チューリップ
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あらすじ
評判
チューリップの評価:
7.00/10点 レビュー 1件。 C ランク
チューリップの総合評価:
7.50/10点 レビュー 2件。
感想一覧
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逝去するまでの長い期間のなかでハメットがどのくらい文章を練り、作品に集中したのか定かではないが、いくつかの点において作者が可能なかぎり作品の「彫琢」を目指したとは思えない。
たとえば専門家である訳者にさえ特定できない固有名がいくつか登場するが、あたかもそれは公表を考えない私的なエクリチュールの残滓のようである。初めのほうに一人称で進行しながら急にチューリップの物語(三人称)に入る箇所があるが、かなり不思議な文章運びである(閉じる部分では《こんな具合にチューリップが自分の脚色した話を語っているあいだに、》とあるが)。「私」が書いたというある書評をチューリップが「私」に読ませるかたちで「引用」しているところも唐突感は否めない。
ところでハメットの短篇に長い会話体で事件を明かして結末をつけるものが複数ある。この『チューリップ』では後半に長いセリフで「私」が自分のことを語るものの、それはまったく結末感をかもしていない。そのことも含め本作が面白いのはハメットがそれまでのハードボイルドから脱しようとしているところだ。上記の指摘箇所なども、瑕疵〔かし〕というより、この小説の奇妙な味わいを増幅させる要素になっているようにさえ思う。書けなさというそのことが書きこめられている感じだ。
『チューリップ』の最後にはリリアン・ヘルマンによる「結文」が付されているが、訳註で《訳文十行の》とあるのは雑誌における訳を踏襲したミスであろう。ここでは七行しかない。それにしても本書において、この作品にだけ7ページもの訳註があることが、本作の性質を現わしている。オリジナルを読もうとする人も、これは必要であろう。