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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数136件
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これは良作。
「七つの海を照らす星」の続編。 驚かせどころは両作とも一点なのですが、大掛かりだった前作と違ってこの作品では(ネタバレ直前まで)至って自然に見せるところがいい。 前作は「へぇーー」、今作は「えっ?!!!」って感じ。 インパクトがでかいのは明らかに今作。「十角館」に近い驚きがある・・・と言ったら大袈裟かな? だけど、衝撃を受けた後、ページを戻してまで確認したのは「十角館」「三崎黒鳥館(以下略)」以来かもしれない。 この作品にて初登場する人物はいるものの殆どが前作に共通していますし、前作のエピソードもところどころに挟まれています。 ただ、前作を先に読む事をお薦めする一番の理由はそこではないです。 真相が明らかになった時に、私が「だからか・・・」と真っ先に思った事があります。 恐らく最大の伏線の一つになっていたはずです。 前作を読んでいなければ、ここに関する違和感を感じることが出来るわけがありませんから。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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碓氷優佳シリーズの2作目。
「殺人事件が起こるまで」を描いたかなり変則的な倒叙型ミステリです。 前作の「扉は閉ざされたまま」も面白かったですがこれも負けず劣らず面白かった。 実際「殺人事件が起こるまで」しか描かれていませんので、物足りなさを感じてしまいそうなんですがそうでもない。 主な登場人物は3人。「殺したい男(加害者)」「殺されたい男(被害者)」「それを邪魔する碓氷優佳(探偵)」 加害者と被害者の思惑は一致、しかし加害者はその事に気付いていない訳で、加害者は被害者の掌で踊らされているといった印象。 つまり「加害者VS探偵」ではなく「被害者VS探偵」という、これまでに見た事もない構図になっています。 加害者を操り犯行を行わせる展開はよくありますが、この作品では、更に探偵役が加害者を巧みに操り阻止してゆきます。 そして最終的には被害者をも操ろうとします。 まだ事件は発生すらしていないのです。そんな事件の発生を予見し邪魔するキレキレの女探偵、しかもその「邪魔」が読み手にも全く不自然に見せないところが驚愕です。 ある意味最強の探偵と言えるのではないでしょうか。 それに探偵視点で描かれていないのも上手いと思います。 彼女の思考がトレースされていると、驚きも半減以下ですからね。 彼女の意図が明らかになった時など、社長と一緒にびっくりさせてもらいました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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序盤は、恋愛要素のない古典部や小市民シリーズといった印象で「またこのパターンか」であり、恋愛要素がない分何とも地味に感じる。
しかし途中で「なるほど」とある事に気付くのだ。 これなら恋愛要素など必要ないしかえって邪魔かな・・・と、これで十分面白いと思ってました。 しかししかし、ここまでは大部分の読者が気付く様に出来ているとのこと。 つまりこの作品、予想を大きく上回る作品だったと言うことです。そして私は大部分の読者止まりの男なのであった。 最後の一行。 どんでん返しに持っていったのが「儚い羊たちの祝宴」だったが、この作品は隠しているのだ。 所謂リドルストーリー。 巷によくある読み手に全てを委ねる投げっぱなしのものではない。 何て緻密に計算された構成。初めて読んだな、こんな作品。 「インシテミル」や「折れた竜骨」など好きな作品はあるものの、ライトノベル作家という印象が強かったこの作者さん。 正直、古典部や小市民シリーズは、ライトノベルの延長上だと思っている私。 第一作目を読んだのでまぁ続きも・・・っていう感じで手にとっただけで実際まだシリーズ全てを読み終えていない。 正直食欲がわかない感じ。 軽く見ていたわけではないが、この作品を読んで、物語だけでなく作者の評価も反転。 こういう作品、もっと読みたい。 |
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「王手飛車取り」の続編となるこの作品。
その前作と合わせ技の趣向が凝らしてあって、「いつ気付くか」がこの作品のひとつのテーマになっているように思います。 個人的に好きです。こういう趣向。 単体で読んでも楽しめなくはないですが、はっきりこの作品は「王手飛車取り」を読んでから、しかも直ぐではなく少~し時間を空けて読むべき作品ですね。 これがこの作品を100%楽しめる一番の読み方かと。 ヒントが小出しになっているのがまた憎たらしいですね。 しかもはっきりネタばらしするわけでもありませんし。 まぁ余り早く気付いたらそれはそれで面白味が減ってしまうのかもしれませんが・・・ 私は「王手飛車取り」を好みでなかったため高評価しませんでした。なもんで積読期間2年。2年はちょっと空き過ぎでしたね。 気付くのが遅かったもんで、気付いた時にはそれはもう関心しましたよ。 前作の評価を上げようかと今検討中です。 前作「なんでこんなラストにしたの?」って思っていたりしたのですが、ここまで考えられてのものだとしたら納得ですし素直に凄いなと思います。 前作を読んで間が空いてしまっている方は、この作品を読む前にネタバレサイトなどで前作のラストを確認してから読んだ方がいいかもしれませんね。 特に前半の数章を読んでどこか「違和感」を感じなかった方、まだ遅くありません。(前作の)レビューサイトへGO!! 作者の意図に気付かずに読み終えてしまうことのないように(笑) なんか内容とはかけ離れたレビューになってしまいましたが、ミステリとしても質が高いですよ。 前作のような非人道的なえげつなさは若干薄れてはいますが・・・ |
