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egut さんのレビュー一覧

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レビュー数247

全247件 161~180 9/13ページ

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No.87:
(6pt)

鸚鵡楼の惨劇の感想

オウムを漢字で表記したタイトル『鸚鵡楼の惨劇』。このおどろおどろしい文字の雰囲気はいいですね。
ただ、期待した怖さや嫌な雰囲気はあまり感じず、心理面はあっさりしていました。
宣伝キャッチのフジコを超える"戦慄"とか、 担当編集のコメントで使われている単語や、"惨劇"とか"イヤミス"とかのPRに期待してしまうと、ちょっと肩すかしな印象です。ただ、女性向けの商品作りとしては釣針が豊富で巧いなーと感じる内容でした。
作品内に出てくるエッセイストさんのセリフと読むと、仕事の為や読者サービスの原稿作りの考え方は、作者の気持ちが出ているように感じました。

ミステリ模様は終盤になってやっと発生しますが、それまでのエピソードを絡めて読者をミスリードする技は巧いです。やられた!というものではなくて、作品の作り方が巧いな~と感じる内容でした。文章が読みやすいのもよいです。

もうちょっと棘がある作品を期待してしまったので、個人的に普通なミステリの印象でした。

▼以下、ネタバレ感想
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鸚鵡楼の惨劇
真梨幸子鸚鵡楼の惨劇 についてのレビュー
No.86: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

その可能性はすでに考えたの感想

すべてのトリックが不成立である事を立証し、奇蹟を証明する物語。
購買欲としては、タイトルと設定の新しさで勝ちですね。

過去に起きたとされる、ありえない現象を推察する話は島田荘司を彷彿しました。こんな事起きるはずない、でも何が起きたんだろう?奇跡の真相を楽しみにしながら読みました。

こんな事が起きたのでは?というトリックの内容は奇想天外もの。
正直、突拍子もなさ過ぎてついていけない気持ちでした。ただ、地味な仕掛けをいちいち検証してページ数を割くのではなく、読者が想定していないトリックを手短に楽しませるという意味ではアリなのかもと納得する事にしました。衒学やキャラ物の内容が多かったのですが、これよりもっと多くの可能性を見たかったのが正直な所です。なんとなく他にも方法が残っているんじゃないの?と感じてしまう物足りなさがありました。
また、これは奇跡だ!と、どう納得させられるものを見られるのかと興味津々だったのですが、肝心のそこはちょっと期待外れだったのが正直な感想です。

帯のコメントが麻耶雄嵩でしたが、読後に意図が分かってクスっとしました。

▼以下、ネタバレ感想
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その可能性はすでに考えた (講談社文庫)
井上真偽その可能性はすでに考えた についてのレビュー
No.85:
(6pt)

犯罪の感想

200P台の本に11の作品が含まれた短編集。1つ辺り20Pちょっとで登場人物も少ない為、海外作品に苦手意識がある人にも読みやすい作品。ページ数が少ないとはいえ、中身に無駄がなく濃密な文章を得た気持ちでした。

ただこの作品、謎解きや仕掛けがあるミステリではないので、好みが分かれそうです。
弁護士視点から依頼者の犯罪を聞き、その犯罪の結果だけでなく、その人の人生模様を感じる文学作品となっています。私は、作品に気持ちが入りこむことはなく、様々な人生を眺めるような読書でちょっと物足りませんでした。

好みは『エチオピアの男』です。
『エチオピアの男』はなんといっても読後感が良い事。そして犯罪者とされる人物の人生が短いページ中にぎゅっと詰まっていてよい作品でした。

『犯罪』というタイトルから感じるオドロオドロしさはなく、寧ろ爽やかにも感じた本書。
嫌な気持ちにならずに様々な話を楽しめた不思議な作品集でした。
犯罪 (創元推理文庫)
No.84: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

100人館の殺人の感想

100人の容疑者。これだけで手に取ってもらえる作品のキャッチとしてはアリですね。

パーティ開催中に殺人事件が発生。その舞台に集められていた人数は総勢100名。100人の容疑者という、読む前から把握できるのかと不安を感じる本書ですが、それは杞憂です。探偵やアシスタント、メイドや警察や殺し屋など、主要人物は特徴的に描かれているので、多くの容疑者は気にせず読書可能でした。

