私の男

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私の男の評価:

3.34/5点 レビュー 311件。 C ランク

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平均点3.34pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全201件 121〜140 7/11ページ
No.81
(5pt)

強すぎる孤独が呼ぶ

主人公の花と結婚することになる美郎の回想の中に、(かつての)恋人菜穂子が「チェイン・ギャング」という名の絵を見て「こんな風に誰かと結ばれてみたい」ようなことをつぶやくところがあった。菜穂子のようにおそらく恵まれて育ったであろう娘にもそんな渇望がある。・・・女は誰も心の奥にただ一人の男と一体になってしまいたいという望みを持っているのではないだろうか。人は皆一人で生まれ一人で死んでいく。孤独から逃れることはできない。だけどこの世にただ一人の「私の」男と思える相手と強く結ばれることができたらどんなに幸せだろう。
ただ、多くの女にとってそれは必要でもないし、その望みをかなえることが危険なことだと本能的に知っている気がする。でも中にはそれほど強い一体感がないと生きていけないような女もいるだろう。作者はそれを求めざるを得ない境遇・環境・事件を主人公の周りに用意し、そして相手は「この世にただ一人の」自分の父親だった。どちらにも他の人には代わりようのない存在。
物語の初めのころ、花が街を歩く多くのカップルをみて「この中のどれほどの人たちが今の相手をこの人しかいないと信じているだろう・・・」と思う。花はまさしくこの人しかいない、まさに私の男といる幸福感をかみしめる。その幸福感が別れの絶望を深くする。
私はいちど最後まで読み、第1章をもう一度読み返した。それが正しい読み方のような気がして。
深い一体感は必ず引き裂かれ、この上ない歓びは耐え難い苦しみをつれてくる。心にも、きっとおそらくからだにも。
ずっとどきどきしながら読んだ。近親相姦というより、ありえないほどにひとつになった男女の話だと思った。二人の強い孤独に引きずり込まれてしまった。

私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.80
(5pt)

実に巧みな桜庭一樹

実に巧い!桜庭一樹の長編小説を読むたびに感じることである。読者はまんまと乗せられてうまく桜庭魔術にかかって抜けられなくなっている。気が付けば軽い疲労とともに読み終えてしまっている。  桜庭魔術の特徴。「少女⇒女性⇒女」が物語の核になっている。しかし、小説は「女⇒女性⇒少女」と遡る形式で進行する。これが実に巧みである。 女性が書いたとは思えない圧倒的な筆力・文章力、しかし女性にしか書けない、桜庭にしか書けない微妙な部分部分がある。 ヒロイン花の出生の秘密がもう一つのこの小説の核になっている。しかし、それは読者の前には明瞭に明らかにはされない。周囲の人々の語りから推測される。「ああいう生まれ方をしたから、いやらしい子になったんかも」 誰が話した言葉?「ああいう生まれ方」って?
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.79
(4pt)

これは忘れないだろうなー。

2008.9父さんと娘。ありえない話とは思うが 絶対無い話でも無いのかも・・・。狂気を感じながらも引き込まれていきます。桜庭 一樹・初めて読んだけれど また読みたい!と思いました。強烈な話です。よく読んだ後に忘れることが多いけれどこれは忘れないだろうなー。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.78
(4pt)

遡行する切なさ

何かを失った時、失った今を起点に、それがあった時を振り返って、人は切なさを覚える。章ごとに時代をさかのぼって行く構成自体に新味は無いが、その形式の必然性の高さが出色である。切なさは細部に渉っていて、小町という脇役の失われた美しさも切なさを醸し出し、単なる語り部には終わっていない。そうして女性の登場人物たちが確かに生きていることが、セリフ回しのこなれの悪さなどの多少の傷を気にさせない。(男性の登場人物は、やや拵え物めいている。)頭の中で時系列に並べ替えて読んではいけない。6つの章を逆に、つまり時系列に並べ換えると、小説の価値の過半は消失する。それだけ形式をもって語らせる筆力は見事。文章家ではない。たしかに小説家がここにいる。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.77
(5pt)

