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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数239件
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扱うテーマは「生と死」であろうか。自殺願望、孤独、児童養護施設、ホスピス。絶望や希望の内面を描く物語。ミステリにおける事件が起こるわけでもないので、求心力が弱く感じましたが、文面は整然としいて読みやすく読書はあっという間でした。
作品内容の為か、登場する人物達にまったく共感ができなかったです。 正直扱いがアレでしたが、一番共感して、まともだと思えたのはベンツ(あだ名)でした。 なので釈然とせず、作品の意志と共感できない所が多い為、好みに合わずでした。 1年間何があったのか。その話の全容が分かった最後にやっとミステリらしくなって、なるほど。と楽しめた作品です。 テーマのわりに、終わりが爽やかにまとめているのが良かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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本書はとても書くのに苦労した作品なのでしょうか。そう感じました。
ダンガンロンパも本シリーズも好みで、要所要所は面白くて問題ないのですが、繋がりがバラバラでまとまっていないのが苦しいです。 さらには、発売前からキャッチコピーでPRされていた『難攻不落の密室十二宮』のテーマ。 聖闘士星矢模様?十二の密室で盛りだくさん!っと、思いきや、それは予告だけで全部の事件は本書では書かれず、to be continued...って、完結しないのか!事件が別冊に続くって……『十二宮』も無意味で、ただ多く見せて宣伝しただけだったり、、、それはどうかと思いました。 300Pの前半は事件とは関係ないシリーズの物語の橋渡しで後半が事件。と、ぶつ切り感もあり、個々の内容は好きですが、前後作に影響する本作だけでは完結していない作品構成が残念でした。 その他気になる点として、 主人公の五月雨結の扱いがちょっと酷い。一応探偵で主人公、周りは超人的な探偵の中にいる為、読者が親近感沸きやすい位置にいるはず。そのキャラが本作では完全にアホキャラにされています。事件中にショッピングがどうとか、雰囲気を壊し探偵としてどうなのか?と思う問題発言をしていたり、役立たずキャラ設定が可哀想でした。 シリーズ好きですし、新刊が発売されたのは嬉しいのですが、内容が煮詰まってなく、作るの苦労したのかなと思う次第です。 本書の最後の広告部分に、2015年新プロジェクト『ダンガンロンパ×佐藤友哉』稼働。と、別作家で始まるあたりも、いろいろ危惧する次第でした。 なんだかんだ書いてしまいましたが、シリーズも作家さんも好きなので次回作も楽しみにしてます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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1つの密室、1つの死体、限られた登場人物。
定番のミステリ構成の中、推理の基点や条件式を変えると、犯人やトリックが様変わりする多重解決作品。 本書はさらにSF的な要素を加え、間違った解決を行うと違う平衡世界へ飛ばされ、状況が少し変えられてしまう。こんな世界で推理は成り立つのか。 正直な所、複雑さが目立って楽しめなかったです。 後述するこのパラレルワールドならではの仕掛けには、ちょっと面白い。と思える点も確かに存在するのですが、推理する点も物語も変化してしまっては楽しみ所がなく、毎回違った状況設定を読むだけの気持ちになってしまいました。 『七回死んだ男』『STEINS;GATE』『ディスコ探偵水曜日』あたりの平衡世界や多重解決ものは好きな分類なのですが、本書とは相性が悪かった模様です。。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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事件現場の虫の生態から事件を捜査していく法医昆虫学捜査官シリーズの第3弾。
