ミノタウロス

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ミノタウロスの評価:

3.86/5点 レビュー 29件。 B ランク

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平均点3.86pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全42件 21〜40 2/3ページ
No.22
(4pt)

嫌いではない。

心地よく物語世界に身を委ねることができた。一息で読み切れたといっていい。だが、読後感は《ただ物語を消費しただけ》といった印象である。類似の印象は、たとえばサバチニ『スカラムーシュ』などがそうだった。ただ、サバチニが痛快なる大団円の冒険ロマンであるのに比べ、こちらの物語はどこか露悪的で、ときに不快でしかないような展開をする。嫌いではない。質も、翻訳で読むサバチニなどよりはずっと上等だろう。だが、作品の売りがみえない。何を徹底的に研ぎ澄ました作品なのか、よく伝わらない。少なくとも、突き抜けて訴えかけてくる強烈な要素はなかった。ある種の読書家にとっては手堅い作品なのだろうか。しかし、まず万人向けの浅く親切なエンターテイメントといったようなものではないし、また、作品の先に一言では語りきれない「何か」を求めるような読者にも、得られるものは少ないかもしれない。追記:鴻巣友季子さんが朝日新聞に書いた書評が興味深かった。
ミノタウロス (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: ミノタウロス (講談社文庫)より
4062766515
No.21
(4pt)

嫌いではない。

心地よく物語世界に身を委ねることができた。一息で読み切れたといっていい。だが、読後感は《ただ物語を消費しただけ》といった印象である。類似の印象は、たとえばサバチニ『スカラムーシュ』などがそうだった。ただ、サバチニが痛快なる大団円の冒険ロマンであるのに比べ、こちらの物語はどこか露悪的で、ときに不快でしかないような展開をする。嫌いではない。質も、翻訳で読むサバチニなどよりはずっと上等だろう。だが、作品の売りがみえない。何を徹底的に研ぎ澄ました作品なのか、よく伝わらない。少なくとも、突き抜けて訴えかけてくる強烈な要素はなかった。ある種の読書家にとっては手堅い作品なのだろうか。しかし、まず万人向けの浅く親切なエンターテイメントといったようなものではないし、また、作品の先に一言では語りきれない「何か」を求めるような読者にも、得られるものは少ないかもしれない。追記:鴻巣友季子さんが朝日新聞に書いた書評が興味深かった。
ミノタウロス Amazon書評・レビュー: ミノタウロスより
4062140586
No.20
(5pt)

理屈で読むものではない

 デビュー作からずっと読んできたが、初めて「私ってちゃんとわかっているのだろーか」という不安を抱かずに読了できた作品だ。ファンとしてこれほど幸せなことはない。読んだ後のそういう屁理屈を一切寄せ付けない。最初に2〜3ページ立ち読みしてみて(幸か不幸か、賞を受けたので書店に平積みされている)、文章の勢いにのれない方はさっさとおりた方がいい。行けると思った方は、そのまま勢いにまかせて最後まで読めば、それでいい。感情移入まではいかなくても、魅力に富んだ強情っ張りが山ほど出てきて、そのあたりが実に美味しい。
ミノタウロス (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: ミノタウロス (講談社文庫)より
4062766515
No.19
(5pt)

理屈で読むものではない

 デビュー作からずっと読んできたが、初めて「私ってちゃんとわかっているのだろーか」という不安を抱かずに読了できた作品だ。ファンとしてこれほど幸せなことはない。読んだ後のそういう屁理屈を一切寄せ付けない。最初に2〜3ページ立ち読みしてみて(幸か不幸か、賞を受けたので書店に平積みされている)、文章の勢いにのれない方はさっさとおりた方がいい。行けると思った方は、そのまま勢いにまかせて最後まで読めば、それでいい。感情移入まではいかなくても、魅力に富んだ強情っ張りが山ほど出てきて、そのあたりが実に美味しい。
ミノタウロス Amazon書評・レビュー: ミノタウロスより
4062140586
No.18
(4pt)

