秘めた絆
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本文が僅か161頁しかないという非常に短く極めて普通小説に近い大人の男と女、親と子の問題について描かれた愛のミステリーです。本書は推理小説作家・夏樹静子さんが既にベテランの域に達した大家だったからこそ著せた作品で、もし著者が若手作家であればおそらく出版を見送られていたのではないかという気がしますね。本書にはお馴染みの警察や刑事も出て来ませんし最後まで事件と言えるものも起きないのですからミステリーの範疇に入るかどうかという部分でも人によって意見が違って大いに迷ってしまいそうですね。そして血生臭いミステリーが巷に数多く溢れている中で偶にはこういう穏やかな作品が一冊ぐらいはあってもいいだろうと私には思えるのですね。 野々村珠子は夫との間に子宝には恵まれなかったもののまずまず平穏な十三年の結婚生活を送っていたが、ある日夫・康平の秘書の薫が自宅に訪ねて来た事で突如として大きな衝撃に見舞われる。それは彼女が康平の子を宿していて産みたいので奥様に容認して欲しいという用件で珠子は返事をしないまま思い悩んでいたが、数ヵ月後に珠子自身も妊娠した事に気づくのだった。 本書の終盤のトリックは真相が告白される前に「きっと二人はこういう風にしたのだろうな」とはっきりとわかりましたね。まあこれ程に単純な仕掛けも珍しく読者の多くの方がきっと思い当たるに違いありませんね。公然と浮気をしながら(待てど暮らせど何時まで経っても一向に子を産んでくれない妻のせいだといわんばかりに)開き直る夫に対しての怒りの念から、偶然にも接近して来た既婚の男を拒まずにつき合う珠子の気持ちはよくわかりますね。しかしまあその後の成行きが珠子の妻の地位を確保する辺りの流れは珠子が意図した訳ではなく多分に著者のストーリーへの介入による誘導を感じさせる所ではありますが。でも私は夫の康平が勘の鋭くないちっとも用心深くないおっとりした性格だったのが本当に幸いだったなと思いますね。もし逆に康平が切れる男で慎重に事を進めて間違いが起きない備えを講じていて真実に気づいたとしたら、もしかしたら血の修羅場が繰り広げられたかも知れないと考えたら思わずぞっとしますよね。本書では「知らぬは男ばかりなり」という言い回しがピッタリで女性の立場からのみのストーリー展開でしたが、私は道徳的な是非は別にして殺人にまで至りかねない不幸を避けるという意味で完全に本書を容認しますね。本書を読んで世間には案外こういった事情が少なくないのかも知れないなと思えて来ましたが、まあ「嘘も方便」でこの秘密がこのまま波風を立てずに無事に守られて行って関係者達がどうか平凡でもまずまず幸せな生涯をまっとうしてくれます様にと心から祈りたいですね。 | ||||
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