ベルリンで追われる男
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デビューからの3作品が次々にドイツ・ミステリー大賞を受賞したという実力派の本邦初訳作品。不法残留者であるアフリカ系黒人青年が、殺人を目撃したことからベルリンの街中を逃げ回る逃走と追跡のサスペンスである。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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ベルリンを舞台にしたランニング・アクション・ミステリー。全編よく走る主人公コージョは、ガーナ出身の不法滞在者。イリーガルな世界の住人が目撃してしまった殺人。 まるでヒッチコックの裏窓のようなシチュエイション。アパートの窓に見てしまった殺人。殴り殺される女。見る側は空き家に棲みついた不法滞在者。入国許可証を持たぬ有色人種ゆえに、常に司法の眼から逃れ、ベルリンの地下で生息する若者。と言ったって三十に手が届く。家族を捨て、家族に捨てられる漂流物のような人生。ガーナに帰ることは考えられない。 とにかく警察がわけもなく移民たちを追いまわす。移民たちは、ベルリンの影を走り回る。何らかの罪を背負いつつ、習性のように逃げ回る若き移民たち。逃げ切って、互いの絆を固めることでしか、逃れようのない生活の中で、活き活きと結ばれる友情、愛情、温もりの数々。 アフリカ文化に深く造詣を持つ作者は、近年の難民受け入れ政策により三、四十万人にも及ぶと言われる中東や北アフリカ難民、そして彼らの受けている人種差別の現実に焦点を置いた小説・映画・記者としての活動に従事しているらしい。本書はドイツ本国を舞台にした現状に基づくノワールと言うべき作品である。 ミステリと言うには少し弱い骨格だが、のっけから警官の包囲網をかいくぐるアクションに始まる本書は、逃げ切った主人公に『裏窓』のように殺人を目撃するという重圧を与える。殺人者はエスタブリッシュメントの側のサディストであるらしい。追われながら事件の真相に近づくことで、心に正義を抱えるイリーガルでマイノリティな存在は、小説設定としては珍しい。 移民社会に対する強烈な圧力を逃走するシーンに込めながら、あくまで追いつめられ続ける主人公を描き、その軸に犯罪を暴くという正義の火種を仕込んだ、走る爆薬のような作品であり、従来の小説構想を突き破る。 まるで1970年代のアメリカン・ニューシネマを見るかのようだ。理不尽で、無力で、呆気なく。現代の『イージーライダー』『バニシングポイント』は、ヒロイズムすら感じさせぬ、圧倒的な力に組み伏せられた弱者たちの叫びを聴く物語でもある。 | ||||
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「ベルリンで追われる男 "Illegal"」(マックス・アンナス 創元推理文庫)を読む。 舞台は、ベルリン。ガーナ出身の不法残留者("Illegal")、コージョはねぐらの窓から金髪の娼婦が殺される瞬間を目撃してしまいます。強制送還を恐れるが故に通報できず、逆に姿を目撃されたことにより自分が容疑者となって警察から追われることになります。よって、嫌々ながらも自らその殺人者を見つけ出さざるを得ない羽目に陥ります。 EUに纏わりつく「難民」問題については、ディーヴァーの「ブラック・スクリーム」、最近読んだ「厳寒の町」などいくつかのスリラーでも取り上げられています。それほどまでに政治的、社会的な混乱を生み出しているのだと思います。 そして、ドイツ。物語はネオナチ、反ファシスト、国家権力に追われる不法滞在者という構図を思い描きながら、「アフリカ系黒人」にとっては生きにくい現在のベルリンの実態を描いているのかもしれません。 「第二部」はスラプスティック劇と言っていいと思います。殺人者、その「組織」、国家警察、鉄道検札係(笑)に執拗に追いかけられ、果たして<アフリカ人ネットワーク>の力を借りたコージョは逃げ切ることができるのだろうか? ベルリンの街、通り、交通システム(都市高速鉄道・Sバーン、地下鉄、深夜バス)を理解していない私にとって、そのサスペンスは弱く、コージョの身体能力を駆使した「速さ」に翻弄される追跡者たちが無能に感じられました。エンディングもとても「ヨーロッパ的」ですが、感心できません。私の<ベルリン>という街の理解度に起因しているのかもしれません。「横浜で追われる男」ならば、あるいは? | ||||
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