本作では水死体を扱っており、過去作とは違う水に関連した虫の展開で、新たな場を作ったと感じました。虫に関しての薀蓄と、登場するキャラクター達のやりとりは今回も楽しませて頂きました。 点数が低い気持ちとしては、今回は虫に関する刺激が弱め。事件発生の序盤と終盤の解決は虫に関する話でシリーズとして特徴的なのですが、中盤の事件捜査については虫があまり関係していなくて、普通の警察小説を読んでいる気分でした。 虫についての表現も大分落ち着いて淡泊になってます。 1作目では、ウジの表現をウニョウニョと気持ち悪く描いていて、その気持ち悪い虫の話の土台があってこそ、明るいキャラの赤堀が輝いていたり、皆が嫌がる虫から事件が解決する気持ちよさがあったりしたのですが、今作では虫の気持ち悪さがサッパリなくなっているので、なんというかギャップの面白さや個性的な要素が弱まり、よくある警察小説に感じてしまった気持ちでした。 気持ち悪いのが苦手な読者もいますし、今作ぐらいの表現ならTVドラマ向けだなと感じたりと思うところですが、個人的には何か物足りなさを感じました。 とはいえ、虫の捜査や登場キャラの楽しさは安定なので次作も期待です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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相変わらず伊坂幸太郎作品らしいと感じる、ちょっと外れた登場人物達。そして音楽に絡んだキザなセリフや軽妙なテンポは読んでいて楽しかったです。小説ならではと感じます。
個人的に苦手な、著者作品に入り込む悪意の模様については、本作の世界が殺し屋達の物語なので、そういうものだと嫌な気持ちにならずに読めたのが良かったです。 ザ・一般人代表といった鈴木の巻き込まれ型作品で、様々な殺し屋達の視点と共に物語が進み、どこに着地するのかわからない楽しさがありました。 が、一方、読み終わってみると、何も解決していないような、何かが心にグッと残るでもなく、一時の夢のように通り過ぎてしまった不思議な余韻を感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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警察官になる前の、警察学校が舞台の連作短編集。どんな思いで警察官になろうとするかは人それぞれだと思いますが、本書に登場する人物達やエピソードが陰湿で暗い。相手を利用したり騙したり陰口やらで足を引っ張り合う。仕舞には退学や傷を負ったりとする訳で、厳しい所なのは伝わりましたが、これから警察官になろうとする人たちが舞台の警察学校において本書の内容はいかがなものかと思いました。
新しい警察小説としてPRされてますが、警察学校の舞台と内容の組み合わせが今までやらなかっただけで、 囚人達が更生して行く舞台の方が合っているような複雑な心境になりました。 ただ、感情的な好みの点はおいておいて、 警察学校の舞台を活用した、職務質問の実習内容や、拳銃の考え、書類、日誌などの制度を元にした物語の作りは良かったです。 他のミステリに登場する警察官達も、こういった警察学校を卒業していると思うと違う見方に変わります。 他の本の話になりますが、ミステリでスパイ養成学校を舞台にした柳広司『ジョーカー・ゲーム』と言う作品があるのですが、こちらは一種ファンタジーのような無関係な舞台のスパイの場を使う事で、場の疑問は感じさせず、厳しさや頭脳的な要素に専念できました。本書は警察官という現実的な存在を扱った為、仕掛けの面白さ以外に、日本の警察はどうなの?と、違うノイズを感じてしまった事が個人的に好みとは違った次第です。 |
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文芸+ミステリ。
子供にとっての夏休みというのは、ある一定期間での出会いと別れがあり、青春小説の定番舞台。六甲の別荘にて男の子2人が出会った女の子とのエピソードから始まり、ミステリらしからぬ雰囲気のまま物語が始まります。 著者の本は初めてです。読んでいて、あぁ文章が綺麗だなー。表現が丁寧だなーと、国語の教科書を読んでいる気持ちになり文芸を味わいます。ミステリらしい謎は全く感じない読書でした。 時代は変わり、戦争前の昭和の物語に入ると登場する人物達がカッコよく魅力的。ベルリンで出会った謎の女性とのエピソード。時代を歩んで社を育てた翁の貫録のある行動やセリフ。この過去エピソードがとても楽しかったです。 そうこうするうちに物語は終盤に至り、あれ?これミステリだったの?どういうことだ?・・・あっ!となりました。 Amazonレビューなどでは「だまされた!」と言う表現がありますが、そういうトリック系の話ではなくて、表向きは文芸書。物語の裏側に謎がある系のミステリです。