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egut さんのレビュー一覧

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レビュー数126

全126件 41~60 3/7ページ

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No.86: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~の感想

堂シリーズ6作目。残り1冊で完結の最終巻前。
単体のミステリを楽しむ作品という感覚ではなく、シリーズとしての物語を楽しむ作品でした。
本書はシリーズを順番に読んでいる人向けの作品となります。

本作は過去編。
シリーズ内の重要人物として挙がる沼四郎や藤衛などが会し2名の被害者が出たとされた過去の事件。
鏡で覆われた堂での事件となります。最終回に向けて風呂敷を畳んでいくような印象でした。

ミステリ単体で見ると事件内容は大味なのですが、シリーズ作品として見れば、本シリーズ特有の館ものとしてのお約束や、理系要素を用いた仕掛けが楽しめました。
トリックも物理的や現実的にどうかとか、このシリーズに関してはもう気にしなくなりました。なんか凄い事をしているという雰囲気で押し通しちゃう感じですね。ここまでくればこれはこれでアリかな。

次回最終回。残りの登場人物達がどう動くのか楽しみです。

▼以下、ネタバレ感想
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鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~ (講談社文庫)
周木律鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~ についてのレビュー
No.85: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

予言の島の感想

『初読はミステリ、二度目はホラー』のキャッチフレーズの本書。
2度読みを謳う作品は警戒しつつも手に取ってしまう性分であります。

さて、結果としては宣伝に偽りなく2度読みしたくなる要素を兼ね備えた作品でした。とある意味でミステリからホラーへ変容するのはとても面白い。終盤は見事です。

ただ正直な所、読書中は面白くありませんでした。
率直な理由として非常に読みづらい。文章から情景が浮かばず読んでいて混乱でした。
著者のデビュー作『ぼぎわんが、来る』は読書済み。ホラーとミステリの融合の面白さ、そして雰囲気も然ることながら読み易さが印象的でした。が、本書は同じ作者なのかと疑う程に文章が分らない。今この場に誰がいて何処で何をしているのか混乱が多い読書でした。その為、物語を楽しむ事ができませんでした。
霊能者や番組の参考として宜保愛子や上岡龍太郎など、芸能人の名前を挙げますが知らない人は余計な登場人物名ですし、ファミコンのゲームソフトの「くにおくん」など挙げる必要があるのかわからないノイズが多かったのも気になりました。横溝、京極、三津田…と、作家の名前を挙げて現実感を出す表現も違和感でした。

本書の評価は最後のネタをどう楽しむかに集中するのではないでしょうか。
初読はミステリと言えど、途中の被害者などの事件模様の印象は残らなかったです。
とはいえ最後のネタは面白かったですし、2度読みしたくなるのは間違いないので好みの問題でこの点数で。

▼以下、ネタバレ感想
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予言の島 (角川ホラー文庫)
澤村伊智予言の島 についてのレビュー
No.84: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

その日彼は死なずにすむか?の感想

タイムリープ。人生やり直しもの。
17歳の男子高校生の主人公が爆発事件に巻き込まれてしまう。死の直前の世界で、7年前に戻りそれから7年間で全ての"奇跡の欠片"を集める事が出来たら生き残れるというゲームが提示される流れ。

記憶を保ったまま10歳の小学生からやり直す作品ではありますが、俺つえぇ系の知識をひけらかす内容ではなく、子供心として、あの時ああしていれば良かった、勇気が足りなかった、という後悔を改善して行動に移す姿を表現した作品に感じました。

読後に感じた事なのですが、この本は著者の後悔や願望なのでは?と思いました。
外国からきた金髪の女の子、趣味が通じる女の子、近所の年上のお姉さん、その時々に正しい選択をした事で仲良くなっていくのですが、何となく心境というか結果の盛り上がりの雰囲気から著者の昔の後悔や願望を感じた次第です。タイムループや死の回避の話の影は薄く、女の子との日常の楽しさの方がよく描かれており、恋愛ものゲームのフラグ回収のような感覚も受けた次第です。著者あとがきにソフィアのモデルがいましたとあったので、子供の頃の気になった人を投影したのかなと感じます。