その場合、100人の意味はあるのかと考えると商業的なキャッチが主で、物語の必要性としては弱く感じました。50人でも80人でも変わらない気がしました。ただ、何故こんなに人がいる中で殺人が行われたのか?という考え方は面白かったです。

橋は爆破されて交通不可。なんで爆弾なんてあるんだよというツッコミや、よくある少人数のクローズド・サークルでは閉じ込める事に意味が見い出せるが、100人の規模の意味は何か。姿をくらませるから?でもそれなら犯人も逃げられないし、閉じ込める必要ないじゃん。などなど、舞台ならではの推論が考察されるのが面白い。

作中の雰囲気もユーモアに溢れて軽いのが個人的に読みやすかったです。著者の経歴を見るとゲームプランナーだったので凄く納得。多少非現実的でも面白さを優先させるゲームシナリオを感じていました。

100人いた為か、あまりキャラクターに思い入れができないままの読書だったのが残念ですが、ミステリのパズル的な面白さが楽しめた本でした。

▼以下、ネタバレ感想
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100人館の殺人
山口芳宏100人館の殺人 についてのレビュー
No.83:
(6pt)

密室殺人講座の感想

90年代の新本格物。たまたま検索していて見つけ、"密室"・"講座"のタイトルに釣られて購入です。

あらすじ通り、閉ざされた空間で連続殺人もの。誰が犯人で、どんなトリックで、目的は何なのか?と、コテコテの展開が楽しめます。お約束な展開そのままで隠れた名作なのでは……?と思いながら読みました。
ただ、300Pぐらいの本で、200P終盤まではワクワク・ドキドキ楽しめていたのですが、収束の仕方が盛り上がらず、残念な気持ちになりました。パズル小説としての展開は良かったのに妙に人間的になってしまったからでしょうか。キャラクターが無駄に不快になり、拍子抜けでがっかりでした。

"密室講座"も舞台の設定なだけで期待するようなものはありませんでした。

▼以下、ネタバレ感想
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密室殺人講座 (講談社文庫)
水野泰治密室殺人講座 についてのレビュー
No.82: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

神なき世界のトーメンターの感想

デビュー作の『罪色の環』が個人的にツボだったので2作目はどうなるのだろうと楽しみにしていた所、作風が一気に変わった装いに驚きました。表紙からミステリなのか判別つかなかったのですが、とりあえずファンタジーも好きなので手に取り読書。
ライトノベルが好きな読者に対しては、本書は綺麗にまとまった内容なのでお薦めですが、ミステリ志向な方にはそぐわない内容かと思います。一応ファンタジー×ミステリです。

著者は元警察官という経歴であり、留置場での看守時代、留置人との会話の実体験が本書に活きていると述べていまして納得。
階級が烙印として体に刻まれており、上の者からの指示は絶対で逆らうと烙印の影響で死んでしまうという世界観。今回は被疑者や身分が違うものとの関わりが強く感じる物語でした。

数年前の『執事×お嬢様ブーム』の影響か、本書もその手の会話がありまして序盤は楽しめましたが、終盤のシリアスな佳境においては雰囲気が崩れてしまった気がします。ちょっと狙い過ぎかなと。
ミステリとしては、オカルト実験のスクエアで起こる殺人の謎が提示されます。暗闇の中、四隅に人を配置して、壁伝いに前の人をタッチして周る定番のやつですね。
このネタは有名過ぎて、不可解な状況が起きても仕掛けが思いついてしまうのが難点で、ファンタジーの怖さやミステリの謎に魅力が弱かったのが正直な感想です。

ただ、本書の魅力は設定が全てなわけではなくて、王女アリシアと拷問官ジグの絆の物語が楽しめます。
王女のアリシアは我儘だけど脆くて可愛いし、ジグは暗殺者の過去と現在の優しき二面性があり、キャラ物として安定して好み。無実の王女を、命令だからという理由で意志のない人形のように行動した序盤とは違い、段々とジグの思いの変化が感じられました。

世界観や話の伏線も丁寧なので個人的に新作が楽しみな作者さんになりました。

▼以下、ネタバレ感想
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神なき世界のトーメンター (電撃文庫)
仁科裕貴神なき世界のトーメンター についてのレビュー
No.81: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