不思議な感動、不思議な涙。

禁忌の筈なのに、どうしても二人を責められない。むしろ応援したくなる。何故かしら。不思議です。ねじ曲がっているにも関わらずそこにはどうやら愛があって、暗い痛みに顔をゆがめながらも互いが互いを手放せないで苦しんでいました。例えば、後ろ暗さのないカップルたちの愛の振りをしたお付き合いよりずっと、必死で懸命な姿だと。何だかよく分かりませんが泣きました。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.76
(4pt)

インモラル作品の結末及びその後

インモラル作品のラストは崩壊あるいは描かれないというある種のお決まりを覆した本作.ねっとりとした文章もあいまって,濃厚な作品に仕上がっている.「 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」「少女には向かない職業」など暗い結末を迎えることの多い桜庭一樹の作品.はまった時は面白いが,読後感の悪い著者の作品だが,本作は時系列を逆から順に書いていたために結末は早い段階で示される.殺人が行われるし,インモラルな描写も多々見られたが,それでも時系列的な意味でのラストでカタストロフには至らない点に,ある種の安心感を持ち読み進めることができた.以前著者の私の男に関するインタビューで「若いころは不幸な少女の未来を思い描くことができず,救いを与えることができなかった.年齢を重ねてこのような結末を描くことができた」と語っていた.かつてのライトノベル作家の面影は途上人物に対するふざけた名前くらいのものだ.
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.75
(4pt)

嫌悪すべき耽美的な世界

正直言って作者がこの本で何を言いたいかよくわからない。いや、言いたい事なんてはじめからないのだ。作者はただ、筆で書くのも憚られるような恐るべき禁忌の世界をリアルに書いてみたかっただけなのだ。その意味ではこの小説はとても成功している。近親相姦小説は過去からいろいろとあるが、この作品はその中でもっともリアルなものに違いない。男女の、そして親子の、救いようのないどろどろの世界。それが恐るべきリアルさで描かれている。そしてこの作品を読んでしまった読者は、もう背徳の道に一歩踏み込んでしまっているのだ。社会によって刷り込まれた近親姦への嫌悪感、自分の中に刷り込まれた道徳律、それらが本当に正しかったのかと見直しを迫られる。それこそが作者の狙いではなかったろうか。 いや、やっぱり作者はただこの「世界」を描いてみたかっただけなのかもしれない…。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.74
(4pt)

海に飲まれること

女の子は、誰かの娘、恋人、母親。それを一度に経験する運命は、やっぱり異常なんだろうか。子供、恋人、親に対する愛情は、海みたいに大きなひとつのものでみちひきが境界線をあいまいにして、いろんな顔を見せながら、ときには凍った刃を他人に向けて、自分自身を飲み込むものなのかも「誰かとずっといっしょに、どうしようもない生き方がしたい」おんなじ海に、一緒にまるごと飲まれたとき、お互いの愛情の境界線自体がわからなくなったときそんな生き方ができるのかもしれない。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.73
(4pt)