悪い印象などの不快感はないのでサラッと読めますが、物語よりも著者の願望を強く感じた印象で、好みとしてはこの点数で。

▼以下、ネタバレ感想
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その日彼は死なずにすむか? (ガガガ文庫)
小木君人その日彼は死なずにすむか? についてのレビュー
No.83: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

スパイ教室01 《花園》のリリィの感想

スパイ小説×ライトノベル。キャッチフレーズとなったキーワードは『騙し合い』。
『このライトノベルがすごい2021』の上位に掲載されており、内容が気になったので手に取りました。

読書前に期待していた『騙し』の要素はきちんとあり、ミステリを読みなれていない層には巧くいくと思われる……。歯切れが悪いのは、それをする為に物語を楽しむ要素が犠牲になっている点が多いと感じられた事です。詳しくはネタバレ側で。

ライトノベルとしてのキャラクター性はどうかというと、本書の表紙のリリィと先生の2キャラぐらいしか魅力がないと思いました。2巻、3巻と巻数を重ねる毎に一人一人にスポットが当てられていく構成だと思われます。なので本書単体で見ると各人の能力も未知数のままですし、主人公の能力が何かキーになるかというとそうでもない為、特定のキャラに魅力を持つという事が難しい状況でした。印象に残ったのは、最強な先生との駆け引きと、ドタバタのスパイ教室ぐらいな次第。

スパイ小説とはいえ、ライトノベルの雰囲気の明るさ・軽さで読みやすいのは好感。
ただ本格的なスパイ小説を読む方には非常に物足りなく感じるので、仕掛けにしても濃い一発が何か欲しいと思いました。

▼以下、ネタバレ感想
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スパイ教室01 《花園》のリリィ (ファンタジア文庫)
竹町スパイ教室01 《花園》のリリィ についてのレビュー
No.82:
(6pt)

昨夜は殺れたかもの感想

コメディタッチの夫婦の殺しあいサスペンス。本書は企画もの。2人の著者によるリレー小説。
夫側は藤石波矢が担当し、妻側は辻堂ゆめが担当。片側が仕掛ける殺しの罠に対してもう一人の著者が巧く回避し今度は逆に罠を仕掛けるという応酬を行う。殺し合いという内容ですが、殺伐さはなくコメディ色の雰囲気作品です。

内容から個人的に好きな映画の『Mr.&Mrs. スミス』を思い浮かべました。作中にもこのタイトルが出てきたので、遠からずな設定です。企画ものとしての内容は面白く、本文も2人の著者が描いたとは思えないぐらい両者の文章が馴染んでおり、雰囲気ともども良い読書でした。
ただ、個人的に好みに合わなかったのは、夫婦の些細なきっかけで殺し合いになってしまう所。それを言ったら本書の企画で元も子もないかもですが、今まで良き夫婦の二人が急に殺意を抱く展開は違和感でした。映画の例ですとお互い元殺し屋という設定がある為、互いの仕事の殺し合いが活きてきて面白さに繋がりますが、本書は普通の夫婦でそれまでは険悪な仲でもありませんので、そんな二人が急に殺意を抱く思考が腑に落ちませんでした。

2人の著者による殺しと回避の応酬を描いたものとして、作品を作っている最中、もしくはこれがリアルタイムでの連載ならより楽しい気がします。ただ、この趣旨を知らなかったり、本書単体を読んだ感想としては、繰り返される小ネタのような殺し&回避の流れは退屈にも感じました。驚きとかなく相手の著者は巧くかわしたなという感想なので、それが物語として面白いかは別だと思った為です。最後は綺麗にまとまり良かったです。
昨夜は殺れたかも (講談社タイガ)
藤石波矢昨夜は殺れたかも についてのレビュー
No.81:
(6pt)

