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AliceinAbyss さんのレビュー一覧
AliceinAbyssさんのページへレビュー数15件
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謎をこよなく愛し名探偵になりたい少女、アリスが10歳の誕生日にプレゼントされたのは、ヴァーチャルリアリティで「不思議の国のアリス」の世界を体験できるVR装置でした。そしてそこで出題される5つの謎をアリスは解き明かすことができるのか?という趣向のミステリー短編集です。
早坂氏らしい端正なロジックが素晴らしいダイイングメッセージものの第三問(“カラスと書き物机はなぜ似ているか?”の原典準拠のなぞなぞの答えも秀逸です)と、ロジックとどんでん返しが見事な第五問がとても好きです。また脱出ハウダニットの第一問もなかなか面白かったです。 ただその一方で、第五問で某キャラが「アンフェアじゃないよ」と主張する点が、個人的にはどう考えてもアンフェアなんじゃないかと。。。前述の通り、第五問自体ロジックの出来もどんでん返しの面白さも見事なもので、あそこがアンフェアでも構わない(本格ミステリとしての作品の評価が下がるものではない)んじゃないかと自分は思うわけですが、著者さんとしては、本格ミステリを指向する以上はすべてにおいてフェアであることに拘らざるを得ないんでしょうか。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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戦時中にアカ華族の嫌疑によって絶海の孤島に建てられた「パノプティコン(一望監視獄舎)」に収監された天才ショパニスト八重洲清康は、3人の囚人仲間とともにどのように脱獄したのか?を清康の孫にして同じ天才であるイエ先輩が解き明かす、というハウダニットが本作のメインになります。そしてその脱獄方法には「超絶技巧練習曲にすぎますよー」と思う方法が一点含まれているものの、非常にユニークでとても面白いと感じました。
また、このパノプティコンでは脱獄と別の事件も起こるのですが、そのフーダニットやホワイダニットを問う「第二の読者への挑戦状」が含まれているのも面白いところです。フーダニットのロジックはパズラー作家らしい見事なものですし、「人の心は100%論理的ではないので、論理での心理推定は極力避けるべき」を信条とする自分には最も相容れない「ホワイダニットの挑戦状」も、その動機を生み出すにいたった事象が自分にとって非常に共感性が高く、結果動機そのものの合理性にも納得させられてしまいました。だって自分は典型的小市民の「日本人」なんですもの(そして本作で一番好きな箇所はここだったりもします)。 一方で「第一の読者への挑戦状」としてもちろん脱獄のハウダニットが問われるわけですが、挑戦状が無ければ示された回答には特に文句も無く面白いと感じたものの、挑戦状を前提(論理的に指摘可能)とすると、どうしても論理条件との矛盾があると思われるため回答として不適当ではないか、との考えがぬぐえないのが残念なところです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「封印された奇書。圧巻の暗黒ミステリ」
との惹句に引かれ読んでみましたけど、本作は暗黒ミステリではなく暗黒神話(世界の成り立ちに関する物語)ですね。 要はミステリ要素は0です。 ただ非常に衒学的に作り上げられたと思われる物語なので、アンチミステリではない(そもそもミステリではないので)けれど、確かに「奇書」と言える出来で、その衒学的意図・趣向に面白さがある作品だと思います。 ところで本作の「俺の部屋に天使と悪魔と死神と幽霊がいる」という物語のはじまりは、同氏の代表作中の「この中に、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい」のセルフオマージュでしょうか。そう考えると両者は「明朗(萌え)神話」と「暗黒(エロ)神話」という裏表の関係で、本作中で天使と死神が「萌えとエロの違い」について延々と議論する描写があるのも必然かもと思ったり思わなかったり。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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非常にユニークなプロットで統一された5つ短編を収録した作品集。
そしてそのプロットは麻耶氏らしくミステリに対する挑戦的なものでありながら比較的理解しやすいもので、かつ「答えのない絵本」ではそのプロットを成立させるため、これまた麻耶氏らしい非常に緻密なロジックが構築されており、本書は同氏の作風が自分に合うか判断するリトマス紙として最適ではないかと思います。 個人的ベストは、やはり挑戦的なプロットと緻密なロジックの両立が美しい「答えのない絵本」。 また初読時には引っかかりませんでしたが、再読で、実は作中作の無駄遣いという構成に面白さを感じた「九州旅行」もなかなかの佳作です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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本書収録の四作品のなかで、特に「論理蒸発-ノックス・マシン2」におけるセンスと発想の爆発は、すごいの一言。
