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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数48件
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複数解釈が可能な結末となってはいますが、作者が東野圭吾である事を考えると間違いなく答は1つ。
でなければタイトルの「秘密」の意味が全く変わってきますからね、間違いないと思います。 そっち方向へどっぷりはまれば間違いなく泣ける作品です。 「こう考える余地も残されている」とか「あっさりとこんな不思議な現象を受け入れる主人公達に違和感を感じる」といった、何にでも疑り深い癖のついているミステリ読みの達人や、余りにもリアリティを追求してしまう読み手は損をしてしまう作品かもしれません。 文句なし満点の名作です。素直に読みましょう。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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また名作に出会えた。そんな気持ち。
文句なし満点です。 17歳の女子高生の心が25年の時をスキップし42歳となった自身の肉体に入り込むという物語です。 しかも高校教師。つまり教え子は自身の心と同じ高校生。 青春時代、大学入試、就職、恋愛、結婚、出産、育児、そして両親の死。 失くしたのではない、持つことすら許されなかった。 知らない内に人生において重要な選択が終わってしまっており後悔しようにも出来ないという非情とも言えるシチュエーション。 「最後主人公が過去に戻って人生をやり直す」これがこのパターンのお約束だろう。 しかしこの作品は、失ったものを取り戻す物語ではなくて、失ったことを受け入れて、持ち前の「自尊心」で前に進みページをめくっていく物語。 そんな主人公を強烈に応援したくなる。とてつもなく感情移入してしまった。 そして物語終盤、一気に波が押し寄せてくる。 語り口は非常に優しいのですが、読んでいて不思議なほど「熱い」、身体中が「熱い」のです。 「北村薫!!お前は言葉の魔術師か!!」と叫びたくなる程、いちいち私に突っかかってくる。 「時の無法な足し算の代わりに、どれほど容赦のない引き算が行われたのか」 「私の人生って、忘れてしまいたいほど酷かったわけ?」 主人公が作詞した文化祭序曲の詩にやたら登場する「今は」「今日の日」「今こそ」 そしてラストの「昨日という日があったらしい。明日という日があるらしい。だが、わたしには今がある」 忘れられない。名言の宝庫。 ハッピーエンドではないのだが爽やかな読後感。 今の現状が受け入れられない、いじいじしている自分が嫌いだ・・・こんな特異な状況に陥った主人公に限った事ではなく、そういう人って意外と多いのではないでしょうか。 「嘆いてばかりいないで、受け入れて前へ進め!!」 これが作者のメッセージだと思います。 「その通りですね。ありがとう」それが私の回答です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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「健聴者と聴覚障害者の恋愛」という体裁を取っていますが、作者の主眼は恋愛にはなく「聴覚障害者の事をよく知って欲しい」にあると思いました。
主人公の、伸、ひとみ共に、そのための人物造形がなされていたように思います。 決して「いい人」として描かれてなかったですね。 メールではすこぶる良好であった関係が、実際に逢ってみると、初対面でありながら、お互いに不快感を感じる結果になってしまう。 健聴者と難聴者との、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションの難しさが伝わります。 伸を、積極的に難聴者を受け入れようとする健聴者の代表、 伸の同僚の女性を、難聴者に対し、若干だけど好意的でない健聴者の代表として描いてます。 巷に最も在りがちな健聴者の対障害者のスタンスを表現しているのだなと感じました。 読み手を不快にさせるようなきつい表現を避けつつやんわりと、問題点提示できていたように思います。 またひとみを介して、難聴者に多く見られ、恐らく健常者には理解し難いであろう行動・発言的特徴を上手く伝えていたと思います。 お互いの本音をぶつけ合う事で、最後ハッピーエンドに繋がりますが、私には伸のような行動や発言は絶対にできないですけどね。 聴覚障害者である大切な友人からプレゼントされた思い出深い作品です。 だから点数は若干甘目。 健聴者の方に是非とも読んで欲しい作品。 |
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【ネタバレかも!?】
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「はしがきからあとがきまで全てが物語」
