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AliceinAbyss さんのレビュー一覧
AliceinAbyssさんのページへレビュー数12件
全12件 1~12 1/1ページ
※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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コテコテのいわゆる「館もの」から、館がストーリー上のガジェットに過ぎないもの、果ては館関係なくない?というものまで、かなりバラエティに富んだアンソロジー作品集です。そのなかでミステリーとして「ん?」と思うところはあるもののトリックの面白さを感じたのは、青崎有吾氏の「噤ヶ森の硝子屋敷」と周木律氏の「煙突館の実験的殺人」、純粋に予想を超えていて楽しめたのが澤村伊智氏の「わたしのミステリーパレス」でした。
ただ古野まほろ氏と青崎氏の両方のファンなら、古野氏の「臨床真実士」シリーズである「文化会館の殺人」も興味深いかもしれません。というのも、その主人公・本多結花には相手の話を“聞く”とその真偽虚実が分かる能力があり、当然このシリーズ作品では、その能力を活かしてロジックを組み上げていくことを特徴とします。ところが「文化会館~」では、特に理由もなく(作中の説明無く)3人の重要関係者の手記を“読んで”真相を推理するという形を取っているため、結花は彼女らの記述内容の真偽虚実を能力で判断できません。しかし、そのことが逆に解決編の述懐やラストの指摘を成立させることになり、それによって強調される本作のテーマが、作品タイトル等を鑑みると特に青崎氏(の某作品)に関するものだ、と個人的に思えるからです。 にしても「臨床真実士」シリーズで手記の記述をメインに(=口話を聞かずに)推理するという『異常性』は、シリーズ読者で無ければ決して分からないことなのに、そんな試みを、シリーズ読者以外も多く読むであろうアンソロジー作品集で何故したしw ▼以下、ネタバレ感想 |
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扉に長編本格推理と銘打たれていますが、自分のものさしでは本作はサスペンスだと思います。
なのでミステリ的な感想を書くことが難しく、それ以外の本作の感想、ただし完全にファンダム目線の感想を書きたいと思います。 竹本氏は文字の選択(意味内容だけでなく文字のビジュアルも考慮した選択)や文節間のリズム、文章の展開のしかたなどがとにかく巧みで、特に情景描写ではその光景がまるで眼前に広がるかのような錯覚を覚えます。そして竹本作品では曇天や雨、夜の闇、本作では濃い霧を舞台のシチュエーションとし読者の前にリアルに幻出させることで、作中の謎すらその眼前の濃霧などに吸い込まれまったく見通せないかのような幻惑感を生み出し、それにより登場人物たちの切迫感や焦燥感をも読者に共有させる効果を生み出しています。 また本作の特筆点として、パソコン通信の時代に電子ネットワーク上を伝播する悪意を予見している点が挙げられます。そしてそのネット上を伝播する悪意と、作中現実世界の深い霧の中で拡散していく悪意をシンメトリーに描き、さらに知っている人にとっては疫病を広める悪魔である「パズズ」のイメージを重ね合わせることで、得体の知れない悪意の広がりを多層的かつ幻惑的に描き出しています。 このように本作(というか竹本作品全般)の魅力は、巧みな文章や設定、構成の妙によって肌感覚すら錯覚させる幻惑の体験にあると思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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明日になれば刑が執行され死ぬ運命の確定死刑囚が、なぜその執行前夜に独房で殺されたのか?
とか、なぜ女囚は男のいない女子監獄内で妊娠したのか? といった終末監獄で起きた事件の、主に逆説的な動機の謎を、牢名主の老人と新入り囚人のコンビが解き明かしていく短編集。 「墓守ラクパ・ギャルポの誉れ」が個人的ベストで、また掉尾の「確定囚アラン・イシダの真実」で明かされる、とある強烈な動機も面白かったです。 そう、この2作品はとても面白かったのですが。 残りのいくつかではその謎が解かれることで別の謎が生じてしまっているのが残念で、高評価には出来ませんでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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本作は、とあるクラブの閉店パーティに集まった7人の男女の描写から幕を開けます。ところが次の章では事件の終盤と警察の事情聴取に場面が飛び、そこで二人の人物による別々の犯人指摘が行われます。そして続く章では、探偵の依頼で当事者である客の一人が事件の経緯をまとめた手記と、事件後の当日夜に探偵に起こった出来事が交互に描かれていきます。
この特異なストーリー構成を見ても分かるように、本作は発生した事件の謎を解明する単なるミステリではなく、メタミステリあるいはアンチミステリ的な企みに満ちた作品に仕上げられています。そしてその企み自体は非常に面白く、その作り方も上手いと思えるのですが・・・土台となるべき事件の謎があまりにも突拍子もなく、結果土台(ミステリ)の上に立つべきそのアンチまたはメタ的企みも微妙に感じられてしまうのが残念です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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春夏秋冬4つの倒叙ミステリ短編を収録した連作集。