なのでミステリを期待すると退屈です。文芸書を読む感じで物語に浸る感覚で手に取ると良いと思いました。 物語の背景にミステリが存在する作品は好きな方なのですが、本作は、あまり乗り気になれませんでした。 文学にゆったり触れるより、刺激やワクワク感が好みだからかもしません。 あと、倉沢家の登場人物の把握に混乱して感動を弱めた気もします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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さらっとした学園ミステリ。人が死なない作品でもあります。
ミステリとしては謎や手がかりの魅力が弱く伏線と言った要素もないので物足りなさを感じました。 タイトルとなる『退出ゲーム』は即興演劇の頭脳戦。行動やセリフをその場で考え、巧く相手を出し抜いて舞台から退場できれば勝ちと言うもの。新鮮な設定で面白かったのですが、読中に条件が変化して行き、解決へ向けての展開に置いてけぼりにされてしまった印象でした。作品の背景は良かったです。 2話目の『クロスキューブ』は好み。遺品となる6面が白のルービックキューブの謎は、登場人物とともに何故こんなものが?と共感しながらストーリーが進行していったので最後の解決まで楽しめました。 学園物としてはキャラが明るくて可愛らしいです。特にハルチカの千夏が元気よいのが好感でした。 その明るさの影にただの日常の謎ではなく、少しテーマに毒っ気を加えている所も個性的で魅力でした。 |
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タイトルや表紙の絵柄通り『不思議の国のアリス』をモチーフにしたミステリ。
アリスの世界観が活きていて、会話が噛み合わない独特の雰囲気が健在。 登場キャラクター達の会話の可笑しさにクスっときました。 夢の世界では不思議の国のアリスに登場するキャラクターになっており、その夢は登場人物達と共有されます。 夢と現実世界はリンクしていて、どちらかの世界で殺されると、本当に死んでしまいます。 ※最初の事件は夢の世界でハンプティ・ダンプティが塀から落とされ死亡。ハンプティ・ダンプティになった夢を見ていた人が現実世界で死亡する。 本書は、夢or現実で事件を起こしている犯人は誰なのか? と言う、謎から始まる特殊なミステリです。 現実世界と仮想世界がリンクする物語の定番要素である、誰がどのキャラクターなのか?の割り当てを感じながら読書をしようと思いましたが、会話主体の構成の中、不思議の国のアリスの世界観での噛み合わない会話に混乱してしまい、あまり事件は意識せず世界観に浸る感じで読みました。 最後の展開は好みが分かれる所だと思いますが、アリスの世界観と著者らしさを十分に感じる作品であると思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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前作の『黄昏に眠る秋』に続く冬の2作目。シリーズ作品となっていますが、前後の関係性は殆どないので、今作から読んでも問題ないです。
冬の灯台、観光客がいない時期のひっそりとしたエーランド島。派手さがない情景や雰囲気と島の人々の模様を描く静かなミステリ。幽霊やら、日本のこっくりさんのような要素もでてきてオカルト色が強いです。とはいえ、ホラーや恐怖の派手さもなく、幽霊要素は雰囲気の1つに取り込まれている感じです。 私自身の記録の為にも感想を残しておきたい所なのですが、特徴的な派手さがないこの手の作品はどうやって感想を書いたら良いか悩む次第。 ここがいい、あれがいい。と言うのではなく全体的な雰囲気が神秘的で、読後良かったなと思う作品です。 静かな冬の空気感を味わう文学ミステリ。 いろいろな賞を受賞している本作ですが、日本の受賞作品で感じる、仕掛けや論理や推理展開とは違った評価が、海外ミステリで行なわれているんだと感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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海外物は異常な登場人物やバイオレンスなど、日本にはない刺激的な要素でスリルやサスペンスといった作品に出会う事が多いのですが、本書はそれらとは違う作品です。
