての体験でした。

死神って、浮力より重力のほうが似合ってますよね。

でもこの作品を読むと、それとは正反対の印象。

まるで死神の恩寵です。冷たいけれども温かい。そんな「救い」があるんですね。不思議です。

いつも楽しいお話をありがとうございます。
貴方の挑戦を、ずっと読み続けていきたいです。

あぁ、これレビューじゃないですね。
ごめんなさい。いちファンからの敬意と、心からのお礼です。
死神の浮力 Amazon書評・レビュー: 死神の浮力より
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