虹の歯ブラシ 上木らいち発散の感想

これは1作目を読んでからの方が良い作品です。ストーリーの繋がりはないのですが、作風を事前に知る意味でです。
デビュー作の『○○○○○○○○殺人事件』では、ネタ本なんだけど、ただのネタだけで終わらず意外にも真面目で本格志向だ!と感心すると同時に、この作風からして2作目はどうするのだろう?と色々思っている所に早速2作目が刊行。『上木らいち』が探偵役の短編集。

援交高校生の名探偵の設定通り、下ネタや過激なネタを活用しているのですが、それが単純なネタだけでなく、その設定を活かしたミステリにしているのが見事。人によってはバカミスの部類になると思うのですが、前作同様に骨格は真面目にミステリをしているのがとても感じるのが良いです。
まぁ、ただホント、人を選ぶ作品ですね。

読後感として、後半の『橙』と『赤』の章は正直好みではありませんでした。『赤』の章に関してはやっている事は凄いのですが、それが面白さに感じられませんでした。『橙』自体も作風が変わってしまい、補足する為だけの存在に思えて可哀想になりました。この2章は他の作品に比べると後付けに感じてしまいました。

それ以外は総じて面白かったです。
『黄』の章の短いながらもしっかりミステリをしている話。『青』の本作ならではの、ぶっ飛んだ仕掛けは脱力ものです。

『上木らいち』自身もキャラが確立していて好感。サバサバしていて性格も良いですし特殊設定の探偵として個性的。読んでいて楽しいです。

この作風、3作目はどうするのだろう。。。と心配と共に期待してしまう気持ちがありますが、
作風が変わったとしても、作者の本格好きはとても感じるので次回作を楽しみにしてます。

▼以下、ネタバレ感想
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虹の歯ブラシ 上木らいち発散 (講談社文庫)
早坂吝虹の歯ブラシ 上木らいち発散 についてのレビュー
No.80: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

相互確証破壊の感想

セックス×ミステリと言うコンセプトで作られた6作の短編集。
これは商品キャッチとしてはとても強いなと思いながら、どんな話を読めるのかと期待でした。

セックス物で思いつくのは、ハードボイルドの男女の関係や、女スパイ、くノ一等、ミステリと混ざると結構真面目な本が思いつきます。信頼関係を得て情報を得たり、裸の傷を調べたりと、行為に関係した何かによる刺激を期待してしまう所でしたが、本書は記憶のそれらと違い、半分は単純なエロ構成で、それが本当に必要なのか?と、読み進めるにつれて疑問を感じてしまったのが正直な気持ちでした。

官能部分も真面目というか固いというか、いやらしい湿り気ではなく、カラッとしていて妙なちぐはぐを感じた次第。
「おうっ」「ひゃうっ」「じゅん」と言った表現がすごく印象に残ったのですが、エロくて興奮とは違い、不思議な表現で覚めてまったというかクスっときたというか、表現が毎回同じなのは狙っているのかとか、余計な考えが浮かんでしまいました。

なんだか煮え切らない読書でしたが、『カントリーロード』は傑作の部類。
本書のセックス×ミステリ、男女の関係、短編での構成が見事に決まり面白かったです。
あと『見下ろす部屋』は、エロの必要性は感じませんでしたが良かったです。

短編集の短編の並びが、うまく落ち着いていると感じました。
作者らしい作品、表題、後半に真打、ラスト綺麗に終わる。並びが初出順ではなかったので、考えられていると思いました。

表題にもなっている『相互確証破壊』の結末については、思う所をネタバレに書いてみます。

▼以下、ネタバレ感想
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真実はベッドの中に (双葉文庫)
No.79: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

チェーン・ポイズンの感想

扱うテーマは「生と死」であろうか。自殺願望、孤独、児童養護施設、ホスピス。絶望や希望の内面を描く物語。ミステリにおける事件が起こるわけでもないので、求心力が弱く感じましたが、文面は整然としいて読みやすく読書はあっという間でした。

作品内容の為か、登場する人物達にまったく共感ができなかったです。
正直扱いがアレでしたが、一番共感して、まともだと思えたのはベンツ(あだ名)でした。
なので釈然とせず、作品の意志と共感できない所が多い為、好みに合わずでした。