スクールカースト殺人教室の感想

あらすじとイラストの雰囲気からライトミステリを予想していたのですが、中身は堅実に捜査を進める警察小説のような作品でした。あらすじには、"バトルロワイヤル"、"復讐ゲーム"、と言った若者向けなワードがありますがそういう作品ではありません。コツコツと捜査を進め、クラス内で何が起きているのか全貌が見えてくるタイプの作品です。中身に沿わない宣伝は好きではありませんが、作品自体は面白く読めました。

担任の先生が殺害された1年D組。表向きの担任の姿は人気の先生らしいが、警察がクラスの生徒達から事情聴取を進めていくと、違った素顔が見えてきます。そして、クラス内の権力図、学級崩壊、いじめ、といった問題が浮かび上がってくる流れ。

学校内の悪い所が描かれ、暗く気分が悪くなるような話で読書の雰囲気は重め。ただ文章は読みやすく、警察の捜査と共に全貌が明かされていく展開は惹き込まれました。
本書の難点というか改善してほしいと感じた点は、登場人物の名前。苗字で呼んだり、下の名前で呼んだり、人物の把握が分り辛くなる所を感じました。フォローの為に帯裏に名前と関係図が載せてありましたが、本編に掲載しても良いのではと思いました。

中学・高校生向けの学園ミステリとしては良いバランス。気分が悪くなる所も含めて良い塩梅かなと思いました。

▼以下、ネタバレ感想
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スクールカースト殺人教室
堀内公太郎スクールカースト殺人教室 についてのレビュー
No.80: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

天国までの49日間の感想

書店で多く平積みされていたので手に取りました。
小中学生向けのいじめをテーマとした物語。ミステリ要素はほぼなく若い世代向けの社会派小説です。
自殺をした少女が成仏するまでの49日間、幽霊として家族や加害者や学校のその後を見つめる話。

話の流れだけ拾ってしまうと良くある物語ではありましたが、
小中学生を読者ターゲットとして、いじめ問題を読みやすく触れさせる事を考えると中々良く出来た作品に感じました。
毒々しさも控えめで、優しすぎる展開については大人心では軽過ぎますが、死者から見る被害者・加害者・関わった人の心の例を物語として触れる分にはアリかと。良い意味で文章はサクサク読めるので、嫌な気持ちになり過ぎずに読めるのが良かったです。

国語や道徳の教科書では真面目で固くなりそうな内容を、本書の少しファンタジーな物語としてなら読みやすい。
小中学生の読書感想文の題材としてもアリかもしれない。そんな事も思いました。
天国までの49日間 (スターツ出版文庫)
櫻井千姫天国までの49日間 についてのレビュー
No.79:
(6pt)

孤島の来訪者の感想

途中で何を読んでいるのか分からなくなって混乱しました。良い意味でも悪い意味でも。
予備知識がない方が良さそうな面もあれば、無いならないで混乱しそうな要素があり、あらすじにある通り、『予測不能』な孤島本格ミステリとなっていました。

シリーズ2弾とありますが、前作とは関わりありませんので、本書単体で楽しめます。

最初に書きましたが個人的に中盤は混乱してしまい、内容が把握できなくなってしまいました。で、少ししてそういう本か!と理解し、読者への挑戦を迎えて解答編を読み終えました。
読み終わってみれば特殊な状況もののミステリとして久しぶりな刺激で面白かったです。2度目をサラッと読み直してよくできているなと改めて感じました。※2度読みな仕掛けがある本という意味ではなくて、自分が理解し辛かっただけです。
なので率直な感想として分り辛い本でした。場面や視点や状況が変わり過ぎてますし、登場人物の役柄も似ていて区別が付き辛かったです。
ミステリとしての物語の構築、繋がり方なんかはとても面白い。ただ前作でも感じたのですが、話しが説明的というか盛り上がりの演出が弱いというか、物語を眺めているような気分で気持ちが入り辛く、初読では理解し辛いというのが個人的な印象でした。

▼以下、ネタバレ感想
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孤島の来訪者 (創元推理文庫)
方丈貴恵孤島の来訪者 についてのレビュー
No.78: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

