希望のかたわれ



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    初公開日(参考)2015年08月
    分類

    長編小説

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    希望のかたわれ

    2015年08月19日 希望のかたわれ

    冬の寒空の下、北ドイツの農場主レスマンは、薄い服を身にまとって逃げてきた若い女を匿い、追っ手の男たちを銃で追い払う。一方、チェルノブイリ原発の立入禁止区域“ゾーン”で暮らす女性ヴァレンティナは、行方不明の娘カテリーナのために自らの思い出をノートに綴りはじめる。そして、ウクライナ警察の警部レオニードは、姿を消した若い女たちを追ってはるばるドイツに旅立つ。1930年代の大祖国戦争から、社会主義大革命、第二次大戦中の忌まわしい出来事、チェルノブイリの輝かしい日々…。戦争と原発の暗い記憶を抱えて生きる人々を描く文芸ミステリ。(「BOOK」データベースより)




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    No.3:
    (4pt)

    原発は戦争のようなもの。多くの人々の人生を踏み潰していく。

    『ドローンランド』が秀逸だったので、同じ訳者の本を読んでみました。著者は、Fukushimaに触発されて書いたとのこと。チェルノブイリとFukushimaの国の対応の何と似ていることか!。被爆した人やその子孫の体や生き方への影響。お金が無くて高線量地帯に戻る主人公の一人の筆で、逃げ水のような"希望/しあわせ"が描かれていきます。

     そして、第二次世界大戦でのドイツ売春や、現代の権力者たちがウクライナ女子学生を留学で釣ってドイツ売春産業に売る巨大構造がそれに絡み、独NRW州とウクライナに跨る著者のパッチワークのような書きぶりが、ものごとを多面的に引き立てています。

     「原発は戦争のようなもの」というセリフ。多くの人々の人生を踏み潰していくものを、黙認することは怖ろしいことです。
    希望のかたわれAmazon書評・レビュー:希望のかたわれより
    4309206816
    No.2:
    (5pt)

    ミステリアスなこの題は主人公によって消された言葉に由来する

    ソ連(当時)のチェルノブイリ原発事故後の時代を舞台とし、「ゾーン」と呼ばれる立入り禁止区域に暮らす女性をめぐる物語である。
     事故当日、看護師だった彼女は、原発作業員の夫の安否を気にかけながら、プリピチャの病院で、次々に運ばれてくる放射能まみれの患者の看護に当たっていた。その町は、原発従業員のために創られた町で、「とびきり優秀な生徒だけが、そこで仕事をしたり、住んだりできる」と教師からは言われていた。
     物語は、ドイツにアルバイト付短期留学に行ったまま帰らない彼女の娘の消息を追いながら、ドイツ、ウクライナを交互に描いていく。ウクライナの「ゾーン」で、彼女は、行方不明の娘に残そうと手記を書き綴っている。娘にプレゼントしたのに白いままの日記帳に、書き直しながら少しずつ書き継がれてゆくその物語。そこには自身のこれまでの歩み、娘の誕生と成長、父母、息子、原発事故のことなどが記されている。その手記の通奏低音の上に、娘とその親友が遭遇した事件がかぶさってくる。逃げ込んできた娘をかくまう農夫、事件を追う刑事、犯罪組織の暗躍が物語をドラマチックに回して行く。人身売買、警察の腐敗、汚染後の人々の人生ーーそれらが、ミステリー仕立てで描かれ、チェルノブイリ事故後の世界の様相を肌で感じさせる傑作である。
     ちょっと変わった題名は、「希望はわたしたちの感覚を麻痺させ、最後までがんばり抜かせてしまう毒薬だった。」という手記中の言葉に根ざしている。書かれて間もなく、彼女自身の手で消されてしまったが。原題を英訳すると「The other half of hope」。私たちは「希望」に価値を置き、人生にぜひ必要なものと考えているが、実はそれに惑わされて道を誤る危険性もある。希望には「暗黒面」もあるのだ。原発にとっての放射能のように。困ったことに人はしばしばそこから目をそらそうとしてしまう……。
    希望のかたわれAmazon書評・レビュー:希望のかたわれより
    4309206816
    No.1:
    (5pt)

    チェルノブイリ原発事故の悲惨な実態を中心に、<ベルリンの壁>崩壊以降も変わらないヨーロッパの暗部を浮き彫りにした上で、それでも「希望」を持つ事の重要性を静謐に訴えた秀作

    チェルノブイリ原発事故の悲惨な実態を中心に、<ベルリンの壁>崩壊以降も変わらないヨーロッパの暗部を浮き彫りにした上で、それでも「希望」を持つ事の重要性を静謐に訴えた秀作。作者はドイツ人ミステリ作家。全体構成も凝っていて、以下の3人が語り手となる一人称の章が交互に繰り返される。いずれも2010年という時代設定である(本作執筆時期も2010年だと思う)。ウクライナの少女人買い兼売春組織から逃れて来たターニャを匿うドイツ人農夫のレスマン、チェルノブイリ原発事故の<その前>と<その後>の"真実"を失踪した娘カテリーナのために手記の形式(回想譚)で綴る看護師のヴァレンティナ、ロシアから失踪した大量の少女の行方を追ってドイツへと向かうキエフの若手警部レオニード。ターニャは仲間だったマリーナの安否を心配しており、オランダに居ると嗅ぎ付けたレスマンはオランダの売春街を彷徨ったりする。

    チェルノブイリ原発事故の悲惨な実態を明らかにする事だけが主眼(即ち、本作の主体はヴァレンティナの手記)だと思い込んでいたので、最初は他の2つのパートとの関連が良く分からず、どこで物語が交差するのか不明(作者のミステリ的技巧かも知れない)だったが、次第に背景が見えて来た。まず、レオニードがヴァレンティナの息子ミコラ(白血病で死去)の知己だった事、同様にレスマンの亡妻がヴァレンティナの知己だった事、そして(不明にも私は本作を読むまで知らなかったが)チェルノブイリが現在のウクライナに属する事等が分かるに連れ、全体像が掴める様になった。他の2つのパートもチェルノブイリ原発事故の悲惨さを重層的に描くために巧みに使われているのだ。

    "あとがき"によると、作者が本作の執筆を思い立ったキッカケは福島原発事故だった由(衝撃を受け、記録に残す強い必要性を感じた由)。日本人には身に染みる物語に仕上がっている事由である。しかし、優れた文学が常にそうである様に、本作も、ロシアとヨーロッパの対立が激化する現在のウクライナ問題、ドイツを中心としてヨーロッパ全体の問題となっている難民問題を予見したかの様な内容になっている点が本作を一層優れたものとしている。多くの方に一読をお薦めしたい秀作である。
    希望のかたわれAmazon書評・レビュー:希望のかたわれより
    4309206816



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