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AliceinAbyss さんのレビュー一覧

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レビュー数3

全3件 1~3 1/1ページ

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No.3: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)
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匣の中の感想

タイトルや目次の構成を見れば明らかなように、本作は四大奇書の一にして孤高の傑作「匣の中の失楽」へのオマージュとして描かれた作品です。
一方で原典が推理合戦や衒学趣味、暗号に密室トリックとミステリのさまざまな要素を濃厚に横断しつつ、その構造的な特性から幻想小説としての側面を強くしそれが大きな魅力となっているのに対し、本作もそれを踏襲しながら、とある仕掛けによって幻想小説ではなく本格ミステリとして成立させている点が非常に素晴らしいと思います。

▼以下、ネタバレ感想
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匣の中 (講談社文庫)
乾くるみ匣の中 についてのレビュー
No.2: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

夏と冬の奏鳴曲の感想

間違いなくマイベスト3に入る一冊。
美術手法の「キュビズム」と音楽手法の「無調性」を物語のベースに、過去に真宮和音という女優の魅力にとりつかれ孤島で共同生活を送っていた人々が20年後に再び孤島に集うことで起こる崩壊(と、おそらく再生)を描いた物語で、ラストの大崩壊からのメルカトルの一言によるカタルシス(謎が一つ明かされただけなのに!)は、唯一無二の得がたい読書体験です。

また事件の大枠はなんとなく、フワっとモヤっと分かった気にはなるものの、いまだに細かい点、例えば黒猫や鈴の意味、同一人物に対するゴルゴンの印象の相違、あるいは作中で詳述されるキュビズムと異なり説明がほぼない無調音楽の作中での役割(音楽用語の和音(わおん)に関連するものだと思うのですが)など不明な点も多く、何度も読み返してしまう魅力があります。

ついに新装改訂版が刊行。
といっても今回の改訂で「無調音楽」の説明の追加等を期待していたのですが、そういう大幅改訂は別の一箇所くらいしかなく謎の解明に直接的に繋がるようなものはない印象です。気になる細かい改訂はちょこちょこありましたけどね。その代わりになのか、法月綸太郎氏が新たな解説で「無調音楽」の説明をざっくりして下さってますが、やっぱり自分に音楽的な基礎知識がないせいか本作品に落とし込める形でそれを理解する事はできませんでした。

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夏と冬の奏鳴曲 新装改訂版 (講談社文庫)
麻耶雄嵩夏と冬の奏鳴曲 についてのレビュー
No.1:
(10pt)

キッド・ピストルズの妄想の感想

タイトルにある通り「妄想」、キッドの言を借りれば狂人なりの論理の解明、つまりホワイダニットに焦点をあてた中篇作品集で、それぞれ反重力、ノアの箱舟神話、西洋庭園に対する妄執に取り付かれた被害者たちの狂った論理はすこぶる興味深く面白いです。
またホワイダニットといえば蓋然性の問題となり論理性とは無縁になるものですが、本作はフーダニットをきわめて論理的に突き詰めてあり、本格ミステリのパズル的面白さも十分に楽しめます。
さらにさらに、被害者の「妄想」を補強する手段として各主題に対する衒学趣味が横溢しており、衒学趣味が大好物の自分にとってたまらない作品集となっているため個人的に満点の作品です。
キッド・ピストルズの妄想: パンク=マザーグースの事件簿 (光文社文庫)
山口雅也キッド・ピストルズの妄想 についてのレビュー