ひたすらな暴力

 ロシア革命期,革命の奔流とは全く無関係なところで,アナーキーな暴力に明け暮れた「ぼく」たち。やりたいだけの暴力を振るい,敵対グループなどに捕まったら強姦などの暴力を振るわれながら生きていく姿は,なんともつらく,戦争や革命の持つ「恐ろしい」側面をうまく描き出していたように思う。
 「ぼく」は,次のように思う。
《人間を人間の格好にさせておくものが何か,ぼくは時々考えることがあった。(中略)ぼくはまだ人間であるかのように扱われ,だから人間であるかのように振舞った。それをひとつずつ剥ぎ取られ,最後のひとつを自分で引き剥がした後も,ぼくは人間のふりをして立っていた。数え切れないくらいの略奪と数を数えることさえしなくなった人殺しの後も,人を殺して身ぐるみを剥ぎ,機銃と手榴弾で襲って報酬を得ることを覚えても,ぼくはまだ人間のような顔をしていることができた。》(269〜270頁)
 しかし,仲間から離れ,独りっきりになった「ぼく」は,「人間の格好をしていない」(270頁)何者かになってしまった。
 重苦しくて,嫌な話だけど,佐藤亜紀の作った壮大な(虚構の)叙事詩に浸ってみるのも,悪くないのではなかろうか。
ミノタウロス (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: ミノタウロス (講談社文庫)より
4062766515
No.17
(4pt)

ひたすらな暴力

 ロシア革命期,革命の奔流とは全く無関係なところで,アナーキーな暴力に明け暮れた「ぼく」たち。やりたいだけの暴力を振るい,敵対グループなどに捕まったら強姦などの暴力を振るわれながら生きていく姿は,なんともつらく,戦争や革命の持つ「恐ろしい」側面をうまく描き出していたように思う。
 「ぼく」は,次のように思う。
《人間を人間の格好にさせておくものが何か,ぼくは時々考えることがあった。(中略)ぼくはまだ人間であるかのように扱われ,だから人間であるかのように振舞った。それをひとつずつ剥ぎ取られ,最後のひとつを自分で引き剥がした後も,ぼくは人間のふりをして立っていた。数え切れないくらいの略奪と数を数えることさえしなくなった人殺しの後も,人を殺して身ぐるみを剥ぎ,機銃と手榴弾で襲って報酬を得ることを覚えても,ぼくはまだ人間のような顔をしていることができた。》(269〜270頁)
 しかし,仲間から離れ,独りっきりになった「ぼく」は,「人間の格好をしていない」(270頁)何者かになってしまった。
 重苦しくて,嫌な話だけど,佐藤亜紀の作った壮大な(虚構の)叙事詩に浸ってみるのも,悪くないのではなかろうか。
ミノタウロス Amazon書評・レビュー: ミノタウロスより
4062140586
No.16
(5pt)

人間が昆虫のように見えてしまう

 ロシア革命の混沌を、架空の農村を舞台に描いた。ヴァーシャは、出会うものすべてを殺してしまう。友人も、気にくわない知り合いも、悪人も、ずっと行動を共にしてきた仲間も…。修羅であり、ミノタウロスだ。損得ではない。論理でもない。スイッチが入り、泣きながら殺してしまう。
 人が生きるというのはどういうことなのか。人が集まって社会ができる。国ができる。それは立派なことでもなんでもなく、カエルが交尾を求めてひしめき合うように、ただそんな風にスイッチがはいってしまうだけなのだ。
ミノタウロス (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: ミノタウロス (講談社文庫)より
4062766515
No.15
(5pt)

