つなわたり
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ピーター・ラヴゼイと言えばミステリのオールタイムベスト100などという企画があれば必ず出てくるだろう名作、「偽のデュー警部」の著者だが、私は彼を斬新なトリックや緻密な構成で勝負する推理作家とは思っていない。 イギリス推理小説界の大御所をつかまえてナニ言ってんの?と叱られそうだが、実は彼の最大の特徴はストーリーテリング、語りの魅力だと思うのだ。 この作品はミステリ・サスペンスでは「手垢のついた」という表現がふさわしい交換殺人を素材にしたもので、別に斬新な仕掛けが用意されているわけでもない。つつましく平凡な家庭の主婦と派手で驕慢なセレブ妻がそれぞれの夫を始末するために共闘する、という趣向も要約だけ見れば「なあんだ」程度のものに過ぎないだろう。 しかし、実際に彼の文章を読めば思わず引き込まれてしまうのだ。さりげない状況描写に登場人物の心情が心憎いまでに表現され、「簡単にはノったりしねぇぞ」と構えていてもついつい感情移入して、著者の思惑通りにハラハラドキドキしてしまう。決定的な代表作を生み出すまでの下積み期間が長かった小説巧者のみが持つ力なのかもしれない。 そんなラヴゼイの作品も出版不況のあおりを受けて今や「バースへの帰還」以外ほとんど絶版になってしまっている。 新訳再販の動きが少し出てきている現在、できれば再評価があってほしいのだが・・・。 | ||||
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ピーター・ラヴゼイがダイヤモンド警視シリーズでミステリ作家として大御所となる過渡期の作品が 本書『つなわたり』(1989年)であろう。 クリッブ巡査部長シリーズではビクトリア時代後期を舞台にしていたが、本作『つなわたり』は第二次大戦が終わった翌年(1946年)のロンドンを舞台にしている。 かって空軍司令部で同僚だったローズとアントニアという対象的な二人の人妻を登場させて物語は始まる。 読み始めてパトリシア・ハイスミスの『見知らぬ乗客』のような展開になるのかな、と思ったがストーリーの流は意外な方向へ進んでゆく。 ラヴゼイがダイアモンド警視シリーズを書き始める予兆を伺うことのできる秀作だと思いながら読み終えました。 | ||||
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優雅なヴィクトリア朝を背景に洒脱な作品を発表して来た作者が、第二次大戦直後のロンドンを舞台に交換殺人を軸にして描いた心理サスペンス劇。舞台変更は作者にとっても冒険だったと思うが、本作は持ち前のストーリー構成と二人の女性の心理描写の巧みさで読ませる。 交換殺人自体は使い古されたテーマだけに、作者もそれに係る登場人物の心理面に重点を置いてバリエーションを付けている。ヒロインのローズは牧師の娘であり温和で従順な性格と言う設定。だが、本人は自覚していないが、イザと言う時は抑圧されていた感情が爆発する性癖がある。一方、戦時中ローズと同じ隊にいたアントニアは典型的な悪女タイプで、傲慢で金遣いは荒く、男関係も奔放。何より強い意志を持ち、自己本位で他者の犠牲は省みない。この対照的な二人を自在に操る作者の手腕が見物である。二人共殺したい夫がいるのだが、ローズの方は本気ではない。ところが、ローズの気性を熟知しているアントニアは巧みに誘導してローズを興奮させ、あたかもローズ自身の意志でアントニアに殺人を依頼したかのように仕組む。そして実際、アントニアは事故に見せかけ殺人を実行してしまう。夫の葬儀が済んだ後、ローズには殺人の意志はないが、アントニアの決意は変らない。ローズには不本意だがアントニアとは一連托生の身で、まさに泥沼。ここから、二人の女性のグロテスクとも言える心理ドラマが展開される...。 特に結末近くで疑心暗鬼状態の女性の心理をブラック・ユーモア味で映し出している部分が圧巻。戦争直後と言う設定も雰囲気以上に作品に貢献している。作者の力量を再確認させる秀作。 | ||||
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優雅なヴィクトリア朝を背景に洒脱な作品を発表して来た作者が、第二次大戦直後のロンドンを舞台に交換殺人を軸にして描いた心理サスペンス劇。舞台変更は作者にとっても冒険だったと思うが、本作は持ち前のストーリー構成と二人の女性の心理描写の巧みさで読ませる。 交換殺人自体は使い古されたテーマだけに、作者もそれに係る登場人物の心理面に重点を置いてバリエーションを付けている。ヒロインのローズは牧師の娘であり温和で従順な性格と言う設定。だが、本人は自覚していないが、イザと言う時は抑圧されていた感情が爆発する性癖がある。一方、戦時中ローズと同じ隊にいたアントニアは典型的な悪女タイプで、傲慢で金遣いは荒く、男関係も奔放。何より強い意志を持ち、自己本位で他者の犠牲は省みない。この対照的な二人を自在に操る作者の手腕が見物である。二人共殺したい夫がいるのだが、ローズの方は本気ではない。ところが、ローズの気性を熟知しているアントニアは巧みに誘導してローズを興奮させ、あたかもローズ自身の意志でアントニアに殺人を依頼したかのように仕組む。そして実際、アントニアは事故に見せかけ殺人を実行してしまう。夫の葬儀が済んだ後、ローズには殺人の意志はないが、アントニアの決意は変らない。ローズには不本意だがアントニアとは一連托生の身で、まさに泥沼。ここから、二人の女性のグロテスクとも言える心理ドラマが展開される...。 特に結末近くで疑心暗鬼状態の女性の心理をブラック・ユーモア味で映し出している部分が圧巻。戦争直後と言う設定も雰囲気以上に作品に貢献している。作者の力量を再確認させる秀作。 | ||||
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