1年間何があったのか。その話の全容が分かった最後にやっとミステリらしくなって、なるほど。と楽しめた作品です。
テーマのわりに、終わりが爽やかにまとめているのが良かったです。

▼以下、ネタバレ感想
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チェーン・ポイズン (講談社文庫)
本多孝好チェーン・ポイズン についてのレビュー
No.78: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

継ぎ接ぎ小説な気が……

本書はとても書くのに苦労した作品なのでしょうか。そう感じました。

ダンガンロンパも本シリーズも好みで、要所要所は面白くて問題ないのですが、繋がりがバラバラでまとまっていないのが苦しいです。

さらには、発売前からキャッチコピーでPRされていた『難攻不落の密室十二宮』のテーマ。
聖闘士星矢模様?十二の密室で盛りだくさん!っと、思いきや、それは予告だけで全部の事件は本書では書かれず、to be continued...って、完結しないのか!事件が別冊に続くって……『十二宮』も無意味で、ただ多く見せて宣伝しただけだったり、、、それはどうかと思いました。
300Pの前半は事件とは関係ないシリーズの物語の橋渡しで後半が事件。と、ぶつ切り感もあり、個々の内容は好きですが、前後作に影響する本作だけでは完結していない作品構成が残念でした。

その他気になる点として、
主人公の五月雨結の扱いがちょっと酷い。一応探偵で主人公、周りは超人的な探偵の中にいる為、読者が親近感沸きやすい位置にいるはず。そのキャラが本作では完全にアホキャラにされています。事件中にショッピングがどうとか、雰囲気を壊し探偵としてどうなのか?と思う問題発言をしていたり、役立たずキャラ設定が可哀想でした。

シリーズ好きですし、新刊が発売されたのは嬉しいのですが、内容が煮詰まってなく、作るの苦労したのかなと思う次第です。
本書の最後の広告部分に、2015年新プロジェクト『ダンガンロンパ×佐藤友哉』稼働。と、別作家で始まるあたりも、いろいろ危惧する次第でした。

なんだかんだ書いてしまいましたが、シリーズも作家さんも好きなので次回作も楽しみにしてます。

▼以下、ネタバレ感想
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ダンガンロンパ霧切 3 (星海社FICTIONS)
北山猛邦ダンガンロンパ霧切 3 についてのレビュー
No.77:
(4pt)

異次元の館の殺人の感想

1つの密室、1つの死体、限られた登場人物。
定番のミステリ構成の中、推理の基点や条件式を変えると、犯人やトリックが様変わりする多重解決作品。
本書はさらにSF的な要素を加え、間違った解決を行うと違う平衡世界へ飛ばされ、状況が少し変えられてしまう。こんな世界で推理は成り立つのか。

正直な所、複雑さが目立って楽しめなかったです。
後述するこのパラレルワールドならではの仕掛けには、ちょっと面白い。と思える点も確かに存在するのですが、推理する点も物語も変化してしまっては楽しみ所がなく、毎回違った状況設定を読むだけの気持ちになってしまいました。

『七回死んだ男』『STEINS;GATE』『ディスコ探偵水曜日』あたりの平衡世界や多重解決ものは好きな分類なのですが、本書とは相性が悪かった模様です。。

▼以下、ネタバレ感想
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異次元の館の殺人
芦辺拓異次元の館の殺人 についてのレビュー
No.76: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

水底の棘 法医昆虫学捜査官の感想

事件現場の虫の生態から事件を捜査していく法医昆虫学捜査官シリーズの第3弾。
本作では水死体を扱っており、過去作とは違う水に関連した虫の展開で、新たな場を作ったと感じました。虫に関しての薀蓄と、登場するキャラクター達のやりとりは今回も楽しませて頂きました。

点数が低い気持ちとしては、今回は虫に関する刺激が弱め。事件発生の序盤と終盤の解決は虫に関する話でシリーズとして特徴的なのですが、中盤の事件捜査については虫があまり関係していなくて、普通の警察小説を読んでいる気分でした。

虫についての表現も大分落ち着いて淡泊になってます。
1作目では、ウジの表現をウニョウニョと気持ち悪く描いていて、その気持ち悪い虫の話の土台があってこそ、明るいキャラの赤堀が輝いていたり、皆が嫌がる虫から事件が解決する気持ちよさがあったりしたのですが、今作では虫の気持ち悪さがサッパリなくなっているので、なんというかギャップの面白さや個性的な要素が弱まり、よくある警察小説に感じてしまった気持ちでした。

