ショパンの手稿譜
評判
ショパンの手稿譜の評価:
3.60/5点 レビュー 5件。 C ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1〜2 1/1ページ
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ショパンの手稿譜の評価:
3.60/5点 レビュー 5件。 C ランク
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音楽史の教授ハロルド・ミドルトンは所用を終えポーランドの空港から出国しようとしていた所を国家警察の警部補により足止めされる。彼が直前に会ったピアノ調律師が殺害されたとの事で、元軍人のミドルトンには思い当たる事情があり、ショパンの手稿譜を巡る陰謀に巻き込まれ自身にも危険が迫っていると確信する。
私が考える本書の最大の問題点は298頁で17章という(一人で3章を担当するディーヴァーは例外として)20頁にも満たない余りにも一作家の書く分量の少なさです。やはりこんなに短くては作家らしい個性を出すのは至難の技でしょう。確かにリレー小説を完成させる目的の為に足並みを乱さず出しゃばらない態度はチームプレイの表れで讃えられるべき態度ではあるのですが、それぞれの作家らしさが消えてしまっているのはやはり寂しい気がします。僅かに異彩を放って健闘しているのは日本未紹介のラルフ・ペズーロの担当する章のテロリスト・ファウストの今時でない時代がかった語り口でしょうか。それぞれの作家が多数の登場人物の視点で筆を進めるのは良いのですが、如何せん頁が少ないせいで性格描写が不十分に感じられ印象に残らないのも残念です。そしてディーヴァーの最後の2章のどんでん返しについては、昔から書き継がれて来たこの種の物語のパターンに似て飛び抜けた新奇さを望むのは最早無理だと承知してはいますが、魅力的な物語が膨らまずにしぼむオチや取ってつけた様な犯人では切れ味が鈍く衝撃も少ないと思います。また確かに物語は破綻せずに上手くまとまって収束しますが、それは個々の作家が伏線や手掛かりに繋がる記述を殆どせず(リザ・スコットラインの終盤でのあからさまな手掛かりはありますが)終章でどうにでも料理出来る様に配慮した為だとしか思えません。他にも序章の衝撃的な殺人場面の謎が終章に至ってすっかり重要度を失ってしまっているのも何だかなあと思えますし、善玉悪玉入り乱れての戦闘シーンは迫真のサスペンスを感じさせますが、反面展開があまりにも速すぎて人間が描き切れておらず個々の人物像が希薄に感じられる欠点もあると思います。
ここまで書いて来て自分でもかなり厳し過ぎる見方をしているなとは思いますが、その理由はやはり第一線で活躍する錚々たる顔触れの一流作家が結集しているのですから実力を出せばこんな物でなくもっともっと面白いはずだと思うからです。結論としてリレーミステリーという形式は相当に困難な代物で練達のベテラン作家達が挑んでも結局は可も無く不可も無い作品しか生まれず、真の意味の傑作は生み出し得ないのかなと考えてしまいます。けれど内心自分の出した結論が間違いであって欲しいという思いはありまして、何時か完成度の高いリレーミステリーの真の傑作を読める日が来れば良いなと願っています。その意味でも本書に続いて書かれたハロルド・ミドルトンが再び活躍する第二弾が本作よりも進歩を遂げてリベンジを果たしているか確かめる為に一日も早い紹介を待ち望みたいと思います。