ただ、この作品はミステリではなくSFを軸とする物語なので、サイト内での評価の低さも致し方ないところでしょう。 しかも本作の面白さはSF部分にあるわけでもなく、SF要素を成立させるためのミステリ的なガジェットにあるため、おそらくSFファンも評価しづらいのではないかと個人的には思います。 多分この作品を楽しめるのは、SFとミステリが重なる部分を、科学的厳密性もミステリ作法も度外視して受け入れられるタイプの読者だけかもしれません(ネタバレなしなので、どうしても抽象的な表現になります)。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ジャーナリストの太刀洗万智が、報道されている事件の表からは見えない真実を持ち前の推理力をいかして浮かび上がらせ、その悲劇的な、残酷な、あるいは重いがゆえに滑稽な真実と向き合う姿を描いたミステリ短編集。
とはいえ本作の謎解き要素は太刀洗のキャラを印象付けるためや真実の悲劇性などを深めるための手段にすぎず比較的小粒なものが多く、本作の最大の魅力は、最後に明かされる真実によって読者にもたらされる深い余韻にあると思います。 同作者の「儚い羊たちの祝宴」に軽く謎解き要素を加味した作品集、というのが一番わかりやすいでしょうか。 個人的なベストは、表題作の「真実の10メートル手前」とラストの「綱渡りの成功例」。 特にこの2作品は内容もさることながらタイトルが秀逸で、最後にこのタイトルの意味を知ることで物語の余韻をより深く感じさせる見事な効果を生み出しています。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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真の予知と予言がある(かもしれない)という世界観を背景に、その特殊設定を前作同様うまく事件に組み込んでミステリに仕上げていると思います。
ただ、前作の特殊設定が作中世界に確かに存在するものとして描かれ、ゆえに様々なミステリ要素に影響を与えているのに対し、本作では予言や予知が真であるか厳密には不明のため、登場人物たちの心理的要素(選択基準や行動基準)にしか影響を与えていないのが「特殊設定ミステリ」としてみると少し残念ではあります(例えば予言が100%実現する世界では「予言で人を殺すこと(ハウダニット)」も推理の要素となりえますが、本作ではなりえません)。 もっとも、それはあくまでミステリ四冠にふさわしい傑作だった前作との比較の話で、予言や予知に翻弄される形で各登場人物が取る行動はそれぞれユニークで、特に探偵側の行動は論理性を備えつつ類を見ないもので非常に面白く、また特殊設定を離れたオーソドックスなミステリーとしてみるとフーダニットのロジックが良く出来ており、十分面白く読み応えのある本格ミステリー小説だと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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色んな方が同じ指摘をされていますが、殺人事件が蛇足中の蛇足。KING OF 蛇足。
もし、この殺人事件のみの筋立てであれば3~4点といったところ。 ただ。 これまた多くの方の指摘の通り、いろは48首の暗号が本当に素晴らしい。 暗号ミステリとしてだけで評価するなら10点です。 単純に暗号パズルとしての知的興奮のみならず、言葉の美しさという普段ミステリを読んでいると中々味わえない感動もおぼえます。 やはり竹本氏は「匣の中の失楽」などに見られるプロットの妙と、「狂い壁 狂い窓」に見られる言語的センスが魅力(両作は推理物としても十分面白いですが)の作家さんで、本作はその言語に関する知識とセンスが最大限に発揮された傑作だと思います。 |
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前作と比較すると本作はわりとオーソドックスな推理合戦もので、正直に言えば前作の仕掛け(論理学的目論見)のほうが「小説」としては数倍面白いです。
ただ前作はある推理の検討が不十分で(少なくとも自分にはそう思える)、そのため前述の目論見自体が成立しないように思われるので、ミステリサイトの点数的には本作のほうが上だと思います。 また本作の各推理はオーソドックスとはいえ、事件の背景や各キャラクターの様々な思惑によって推理合戦自体に思わぬ方向性が付与されており「ミステリ」として十分以上に面白い作品といえます。 それにしても奇跡の証明が目的である以上、上苙の推理が正解するのは奇跡が存在したときであり、そのため作中ではどうしても最終的には推理ミスをしている探偵に堕しているのが悲劇的というかなんというか。 |
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全員が大好きな推理作家さんという稀有なアンソロジー
・・・なのですが、正直各短編についてミステリーという評価枠内では期待はずれかな というのが感想です。 有栖川、法月両氏の作品はロジック物短編に特有のオーソドックスさが際立ってますし、山口氏の作品は趣味に走りすぎ(短編だし個人的には好きですが)と感じました。ミステリー作品集としての個人的ベストは、ツッコミどころ満載なもののアイデアが非常に秀逸な我孫子氏と、相変わらず挑発的な麻耶氏の作品でしょうか。 ただ「名探偵」がテーマとあって、綾辻氏を除くそれぞれの作家さんの抱く名探偵像みたいなものも見えて面白かったですし、綾辻氏の作品もそういった数々の名探偵を生み出した「京大推理研」を核に作家本人たちが言及しているという点で興味深かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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