地べたを旅立つ 掃除機探偵の推理と冒険の感想

ロボット掃除機への転生もの。
設定は面白い。あらすじは事故にあった警察官が目を覚ましたらロボット掃除機になっていたという始まり。SF転生ものであるが、対象がロボット掃除機という現代のアイテムが活用されている点が新しいです。IOTとなる掃除機に組み込まれたwifi通信でネットからの情報を送受信したり、ロボットアームを用いるなど現代要素が満載になっていました。そして目を覚ましたすぐ隣の部屋に死体があったというミステリの流れが興味をそそられました。

特殊設定ミステリの期待が高まりましたが、実際の所本書はミステリというより冒険小説。転生先から30km離れた姪の元へ向う事がメインストーリー。走行速度は時速1.8km。充電どうなる?その道中での出会いとプチ事件が絡んでいく流れです。

読書中の正直な感想として、「早川」主催の「アガサ・クリスティー賞」というワードに期待し過ぎてしまったかもです。本格的、大人向けというより、ライトミステリの部類。個人的にはティーンエイジャー向けのレーベル出版ならもっと評価が上がると思った次第。というのは扱うミステリ要素は軽めですし、社会問題も扱われますがテーマに深みはなくTVで見知れる内容なので、早川の濃い内容(勝手な早川イメージ)を求めて読んでしまうと、物足りなくなってしまった次第。

あえて冒険小説として見たとすると札幌小樽の30kmの景色があまり感じられませんでした。ロボット掃除機の苦労は微笑ましいのですがせっかく地名を出すなら空気感や情景も感じたかった。主人公と姪の料理などのエピソードも微笑ましく読めますが、本筋とはあまり結び付かず。デビュー作なので色々書きたい事を書いたという印象を受けた作品でした。

他思う所は登場する人やエピソードの温かさや優しさの表現が印象に残りました。悪意な内容だとしても優しい雰囲気を醸し出しています。著者の持ち味なのかなと。それゆえ殺伐さを求めないティーンエイジャー向けな作品で読んでみたいと思った次第。アイディアと雰囲気はよいので次の作品はどうなるのだろうと気になる所です。
地べたを旅立つ 掃除機探偵の推理と冒険
No.77:
(6pt)

悪夢のエレベーターの感想

エレベーターの室内だけで起きるドラマなので演劇や小規模撮影の映像化向きな作品。
著者デビュー作であり、その後の著者の特徴となる群像劇作品の初々しさを感じる内容でした。冗長に感じたのは、第一章で進められた物語が第二章にて別の視点で描かれる様子。ほとんど同じ内容であり、会話内容も繰り返す為、違った視点の面白さより退屈が勝りました。好みは別として、最後まで意外な展開を用意して読者を楽しませようとする脚本作りを感じた作品でした。
悪夢のエレベーター (幻冬舎文庫)
木下半太悪夢のエレベーター についてのレビュー
No.76:
(6pt)

あなたは嘘を見抜けないの感想

物語は2つのパートが章ごとに交互に描かれます。
1つ目は、無人島での廃墟探索ツアーで死んだ彼女を想う男性パート。島の外視点。
2つ目は、無人島での廃墟探索ツアーの様子。島の中での視点。
廃墟探索ツアーの面々はSNSで知り合った者達。お互いをハンドルネームで呼び合う。その島で事件が起きます。
さて、ピンと来る方、大いにいると思います。個人的に『十角館』を思い浮かびました。同じ講談社ですしね。そういった本格ミステリの設定を感じながらの読書は楽しかったです。

ただ、なんというか薄味さを感じました。コテコテではなく、ライトミステリです。
また、菅原和也作品はアングラや微グロ、刺激的な表現が多かった印象ですが、本書の講談社タイガからの作品は大分マイルドになっていますね。持ち味の良さがあまりなく特徴が見え辛い平凡な作品になっている印象でした。
表紙・タイトル・あらすじが、中身の雰囲気と合っていないのも残念。

▼以下、ネタバレ感想
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あなたは嘘を見抜けない (講談社タイガ)
菅原和也あなたは嘘を見抜けない についてのレビュー
No.75:
(6pt)