非常に刺激がない。 秋から冬にかけての哀愁漂うシンミリした雰囲気。 メインの登場人物は老人でスピード感がでるアクションはなし。 ここら辺の感覚から好みに合わなかったり退屈に感じてしまうかもしれません。 単に私が中盤までページの進みが遅かっただけですが。。。 が、読み終わってみればミステリ文学といいますか、 作品に張られている伏線がミステリとしての面白さを感じ、 舞台のエーランド島の空気感やそこに住む人々の模様を味わえるよい作品でした。 読む前のオススメですが、 本書の舞台となる、『エーランド島』をGoogleの画像や地図検索で視覚的に見ておくと、より作品に入り込めます。 何かの手がかりというわけではないのでご安心を。 石灰岩の荒地や平野の何か物寂しい感じを一層引き立てると思います。 20年前に子供が行方不明になって悲壮感漂いながら暮らしていた母ユリア。 介護施設で暮らす80歳近いユリアの父 イェルロフ。 人生の終盤で、季節でいうところ冬の一歩手前と言うところ。 今頃になって何者かから子供の靴が届く。 子供は生きているのか?行方不明になった時、何が起きたのか? 現在と過去を繰り返すよくある構成の中で、読者は物語の真相を知っていきます。 読者は過去も見れるので、登場人物達より多い情報量で話を把握して行くわけですが、 ここがなんというか魅せ方が巧かったです。 途中まで面白さが分からなく読書が大変だった為、好みの点数はそんなに高くないです。 2作目以降は同じ舞台や登場人物で内容把握が容易らしいので、より楽しめそう。 続けて読んでみようと思います。 |
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デス・ゲームものは多種多様に昔から存在していますが、本作は現代風に世に出した作品。という印象を強く受けます。
それぞれ固有の能力を持つ、16人の魔法少女が生き残りをかけて、ルールに則した戦略を立てたり殺し合いを行う娯楽作品です。 本作を読むにあたって類似の作品が思い浮かぶ事だと思います。 例えば、『バトル・ロワイヤル』や『インシテミル』では、それぞれの異なる道具を得られ、生き残りをかける。山田風太郎の『忍法帖』なら忍術。少年漫画では多いですが、能力バトルものは、時代に合わせたエンタメ作品として世にでてます。 本作は2011年度のアニメ、魔法少女まどか☆マギカの影響も多分に感じましたが、それは時代に合わせてアニメ・ライトノベル読者層に買われる事を狙った商業本としてアリだと思います。 ネタばれではない話で。 変身したら魔法少女ですが、変身前は普通の子供だったり、男だったというアバターのゲーム要素や、この手のデス・ゲームをライトノベルに落とし込んだ商品としては、売れる客層を考えらている、よくできた作品だと思いました。16人のバトルに対して300ページ台のコンパクトな作品にまとまっているのも読みやすくて良かったです。 登場人物紹介で、読者に対してだけ各人の能力が明かされている試みが面白いと思いました。 事前に把握できているので、能力の混乱や置いてけぼり感はまったくなく、能力の相性バトルが楽しめます。最後まで誰が生き残るだろう?というパズル小説のような楽しみがありました。 欲を言うと、ミステリ読みなので、その視点で考えると、意外な展開や驚きの仕掛けが無かったのが物足りなかったです。魔法やアバターを活用した、本作ならではの仕掛けが欲しかった次第であります。 適当発言ですが、実は敵だと思っていた相手の本体が仲の良い友人や兄弟だったり、複アカで2人の魔法少女が同一人物だったり、とか。。そんな感じの、デスゲーム以外に、何かしら本作の設定だからこそできる驚きの真相が欲しかったと思いました。 そういう本ではないのは承知ですが、そんな事を思った次第です。 単純な萌え娯楽小説かと思いきや、意外とダーク。みんな一人ぼっちで何か心に抱えている様子など世界感に合っていて良かったです。 |
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終盤まで何の本だか分からず、どこに落ち着くのかと思いながらの読書でした。