「お・・・」の謎

2008年6月、OLの腐野花は結婚式を間近に控え、婚約相手の尾崎美郎の待つレストランへ向かっていた。雨の中、およそ新婦の父親としては似つかわしくない、義父の淳吾と寄り添いながら…。直木賞受賞作の本作が書いているのは、娘と父親の「血」をめぐるおよそ20年の奇蹟だ。序盤にてあらゆる「謎」が提出される。彼らは何から「逃げている」のか。そして、結婚式直前の花の取り乱しが象徴するような、すこし度を超えた二人の親子仲の理由はなにか。それらは親子というよりももっと、別の「間柄」で定義づけた方が、すんなり納得できるような…。そういった謎が謎のまま提出される。本作は、そんな淳吾と花の「現在」という帰結から二人の出会いまでを、複数の登場人物の視点を借りて、時系列を遡りながら紐解いていく。ミステリーの構成としては常道の部類に入るが、「たぶんそうだろうな」と予想がつきながらもついついページのめくりが勇み足になってしまったのは、著者の描写力のたまものだろうか。一見無頼に書かれるこのひどい父親が、幼い花を引き取り、なぜに彼女だけに執着したのかというのは奇妙にすら思えるが、その真相はすぐに思い当たる性的倒錯(いわゆるロ×コン)ではなく、もう一ひねり加えられている。詳しくは本書をぜひ読んでもらいたいところだが、そこには、何とも言えない地域共同体の粘っこい温情と、それに相反するほどの「血」へのこだわりも、関係していく。"co-dependency"というのは、まさにこういう関係のことを言うのだろう。いろいろわかってからの話が冗長になっているという見る向きもあるかも知れないが、それは作者が展開や結末だけで読者を引きつけようとしているのではなく、丹念な描写で勝負しようとしていることの意思表示かも知れない。長くはあるが、十分に読むに耐える。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.72
(4pt)

あーうー…と考える後味

文章が上手とか技法が云々というのはあまり感じなかったですが、引き込まれました。私は好きな部類に入ります。確かにおかしいところは所々あるけど、(8年もあんな感じにしといて大丈夫なわけないでしょとか)花と淳吾がお互いに依存していく感じとか、それでも花が淳吾から離れていこうとする気持ち、淳吾のこれから、決定的に描かれないからこそこの物語が引き立つのではないでしょうか。淳吾が花を引き取った理由も、花が淳吾を選んだ理由も、全部本の中に書いてあると思います。まさに、行間を読む、という感じですよね。事実ではないにせよ、こういう情念めいた関係も人生勉強のひとつに知っといて損はしないと思います。ま、図書館で借りたので今手元にはないのですが、文庫があるということなので、そのうち購入します。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.71
(5pt)

はなの手に入れたものは…

はなは淳悟によって、永遠の愛の対象を手に入れたのだと感じた。はなは、生まれてはじめて、人から心から必要とされて、娘として、女として一生失う事のない関係を手に入れた。例え、淳悟が死んだとしても、淳悟ははなの心の中に生き続ける。揺れることなく、はっきりと。そのようなはなは、他の誰もが欲しくても手に入れられないものを手に入れたように見える。はなを手放す淳悟の心を想像すると、淳悟がこの先どのように生きて行くのか、生きて行けるのか、生きて行くのはあまりに過酷なことのように思えるのだが。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.70
(5pt)

【血の人形】を欲してはいけません

桜庭さんの作品を読むのは「推定少女」以来の2作目ですが、
ライトノベル作家の直木賞作品に興味を引かれて読みました。
第一印象は、無機質で軽快だった文体が、どんよりとした物に変化しているのに驚きました。
それは題材として近親相姦というタブー視されるの物を扱っているからだけでなく、
桜庭さんが描く、花と淳悟の会話のネットリ感、血の臭いがする二人の絡みの表現から感じました。
物語は、二人の別れから出会いを遡って綴られて行きます。
現代から遡っていくに当たって、登場人物の心情変化を饒舌に表現するのではなく、
一瞬の独白で描くことで、長い年月の中で心が蝕まれていくのを感じとれました。
また、多くを語らずとも、血の繋がりを持った二人の前では、出会った時から、父と娘であり、
男と女だというのを受け入れてしまう桜庭さんの筆力に飲み込まれました。
多くの人は読後に、不快感、嫌悪感を抱く作品だと思いますし、
私も最初は花と淳悟の世界を不快に思っていましたが、
読み進むうちに私自身をも不快に感じていました。
それは、私には踏み越えることができない、あちらの世界に対して、
「覗いて見たい」、「踏み込んでみたい」と惹かれてゆく私自身がいたからです。
「血の絆」があれば全てが許されるのかとも思う不条理な話ですが、出会えて良かった作品です。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.69
(4pt)

