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AliceinAbyss さんのレビュー一覧

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レビュー数7

全7件 1~7 1/1ページ

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No.7:
(7pt)

故郷は、遠くに在りて思うもの

戦時中にアカ華族の嫌疑によって絶海の孤島に建てられた「パノプティコン(一望監視獄舎)」に収監された天才ショパニスト八重洲清康は、3人の囚人仲間とともにどのように脱獄したのか?を清康の孫にして同じ天才であるイエ先輩が解き明かす、というハウダニットが本作のメインになります。そしてその脱獄方法には「超絶技巧練習曲にすぎますよー」と思う方法が一点含まれているものの、非常にユニークでとても面白いと感じました。

また、このパノプティコンでは脱獄と別の事件も起こるのですが、そのフーダニットやホワイダニットを問う「第二の読者への挑戦状」が含まれているのも面白いところです。フーダニットのロジックはパズラー作家らしい見事なものですし、「人の心は100%論理的ではないので、論理での心理推定は極力避けるべき」を信条とする自分には最も相容れない「ホワイダニットの挑戦状」も、その動機を生み出すにいたった事象が自分にとって非常に共感性が高く、結果動機そのものの合理性にも納得させられてしまいました。だって自分は典型的小市民の「日本人」なんですもの(そして本作で一番好きな箇所はここだったりもします)。

一方で「第一の読者への挑戦状」としてもちろん脱獄のハウダニットが問われるわけですが、挑戦状が無ければ示された回答には特に文句も無く面白いと感じたものの、挑戦状を前提(論理的に指摘可能)とすると、どうしても論理条件との矛盾があると思われるため回答として不適当ではないか、との考えがぬぐえないのが残念なところです。

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絶海ジェイル Kの悲劇’94
古野まほろ絶海ジェイル Kの悲劇’94 についてのレビュー
No.6:
(7pt)

ダンガンロンパ霧切の感想

5人の探偵たちが、特徴的な形状の建造物(天文台)に集められて・・・
ということで、あれやらこれやら色々な要素てんこもりなミステリを期待してしまいますが、本作は、とあるミステリ要素の一本勝負と言う非常に漢らしい一作です。
そしてそれがシンプルなものながら非常に良くできており、またシンプルゆえに読みやすく良作だと思います。

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ダンガンロンパ霧切 1 (星海社FICTIONS)
北山猛邦ダンガンロンパ霧切 についてのレビュー
No.5:
(7pt)

絶望系 閉じられた世界の感想

「封印された奇書。圧巻の暗黒ミステリ」
との惹句に引かれ読んでみましたけど、本作は暗黒ミステリではなく暗黒神話(世界の成り立ちに関する物語)ですね。
要はミステリ要素は0です。
ただ非常に衒学的に作り上げられたと思われる物語なので、アンチミステリではない(そもそもミステリではないので)けれど、確かに「奇書」と言える出来で、その衒学的意図・趣向に面白さがある作品だと思います。

ところで本作の「俺の部屋に天使と悪魔と死神と幽霊がいる」という物語のはじまりは、同氏の代表作中の「この中に、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい」のセルフオマージュでしょうか。そう考えると両者は「明朗(萌え)神話」と「暗黒(エロ)神話」という裏表の関係で、本作中で天使と死神が「萌えとエロの違い」について延々と議論する描写があるのも必然かもと思ったり思わなかったり。


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絶望系 (新潮文庫nex(ネックス))
谷川流絶望系 閉じられた世界 についてのレビュー
No.4: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

魔眼の匣の殺人の感想

真の予知と予言がある(かもしれない)という世界観を背景に、その特殊設定を前作同様うまく事件に組み込んでミステリに仕上げていると思います。

ただ、前作の特殊設定が作中世界に確かに存在するものとして描かれ、ゆえに様々なミステリ要素に影響を与えているのに対し、本作では予言や予知が真であるか厳密には不明のため、登場人物たちの心理的要素(選択基準や行動基準)にしか影響を与えていないのが「特殊設定ミステリ」としてみると少し残念ではあります(例えば予言が100%実現する世界では「予言で人を殺すこと(ハウダニット)」も推理の要素となりえますが、本作ではなりえません)。

もっとも、それはあくまでミステリ四冠にふさわしい傑作だった前作との比較の話で、予言や予知に翻弄される形で各登場人物が取る行動はそれぞれユニークで、特に探偵側の行動は論理性を備えつつ類を見ないもので非常に面白く、また特殊設定を離れたオーソドックスなミステリーとしてみるとフーダニットのロジックが良く出来ており、十分面白く読み応えのある本格ミステリー小説だと思います。

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魔眼の匣の殺人
今村昌弘魔眼の匣の殺人 についてのレビュー
No.3: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

孤島パズルの感想

アリスとマリアの妙にこそばゆいやり取りも、進化する暗号の解明も、犯人に至る一見簡素ながら端正なロジックも、それぞれが非常によくできているため全編を通して厭きることがなく、評価が高いのも納得の作品です。
ただ犯人の行動に個人的にどうも納得がいかないものが一点だけあり、その点でマイナスです(何故した?あるいはしなかった?という疑問は「ただの思い付きだった」でも、「気づかなかっただけ」でも何でも説明がつくものではあるのですが)。

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孤島パズル (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
有栖川有栖孤島パズル についてのレビュー
No.2: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えたの感想

前作と比較すると本作はわりとオーソドックスな推理合戦もので、正直に言えば前作の仕掛け(論理学的目論見)のほうが「小説」としては数倍面白いです。
ただ前作はある推理の検討が不十分で(少なくとも自分にはそう思える)、そのため前述の目論見自体が成立しないように思われるので、ミステリサイトの点数的には本作のほうが上だと思います。
また本作の各推理はオーソドックスとはいえ、事件の背景や各キャラクターの様々な思惑によって推理合戦自体に思わぬ方向性が付与されており「ミステリ」として十分以上に面白い作品といえます。

それにしても奇跡の証明が目的である以上、上苙の推理が正解するのは奇跡が存在したときであり、そのため作中ではどうしても最終的には推理ミスをしている探偵に堕しているのが悲劇的というかなんというか。
聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた (講談社文庫)
No.1: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

5人の名探偵と1人の銘探偵(と4人の作家仲間)

全員が大好きな推理作家さんという稀有なアンソロジー
・・・なのですが、正直各短編についてミステリーという評価枠内では期待はずれかな
というのが感想です。
有栖川、法月両氏の作品はロジック物短編に特有のオーソドックスさが際立ってますし、山口氏の作品は趣味に走りすぎ(短編だし個人的には好きですが)と感じました。ミステリー作品集としての個人的ベストは、ツッコミどころ満載なもののアイデアが非常に秀逸な我孫子氏と、相変わらず挑発的な麻耶氏の作品でしょうか。

ただ「名探偵」がテーマとあって、綾辻氏を除くそれぞれの作家さんの抱く名探偵像みたいなものも見えて面白かったですし、綾辻氏の作品もそういった数々の名探偵を生み出した「京大推理研」を核に作家本人たちが言及しているという点で興味深かったです。

▼以下、ネタバレ感想
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7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー (講談社ノベルス)