気持ち悪いのが苦手な読者もいますし、今作ぐらいの表現ならTVドラマ向けだなと感じたりと思うところですが、個人的には何か物足りなさを感じました。

とはいえ、虫の捜査や登場キャラの楽しさは安定なので次作も期待です。

▼以下、ネタバレ感想
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水底の棘 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
川瀬七緒水底の棘 法医昆虫学捜査官 についてのレビュー
No.75: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

グラスホッパーの感想

相変わらず伊坂幸太郎作品らしいと感じる、ちょっと外れた登場人物達。そして音楽に絡んだキザなセリフや軽妙なテンポは読んでいて楽しかったです。小説ならではと感じます。
個人的に苦手な、著者作品に入り込む悪意の模様については、本作の世界が殺し屋達の物語なので、そういうものだと嫌な気持ちにならずに読めたのが良かったです。

ザ・一般人代表といった鈴木の巻き込まれ型作品で、様々な殺し屋達の視点と共に物語が進み、どこに着地するのかわからない楽しさがありました。
が、一方、読み終わってみると、何も解決していないような、何かが心にグッと残るでもなく、一時の夢のように通り過ぎてしまった不思議な余韻を感じました。

▼以下、ネタバレ感想
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グラスホッパー (角川文庫)
伊坂幸太郎グラスホッパー についてのレビュー
No.74:
(6pt)

教場の感想

警察官になる前の、警察学校が舞台の連作短編集。どんな思いで警察官になろうとするかは人それぞれだと思いますが、本書に登場する人物達やエピソードが陰湿で暗い。相手を利用したり騙したり陰口やらで足を引っ張り合う。仕舞には退学や傷を負ったりとする訳で、厳しい所なのは伝わりましたが、これから警察官になろうとする人たちが舞台の警察学校において本書の内容はいかがなものかと思いました。

新しい警察小説としてPRされてますが、警察学校の舞台と内容の組み合わせが今までやらなかっただけで、
囚人達が更生して行く舞台の方が合っているような複雑な心境になりました。

ただ、感情的な好みの点はおいておいて、
警察学校の舞台を活用した、職務質問の実習内容や、拳銃の考え、書類、日誌などの制度を元にした物語の作りは良かったです。
他のミステリに登場する警察官達も、こういった警察学校を卒業していると思うと違う見方に変わります。

他の本の話になりますが、ミステリでスパイ養成学校を舞台にした柳広司『ジョーカー・ゲーム』と言う作品があるのですが、こちらは一種ファンタジーのような無関係な舞台のスパイの場を使う事で、場の疑問は感じさせず、厳しさや頭脳的な要素に専念できました。本書は警察官という現実的な存在を扱った為、仕掛けの面白さ以外に、日本の警察はどうなの?と、違うノイズを感じてしまった事が個人的に好みとは違った次第です。
教場 (小学館文庫)
長岡弘樹教場 についてのレビュー
No.73: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

黒百合の感想

文芸+ミステリ。

子供にとっての夏休みというのは、ある一定期間での出会いと別れがあり、青春小説の定番舞台。六甲の別荘にて男の子2人が出会った女の子とのエピソードから始まり、ミステリらしからぬ雰囲気のまま物語が始まります。
著者の本は初めてです。読んでいて、あぁ文章が綺麗だなー。表現が丁寧だなーと、国語の教科書を読んでいる気持ちになり文芸を味わいます。ミステリらしい謎は全く感じない読書でした。

時代は変わり、戦争前の昭和の物語に入ると登場する人物達がカッコよく魅力的。ベルリンで出会った謎の女性とのエピソード。時代を歩んで社を育てた翁の貫録のある行動やセリフ。この過去エピソードがとても楽しかったです。

そうこうするうちに物語は終盤に至り、あれ?これミステリだったの?どういうことだ?・・・あっ!となりました。
Amazonレビューなどでは「だまされた!」と言う表現がありますが、そういうトリック系の話ではなくて、表向きは文芸書。物語の裏側に謎がある系のミステリです。なのでミステリを期待すると退屈です。文芸書を読む感じで物語に浸る感覚で手に取ると良いと思いました。