グロ小説かと思って読み始めたのですが、想像していた程でもない。 確かに殺人は起こしますが、その描写は妙に薄っぺらい。 殺人鬼が殺人を犯す時の心情や欲求といったものを描いているようにはとても思えず「何だったんだ、この作品」と思ったところでの「あとがき」である。 最後の最後に、これまで頭の中に描いていた構図がものの見事に反転します。 作者が見せたかったのはこれだったのか・・・と。 この作品は作中作なのですが、読んでいる最中は、そんな事ころっと忘れておりました。 そして、作者は一人ではなく複数の書き手がいるという事が1つのポイントになっていますね。 構成を複雑にしている訳ではなく、我々読み手に大きな衝撃を与えんために緻密な計算がされていると思いました。 話題作なのも納得です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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元精神科医である作者が、精神病院の実態を患者の立場から描いた作品です。
精神疾患系の作品にありがちな、読んでいるこちらも息苦しくなるような差別的描写も(殆ど)なく心温まるお話です。 患者達のその独特な思考や心理の描写が精神科医にしか描けないとまでは言いませんが、その描写に患者達を包み込むような優しさや暖かさを感じられたのは、この作者でこそではないでしょうか。 クライマックスで涙腺が緩むのですが、逢坂剛氏の解説がそれに追い打ちをかけます。 是非解説まで読んで下さい。 扱っている内容に若干デリケートな一面もあるためか、作者は問題提起こそしますが、最後少々あやふやに終わらせているところがあります。 そこを逢坂剛氏がズバリ突きます。 泣けます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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まだ長いとはいえない私の読書人生ですが、これ程「バカな」話は読んだ事がありません(笑)
ただ「バカミス」は「バカミス」なんでしょうけど、この作品を壁に投げつける人はいないでしょう(笑) 作者の「バカミス」に賭ける執念には脱帽で、ここまで来てしまえば私は最早「芸術」と呼びたい(笑) この作品の謎が全て明らかになった時の衝撃度は、「十角館の殺人」を10とすると50くらいかなぁ(笑) 再読も楽しいと思いますよ、この作品は。 勿論お薦めしますね。 ただ「謎解き」の章辺りからは、一人でいる時に読んだ方がいいですよ。 ちなみに、文庫落ちを待っても無駄だと思いますので、是非今直ぐ本屋さんへ!! ▼以下、ネタバレ感想 |
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読み終えた時、これ程「もっと読んでいたい」と思えた本は久しぶりです。
私のような、学生時代など遠い昔というおじさん、またはおばさんが読むと、込み上げてくるものがあるかも知れません。 各種方面からストレスをかけられている中間管理職の皆さん、子育てに一息ついた奥さん、そんな疲れた中年にお薦めします。 名作だと思います。 高校生達が丸一日歩きゴールを目指します。 それ以外何もありません。 この作品には、意外な展開・結末など何ひとつありません。 ただそれだけの話に何故これだけ引き込まれてしまったのか。 作者の技量が窺えますね。 この「歩行祭」、気の合う者同士がつるんで歩きます。 既にお互いの事をよく知る間柄であるはずなのですが、一日中共に歩いている内に、秘めていた思いが露見していき、それが新しい発見となり、繋がりを一層強くします。 貴子と融という、クラスメイトでありながら、会話も交わしたことのない異母兄弟の和解が中心に添えられていますが、彼らを囲む仲間達も気持ち良い奴ばかりです。 前向きさ、ひたむきさ、必死さ・・・若いなぁ、羨ましいなぁ、自分にもこういう多感な時期があったなぁと・・・ 楽しい読書タイムでした。 |
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【ネタバレかも!?】
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愚かにも自殺という選択で人生を終えた「神に選ばれし」4人が、天国に行くために100人の自殺志願者を救済するという物語。