極限トランクの感想

B級サスペンスですが、分かりやすい展開と読みやすい文章でサクッと楽しめた作品でした。

あらすじは、40代男性、仕事は順調だが家庭に悩みを抱える主人公。気分転換に少しハメを外そうと六本木のクラブへ足を運びナンパしようにも上手くいかず、、、そこに人生のコーディネーターと称する男が現れ、事件に巻き込まれる。という流れ。

読者ターゲットはサラリーマン男性。分かりやすい設定と問題。読者層の非日常が巧く並べられていると思いました。どんな展開になるかは読んでからのお楽しみですが、深く考えないでシンプルにサスペンスを楽しめた作品でした。

▼以下、ネタバレ感想
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極限トランク (PHP文芸文庫)
木下半太極限トランク についてのレビュー
No.74:
(6pt)

黒猫の小夜曲(セレナーデ)の感想

猫に憑依した死神が、現世に未練を残し地縛霊となった魂の悩みを救う話。シリーズ2作目。本書の場合は1作目から読んだ方がよいです。短編集の体裁で話を進めていくと繋がりが見えてくるのは前作同様面白い。ただ個人的な好みとしていまいちの2作目でした。事件や謎については読者置いてけぼりの展開。手がかりを推理して導くのではなく、当事者達で思い出したり、重要人物が突然解答を語りだしたりするので謎解きは皆無。人情ものとして見たとしても感情移入できるキャラがいない為に感動が薄れてしまいます。
1作目の犬のレオは信念の筋を感じましたが、本作の猫のクロはおちゃらけていて真面目なシーンもなんか気が抜けてしまい軽い印象でした。そこが猫っぽいと言われればそうなのですが好みに合わず。
事件の真相や仕掛けは複雑なものですが分り辛くて楽しみ辛い。ハートフル作品として売り出していますが、中身はミステリを強めようとしてちぐはぐになってしまった印象を受けました。

▼以下、ネタバレ感想
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黒猫の小夜曲 (光文社文庫)
知念実希人黒猫の小夜曲(セレナーデ) についてのレビュー
No.73:
(6pt)

キネマ探偵カレイドミステリーの感想

読みやすくそこそこ楽しめた作品でした。
タイトルにある通り映画を題材としたライトミステリ。

映画好きの引きこもりの探偵役。事件の概要を相談すると、映画の前例と絡めて解決へと導かれる。映画の題材は有名所なので未鑑賞でも聞いたことあるものばかりで馴染みやすい。鑑賞済みなら小ネタが楽しめ、未鑑賞でも見てみようかなと思えたのが良かったです。映画オタクの嗄井戸を通して、著者の映画好きな気持ちと各作品の紹介が得られたのがとても楽しめました。

作品の雰囲気について。日常・学園物から重い内容まで混ざっています。良い表現をするとバラエティ豊かですが、悪い表現をすると方向性がブレています。自分の感想としては後者でして、 2章・3章ぐらいの学園物の雰囲気であればレーベルに沿い、映画×ミステリの特徴でティーンエイジャーにも薦めやすい内容だと思いました。4章のようなシリアスで重い内容が出ると読者の好みが分かれそうだと感じました。ただ、映画を絡めた事件の真相としては4章が一番面白かったです。

シリーズ化されているので2作目がどういう雰囲気の方向へ向かったのか気になります。
読みやすい本なのと映画ネタが面白かったので続けて読んでみようと思います。

▼以下、ネタバレ感想
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キネマ探偵カレイドミステリー (メディアワークス文庫)
No.72:
(6pt)

記憶屋の感想

映画の予告を見て興味を持ち、原作を手に取りました。
『日本ホラー小説大賞の読者賞』を受賞している作品。ホラー系の応募作品となりますが、現代ではホラーというより青春ライトミステリの部類です。"都市伝説"要素が一昔前のホラージャンルの扱いになった感覚です。怖さやおどろしさはありません。内容はむしろ男女の恋愛物語が扱われるので、ホラーのレッテルを外して、ティーンエイジャー向けの青春小説として紹介したい作品だと思いました。※版元が同じ角川グループならMW文庫で世に出した方が人気が出そうと感じます。