人間が昆虫のように見えてしまう

 ロシア革命の混沌を、架空の農村を舞台に描いた。ヴァーシャは、出会うものすべてを殺してしまう。友人も、気にくわない知り合いも、悪人も、ずっと行動を共にしてきた仲間も…。修羅であり、ミノタウロスだ。損得ではない。論理でもない。スイッチが入り、泣きながら殺してしまう。
 人が生きるというのはどういうことなのか。人が集まって社会ができる。国ができる。それは立派なことでもなんでもなく、カエルが交尾を求めてひしめき合うように、ただそんな風にスイッチがはいってしまうだけなのだ。
ミノタウロス Amazon書評・レビュー: ミノタウロスより
4062140586
No.14
(5pt)

前半の語りのすごさ

物語は、社会や周囲の人間を軽蔑しきったヴァシリの視点から一人称でシニカルに語られていきます。
そして、当然ヴァシリは、自分の行動を正当化しようとします。
しかし、その一方で、作者は主人公のナイーブさを一人称の語りのなかにそっと忍びこませています。
たとえば、恋人テチヤーナに対する描写の箇所。

だからテチヤーナは、十八で、はちきれんばかりに健康で、(中略)信じられないくらい無邪気だった。抱きしめると一抱えもあって、裏返すと広い背中が馬の毛並みのように輝いて、肌は柔らかいというより針で突いたらはじけそうで、こんがり焦げた焼き菓子のような匂いがした。

ここなんていわゆる19世紀ヨーロッパの大衆小説の典型的な修辞で、恥ずかしくなるような紋切り型の連続です。かつて『皆殺しブックレビュー』で、作者がデビッド・ロッジの評論を紹介していましたが、底意地の悪さはまさにロッジ的です。
ある女性評論家が、この主人公と作者は似ていると言っていましたが、それは間違っているような気がします。
作者のほうが主人公より二枚も三枚も上手です(というより、物語と登場人物の操り具合がすさまじい)。

その後、ヴァシリのヘタレっぷりは、どんどん顕在化していきますが、前半部分の最後で、ついに信頼していたシチェルパートフという資本家に7ページに渡って罵倒されまくることで、彼のダメさ加減は、読者の前にすべてさらけだされます。

と、このように、シニカルでニヒリストであるはずのヴァシリのヘタレさが徐々に明らかになっていくというかなり難易度の高いベクトルが、前半部分の修辞と行間には巧妙に織り込まれています。しかも一人称視点であるにもかかわらず…。これだけとってみても「ミノタウロス」は傑作だと思います。
ミノタウロス (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: ミノタウロス (講談社文庫)より
4062766515
No.13
(5pt)

前半の語りのすごさ

物語は、社会や周囲の人間を軽蔑しきったヴァシリの視点から一人称でシニカルに語られていきます。
そして、当然ヴァシリは、自分の行動を正当化しようとします。
しかし、その一方で、作者は主人公のナイーブさを一人称の語りのなかにそっと忍びこませています。
たとえば、恋人テチヤーナに対する描写の箇所。

だからテチヤーナは、十八で、はちきれんばかりに健康で、(中略)信じられないくらい無邪気だった。抱きしめると一抱えもあって、裏返すと広い背中が馬の毛並みのように輝いて、肌は柔らかいというより針で突いたらはじけそうで、こんがり焦げた焼き菓子のような匂いがした。

ここなんていわゆる19世紀ヨーロッパの大衆小説の典型的な修辞で、恥ずかしくなるような紋切り型の連続です。かつて『皆殺しブックレビュー』で、作者がデビッド・ロッジの評論を紹介していましたが、底意地の悪さはまさにロッジ的です。
ある女性評論家が、この主人公と作者は似ていると言っていましたが、それは間違っているような気がします。
作者のほうが主人公より二枚も三枚も上手です(というより、物語と登場人物の操り具合がすさまじい)。

その後、ヴァシリのヘタレっぷりは、どんどん顕在化していきますが、前半部分の最後で、ついに信頼していたシチェルパートフという資本家に7ページに渡って罵倒されまくることで、彼のダメさ加減は、読者の前にすべてさらけだされます。