欠損を補い合う関係って

直木賞受賞の本作。
ある理由から離れ離れとなっていた親子が、あの奥尻津波をきっかけに出会う。
娘、花は、育て親の元で何処か疎外感を感じていたが、
父、淳悟と出会い初めて血を分けた家族がいることを知る。
そして淳悟は、年端も行かない花に、あろうことか母の姿を求める。
互いに何処かおかしい、欠損した親子が、
渇望し合い、禁断の関係にのめり込んでいった、その歴史を描いた小説。
いわゆる近親相姦有りの、どろどろとした異常愛が主軸の話であるが、
冬の凍てつく北海道オホーツク沿岸の街を舞台として、
厳しく美しい自然と共に、心象表現も狂おしく、陶酔的に、かつ美しく描かれている。
舞台設定もそうだが、花と淳悟の苗字も“腐野”となっており、
キャラクターイメージは直球ど真ん中を狙っていて、逆に面白い。
ふたりの間にあるのは、家族愛でも恋愛でもなく、
やはり欠損部品を心と身体で補い合う関係。
“ひとつになりたい”といった表現が随所に出てくる。
人間の不完全さを突きつけられる内容で、ある意味恐ろしいが、
誰もが持つ欲求のひとつかも。
また、第1章の2008年から、最後の第6章の1993年まで、
時間が遡っていく構成となっており、
ふたりの関係が、読み進めていくに従い明らかになったいった。
こういった所も良かった。
が、星5とはいかなかったのは、花の結婚相手、
美郎の章の存在意義がよく分からなかった点かな。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.68
(5pt)

私は好きです

最初の章でいっきにはまりました。物語に秘密が隠されているのはあきらかで、
下手をすれば非常に短絡的な秘密・結末を予測させてしまいます。
そこがこの作品の面白いところだと思いました。
読み進むうちに、どうやらそれは違うんだと感じてきて、それじゃあ「それ」
はなんなんだと、余計に興味を惹かれる訳です。
ほかのレビューにもあるように、確かにすごいシチュエーションだし、描写も
ぎりぎりなところがあります。
私も若干嫌悪感をもつところもありましたが、結末に救われました。
逆にある程度リアルに描かなくては、あの結末ではしっくりこなかったかもしれない
なぁという感想です。
物語は別として、昔、道南に住んでいたので、当時のことを思い出し、とても悲しい
思い出を思い出しました。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.67
(5pt)

不気味だけどハマる

初めて読んでから半年経ちます。久々に読み返しましたが、やっぱり巧いなあ、と思いました。ふたりが依存しあう様子とか、それを第三者が見た様子とかを非常にじっとりと描いています。ただ、巧い、とは言っても文章力云々ではなく表現がしっくりくるという方が近いかもしれません。多少のライトノベルっぽさは残っていますが、お勧めです。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.66
(4pt)

残響

久しぶりにどうしても自分のレビューを書きたくなってしまいました。それほどすごい作品です。評価が低い皆さんの意見も、確かに納得できます。しかし構成や描写云々よりも、つまりは「私の男」である淳悟を好きになれるかどうか、それがこの小説を好きになれるかどうかの境界線なのではないでしょうか。
私は桜庭さんの作品を読んだのはこれが初めてで、彼女が女性だという事も他の方のレビューを通してたった今知ったのですが、それでいくつか納得できる点がありました。たとえば淳悟と花の関係は、いかにも女性が憧れる設定の下に築かれている気がするのです。
絶対に結ばれてはいけない二人
退廃的だが魅力的な男
お互いがお互いしか見えなくなってしまうような中毒性
そういったもののせいで、少女コミック的な雰囲気が拭いきれないことは紛れもない事実だと思います。(だからこそ、男性読者がこの作品をどう捉えるのか気になります)
しかし、絡み合いながら朽ちていく二人の姿はどうにも美しく感じられ、私はふと『白夜行』の二人を思い出してしまいました。第一章の時点で不覚にも涙を流してしまったのですが、すべてを読み終わった後に再び第一章へと戻ると、やはり号泣でした。その後の二人について一切描かなかったのは正解だと思います。彼らの行方に思いを馳せるとき、はじめて物語は読者の中で一つにつながり、家族とは何か、血のつながりとは何か、男女とは何か、人間とは何か、不定な愛の形について考えるようになるのではないでしょうか。
読み終わった後しばらくは何にも手をつけられず、ぼんやりした状態になると思います。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.65
(5pt)