記憶を扱う作品として、どんな記憶を無くすかで物語の広がりを期待する所ですが、本書は複数のパターンがあれど根底は男女間の恋愛物語。想い人が自分の事を忘れてしまったら。または記憶屋に頼む程、忘れたい記憶とはなんなのか。記憶についての若者の葛藤を描いた作品でした。良い印象としては先に述べた通りティーンエイジャーに好まれそうな物語。悪い印象としては、悩みに共感が得られない。若い人はそういう悩みを抱えてそれで記憶を消す考えに至ってしまうのかと選択肢の少なさを感じた次第。

設定は面白いしミステリ的な仕掛けもありますが、もっと凄い事ができそうなもどかしさを感じます。応募がホラーの賞なので仕掛けを望むのは筋違いなのですが、そう感じてしまう。
結局の所、結論が定まらず曖昧に終わる味になっており、ホラー、ミステリ、恋愛物、どの視点で見ても心に強く残る味がなく浅く終わってしまった読後感でした。文章は読みやすく設定も面白い。映画化含め今後の作品がどのようになっているかは興味があります。

▼以下、ネタバレ感想
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記憶屋 (角川ホラー文庫)
織守きょうや記憶屋 についてのレビュー
No.71:
(6pt)

雪が白いとき、かつそのときに限りの感想

日本の90年代の本格ミステリを彷彿させる作品。学園&青春ミステリ。
事件は雪の降る校舎での足跡なき殺人です。
華文ミステリと言えど雰囲気は日本の学園ミステリを読んでいる感覚でした。

足跡問題や雪密室など日本のミステリでは近年見なくなりましたが、中国から新本格のリニューアルな感覚で刊行される世の流れは面白いです。本書はハヤカワポケットミステリでの出版ですが、いつものポケミスの表紙と雰囲気が違います。日本の青春もの・ライト層の出版物な印象。雪を扱うミステリは古いかなと思われる所、この表紙のおかげで美しい雪の情景をイメージさせるプラスの効果を感じました。

本書の難点を述べると登場人物の名前です。人物名:馮露葵、 顧千千、 姚漱寒……。
海外ミステリのカタカナ名以上に見慣れない漢字名なので読めません。
おそらく版元もこの難点は感じており細かな対策が見られます。本書付属のしおりには登場人物一覧を記載。章ごとに人物名が現れる時はルビを再掲載させる。という具合。
ただそれでも読書中に都度名前を確認するのは集中力が途切れますし、もうこの人は男なのか女なのかもわからず、何となく全員女性キャラとして読んでいました。女の子同士がキャッキャする百合な雰囲気も感じるのでそれで問題ないかなと。

他の著者との比較で恐縮ですが、同じ華文ミステリで好きな作家の陳浩基の作品の登場人物は混乱しないのです。何でだろうと思って見直すと、名前をカタカナにしたり場面に登場するキャラが少ない為、把握しやすくなっていました。
もし今後も作品が出版される場合、人物がもっと把握しやすくなれば良いなと思います。本格ミステリと登場人物達や場の雰囲気はとても好みなので。ただこれは個人の問題であり中国名に慣れればよいか。。。そんな事を思いました。
雪が白いとき、かつそのときに限り (ハヤカワ・ミステリ)
No.70: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

紅蓮館の殺人の感想

館ものの本格ミステリ。
落雷により山火事が発生し、館へ火の手が迫るタイムリミット模様。さらにカラクリ仕掛けの館、殺人鬼の存在、名探偵の対決、山火事に囲まれるクローズドサークルetc...と、ミステリのガジェット豊富でワクワクな設定でした。
ただ、本書のテーマは犯人当てやトリックというミステリではなくて、「名探偵の存在意義」に趣が置かれていると感じました。もちろん推理模様もありミステリを十分に楽しめますが、変わった展開で話が進行します。
山火事による時間の制約がある中、生存と真実どちらを優先させて行動するか。なかなか面白いテーマでした。

