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麒麟の翼



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【この小説が収録されている参考書籍】
麒麟の翼 (特別書き下ろし)
麒麟の翼 (講談社文庫)

麒麟の翼の評価: 7.00/10点 レビュー 11件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全7件 1~7 1/1ページ
No.7:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

当時の世相が色濃く出ている

前作『新参者』で日本橋署に転勤になった加賀が同署で再び相見えたのは一見簡単だと思われた行きずりの殺人事件。そして『赤い指』の事件でタッグを組んだ松宮刑事と再び捜査を共にする。

新宿に本社を持つ建築部品メーカーの製造本部長を務める男性がなぜ日本橋で殺害されたのか?
しかも腹を刺されながら日本橋交番を素通りしたのか?
そしてなぜ麒麟の像の下で彼は息絶えたのか?

容疑者となったのはかつて男の勤める会社で働いていた派遣社員。彼は警察の職質で逃げ出し、トラックに轢かれて意識不明の重態に陥る。そして彼は男の会社の労災隠しで派遣契約を打ち切られたことが発覚する。

当時社会問題となっていたいわゆる「派遣切り」問題を扱いながら、ある会社の本部長を務める男がなぜ日本橋七福神を参っていたのかという小さな謎が加賀を奔走させる。
さらに調べていくと被害者は七福神の1つ、水天宮で千羽鶴ならぬ同一色の折り紙で折った百羽鶴をお供えしていたことも判明する。
一つの謎が明らかになると浮かび上がる被害者の謎めいた真意。加賀は軽い臆測で事件を片付けず、とことん真相を追及していく。

さらに今回加賀は『赤い指』で亡くなった父親加賀隆正の三回忌を迎えようとしていており、その際に隆正の看護を担当した看護婦金森登紀子の世話になっている。
この金森が加賀に隆正の三回忌の打合せをしている時に放つ言葉が今回の事件解決のヒントになるところが本書のミソだ。

この2つの構図をなんと上手くリンクさせることか。
そしてこの加賀の父親との不和が『赤い指』を経て徐々に浄化されていく過程こそ、シリーズを読んできた者が得られるカタルシスであり、特権だ。

加賀恭一郎シリーズの例に漏れず、今回の真相も苦い。

また本書は事件が残された家族に招く社会の冷たさにも触れている。
『手紙』では加害者である殺人犯の弟が受ける理不尽とも思える社会の冷たさを扱ったが、本書では被害者の遺族が、被害者が会社の労災隠しの首謀者と報じられたことでマスコミや周囲から遠ざけられていく。突然の悲劇に追い討ちをかけるようにのしかかるスキャンダル。

一方で結果的に冤罪となった容疑者八島冬樹の唯一残された同棲相手の中原香織もまた事件の影響でバイト先から暇を告げられる。
加賀が呟く「殺人事件とは癌細胞のようなものだ。ひと度冒されたら、苦しみが周囲に広がっていく」の台詞に全てが集約されている。

そしてタイトルとなっている“麒麟の翼”には伝説の獣、麒麟には本来備わっていない翼が日本橋の麒麟像にはついていることに由来している。それは日本の全ての道の原点である日本橋から人々が日本中に飛び立っていく、そんな思いがその翼には込められているそうだ。

それは加賀にもまた当て嵌まる。『赤い指』で一旦決着したかに見えた父親との不和。しかし看護婦金森を通じて、何も解決していなかったことを悟らされる。冒頭の振り込め詐欺を見破るエピソードに象徴されるようにシリーズにおいて常に全てを見抜いているかの如く、事件の捜査に当たる加賀が初めて見せる動揺が家族についてのことだった。つまり周りのことは見えていても自分のことは一切見えてなかったことを知らされるのだ。

恐らく次は再び加賀が父隆正へ向き合う物語になるのではないか?
本書では青柳家が父親の死に直面して改めて父親のことを知らなかったことを再確認させられ、また父親の真意を汲み取ることで父親が向けた家族への眼差しを改めて知ることになった。

さて次は加賀恭一郎の番だろう。次作『祈りの幕が下りる時』を読むが愉しみだ。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.6:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

人情味溢れる物語

前作の「新参者」part2とも言っても良い加賀恭一郎の人情味溢れる物語。
推理や謎解きというよりも、捜査が進むにつれて被害者や加害者の過去が明らかになっていく警察小説に仕上がっている。
事件とは関係ないような事柄でも捜査の手を緩めない加賀の行動力を改めて思い知らされる。
初期の頃の加賀の捜査方法と今では少し変わってきたかという気がする。
もしくは意図的に東野氏が書き方を変えていったのか?
加賀恭一郎は元々こういう人物というのがこの2作品で分かる。

推理小説という観点で読んでしまうと、「こんな過去があったなんて狡いよ」と誰でも思うはずなので、
読み方は先程の「加賀恭一郎はこういう人物」を認識するのに適した本と言えよう。
犯人には賛否両論あるだろうが、読みやすい警察小説としておこう。

yoshiki56
9CQVKKZH
No.5:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

麒麟の翼の感想

今回のテーマは親子、格差社会、被害者家族等々。なので、社会派推理の側面は強いです。ただ、最近の加賀シリーズは人情物でもありますし、コツコツ捜査を進める警察物でもあります。犯人は誰なのか?、被害者はそこで何をしていたのか?等々、伏線が回収され謎が徐々に解けていくのは、推理物として楽しい。しかし、その裏にある人間ドラマは重く、深く、哀しい。なぜもっと良く話し合えなかったのか?、この物語で亡くなった人達に残された家族は、ずっと考えてしまうでしょう。そして、それはたぶん加賀恭一郎にとっても言える事なんでしょうね。

なおひろ
R1UV05YV
No.4:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

読み応えあり

名人芸というか、安定した筆致は、さすがだと思います。ミステリーとして十分楽しめ、読み応えもあります。
それでも何か散漫な印象が残る。何かとじっくり考えてみたら、いろいろ盛り込みすぎて、読者として同情する対象が多すぎて、落ち着かないんですね。最初に同情していた対象が後からはそうでもなくなる、最後の方で同情すべき対象が何だか唐突に登場して、呆気にとられるうちに終わってしまうという感じ。

▼以下、ネタバレ感想

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shoukk
NDM7CE2U
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)
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麒麟の翼の感想

新参者の倍は楽しめました!加賀恭一郎、いつも気持ちの良い男です!

どんがばちょ
87JRS7CY
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

麒麟の翼の感想

どういう展開になるのか?ドキドキしながら読んだ。面白かったが、期待のほうが大きかったように思う。

ビッケ
K1LY4PU3
No.1:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

真打ちの噺を堪能するような

加賀刑事シリーズの最高傑作かどうかは別にして、「いよ、名人芸!」と掛け声をかけたくなるような、上手くて楽しめる作品だ。
メインの犯罪とその背景はまったく奇をてらったものではなく、加賀刑事の犯行解明の筋道も適度に論理的で、適度に予定調和的で、サイコパスものや鑑識もの(リンカーン・ライムなど)に疲れた心を優しくいたわってくれる“人情推理”が冴えわたり、読後感がすこぶる良い。
犯人および犯行動機に全面的に納得できない部分を感じたが、これは人それぞれの受け止め方で、十分に納得できると言う方も大勢いるだろうし、この作品の欠点というほどのものではない。
日本橋、人形町周辺に土地鑑が無い方は地図をご覧になりながら読まれると、一段と興趣が深まるだろう。前作「新参者」を先にお読みになった方がベターである。

iisan
927253Y1

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