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降霊会の夜
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降霊会の夜の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.98pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全43件 41~43 3/3ページ
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実に重いストーリーです。でもとてもいい小説です。作者の作品につきものの涙・人情・笑いはありません。 主人公である初老の男が自らの心の奥深くにしまい込んでいる深い悔悟の念。 ストーリーは主人公が少年時代と青春時代の一時期に経験した二つの出来事を軸としています。 東京オリンピックを数年後に控えた戦後復興のまっただ中と、学園紛争が終焉を告げようとする飽食の時代への転換期。 世の中が平和に豊かに変わっていく中で、主人公の前で命を絶っていった友人・恋人たち。 そして降霊会でのその者たちとの邂逅。 豊かさ、繁栄のなかで見捨ててきたとものとは… 物語の最後は現世からも霊たちからも見放されたような孤独な初老の男が一人佇みます。 主人公は作者自らを投影したものかも知れません。時代背景も作者の生まれ育った当時そのままだと思います。 さらに穿った見方をさせて頂ければ、この作品は東日本大震災後に書かれた作者の最初の作品であるところに注目したい。 被災地では、失われた多くの命がある。我々は心から死んだ人たちへ「さよなら」を言っているのか。 残され、悲惨な生活を強いられている多くの人々が今もいる。 我々もこの物語の主人公のように、繁栄のなか見て見ぬふりをしながら、所詮他人事のように、いつの日か記憶の片隅へと彼らを追いやっしまうのだろうか。 作中の科白が胸に沁みる。 「罪がないとおっしゃるのですか。」「何をいまさら。忘れていたくせに。」 | ||||
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いい小説でした。 浅田次郎の持ち味のひとつである、 甘さ、ハートウォーミングな部分がこれっぽちもない、 ものすごく苦いストーリーです。 もしかしたら、 本作のテーマは、 作家が、 自分の人生を振り返ったときの心境かもしれないと深読みしました。 一人称ですし。 そこが私小説っぽいしかけになっています。 孤独。 読み終わると、 男の孤独が胸に迫ってきます。 大事な友を捨てる。 愛する女を捨てる。 愛された女を拒絶する。 見捨てた友や友人は苦しく辛い人生を送っているはず。 悔悟の日々。 そんな記憶を抱え、 悔悟の人生を生き続けた男。 自分のしたことを忘れては行けないと誓い、 何とか許してもらえないかと願う生き方。 過去にこだわる男というのは、一見、美しい。 そんな男の生き方を、 降霊会は結局打ち砕きます。 老いてなくても大人の男なら、 心当たりのあることかも知れません。 浅田次郎は、 この小説でそういう生き方に救済は、 訪れないことをはっきりと告げています。 この小説の最後が一番の読みどころだと思います。 おそらく主人公の昔の罪を許されたいという願いは叶えらました。 そして人生の黄昏を前にした強烈な孤独に直面します。 降霊会の結果、 過去の悔悟すら、 実は身勝手な想いでしかないことを突きつけられるから。 最終行が心に沁みます。 従来の浅田次郎の小説とは違います。 例えば「ぽっぽや」のように、 人生の悔悟は癒されました。 そこが浅田作品のスイートスポットだったと思います。 本書では、 主人公に癒しは訪れず、 更なる孤独に陥ります。 リアルです。 そこがお勧めの理由です。 | ||||
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浅田先生の小説では「ありがとう」と「ごめんなさい」の大切さが繰り返し伝えられていることは周知のことと思われますが、今回は「さよなら」の大切さが伝わってくる内容です。別れの儀礼を蔑にすれば、過去を切り離して前に進むことはできません。又、神から与えられた幸運に感謝せずに怠惰な生活を送った人間の末路、神から与えられた試練に耐え抜いた人間が得る喜びと安息も見事に表現されてます。 あまり具体的なことを書いてネタばれになっては面白くありません。是非、手にとって読んでいただきたい小説です。自分の来し方を振り返って恥ずることがなかったか考えることになるでしょう。 ただ、ひとつ文句を言わせていただければ、この内容で続編を作るのは大変難しかろうということです。新たなシリーズが私の好きな心霊系になるかもしれないと喜んでいたのですが、この内容では続編は作りにくいでしょうし、浅田先生は筆が遅いから次回作までかなり待たなければならないかもしれません。シリーズ物なら担当編集者が無理にでも書くように仕向けて下さるかもしれませんが、読みきりでは「至高の恋愛小説であり、第一級の戦争文学であり、極めつきの現代怪異譚を確かに書いてやったんだから文句はあるめえ。」と浅田先生は開き直られることでしょう。 担当編集者の方はご苦労も多かろうと思いますが、私も最近は体調が悪くそう長くはなさそうなので、是非とも浅田先生が次回作に取り組まれるよう指導していただきたく宜しくお願い申し上げます。 | ||||
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