表紙からライトノベルの体裁ではありますが、軽くなく、一般書のような印象でテーマは重かったです。 小学校内で起きたとある事故。 クラスメートのN君は死に、主人公の僕は全身麻痺で瞼も指も何一つ体を動かす事ができない。 脳波から意識が正常なのは分かっているので、お見舞いで足を運ぶ母親や友人が語りかけてくる日々。 事件からたびたび訪れる、クラスメートだった菜々子さんもその一人。 3年経った今、菜々子さんは、身動きできない僕に、あれは、事故ではなく事件だったと語り出す。 まず、面白いと思うのはシチュエーションです。 全身麻痺の僕に、一方的に語られる事故の概要や思考の流れを話します。 僕は、語られてくる話に、正しいとも、違うとも、質問など、反応ができない。 ミステリ本で、読者が一方的に探偵の真相解説を読まされている印象と重なりました。 その時に起きる疑問、そうだっけ?そんな事あったかな。と、合間に起きる思考を主人公の僕が回想する構成です。 また、探偵は何故推理してそれを披露するのか?そんなテーマも感じた次第です。 事故で終結した出来事を掘り返し、別に犯人がいようがいまいが、何とも思っていない場の状況で何故語るのか。 ライトノベルで見られる、思考回路がちょっと捻くれたキャラクター達の心理が面白い所でした。 語り手と受け手の心理模様。何故語るのか。 ここら辺が私の面白かったポイントです。 好みに合わなかったのは、イジメ問題などの人間関係、小学校内のコミュニティでの陰鬱な所を強く読まされた所。 あまり心地よいものではなく、全体的に暗い感じなのが合わなかったです。 |
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何度も繰り返される世界でのタイムリープは好きなんですけど、本書は合わなかったです。
あらすじとタイトルから感じる期待とのズレが大きかったのかもしれません。 驚きのネタがいくつかありますが、本書に限っては、最初に明かしてしまってからの方が、登場人物達のセリフや行動が把握できて読みやすかったのではと思いました。 謎が謎のまま進行するのに対して、先が気になる魅力がありませんでした。先に設定を伝えてから読んだ方が、そういう本だと分かって楽しめそうです。 ただ、強烈に印象に残りました。 この手が好きな人が一度は考えそうなネタを商業紙でやっている本は、あまり知りません。独特で記憶に残る1冊ではあります。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ゴミの山からビニール袋などを漁り、売って生活する子供たち。場所の縄張りなど、普段感じた事がない価値観の違いをミステリを通して触れる事ができる読書でした。
ストリートチルドレンが街中で拳銃で殺されようが気にも留めないと警察が発言するシーンは気持ちに響く物がありました。そんな一般の人からは煙たがれ見向きもされない子供が、殺され、顔を赤く塗られる見立てが何故行われたのか。と言った謎が生まれます。 ただ、本書は謎解きよりも、貧困や人権問題などの影の部分を、詩的な文体で読めるのが魅力でした。 晴れているのに傘をさしているのは観光客だ。と言うのが印象的。小雨でも年中湿度が高い所では晴れの扱い。感覚の違いでハッとさせられるシーンが多かったです。 |
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前作の双頭悪魔を読んだのは10年以上前で久しぶりのシリーズ読書。
間が空きましたがアリスやマリアが属する推理小説研究会の面々は相変わらずで、懐かしさと嬉しさがこみ上げました。 前作はマリアが幽閉、今作は江神部長が幽閉された?と研究会のメンバーが宗教団体の本部へ向かいます。次回作はアリスが行方不明かな。なんて思いながら読みました。 宗教団体の本部という日常とは違った空間で、信仰心や宗教独特のルールを用いた事件は興味をそそります。 UFOネタは今の現代では非科学的でミステリの謎にもならないですが、宗教と合わせる事で不思議な舞台を作っていると感じました。 過去の密室事件との絡みや、終盤の『読者への挑戦』付きのロジックによる解決は楽しいのですが、 そこに至るまでの上下巻のボリュームが個人的に長かった気持ちでした。 なんとなく印象に残るトリックや犯人などの真相があるわけではなく、いろいろな要素がまとまった感じでした。推理小説研究会の面々の活動が見れたのが楽しかったので、本作単品で読むというより、シリーズを読んできた人が楽しめる作品となっている気がします。 ※余談ですが、作者がPSPゲーム「トリックxロジック」に参加した作品「Yの標的」も宗教団体が舞台ですが、 本作の宗教団体の構想が活かされたのかなと思いました。ゲームの「Yの標的」は好きな作品なので、ふと思い出しました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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クラスメイトと共に修学旅行に向かう途中、急に場面転換。謎の空間に閉じ込められる。