物語の背景にミステリが存在する作品は好きな方なのですが、本作は、あまり乗り気になれませんでした。
文学にゆったり触れるより、刺激やワクワク感が好みだからかもしません。
あと、倉沢家の登場人物の把握に混乱して感動を弱めた気もします。

▼以下、ネタバレ感想
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黒百合 (創元推理文庫)
多島斗志之黒百合 についてのレビュー
No.72:
(5pt)

退出ゲームの感想

さらっとした学園ミステリ。人が死なない作品でもあります。

ミステリとしては謎や手がかりの魅力が弱く伏線と言った要素もないので物足りなさを感じました。
タイトルとなる『退出ゲーム』は即興演劇の頭脳戦。行動やセリフをその場で考え、巧く相手を出し抜いて舞台から退場できれば勝ちと言うもの。新鮮な設定で面白かったのですが、読中に条件が変化して行き、解決へ向けての展開に置いてけぼりにされてしまった印象でした。作品の背景は良かったです。

2話目の『クロスキューブ』は好み。遺品となる6面が白のルービックキューブの謎は、登場人物とともに何故こんなものが?と共感しながらストーリーが進行していったので最後の解決まで楽しめました。

学園物としてはキャラが明るくて可愛らしいです。特にハルチカの千夏が元気よいのが好感でした。
その明るさの影にただの日常の謎ではなく、少しテーマに毒っ気を加えている所も個性的で魅力でした。

退出ゲーム (角川文庫)
初野晴退出ゲーム についてのレビュー
No.71: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

アリス殺しの感想

タイトルや表紙の絵柄通り『不思議の国のアリス』をモチーフにしたミステリ。

アリスの世界観が活きていて、会話が噛み合わない独特の雰囲気が健在。
登場キャラクター達の会話の可笑しさにクスっときました。

夢の世界では不思議の国のアリスに登場するキャラクターになっており、その夢は登場人物達と共有されます。
夢と現実世界はリンクしていて、どちらかの世界で殺されると、本当に死んでしまいます。
※最初の事件は夢の世界でハンプティ・ダンプティが塀から落とされ死亡。ハンプティ・ダンプティになった夢を見ていた人が現実世界で死亡する。

本書は、夢or現実で事件を起こしている犯人は誰なのか?
と言う、謎から始まる特殊なミステリです。

現実世界と仮想世界がリンクする物語の定番要素である、誰がどのキャラクターなのか?の割り当てを感じながら読書をしようと思いましたが、会話主体の構成の中、不思議の国のアリスの世界観での噛み合わない会話に混乱してしまい、あまり事件は意識せず世界観に浸る感じで読みました。
最後の展開は好みが分かれる所だと思いますが、アリスの世界観と著者らしさを十分に感じる作品であると思いました。

▼以下、ネタバレ感想
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アリス殺し (創元推理文庫)
小林泰三アリス殺し についてのレビュー
No.70: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

冬の灯台が語るときの感想

前作の『黄昏に眠る秋』に続く冬の2作目。シリーズ作品となっていますが、前後の関係性は殆どないので、今作から読んでも問題ないです。

冬の灯台、観光客がいない時期のひっそりとしたエーランド島。派手さがない情景や雰囲気と島の人々の模様を描く静かなミステリ。幽霊やら、日本のこっくりさんのような要素もでてきてオカルト色が強いです。とはいえ、ホラーや恐怖の派手さもなく、幽霊要素は雰囲気の1つに取り込まれている感じです。
私自身の記録の為にも感想を残しておきたい所なのですが、特徴的な派手さがないこの手の作品はどうやって感想を書いたら良いか悩む次第。
ここがいい、あれがいい。と言うのではなく全体的な雰囲気が神秘的で、読後良かったなと思う作品です。
静かな冬の空気感を味わう文学ミステリ。

いろいろな賞を受賞している本作ですが、日本の受賞作品で感じる、仕掛けや論理や推理展開とは違った評価が、海外ミステリで行なわれているんだと感じました。

▼以下、ネタバレ感想
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冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ヨハン・テオリン冬の灯台が語るとき についてのレビュー
No.69: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