と、このように、シニカルでニヒリストであるはずのヴァシリのヘタレさが徐々に明らかになっていくというかなり難易度の高いベクトルが、前半部分の修辞と行間には巧妙に織り込まれています。しかも一人称視点であるにもかかわらず…。これだけとってみても「ミノタウロス」は傑作だと思います。
ミノタウロス Amazon書評・レビュー: ミノタウロスより
4062140586
No.12
(4pt)

大蟻食は「今までいったい何を読んできたのだ!」と、読者に問いかける。

舞台は、革命前後のウクライナ。
豊かな地主の家に生まれた若者は、激動する時代にすべてを失いながらも、
力強く、したたかに、生と死の挟間をかろうじて生きる。
乾いた大地でくり広げられる壮大なドラマは、
生半なヒューマニズムなど寄せつけない。
ミノタウロスとはギリシャ神話で、ミノス王の子にして
上半身が牛で下半身が人間というモンスター。
長じるにつれ凶暴の度を増し、最後はアテナイの王子に討たれる。
主人公はまさに、革命が産み落としたミノタウロスだ。
予備知識がなければ、翻訳文学と見紛うだろう。
80年代後半に突然あらわれ、当時の私のゆる〜い読書に冷水を浴びせた、
アゴタ・クリストフさんの『悪童日記』から連なる三部作を思い起こさせる。
そして、中上健次さん亡き後「日本文学は終わった」と嘯き(汗)、
しばらくこの国の作家の作品を手にしなかった私は・・・
予備知識がなかった。
わずか数ページ。
すでに、これから展開するだろう酷薄な世界を予感させ、
あれ?日本人の作品だったよな──と改めて奥付の著者名を確認する。
佐藤亜紀・・・女性と知って、少し納得する。
佐藤さんのブログ「新大蟻食の生活と意見」を読む。
舌鋒鋭く、楽しい。
今回初めて、『鏡の影』をめぐる騒動を知る。
なるほど。読まざるをない。
いずれにしても、『ミノタウロス』は
読み手のこれまでの読書歴と世界観を問うている。
全霊を傾けて臨むべき、骨太の作品である。
ミノタウロス (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: ミノタウロス (講談社文庫)より
4062766515
No.11
(4pt)

大蟻食は「今までいったい何を読んできたのだ!」と、読者に問いかける。

舞台は、革命前後のウクライナ。
豊かな地主の家に生まれた若者は、激動する時代にすべてを失いながらも、
力強く、したたかに、生と死の挟間をかろうじて生きる。
乾いた大地でくり広げられる壮大なドラマは、
生半なヒューマニズムなど寄せつけない。
ミノタウロスとはギリシャ神話で、ミノス王の子にして
上半身が牛で下半身が人間というモンスター。
長じるにつれ凶暴の度を増し、最後はアテナイの王子に討たれる。
主人公はまさに、革命が産み落としたミノタウロスだ。
予備知識がなければ、翻訳文学と見紛うだろう。
80年代後半に突然あらわれ、当時の私のゆる〜い読書に冷水を浴びせた、
アゴタ・クリストフさんの『悪童日記』から連なる三部作を思い起こさせる。
そして、中上健次さん亡き後「日本文学は終わった」と嘯き(汗)、
しばらくこの国の作家の作品を手にしなかった私は・・・
予備知識がなかった。
わずか数ページ。
すでに、これから展開するだろう酷薄な世界を予感させ、
あれ?日本人の作品だったよな──と改めて奥付の著者名を確認する。
佐藤亜紀・・・女性と知って、少し納得する。
佐藤さんのブログ「新大蟻食の生活と意見」を読む。
舌鋒鋭く、楽しい。
今回初めて、『鏡の影』をめぐる騒動を知る。
なるほど。読まざるをない。
いずれにしても、『ミノタウロス』は
読み手のこれまでの読書歴と世界観を問うている。
全霊を傾けて臨むべき、骨太の作品である。
ミノタウロス Amazon書評・レビュー: ミノタウロスより
4062140586
No.10
(4pt)