状況が分からない中、人工知能から指示されたルールに従い過ごし始める。 デスゲーム系の空間内にいる人々による頭脳戦やパニックを期待したのですが、それとはまったく違った内容でした。 そこに閉じ込められてしまった主人公が、ルールを無視して外れ者になり、タイトルの意味通り、物語の外側に属し、流れるままに過ごすクラスメイト達を皮肉に見つめていると感じました。 物語の人々と、それを見つめる読者の立ち位置の間に存在する、メタ視点の主人公。行われているゲームを無視して他の行動をしているのが斬新でした。 主人公の行動は、クラスの輪に入れない心理模様を感じさせたいのか、外れている自分カッコイイと自己陶酔させているのか、読んでて共感要素がなく、ダラダラとよくわからない読書でした。 アメリカ映画のような、災害時に勝手に行動した主人公が救われる。そんな印象を持った作品です。 人に言われた事に流され続けるのではなく、井の中の蛙、ゲームの舞台など、見えない外側の世界を想像し、見えてくる新しい世界の発見を感じよう。そんなテーマを感じてました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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今年の作品なのに読んだ気持ちは昔の古典作品を彷彿させます。
探偵学校の同窓会として集められた雪の山荘にて起きる連続殺人。クローズドサークルもの。 山荘の見取り図やメンバーの名前を見ながら状況を把握したりと、なんだか懐かしい気持ちで読みました。 なんというか、ド定番路線で、これといった個性を感じられず刺激がなかったのが残念。 この手の本格物は好みなのですが、古典以降いろいろなバリエーションが生まれた現代において、あまりにも直球だと物足りなくなった個人的な心情も感じました。 この本の立ち位置が難しい所で、ミステリを読み始めの人で、この手の本が読みたい場合は、既に存在する有名どころを先に読むでしょうし、ミステリを読み慣れた方だと可もなく不可もなく無難に終わってしまう気がしました。 そんな事を考えると、作者の本格が好きなんだろうな。という気持ちを強く感じ、自分で作品を作ってみた。と言う所に落ち着きました。 デビュー作との事で、この路線でまた2作目が出たら、なんだかんだでまた読むと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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脳死の病所や月明かりの夜のみに話せる死者の声、タイトルの水、と言った単語のインスピレーションが影響して物語は幻想的で不思議な読書でした。
ミステリとして見ると特出した好みがなかったのですが、文学的には読書中に感じる空気感が良かったのと、重いテーマなのに読後は悪い気持ちにならないのが良かったです。 本書はオスカー・ワイルド『幸福な王子』の体の一部を他人に与える様を、臓器提供として現代版の物語を作り上げている所が見事です。有名な童話なだけに、使用されているモチーフに気付きやすい点が読みやさに繋がりました。 序盤の暴走族の模様は正直、嫌な気分にさせられたのですが、ツバメの代用となる臓器を運ぶ為に警察の検問を掻い潜って滑走するバイクを演出して、アクション要素で物語の中に起伏を作る、必要な設定と感じて読後は個人的に納得しました。 |
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ハネムーン帰宅の飛行機内から夫が行方不明になってしまった。
仕方なしに帰宅して待つが夫の持ち物が消えている。警察に相談するも、虚言ではないかと疑われてしまう。 タイトルにある『存在しなかった男』と、夫がいなくなる導入は謎や葛藤が交差して面白いです。 実際問題、航空会社等で調べれば、席からいなくなったりする状況など調べてもらえそうだと想像しますが、 時系列のテンポもスピーディーなので、調査する余裕もなく焦る、主人公の奈々の行動がリアルに感じました。 ここからどんな事件への展望を遂げるかと期待したのですが、中盤からは社会派ミステリへ様変わりし、メッセージを帯びたものを読まされた印象です。 小説内でテーマを掲げそれを盛り込んだストーリーは好感触なのですが、訴え方が卑屈過ぎて、自業自得に思えてしまい共感できなくなってしまったのが個人的に好みに合わずでした。 初めて読んだ作家さんでしたが、社会的テーマ+ミステリを作る方なのですね。読みやすいので他の本も気になりました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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