中尉
登録されているタグ
※タグの編集はログイン後行えます
0.00pt
7.00pt
Amazon平均点
4.14pt
楽天平均点
3.60pt
みんなの オススメpt 自由に投票してください!!
0pt
サイト内ランク[?]
C
↑現実的
0.00pt
0.00pt
←非ミステリ
0.00pt
ミステリ→
0.00pt
↓幻想的
初版刊行(参考)
種別
長編
閲覧回数
1,797回
お気に入りにされた回数
0回
読書済み登録回数
1回
- このページのURL
あらすじ
外部リンク
※特設サイト・著者サイトなど
評判
中尉の評価:
0.00/10点 レビュー 0件。 C ランク
中尉の総合評価:
8.29/10点 レビュー 7件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| | ||||
| ||||
|
その他、Amazon書評・レビューが 7件あります。
Amazon書評・レビューを見る
ビルマ戦線を舞台にした作品を執筆しているという事で最近興味を惹かれている古処誠二の作品だけれども、この作品はまさにそんな「人物像のブレ」に主人公が向き合わされる内容となっている。
物語は一度はビルマから追い払った英軍にインパール作戦の失敗を切っ掛けとして形勢逆転され完全に敗色濃厚となった日本軍の軍曹・尾能がペストの発生したメンダンサという部落に派遣される軍医の護衛任務を命じられる場面から始まる。
現地に向かう事になった伊与田軍医中尉と面会して尾能はその将校とは思えない威厳の無さに呆れさせられる。動作はもっさり、顔に覇気は感じられず、服装もだらしない……およそ自分が将校というものに求める日本軍人らしさを何一つ持ち合わせない伊与田だったが、部落に向かう道中も無駄話ばかりでいよいよゲンナリさせられる事に。
辿り着いた部落でも衛生班の宿舎は部落の真ん中に設営して欲しいと宣う伊与田に、ダコイと呼ばれる武装強盗団も頻発し、いつ日本軍を見限ってもおかしくないビルマ人を監視せねばならない状況を理解していないと尾能はうんざりさせらながら部落のビルマ人たちとも付き合う羽目になるが日本軍の降伏が近いという話が伝わってくる様になり……
……随分と「すっきりしない」作品だな、というのが読み終えての第一印象。ただその「すっきりしない」感覚は技術の不足ではなく、明らかに作者が意図的に狙った物であるというのがミソ。文庫版のあとがきで解説の片山杜秀も語っている様にこれは芥川龍之介の「藪の中」に近いテーマを扱った作品と言って良いかと。
物語はプロローグで軍医中尉の伊与田がダコイと呼ばれるビルマ人の強盗団に拉致される所から始まる。その後の本編は大きく分けて敗戦間近なビルマの一部落で軍人らしさが欠落した軍医、伊与田に主人公の尾能がイライラしながらペストの囲い込み(ある種のロックダウン)という任務に従事する様子が描かれる。
後半は日本が降伏し、イギリス軍の捕虜収容所へ収容された尾能がその直前に拉致された伊与田を巡る事情や拉致の真相について同じ日本兵や取り調べを担当するイギリスの語学将校とのやり取りを繰り返す様が描かれる。
前半は軍人とは、それも部下を率いる上で威厳を備えていなければならない将校とは思えないぐらい腑抜けた伊与田に苛つく尾能の視点がメインとなっている。後半も尾能の語りで話は進むのだけれども「尾能の目に伊与田はどういった人物として映ったか」を読者に印象付けるのが目的となっている。
その腑抜けた軍人というイメージを定着させた上で後半はそのイメージを崩す、あるいはブレさせる展開に。ダコイによって拉致されたと思われる伊与田がイギリスからの再支配を拒絶し、独立に向けて立ち上がろうとするゲリラに協力する為に拉致を偽装したのではという疑惑が持ち上がり前半で登場するビルマ人の青年の思惑も絡んで伊与田という軍人の真の姿が一気に分からなくなる。
更には伊与田の下で長く働いていた衛生兵の語るビルマ北部の大敗、日本軍が総崩れとなって撤退し白骨街道とも称される事になった日本兵の死体の山を前に伊与田が辿った運命を聞かされる事で尾能と、尾能の目を通じて伊与田の人物像を思い浮かべていた読者は大いに困惑する。一人の人物が複数の視点の間で全く異なった姿に見えるという、まさに人物像を巡っての「藪の中」的状況へと追い込まれるのである。
少し前に読んだ「ビルマに見た夢」でもビルマ人に対する日本人の偏見と、ビルマという土地を知る事でそのビルマ人像がひどく一方的で偏ったイメージだという事を思い知らされる主人公の困惑が描かれていたのだけど、戦争という「真実」を殺し国民に特定の像だけを刷り込もうとする状況の危うさを作者は伝えようとしているのではないか……二冊目となる著作に触れてそんな事を想わされた。
特定のイメージに縋っているのは安心かも知れないが危うい。困惑させられる状況は不安かもしれないがともすれば「真実」を殺そうとする弱さに飲み込まれずに済む、そんな事を思えば今の日本社会に対する警鐘であるとも読み取れる。
祖父の戦った地について知りたいという好奇心から読み始めた作家さんだけれども、気が付けば現代日本が陥っている状況について考えさせられる切っ掛けを与えてくれた一冊であった。