犯人たちはネット上の「完全犯罪完全指南」という裏マニュアル本を参考に完全犯罪を目論み、探偵役と熱い攻防を繰り広げます。 深水氏は作中で持論を登場人物に語らせる傾向がありますが、本作でも「物証も無いのに論理的追求だけで犯人が自白するミステリ」への苦言があり、したがって読者は特に犯人の偽装工作の中にどのような物証が残され、犯人を追い詰めるのかに注目しながら読むことになると思います。 その観点で春と夏の事件は非常に面白く読めたのですが、個人的には、正直秋と冬の事件は疑問符のつく内容でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これはなかなかの問題作ですね。
ちゃんとミステリ作品ではあるんですけど、はたしてこれを「本格」ミステリと呼んでもいいものかどうか。 主人公の高校生優斗の持ち込む事件の謎を、便利屋を営む叔父さんが解き明かすという連作集なのですが・・・ もともと麻耶氏の作品の魅力は、非常に精緻な「ロジック」に軸足をのせることで本格ミステリの形を保ちつつ、本格ミステリの概念を破壊する挑戦的な「プロット」を見せるところにあると思います。 ところが本作では、謎の解明において表面上ロジックをほぼ放棄しているように見えるため、健在の挑戦的なプロットも不発気味に感じてしまいました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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TVゲーム世代であれば、冒頭の5ページを読んだ時点で一つの真相を思い浮かべることができると思います。
もちろん本作ではそこからさらに一ひねり加えた第二の真相が提示されるのですが、結局その第二の真相も「奇想」というよりは「コ想(コロンブスの卵的発想)」であって、正直いまいちと感じました。 コ想は「一見しょうもないけど、よくよく考えたら思いつくことが難しい」発想であって、その評価ポイントは「思いつくことが難しい」点なんですよね。 実際に第一の真相は容易に見抜けたものの第二の真相に思い至らなかったので、本作を「コロンブスの卵だね」と評価することはできるんですが、やはり「第一の真相から派生しただけでしょうもなく見える」第二の真相は、物語としての面白さや謎解きの快感からは程遠いものと思います。 |
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通常のミステリが、例えば「樹木の傷跡」「風切り音」「靴跡の踏み込み」などを鑑みて「凶器は手投げ槍」と推理するという具合に“論理”を組み立てて真相を見出そうとするものであれば、本作は「背中に痣があり、そこに致命傷」「現場は川のほとり」「被害者は指輪を奪っていた」ことから『ニーベルングの歌』のジークフリートの伝承との合致に基づき「凶器は手投げ槍」と推理するという具合に“知識”を組み立てて真相に至ろうとする(犯人も同様の知識を有し、装飾過多の犯罪傾向があるとの前提で)のが一つの特徴である、と言えると思います。
また他にも連想式心理分析なる推理手法、例えば探偵の「スペイン喫茶(バル)に(ムンクの)叫びの絵が飾ってあったか?」との問いかけに、相手が「それはマクドナルドに飾ってありました」と答えようものなら、「この質問を否定するのは、暗殺者ハゲネがジークフリートから武器バルムンクを奪ったとの古典知識を無意識に連想する犯人特有のものだ。だから貴方が犯人だ」といった推理?も多用されています。 もちろんこれらは適当な例で、本作ではもっと高尚で複雑な知識の羅列と組み立てが氾濫しており、良く言えばその知識の奔流に圧倒され、悪く言えば煙に巻かれる形で特に違和感もなく、といっても理解度20~70%といった感じですが、本作を読み進みその作品世界にひたることができました。ところが数箇所まったく意味不明で理解度0%になる部分があり、そこでふと我に返ってしまい黒死館の夢と熱から醒めてしまったため、結局のところこの点数です。 余談ですが、このような知識の伽藍をメインに用いてなおミステリとして成立する作品を作ろうと試みたのが「夏と冬の奏鳴曲」をはじめとする麻耶雄嵩氏の初期作品群であり、一方で連想心理分析から背景知識(という煙幕)を除いたただのダジャレでもミステリが成立すると考えたのが某大説群なのかな、と本作品の影響力の大きさも感じました。 |
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短編集でジャンル的にはミステリ、ホラー、SFとバラエティに富んでいますが、どの作品も思考実験的な会話劇という形式なので統一感はあります。
ミステリに絞って評価すると、超限探偵Σの短編はネタとして嫌いではないですが、やはり別作品集に収録の「更新世の殺人」がとあるミステリ分野において白眉であるのと比較すると、真相の物足りなさは否めません。 そして惜しいと思ったのが「探偵助手」。 トリック、というか作中の仕掛け自体はとても斬新でユニークなもので、これを別の形で利用すれば個人的傑作になったかもしれないのに、最初からみえみえの真相の暴露になっているだけなのが非常に残念です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ミステリーではないですね。
そう思って読めば言うほど壁本でもなく、まったく面白くないわけでもありませんでした。 ただ推理の言葉遊びはそんなにレベルが高いわけでもなく、アナグラムを考慮したとしてもただのダジャレ・なぞなぞ100選に毛が生えた程度かと。 言葉遊びを追求するなら単発ネタを乱発するんじゃなく、野田秀樹さんの戯曲のように言葉遊びのそれぞれが有機的につながりながら物語そのものを押し進めるようでないと・・・ 自分が面白いと感じたのは、事件のベースを昔の○○に置いた発想の妙とそこから展開させたマンガチックな真相の2点だけです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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