地下採石場跡の巨大な洞窟に、核シェルターの設備を造り上げた〈ぼく〉。

現在にとって未来とは何か?文明の行きつく先にあらわれる未来は天国か地獄か?万能の電子頭脳に平凡な中年男の未来を予言させようとしたことに端を発して事態は急転直下、つぎつぎと意外な方向へ展開してゆき、やがて機械は人類の苛酷な未来を語りだすのであった…。

眠った魚のように山あいに沈む町花園。

夏の朝、突然救急車が妻を連れ去った。妻を求めて辿り着いた病院の盗聴マイクが明かす絶望的な愛と快楽。

平凡な男の部屋に闖入して来た9人の家族。

自分の部屋に見ず知らずの死体を発見した男が、死体を消そうとして逆に死体に追いつめられてゆく『無関係な死』、試合中のボクサーの意識の流れを、映画的手法で作品化した『時の崖』、ほかに『誘惑者』『使者』『透視図法』『なわ』『人魚伝』など。

ある朝突然、“かいわれ大根”が脛に自生していた男。

ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男は、覗き窓から何を見つめるのだろう。

失踪した男の調査を依頼された興信所員は、追跡を進めるうちに、手がかりとなるものを次々と失い、大都会という他人だけの砂漠の中で次第に自分を見失っていく。

ある日突然現われた父親と名のる男が、奇怪な魚に生れ変り、それまで何の変哲も無かった街が水中の世界に変ってゆく『水中都市』、コモン君が、見馴れぬ植物になる話『デンドロカカリヤ』、安部短編作品の頂点をなす表題二作に、戯曲「友達」の原形となった『闖入者』や『飢え

笑う月が追いかけてくる。直径1メートル半ほどの、オレンジ色の満月が、ただふわふわと追いかけてくる。

伝説によれば、脱走した三百人の囚人たちははてしない雪原をどこまでも越えて行き、阿寒の山麓あたりに彼等だけの共和国をつくり上げたと言われる。

いつ崩れるかほからない、危うい均衡の上に成り立つ現代世界。

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。

共同体に潜む狂気を暴きだす『未必の故意』。

昼とは全く別の姿をした、真夜中の東京“大都市T"。

戦時下の弾圧で壊滅し、戦後復活し急進化した“教団”。その激動と興亡を早逝した天才作家が壮大に描く永遠の必読書。

突如記憶が中断してしまい、謎に満ちた世界を手探りで行動する男。

その男は死んでいたはずだった―。何十年も前、忽然と映画界から姿を消した監督にして俳優のヘクター・マン。

妻に去られたナッシュに、突然20万ドルの遺産が転がり込んだ。

「縮む男」は処刑され、もと自衛隊員は逃亡に失敗して自爆した。

晩夏酷暑の或る日、郊外の風癲病院の門をひとりの青年がくぐる。

ある夏の日に突然、かつての恋人から遺産のゆくえを託された若妻エディパは茫然と立ちすくむ。

少年は何度も何度も成長し、愛しい人々と青春を駆け抜ける。

保根治(ほねおさむ)・男・三十六歳・高校教師。突然、彼のもとへかかってきた電話の主は、いるはずのない“弟”だった。

神秘主義詩人ウィリアム・ブレイクの預言詩に導かれ、障害を持って生まれた長男イーヨーとの共生の中で、真の幸福、家族の絆について深く思いを巡らす。