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魔法や呪いの存在が前提となっていて、(個人的に好みではない)RPGの世界観を危惧しながら読み始めましたが驚きました。ミステリでした。
「これから始まる戦闘のきっかけにすぎない」と考えていた領主の殺害がメインの謎だったとは。 些か拍子抜けしてしまいましたが、延々戦闘の描写が続くよりは、個人的にこちらのほうが良かったかな。 個性的な傭兵たちが数多く登場しています。 ただミステリって事で、探偵役の聞き取り捜査での登場が大部分であり、彼らの戦闘シーンについても描かれてはいるものの、若干浅いかなと思いました。 そこは少し残念でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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貴族探偵と言われて最初メルさんを想像してしまいましたが、麻耶さん独特の探偵論から産まれた究極の探偵といったところでしょうか。
「人は僕を『貴族探偵』と呼ぶね」って、そう呼ぶ奴の顔を見てみたい気がします(笑) ・・・実際自分で言っているだけで誰かがそう呼んだシーンはなかった気がする。 全てをワトソン的立場の使用人に面倒見てもらう探偵、そしてその使用人の名前が、山本、田中、佐藤って・・・ありきたりな、そして投げやりな・・・頑張ってるのは彼らなのに・・・ あと短編向き探偵と言えるでしょうね。この設定で長編は無理でしょう(笑) メルさんの短篇集の時にも感じましたが、麻耶さんの短編集って面白いですね。長編よりも。 元々一筋縄ではいかない作品ばかりなのですが、短編だと一作ごとに振り返りや整理が容易に出来ますからね。 派手なトリックを楽しむ作品ではなく、遊び心満載のロジックを堪能できる作品です。 5作品ともかなり読み応えがありますよ。 絶対神メルさんの推理は、時に強引だったり無茶苦茶だったりしますが、この作品における使用人達の推理はまさに理にかなっており、パズルとしてはこちらの方が断然楽しめるように思います。 新しい探偵小説の見せ方とでもいうのでしょうか。 この作者の一種特異な企みには脱帽するばかりです。 私が好きなのはやはり「こうもり」 満点評価した「蛍」でも似たトリックがありましたが、また騙されてしまった。 好きなんですよね、このパターン。 フェア・アンフェア論争があったようですが、嘘はついてないんですもん。勿論フェアですよ。 |
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複数解釈が可能な結末となってはいますが、作者が東野圭吾である事を考えると間違いなく答は1つ。
でなければタイトルの「秘密」の意味が全く変わってきますからね、間違いないと思います。 そっち方向へどっぷりはまれば間違いなく泣ける作品です。 「こう考える余地も残されている」とか「あっさりとこんな不思議な現象を受け入れる主人公達に違和感を感じる」といった、何にでも疑り深い癖のついているミステリ読みの達人や、余りにもリアリティを追求してしまう読み手は損をしてしまう作品かもしれません。 文句なし満点の名作です。素直に読みましょう。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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また名作に出会えた。そんな気持ち。
文句なし満点です。 17歳の女子高生の心が25年の時をスキップし42歳となった自身の肉体に入り込むという物語です。 しかも高校教師。つまり教え子は自身の心と同じ高校生。 青春時代、大学入試、就職、恋愛、結婚、出産、育児、そして両親の死。 失くしたのではない、持つことすら許されなかった。 知らない内に人生において重要な選択が終わってしまっており後悔しようにも出来ないという非情とも言えるシチュエーション。 「最後主人公が過去に戻って人生をやり直す」これがこのパターンのお約束だろう。 しかしこの作品は、失ったものを取り戻す物語ではなくて、失ったことを受け入れて、持ち前の「自尊心」で前に進みページをめくっていく物語。 そんな主人公を強烈に応援したくなる。とてつもなく感情移入してしまった。 そして物語終盤、一気に波が押し寄せてくる。 語り口は非常に優しいのですが、読んでいて不思議なほど「熱い」、身体中が「熱い」のです。 「北村薫!!お前は言葉の魔術師か!!」と叫びたくなる程、いちいち私に突っかかってくる。 「時の無法な足し算の代わりに、どれほど容赦のない引き算が行われたのか」 「私の人生って、忘れてしまいたいほど酷かったわけ?」 主人公が作詞した文化祭序曲の詩にやたら登場する「今は」「今日の日」「今こそ」 そしてラストの「昨日という日があったらしい。明日という日があるらしい。だが、わたしには今がある」 忘れられない。名言の宝庫。 ハッピーエンドではないのだが爽やかな読後感。 今の現状が受け入れられない、いじいじしている自分が嫌いだ・・・こんな特異な状況に陥った主人公に限った事ではなく、そういう人って意外と多いのではないでしょうか。 「嘆いてばかりいないで、受け入れて前へ進め!!」 これが作者のメッセージだと思います。 「その通りですね。ありがとう」それが私の回答です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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重松清の流星ワゴンを思い出してしまった。
