バラの中の死
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日下圭介という作家名を久々に目にした。他界されてもう十年ぐらいになるだろうか。かつては新作が出るたび、ふところ具合が許すかぎり買いもとめた作家だったが、最近は書店の棚にその名を見ることもなくなっていた。なので、この新刊の文庫に名前を見つけた瞬間、目次にならんだタイトルは半分以上が既読の短編だったにもかかわらず、懐かしさのまま躊躇なく購入していた。 日下作品の特徴は、まず乱歩賞受賞のデビュー作『蝶たちは今…』にも既に現れていた、その文章だろう。短いセンテンスを流麗なリズムで打ちだし、散文というよりロマンの薫りたかいポエムを綴りあげるような文章表現で、淡い色彩をやさしい描線でふちどった透明感のある水彩画の世界をイメージさせる。 更にもう一つの特徴的な点は、植物、昆虫、動物が多くの作品で重要なモチーフとしてドラマに織り込まれていること。本書の目次だけをながめても、“バラ”“藻”“ヒマワリ”“犬”“鶯”といったワードが並んでいるが、それらが作中で、美しいイメージ演出となったり、物語の哀切さを象徴したりという、文学的装飾として生きていると同時に、しっかりと謎解きのキイやトリックの小道具としても機能しているのが、日下ミステリの精妙なところだろう。 本書の収録作も、いずれもそうした特色が生きた読みやすく面白い作品ぞろいだが、なかでも推理作家協会賞を受賞した『木に登る犬』『鶯を呼ぶ少年』の両作品は、やはり出色の秀作である。“犬”を中心にした少年たちの交遊、“鶯”を軸にした少女と少年の恋物語、その児童文学のような世界に、否応なく大人たちの世間が重なって出来たヒズミのような犯罪が、精緻な謎解きと人の世の哀歓のなかで解体してゆくさまが、繊細に美しく描き出されていて感動的である。この二作品を読むだけでも、本書を手にする価値があるのではないかと思う。 この短編集を読みながら、『海鳥の墓標』『チャップリンを撃て』『三頭火うしろ姿の殺人』といった、ユニークで面白かった氏の長編作品のタイトルも、次々に脳裏によみがえってきた。本書の刊行をかわきりに、それらの作品も復刊され、再評価されて欲しいものだと思わずにいられなかった。 | ||||
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