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天空の蜂



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天空の蜂の評価: 7.67/10点 レビュー 9件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.67pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

既に蜂に刺されたことを忘れつつある今、再読を!

映像化作品が多い東野作品の作品の中でも抜群のサスペンスを誇る作品だが、なかなか映像化されなかった本書。
その理由が本書を読んで判ったような気がした。この作品は3.11以前に読むのと以後とでは全く読後感は違ったものになっただろう。

リモートコントロールされた無人ヘリコプターが原子炉上空に滞空し、テロの武器となる。この着想の妙には発表当時、これはすごいなと思ったものだ。

今や国民的ミステリ作家となった東野圭吾が1995年に発表した本書はそんなサスペンス巨編。今回のテロリスト「天空の蜂」が要求する条件とは
・稼働中、点検中の日本全国の原発を全て使用不能にすること
・建設中の原発の工事中止
3.11で原発への不安が叫ばれている昨今、なんともタイムリーすぎて背筋に寒気を覚えた(ちなみに私は渋谷で原発反対のデモ行進を目の当たりにした)。
この内容は現在デリケートすぎて確かになかなか映像化できなかったことだろう。原発反対派に強硬手段の一つのヒントを与えるようなものだ。
逆に発表後約四半世紀経った今でも絶版にならないことが不思議だと云える。

作中で原発周辺に住む人間達の心持が描かれる。原発があるということが生活に馴染みすぎていて異常時の脅威をなかなか現実的に捉えられないとある作中人物が吐露するのだが、これこそまさに3.11以前と以後の日本人の意識であろう。

さらに原発に危機が訪れていることを知り、コンビニに買出しに行く主婦たちの描写があるが、これも3.11で経験した我々の日常だ。

また原発産業に関っている会社が社員に反対運動に署名することに圧力を掛けたことや都会に住む人間の電気供給のためにゆかりも無い田舎の地で原発が築かれ、またその自治体も電源三法交付金という甘い蜜を吸い、と地域活性を促進させたいがために原発の誘致もする現状。
そして実際に原発が停止した際に訪れる様々な場所での影響―工場の操業の停止、百貨店内や都市を走る電車のエアコン停止などの節電対応など、本書に書かれているエピソードの1つ1つが今年我々の身に起きた東日本大地震による原発停止による節電生活を筆頭にした社会問題をそのまま表しており、フィクションとして読めなくなってくる。とても16年前の作品とは思えないリアルさだ。東野氏の取材力と想像力の凄さに恐れ入る。

そしてとにかく原発側の安全神話の妄信振りがこれでもかとばかり書かれる。
阪神大震災並みの地震が来た時、本当に壊れないのか?
航空機が落ちても本当に大丈夫なのか?
これらに関して原発側は終始一貫して「壊れることは無い」、「システムが稼動しないことは無い」の一点張り。技術に絶対はないという定義に一切目を向けないほどの頑固さを発揮する。

この「航空機が墜落しても放射能漏洩事故は起きない」という安全神話がただの張子の虎であったことを知らされた。

即ち原発上空には飛行機やヘリコプターなど飛ぶことは禁じられており、周辺にも飛行場などは建設してはいけないことになっているから、飛行機などが落ちるはずが無いというなんとも薄弱な根拠でシミュレーションさえもなされていないのだ。

この考えが昨年まで浸透していたのかどうかわからないが、2001年にニューヨークで起きた9.11同時多発テロを見ればそれが机上の空論に過ぎないことが解るというものだ。

さらに原発職員と警察、消防の関係者との打合せの場でも制御棒が落ちて稼動停止することが当たり前であり、その装置が何らかの不具合で作動しないなどはありえないと妄信する原発側の発言なども出てくる。

しかしよくもこれほど企業体質や立場などを露骨に書いたものだ、東野氏は。

原発ジャックを起こした主犯の三島幸一は、ヘリコプターを開発した会社錦重工業の社員であり、会社の原子力機器設計部門に勤務している。ヘリコプターの設計に携わった湯原の同僚でもあり、新入社員の頃から人とは違った着眼点と鋭い洞察力を持ち、同期の中でも一目置かれていた存在だ。

その彼がどうして原発に対してテロ活動を起こそうとしたのか。それは作中でも最後の方に出てくる。

ところで私は真っ先に子供を救出した後なら自衛隊の戦闘機で空爆するという手があると思った。現に作中でもそれについて話しているが、うまく粉々になってくれればいいが、単に墜落を早めるだけの確率の方が高いと切り捨てられている。
しかし私は爆弾を搭載したヘリならば空爆するだけで内部の爆弾と反応して粉々になる確率の方が高いと思う。従ってこの部分に関してはお茶を濁した程度で終わっているような感じがして、ここが本書の設定の弱点だったように思えてならない。

3.11の東日本大震災から連日メディアで喧しく報道されている放射能物質拡散の脅威と反原発運動、そして放射能汚染の恐怖。この原子力発電は現代の社会に咲いた仇花なのだ。
もう無関心でいる時期は終わった。
1995年に著された作品だが、現在起こっていることが既に本書には予想として挙げられている。これらの事態と原発に関する知識をさらに深く得るためにも、そしてその存在意義を考えるためにも今この書を読むことをお勧めする。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

天空の蜂の感想

原発事故の前と後では読後の感想は相当違うと思う。いろいろと考えさせられました。内容としてとてもスリリングで一気に読んでしまいました。本格ミステリではないけど、是非とも読んでもらいたい作品。

▼以下、ネタバレ感想

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msy0228
VGUO2GM5
No.1:4人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)
【ネタバレかも!?】 (1件の連絡あり)[]  ネタバレを表示する

天空の蜂の感想

かなりの分量があるにも関わらず
スピード感溢れる内容で一気に読むことができる。
ストーリー、人物、全てにおいて東野作品で五指に入る。

OZ
8U24PHAV

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