こういうタイムスリップものは、タイムパラドックスの矛盾、即ち歴史が書き換わる事による危機を打開する事に躍起になる作品が多いですが、この作品の場合は、こういうまどろっこしい事を一切排除して、一部の登場人物の未来を劇的に変えています。 若かりし頃の父拓実とタイムスリップしてきた拓実の子供であるトキオの不思議な生活の描写が作品全体の9割以上を占めます。 正直若かりし頃の父拓実のダメっぷりに終始イライラさせられっぱなしでした。 トキオの父となった現在の拓実に間しては、短いながらも冒頭からの話で読者にもその変貌ぶりがわかるよう記述されていますが、余りにもダメ男時代の描写が長く、読中は「イマイチかも」と思いながら読んでいました。 それを見事に覆してくれたのが最後の一行で、その最後の1行に星2つプラスです。 読み手に「ループ」を連想させるその一言は、感動的というだけでなく、物語にスケールを加えてくれたように感じます。 劇的なほどに効果的。 拓実は今後あそこに通う事になるのだろうか。 そう考えるだけでどこかほっこりします。読み手にそう考えさせる事を演出した作者に拍手です。 |
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一番肝心な謎は最後まで明かされませんが、その他の部分は、裏表紙もしくは読み始めて序盤の内にはっきりします。
「高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に十年ぶりに現れたのは学生時代ライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの二人が宿命の対決を果す」 この設定だけでドキドキさせられます。 そして、事件が解決したにも関わらず残るページ数。それを考えても、事件の推理よりも人間ドラマを重視した作品と言えます。 ラストの数十ページは、かなり読み応えがあります。 最大の謎については想像するのは容易、そしてその内容についても予想通りだったのですが、その表現方法が予想を遥かに超えていでグッときてしまった。 読後には白夜行を彷彿させるようなせつなさが残ります。 |
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【ネタバレかも!?】
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「健聴者と聴覚障害者の恋愛」という体裁を取っていますが、作者の主眼は恋愛にはなく「聴覚障害者の事をよく知って欲しい」にあると思いました。
主人公の、伸、ひとみ共に、そのための人物造形がなされていたように思います。 決して「いい人」として描かれてなかったですね。 メールではすこぶる良好であった関係が、実際に逢ってみると、初対面でありながら、お互いに不快感を感じる結果になってしまう。 健聴者と難聴者との、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションの難しさが伝わります。 伸を、積極的に難聴者を受け入れようとする健聴者の代表、 伸の同僚の女性を、難聴者に対し、若干だけど好意的でない健聴者の代表として描いてます。 巷に最も在りがちな健聴者の対障害者のスタンスを表現しているのだなと感じました。 読み手を不快にさせるようなきつい表現を避けつつやんわりと、問題点提示できていたように思います。 またひとみを介して、難聴者に多く見られ、恐らく健常者には理解し難いであろう行動・発言的特徴を上手く伝えていたと思います。 お互いの本音をぶつけ合う事で、最後ハッピーエンドに繋がりますが、私には伸のような行動や発言は絶対にできないですけどね。 聴覚障害者である大切な友人からプレゼントされた思い出深い作品です。 だから点数は若干甘目。 健聴者の方に是非とも読んで欲しい作品。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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「はしがきからあとがきまで全てが物語」
グロ小説かと思って読み始めたのですが、想像していた程でもない。 確かに殺人は起こしますが、その描写は妙に薄っぺらい。 殺人鬼が殺人を犯す時の心情や欲求といったものを描いているようにはとても思えず「何だったんだ、この作品」と思ったところでの「あとがき」である。 最後の最後に、これまで頭の中に描いていた構図がものの見事に反転します。 作者が見せたかったのはこれだったのか・・・と。 この作品は作中作なのですが、読んでいる最中は、そんな事ころっと忘れておりました。 そして、作者は一人ではなく複数の書き手がいるという事が1つのポイントになっていますね。 構成を複雑にしている訳ではなく、我々読み手に大きな衝撃を与えんために緻密な計算がされていると思いました。 話題作なのも納得です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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