黄昏に眠る秋の感想

海外物は異常な登場人物やバイオレンスなど、日本にはない刺激的な要素でスリルやサスペンスといった作品に出会う事が多いのですが、本書はそれらとは違う作品です。
非常に刺激がない。
秋から冬にかけての哀愁漂うシンミリした雰囲気。
メインの登場人物は老人でスピード感がでるアクションはなし。
ここら辺の感覚から好みに合わなかったり退屈に感じてしまうかもしれません。
単に私が中盤までページの進みが遅かっただけですが。。。

が、読み終わってみればミステリ文学といいますか、
作品に張られている伏線がミステリとしての面白さを感じ、
舞台のエーランド島の空気感やそこに住む人々の模様を味わえるよい作品でした。

読む前のオススメですが、
本書の舞台となる、『エーランド島』をGoogleの画像や地図検索で視覚的に見ておくと、より作品に入り込めます。
何かの手がかりというわけではないのでご安心を。
石灰岩の荒地や平野の何か物寂しい感じを一層引き立てると思います。

20年前に子供が行方不明になって悲壮感漂いながら暮らしていた母ユリア。
介護施設で暮らす80歳近いユリアの父 イェルロフ。
人生の終盤で、季節でいうところ冬の一歩手前と言うところ。
今頃になって何者かから子供の靴が届く。

子供は生きているのか?行方不明になった時、何が起きたのか?
現在と過去を繰り返すよくある構成の中で、読者は物語の真相を知っていきます。
読者は過去も見れるので、登場人物達より多い情報量で話を把握して行くわけですが、
ここがなんというか魅せ方が巧かったです。

途中まで面白さが分からなく読書が大変だった為、好みの点数はそんなに高くないです。
2作目以降は同じ舞台や登場人物で内容把握が容易らしいので、より楽しめそう。
続けて読んでみようと思います。
黄昏に眠る秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ヨハン・テオリン黄昏に眠る秋 についてのレビュー
No.68: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

魔法少女育成計画の感想

デス・ゲームものは多種多様に昔から存在していますが、本作は現代風に世に出した作品。という印象を強く受けます。
それぞれ固有の能力を持つ、16人の魔法少女が生き残りをかけて、ルールに則した戦略を立てたり殺し合いを行う娯楽作品です。

本作を読むにあたって類似の作品が思い浮かぶ事だと思います。
例えば、『バトル・ロワイヤル』や『インシテミル』では、それぞれの異なる道具を得られ、生き残りをかける。山田風太郎の『忍法帖』なら忍術。少年漫画では多いですが、能力バトルものは、時代に合わせたエンタメ作品として世にでてます。
本作は2011年度のアニメ、魔法少女まどか☆マギカの影響も多分に感じましたが、それは時代に合わせてアニメ・ライトノベル読者層に買われる事を狙った商業本としてアリだと思います。

ネタばれではない話で。
変身したら魔法少女ですが、変身前は普通の子供だったり、男だったというアバターのゲーム要素や、この手のデス・ゲームをライトノベルに落とし込んだ商品としては、売れる客層を考えらている、よくできた作品だと思いました。16人のバトルに対して300ページ台のコンパクトな作品にまとまっているのも読みやすくて良かったです。

登場人物紹介で、読者に対してだけ各人の能力が明かされている試みが面白いと思いました。
事前に把握できているので、能力の混乱や置いてけぼり感はまったくなく、能力の相性バトルが楽しめます。最後まで誰が生き残るだろう?というパズル小説のような楽しみがありました。

欲を言うと、ミステリ読みなので、その視点で考えると、意外な展開や驚きの仕掛けが無かったのが物足りなかったです。魔法やアバターを活用した、本作ならではの仕掛けが欲しかった次第であります。

適当発言ですが、実は敵だと思っていた相手の本体が仲の良い友人や兄弟だったり、複アカで2人の魔法少女が同一人物だったり、とか。。そんな感じの、デスゲーム以外に、何かしら本作の設定だからこそできる驚きの真相が欲しかったと思いました。
そういう本ではないのは承知ですが、そんな事を思った次第です。

単純な萌え娯楽小説かと思いきや、意外とダーク。みんな一人ぼっちで何か心に抱えている様子など世界感に合っていて良かったです。

魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)
遠藤浅蜊魔法少女育成計画 についてのレビュー