戻れなくなります。ご注意を。

「バルタザール」以来の著者のファンなので、途切れ途切れ読みが勿体無く
一日どっぷり浸かろうと、午前中から読み始め、読み終えたのが黄昏時…
日常に感覚が戻るまで、かなり長い時間を要しました。
黄昏時も悪かったのでしょうが、かなりやばかったです。
ありとあらゆる、暴力の限りを与え、与えられる。
銃器を備えた馬車で、大地を走り回り、襲い、奪って食べる時間の自由さ
(&もしかして彼の幸福)。
最後に一瞬、獣だった彼も「土地にへばりついて生きる人生」を夢見る。
でもそんな夢はやっぱり冗談でしかなくて。
完全に持って行かれ、圧倒されましたが
やはり「バルタザール」「天使」「1809」のような
ロマンティックが入った作品のほうが好きと言わざるを得ないかも。
ミノタウロス (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: ミノタウロス (講談社文庫)より
4062766515
No.9
(4pt)

戻れなくなります。ご注意を。

「バルタザール」以来の著者のファンなので、途切れ途切れ読みが勿体無く
一日どっぷり浸かろうと、午前中から読み始め、読み終えたのが黄昏時…
日常に感覚が戻るまで、かなり長い時間を要しました。
黄昏時も悪かったのでしょうが、かなりやばかったです。
ありとあらゆる、暴力の限りを与え、与えられる。
銃器を備えた馬車で、大地を走り回り、襲い、奪って食べる時間の自由さ
(&もしかして彼の幸福)。
最後に一瞬、獣だった彼も「土地にへばりついて生きる人生」を夢見る。
でもそんな夢はやっぱり冗談でしかなくて。
完全に持って行かれ、圧倒されましたが
やはり「バルタザール」「天使」「1809」のような
ロマンティックが入った作品のほうが好きと言わざるを得ないかも。
ミノタウロス Amazon書評・レビュー: ミノタウロスより
4062140586
No.8
(5pt)

この水準の作品が日本語で読めることの幸せ

筆者は本当にこの第一次世界大戦前後の時代が好きなのだろう。
しかも本書の舞台ははまだメジャーなウィーンを遠く離れ、
ヨーロッパの辺境の地、ウクライナである。
理解するに困難な時代設定など、背景の説明さえ
一切捨て去ることで文体の格調を維持し
安易な歴史モノにありがちな凡庸さを回避している。
よって気軽に手に取れるエンターテイメント作品ではないが、
紛い物の歴史に飽き飽きした読者にとって
この水準の作品が日本語で読めることは幸せである。
ミノタウロス (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: ミノタウロス (講談社文庫)より
4062766515
No.7
(5pt)

この水準の作品が日本語で読めることの幸せ

筆者は本当にこの第一次世界大戦前後の時代が好きなのだろう。
しかも本書の舞台ははまだメジャーなウィーンを遠く離れ、
ヨーロッパの辺境の地、ウクライナである。
理解するに困難な時代設定など、背景の説明さえ
一切捨て去ることで文体の格調を維持し
安易な歴史モノにありがちな凡庸さを回避している。
よって気軽に手に取れるエンターテイメント作品ではないが、
紛い物の歴史に飽き飽きした読者にとって
この水準の作品が日本語で読めることは幸せである。
ミノタウロス Amazon書評・レビュー: ミノタウロスより
4062140586
No.6
(5pt)