彼らは、現世の人間からは透明人間の如く目に見えず、また物に触れる事すらできませんが、自殺志願者を発見でき、人間に憑依する事により思考をトレースする事ができ、メガホンを使って語りかける事によりある程度行動を操る事ができます。 オヤジギャグは満載ですし、4人が自殺志願者を取り囲み、メガホンで説得している姿を想像すると、最早コメディとも思えてしまうのですが、否!!、これは良質の社会派小説ですよ。 兎に角「神に選ばれし」4人のキャラクター設定が抜群です。 東大受験に失敗した19歳の青年、会社を倒産させてしまった零細企業の元社長、仕事と恋愛に行き詰ってしまった若い女性、そして鬱病のヤクザの親分。 金銭問題、会社や家庭での人間関係や処遇の問題、肉体的な問題、精神的な問題・・・などなど、自殺の原因は数多くありますが、住む世界、自殺した理由も全く異なる4人が、得意分野、不得意分野に上手く棲み分けされ、説得に際して存分に個性を発揮していきます。 それだけではなく、青年が「現在」、女性と元社長が「バブル直後」、ヤクザが「高度成長期」と、4人の死亡時期が異なっており、またキャラとその死亡時期が何とも絶妙で、物語にスパイスを効かせています。 たまに4人の議論がちぐはぐになったりするのですが、時代時代の人間の価値観や考え方の違いが表面化され、非常に面白いです。 中でもヤクザさんは、思考も単純で、言葉も汚く、ただ勢いだけで余り役に立っていないような気にもさせられますが、チームのムードメーカー的存在であったのは確かですし、実際のところ作者は、(自殺を多発させてしまうような)現代社会の矛盾に対しての怒りを彼に代弁させているような気がしました。 この作品にはほろっとさせられる箇所がいくつもありますが、ヤクザさんの言動によるところが多かった気がしますしね。 自信を持ってお薦めできる作品です。 |
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第二次世界大戦、ましてや特攻隊をテーマに扱うというのは作家にとってある意味挑戦と言えるのではないでしょうか。
賛美する作品など今の世の中で受け入れられる訳がなく、批判するにしても非常にデリケートな問題だと思います。 作家自身が持つ道徳観、倫理観の押し付けにより歪んだ方向に読者を誘導される事がないか危惧していましたが、そんな心配は全く杞憂でした。 それにしても素晴らしい作品だった。 娘、息子が高校生くらいになったら是非読ませたいです。 戦争モノ嫌いで敬遠している方にも是非お薦めしたい。 そして泣いて下さい。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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クローズドサークル内でのデス・ゲームなど、本来非現実的で理不尽であり、その必然性が読み手に到底理解できぬままゲームが開始され、殺戮が繰り返されるという事が多々ありますが、個人的にこの作品が他の同系作品と一線を画していると思えるのは、その舞台設定にあると思っています。
ルールはゲーム開始前に明確になっておりフェアといえるのですが、このルールが一風変わっている事により、先が読めず、緊張感を感じながら読む事ができました。 そして、この手の作品としては珍しく、登場人物達の行動にリアリティを感じる事ができます。 非常に面白かったです。 お薦めできます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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個人的に短篇集は読み応えを感じられる事が少なく正直好きではありません。
この作品は、夜の章、僕の章合わせて6編の短篇集という事になっていますが、「連続」短編小説です。 それぞれが独立した話ではなく、時系列の流れが存在します。 つまり、夜の章、僕の章、どちらか一方だけ読んだだけではダメですし、夜の章、僕の章の順番で読まなければ面白さが分からないと思います。 時系列の流れの中に、作者の仕掛けた巧みな「罠」があるのです。 乙一作品は、「暗いところで待ち合わせ」に次いで2作目でしたが、2作共に文句なしの満点評価。 満点評価は他にも沢山ありますが、この2作は突出している気がします。 星11個付けたいくらいです。 無駄に長くないのもいいよね。 今後、乙一作品を読みあさる事になるでしょう。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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社会生活に馴染めない不器用な男と、視力をなくすという身体的ハンデキャップを抱え引きこもり気味の女の奇妙な同居生活。
時間が止まったかのような、そしていつ壊れてしまっても不思議でない「静寂」の中、少しづつ接近していく「心」 語り手を交互に変えながらの絶妙な心理描写。 言葉も発せない、物音すらたてる事もできないという状況の中で、自分にとって大きな不利益が被る可能性がある事も分かっていながら、自然と体が反応してしまう。 自分は一人でも大丈夫と友人には強がって見せるが、そこにいるのが犯罪者だと朧気に理解していながらも、居て欲しいと願ってしまう。 他人との接触に消極的な二人が見せる、相手を思いやる優しさ、相手を必要とする弱さ。 涙腺が何度か派手に緩んでしまった。 文句なしの満点評価。 |
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