二人の妻をもつ男
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. ビル・ハーディングは、ニューヨークにあるC・J出版の社長の女婿として順調な暮らしを送っていた。ある日、前妻のアンジェリカと偶然再会し、彼女が今つきあっているジェイミイ・ラムという作家志望の男と知り合う。だが後日、ジェイミイが射殺体で発見される。ジェイミイはビルの義妹ダフネとも交際していたため、彼女に嫌疑がかからないようにという家族の配慮から、ビルは事件発生時間にはダフネと一緒にいたと虚偽のアリバイ証言をすることになるのだが……。 ------------------- イギリス出身でアメリカで活躍したパトリック・クェンティンの1955年の作品です。実にサスペンスフルな都会の大人のミステリーです。堪能しました。 | ||||
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主人公の男(ビル)が、元妻と偶然に出会い、成り行きで密会していたら、よりによってその時間に元妻の恋人が殺される。しかもその被害者の男は、主人公の現在の妻の妹とも“交際中“だったため、妻の妹に嫌疑がかからないようにするため、ビルは妻の妹と、犯行時間に一緒にいたと証言させられる。……すると嫌疑が元妻にかかり、元妻を救うために、ビルは証言を翻すが、それは、現在の妻の父親の会社にいる自分の地位を投げ捨てることになる……。 まあよくある筋書きだし、ビルがあれもだめこれもだめ、あれこれ迷った挙げ句に、今の自分の地位や生活を捨てて、元妻を救おうとするが、それも、払う犠牲の割には元妻を救うのに大して役に立ちそうもなくて、弁護士もやる気がなくて、仕方なくビルが自分で捜査に乗り出す。……そして、全386ページの、最後の50ページで急展開、それも二転三転して、やっと最後の12ページで、真相が明かされます。 160ページくらい読んだところで、この人が犯人だったら一番意外で面白いかなと思っていたら、ほんとにその人が犯人だった。 最後の50ページくらいまでは、煮えきらない優柔不断なダメ男が、ああでもないこうでもないと呻吟するだけで、正直読み始めたことを後悔するような内容ですが、それだけに、最後の50ページを読むと、スッキリします。……多分この本の著者(二人で書いたらしい)も、その効果を狙って、わざと最後50ページまでダラダラと無意味に見える呻吟にページを割いたんじゃないかと思う。 読むのは少し疲れるけど、最後のドンデン返しは、その分余計に爽快。 読んで後悔しない。 因みに、巻末の解説のはじめに、 「パトリック·クェンティンは、一九三六年に、記憶喪失と犯罪とを結びつけた最初の推理小説「愚者パズル」Puzzle for Foolsでアメリカ推理小説界に進出した。」 と書かれていますが、この「愚者パズル」は、今は「迷走パズル」というタイトルで、絶版になっていますが、アマゾンや多分メルカリなどでもそんなに高い値段でなく入手できます。 | ||||
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主人公の行動は、まるで小学生の学芸会のよう。くだらん理屈ばかり付けて、何をやっているんだか。 | ||||
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出版会社の高級社員であるビル・ハーディングは社長のC・Jの長女ベッシィ・カリンガムを妻として幸せな生活を送っていたが、ある夜先妻のアンジェリカ・ロバーツと偶然に出会う。アンジェリカは無名の天才的な作家を援助して成功へ導くということを自分の天命としており、かつてビルも彼女に励まされながら戦争小説を書き上げ大成功を収めたのだが2作目が書けず結局彼女に捨てられたのだった。 再会したアンジェリカは相変わらず美しかったが病人のような哀れな感じがあった。彼女は今はジェイミイ・ラムという若い作家志望の男に熱を入れていたがジェイミイは酒に酔うと彼女に暴力をふるったり大金持ちの娘との結婚に野望を抱くといったイカサマな男だった。 