引き込まれました

直木賞受賞作との事で、手に取りました。
いや、引き込まれました。
最初から「まさか、それはないよね。」を裏切り続けられる展開。
最後の方には、「きっと、こうなのかな。」を裏付けられる筋書き。
なんともはや、すごい小説でした。
小説は、こうではなくては。
ただ、「二層式」の洗濯機には納得がいきませんでした。
「二槽式」ではないですかねぇ。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.64
(4pt)

音が消えていく本

電車の中で読んでいたのですが、
物語の中に『音』というものを感じませんでした。
人々の鼓動、呼吸、街の喧騒・・
そういったものが一切聞こえてこないストーリーです。
それも、第1章から6章を読み続けていくにつれて、
音がどんどんなくなっていきます。
ただその中にあるのは、花と淳吾のみ。
本の中で動いているという事実のみ。
彼ら感情も感じないし、彼らの温かみも感じない。
それは、花と淳吾だけで感じているからかもしれません。
読み手には絶対感じさせない何かが、彼ら二人にはあるように思いました。
同じくして、自分の周りの音も消えてなくなります。
それぐらい引き込まれていました。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.63
(5pt)

小説は価値観を知る機会。

直木賞受賞ということで、FIGAROにも紹介されていたので、読みました。
だいたいの設定は事前にわたっていたものの、読んでて驚愕しました。
こういう愛の形は、わりとフィクションでは聞きますが、この小説の中では、その
事実が衝撃なのではなく、その心理が驚愕なのではないでしょうか。
読むうちに当事者の心理が理解できて、
なるほど。と思った。自分の中にそういう価値観がないだけで、実際にはこういう人達も存在し得ると思う。
小説は自分の知らない考え方、思考回路を知るいい機会だと思います。
考え方の可能性の広さを実感。
日本人は、一定のものの考え方をするように教育等がなされているけれど、
少数のマイノリティーの考え方を知ることも大事だと思う。
また、一線を越えるか、越えないか。という海、陸、犯罪。など
「境界」がテーマになっているのもおもしろい。
ただ、残念な点。
語り手と時代設定がかわる手法は数多くありますが、
9歳の花の観点でかかれたプロットは、
9歳がこんな発想しない。こんな熟語知ってるはずない。こんな感想は抱かない。
と違和感を感じました。所々、9歳を装っているものの、
作者の世代の視点で書かれたものにすぎなく、残念でした。
9歳の当時を振り返って、という設定なのでしょうか?
また読めば推測できるけど、はっきり断言しない事実もありました。
そういう書き方も、余韻が残る方法で、好きです。
きっと、淳治の父親も。。なんて想像します。
読書は想像力を養うものですね。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302
No.62
(5pt)

文学の皮をかぶった変態小説

一言で言うと変態小説。
倫理上のあたりまえと主人公の父と娘のあたりまえ、後者を無くさないために繰り返される罪。
物語は結末から展開され、章を追うごとにすべての始まりへと逆再生で進んでゆきます。
読み進めるほどに解けてゆく父と娘の謎。
官能小説という言い方では安っぽいけど文学と表現するには賛否両論ある。
恋人にもなれず普通の親子にもなれず、父と娘の苦悩はひたすら陰鬱でもどかしく切ない。
ぼんやりとした後味の悪い結末が何とも言えない。
この本を気に入ったら(もしくは読む前に)同じ作者の前作『少女七竃と七人の可愛そう大人』も読んでみる事をお勧めします。似たような題材ですがこちらの方が入りやすいかと思います。
私の男 Amazon書評・レビュー: 私の男より
4163264302