ちょっと思う所として名探偵の葛城とワトソン役の田所君。エラリークイーンみたいに悩みや葛藤を描きたいのか、作品内で成長する青春模様な結果からなのか、完璧そうで弱く、弱そうで強くなるなど、キャラがぶれぶれなのが気になりました。圧倒的な名探偵なら気持ちが良いのですが、凄い所と弱い所で相殺された普通の高校生でモブ化の印象。敗北や負け惜しみにも見える弱さ。それを狙っているのかもしれませんが、名探偵をテーマと感じる本書において、終盤この二人の魅力が減衰していく感じは後味が悪かったです。

▼以下、ネタバレ感想
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紅蓮館の殺人 (講談社タイガ)
阿津川辰海紅蓮館の殺人 についてのレビュー
No.69:
(6pt)

殺人作家同盟の感想

アマチュア作家サークル内での事件。娘に、もう少し外に出た方がよいよと促されて訪れたサークルで事件に巻き込まれてしまった主人公のボブ。サークル面々とまだ深い関係がないのをいいことに、客観的立場で事件の相談を受ける事になる。

主人公と読者の視点が合っており、怪しい容疑者達との関りが面白い。著者の作品に出てくる登場人物は個性とユーモアがあるので殺人事件であれど雰囲気が重くならないのが好みです。

ミステリとしては犯人当てになります。どことなく古典作品を思わせる展開であり、少し言葉が悪いですが古い印象。大きな展開があるわけではないですが、丁寧な古き良きミステリといった印象でした。

▼以下、ネタバレ感想
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殺人作家同盟 (ハヤカワ・ノヴェルズ)
ピーター・ラヴゼイ殺人作家同盟 についてのレビュー
No.68:
(6pt)

君は月夜に光り輝くの感想

難病・余命ものの恋愛小説。
死期が近づくと体が発光する発光病というものが存在する世界。余命わずかな彼女と青年の物語。
発光病という設定について何かしら意味があるかと言われれば余りなく、現実的に例えると癌と変わらない。本書は設定どうこう言ったり既視感を述べて比較するものではないと感じます。余命ものでよくある話と感じてしまうのですが、本書の良さは雰囲気というか話の流れの切なさがとても沁みる作品でした。

MW文庫で電撃小説大賞作品より。ターゲット層にとても合った作品です。発光病の扱いも映像にしたくなる要素です。
主人公が余命わずかな彼女の為に何でも実行してくれる流れはピンと来なかったのですが、最後まで読んで主人公の心情を知ってみると思春期の危うさ、儚さ、葛藤、など、複雑な心を感じられて悪い事は言えない感じになりました。

雰囲気や流れがとても綺麗なので、中高生に向けた余命ものの恋愛小説として楽しみました。
君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫)
佐野徹夜君は月夜に光り輝く についてのレビュー
No.67:
(6pt)

さみしさの周波数の感想

著者の切ない話を集めた短編集。
本作に収録されている作品は『未来予報』『手を握る泥棒の物語』『フィルムの中の少女』『失はれた物語』の4編。個人的に楽しめたのが『手を握る泥棒の物語』と『失はれた物語』の2作でした。
この2作は短編集『失はなれる物語』にも含まれています。この2作を読みたい場合は本書よりもそちらを手に取るとよいです。

著者はあとがきが面白く、そこには『未来予報』と『フィルムの中の少女』は生活の為に出版社から依頼されたテーマで書かれた作品であると書かれていました。まぁ、そんな気はします。面白くないわけではないですが、切ないテーマや怖いテーマを感じる事もなく、綺麗に描かれたシーンはありますが重苦しい読書でした。あまり心に残りませんでした。

以下は、『手を握る泥棒の物語』と『失はれた物語』の感想を。

▼以下、ネタバレ感想
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さみしさの周波数 (角川スニーカー文庫)
乙一さみしさの周波数 についてのレビュー