アンジェリカの頼みでビルはジェイミイの小説の原稿を持ち帰るがその翌日ジェイミイはビルの事務所を訪ね偶然ベッシィの妹のダフネ・カリンガムと出会う。ジェイミイのハンサムぶりに魅了されたダフネは急速に仲を深め二人は婚約するまでになる。カリンガム家は当初は二人の婚約を祝福するがジェイミイの酒癖の悪さを知ったベッシィは二人の結婚に断固反対し始める。 一方ジェイミイに捨てられたアンジェリカは故郷に帰ろうとするが手元に現金が無くビルに借りに来るがその夜ジェイミイは何者かによって射殺されてしまう・・・ 二十代に2回読んでいてどちらも非常に高く評価したという記憶があり六十代となった今回は3回目となる。犯人や大まかなストーリは覚えていたので伏線や人物描写に注目しながら読んだのだが…期待が高すぎたためか思ったほどの評価にはならなかった。 まず主人公、ビルの優柔不断、不誠実、臆病な性格がこれでもかとばかりに描かれ、それを起因とする失態や後悔の念がくどいほどに述べられていくのである。読者としては善良な紳士と思ってビルに感情移入するわけであるが途中からうんざりしてくる。物語はビルの一人称で語られるがビル=作者ではないことが明らかでこれも作者の仕掛けの一つと思われる。 後半からはトラント警部との対決から真犯人の探索とスピード感がぐんぐん増していき終盤は一気に真相へと収束していく。このへんは他のクェンティンの後期の作品と同様に見事であるがミステリとしての謎解きの要素が薄い。重要な証言の意味合いが途中で変わってしまうのも作者としてはミステリというよりは心理劇に重心を置いているためと思われる。内容や人物構成は本書の4年後(1959)に書かれた「愚かものの失楽園」と似ているが心理サスペンスという面では本書より頁数の少ない「愚かものの失楽園」のほうに軍配を上げたい。謎解きミステリの面では「私の愛した悪女」(1960)の方が工夫されているように思われる。 ただし本書ではアンジェリカという独特の女性が現れる。その孤高で気高い美しさは他の作品には見られず女性の理想像として作者が描きたかったものなのかもしれない。アンジェリカの謎のような言動の真意は後半で明らかになるがそのための伏線が絶妙でありその健気な様子に胸が打たれる。そのへんは読者にはわかるが語り手たるビルは全く気が付かないという手法も男女の間の溝を描く作者の巧みな仕掛けなのであろう。他の女性についてもビル=作者ではないのでビルの語る文章の行間に作者の秘められた別の思いがあるわけで、主要な女性たちのそれぞれに作者の暖かい眼差しを感じるのは読み過ぎであろうか。特に最終頁でビルが述べていることは額面通りに受け取ることはできないように思われる。 | ||||
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作者の代表作。日本でも幾つかのバリエーションでTV化されている。作者の得意とする、人間模様の機微の中から人の心の闇が浮かび上がって来るという作風で、サスペンス小説としても本格ミステリとしても一級の出来栄えである。 主人公は出版界の帝王の義父が社長を務める出版社の社員。主人公の貞淑な妻には奔放な妹がおり、主人公にも別れた妻がいる。主人公は偶然に前妻と会うが、前妻は野心溢れるジゴロと付き合っていた。そしてジゴロが主人公の義妹をモノにする辺りから話は事件性を帯びる。定石通りジゴロが殺される。容疑者は当然、主人公の義妹である。義父の権力で主人公を巻き込んだ義妹のアリバイ工作が行なわれる。だが、事件当時、前妻と偶然会っていた主人公にとっても、この工作は体面上都合が良かった。しかし、容疑が義妹から前妻に移って行くに連れ、主人公の悩みは深まる。前妻への義理を取るか、義父や妻への体面を取るか...。 主人公の懊悩と共に事件は進行し、様々な真実が明らかにされて行く中で最後に浮かび上がる人間心理の闇。スリル溢れる展開と言い、結末のカタストロフィと言い文句なしにお勧めできる一級品。 | ||||
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