黒猫遁走曲



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    初公開日(参考)1993年12月
    分類

    長編小説

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    黒猫遁走曲 (角川文庫―角川ミステリーコンペティション)

    1993年12月01日 黒猫遁走曲 (角川文庫―角川ミステリーコンペティション)

    愛しい猫、可愛いメロウ、美しい、優しい、私の天使…。どれくらい捜したことか?目につくかぎりを、思いつくかぎりの手段を講じて。森本翠が三十八年間勤務した出版社を定年退職した日の夜、メロウは山ほどの花と薔薇色のシャンパンの隙間をぬって、戸外にはじきだされた。黒猫メロウの捜索と、スターを夢見る隣人の殺人事件がクロスして…。滑稽なぐらい切実で、臨場感あふれる奇想天外なサスペンス。 (「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

    黒猫遁走曲の総合評価:7.25/10点レビュー 4件。Cランク


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    サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

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    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (7pt)

    消え去った佳品

    本作は有栖川氏の『ダリの繭』同様、角川ミステリ・コンペティションの参加作品で文庫書下ろしで刊行された作品。
    一読して驚くのは、非常に読みやすい文体と内容になっていることだ。ゴシック趣味溢れる『時のアラベスク』や『罪深き緑の夏』の同一作者とは思えないほど、普通のミステリとなっている。恐らく読者の人気投票で優秀賞が決まるというこの企画に即して、自らの持ち味をあえて殺し、普段本を読まない人でも読めるように意図したのではないだろうか。

    出版社を退職し、翻訳者として第2の人生を歩むことに意気揚々としていた森本翠は女性編集者の瑠璃と祝杯を上げたその夜、愛猫の黒猫メロウが行方不明になり、心境穏やかでなくなる。
    一方、近所のアパートでは駆け出しの役者鳴海が妻を殺害し、バラバラに解体していた。底に現れた1匹の黒猫。黒猫を必死に探す翠と、瑠璃、そして鳴海の人生が交錯しようとする。

    退職した独身女性で唯一の家族が黒猫という60歳の女性、翠の思考がなんだか痛々しい。独り身の寂しさの拠り所が猫というのは、私も飼っていたので猫に対する愛情については理解できるが、やはり常人とはどこかずれていて、狂気さえ覚える。鳴海もボタンの掛け違えのような瑣末な事から起こしてしまった殺人を、どこか夢の中の出来事のように第三者的に捉えながら、その実、自覚せずにどんどん狂気の井戸の底に落ちていく。
    そしてまた2人の狂人の緩和剤として挿入された瑠璃もまた、常識人とはちょっと違った特異な考え方を持っている。つまりこれは1匹の黒猫を軸にした3人の狂人たちの遁走曲なのだ。
    作者の故服部氏は猫好きとしても有名だったので、どうしても翠と作者がダブって仕方がなかった(ちなみに作者は既婚)。

    中身はごく普通のミステリで、結末も皮肉が利いている。前2作の雰囲気が好きな人にはあっさりとしすぎて物足りなさを覚えるだろうが、私は全く逆の立場だったので本作は服部氏の作品では最も評価が高い。
    長らく絶版になっており、本書もまた忘れられていく一冊になるのだろう。そんな消えゆく作品を少しでも誰かの記憶にとどめて欲しいために私はこんな風に感想を書いているのかもしれない。

    Tetchy
    WHOKS60S
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    ※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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    No.3:
    (5pt)

    メロンタ・タウタ、メロンタ・タウタ

    愛猫メロウがいなくなったことで慌てふためく定年退職したばかりの翠と、衝動的に妻を殺してしまった自尊心の強すぎる舞台俳優の昭平の、焦燥感に駆られまくるサスペンスです。
    かたやなりふり構わず愛猫を探す翠、かたや自身の犯罪を隠そうと躍起になる昭平。両者の緊迫感に息がつまりそうになるのですが、その姿はどこか滑稽で、黒猫メロウを間に挟んで互いに猜疑心を募らせながらも微妙に見当違いを起こしていたりと、面白く読めました。
    ですが、なにより、主人公の翠が愛猫メロウを想ってなりふり構わずに探す姿が可哀想で、ただただメロウと無事に再会できるのかが気になって、もどかしくてたまりません。
    三人の人物の視点で話は進むのですが、出版社編集長である瑠璃の、父親と妹をめぐるエピソードがとても背徳的で、服部まゆみ作品の昏い夢心地な雰囲気が味わえます。こちらはこちらで別物として読みたかったなと、作者の早すぎた逝去が惜しまれます。

    以下、少しのネタばれになります。

    エンディングが少し盛りすぎと思えなくもないのですが、仕事一辺倒、家族は愛猫のメロウだけでいいと色々諦めてきた翠に定年を迎えてから新たな出会いがあり、メロウも無事戻ってきてよかったです。

    『この闇と光』のようなゴシックミステリーを期待すると肩透かしをくらうかもしれませんが、『ハムレット狂詩曲』のような疾走感があり、こんな服部まゆみ作品もあるのか楽しめると思います。

    「メロンタ・タウタ」は翠が新たな仕事とした翻訳で悩む言葉です。メロウを案じる彼女にとって魔の呪文のようにまとわりつき、無限ループし翻弄し、読者もこの語感のいい言葉は一体なんなのかと脳内リフレイン必至です。
    黒猫遁走曲 (角川文庫―角川ミステリーコンペティション)Amazon書評・レビュー:黒猫遁走曲 (角川文庫―角川ミステリーコンペティション)より
    4041785030
    No.2:
    (2pt)

    残念です

    「この闇と光」「罪深き緑の夏」と読んで、女性芸術家でもある作者の美しい世界に魅了され、本作を読みましたが、期待外れでした。 美しい情景が色彩を伴って目に浮かぶような前二作とは異なり、目を背けたくなるグロテスクな表現や、黒猫に愚かなほどに執着して探し回る初老の女性が描かれています。 敢えて美とかけ離れた情景で、猫の目の青、ラピスラズリの青を際立たせる狙いでしょうか。 主人公に魅力を感じられず、意外な展開も無く残念でした。
    黒猫遁走曲 (角川文庫―角川ミステリーコンペティション)Amazon書評・レビュー:黒猫遁走曲 (角川文庫―角川ミステリーコンペティション)より
    4041785030
    No.1:
    (4pt)

    服部まゆみファンなら

    主人公の翠は定年退職したが、愛する飼い猫メロウはいなくなって探しても出てこない、初翻訳作品になるはずの本はやたらとレトリックにはしっていて頭が痛い、という状況です。そこに殺人を犯した隣人、ミステリアスな美女瑠璃、翠がメロウを探して会った老人、など入り交じり、作者独特の叙情的な文体で翠のメロウ探索記が語られます。作者の他の作品のように恋愛要素や劇的な転換などはないですが、作者の持ち味にはまったかたなら細部を楽しんで読むことができると思います。ただ、翠がちょっと変わった性格なので、彼女に感情移入できるかは個人によると思いますが…
    黒猫遁走曲 (角川文庫―角川ミステリーコンペティション)Amazon書評・レビュー:黒猫遁走曲 (角川文庫―角川ミステリーコンペティション)より
    4041785030



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