文体が見事な、悪党2人の物語です

ロシア革命前後のウクライナを舞台に、地元社会の崩壊をきっかけに「(あらゆる意味で)やっちまえ!」と突っ走っていく地主の息子とオーストリア軍の脱走兵の物語です。
標題の「ミノタウロス」が示すものは日本人にはイメージしにくいのですが(ギリシャ神話ではあっさり死んでる感じだし)、暴虐と殺戮など、あらゆるダークサイドのイメージをはらむキャラクターです。主人公のうち地主の息子は、流行りの幼児期トラウマなどはどこ吹く風。ナチュラル・ボーンで堅気じゃないし、相方となる兵士もまともそうで壊れています。この2人が地元のギャング集団や軍隊の間をすり抜けながら生きていくさまは壮絶そのもの。とはいっても文体自身は格調高く、下品なところは皆無です。新潮社クレスト・ブックスにそっと入れられていても気づかないほどの良質の文体だと感じました。結末は救いのかけらも何もないのですが、なぜかほっとさせるような切れのよい結末です。
主人公と相方のキャラクター造形もさるものですが、前半で異彩を放つのが主人公の兄。もともと影が薄い存在なのですが、傷痍軍人として故郷に帰ってきた後の存在感の不気味さが重たくのしかかってきます。
小悪党ものでも大悪党ものでもないけれど、疾走感あふれるダークな物語をこんなにキレイに読めたというのは驚きでしたのでこの評価としたいと思います。
ミノタウロス (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: ミノタウロス (講談社文庫)より
4062766515
No.5
(5pt)

文体が見事な、悪党2人の物語です

ロシア革命前後のウクライナを舞台に、地元社会の崩壊をきっかけに「(あらゆる意味で)やっちまえ!」と突っ走っていく地主の息子とオーストリア軍の脱走兵の物語です。
標題の「ミノタウロス」が示すものは日本人にはイメージしにくいのですが(ギリシャ神話ではあっさり死んでる感じだし)、暴虐と殺戮など、あらゆるダークサイドのイメージをはらむキャラクターです。主人公のうち地主の息子は、流行りの幼児期トラウマなどはどこ吹く風。ナチュラル・ボーンで堅気じゃないし、相方となる兵士もまともそうで壊れています。この2人が地元のギャング集団や軍隊の間をすり抜けながら生きていくさまは壮絶そのもの。とはいっても文体自身は格調高く、下品なところは皆無です。新潮社クレスト・ブックスにそっと入れられていても気づかないほどの良質の文体だと感じました。結末は救いのかけらも何もないのですが、なぜかほっとさせるような切れのよい結末です。
主人公と相方のキャラクター造形もさるものですが、前半で異彩を放つのが主人公の兄。もともと影が薄い存在なのですが、傷痍軍人として故郷に帰ってきた後の存在感の不気味さが重たくのしかかってきます。
小悪党ものでも大悪党ものでもないけれど、疾走感あふれるダークな物語をこんなにキレイに読めたというのは驚きでしたのでこの評価としたいと思います。
ミノタウロス Amazon書評・レビュー: ミノタウロスより
4062140586
No.4
(5pt)

異邦人文学

とんでもなく索漠としてヘヴィな状況を淡々と書いているその様子は、例えばアゴタ・クリストフとかミラン・クンデラとかの東欧作家の翻訳もののようにも思えるし、それ以前に内容は、(たとえ自分の生まれた場所ですら)どこにも身の置き場のない異邦人の話であり、だからこその客観性と、ある種のペーソスに満ちた、分野は違いますが、佐野元春のVISITORSにも比肩する爆弾的作品。
ミノタウロス (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: ミノタウロス (講談社文庫)より
4062766515
No.3
(5pt)

異邦人文学

とんでもなく索漠としてヘヴィな状況を淡々と書いているその様子は、例えばアゴタ・クリストフとかミラン・クンデラとかの東欧作家の翻訳もののようにも思えるし、それ以前に内容は、(たとえ自分の生まれた場所ですら)どこにも身の置き場のない異邦人の話であり、だからこその客観性と、ある種のペーソスに満ちた、分野は違いますが、佐野元春のVISITORSにも比肩する爆弾的作品。
ミノタウロス Amazon書評・レビュー: ミノタウロスより
4062140586