グロテスク

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評判

グロテスクの評価:

3.93/5点 レビュー 288件。 B ランク

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平均点3.93pt

Amazonレビュー一覧

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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全225件 81〜100 5/12ページ
No.145
(5pt)

強烈な余韻を残す作品

グロテスク…この、題名に吸引力がある。
一体、何をもって「グロテスク」なのかと、読み始めてみると
その意味などは何処かに飛んでしまい、いつのまにか
上下巻を、読み終えていた。

面白かった…というのとは、ちょっと違う。
いや、どうだった?と問われれば、素直に「面白かった」と答えることは出きる。

4人の女性を中心に展開するストーリー。

過剰とも言える程の、とんでもない美貌を持つ「ユリコ」
頭脳明晰な「ミツル」
上昇志向の強すぎる「和恵」
そして、美貌の妹「ユリコ」の姉。

この姉の語りで、序盤が始まる。あくまでも、マイペースで。
競争意識さえ持てない程の美しさを持つ、妹と比べられることに慣れている様子を
それを何とも思っていないというようなことを、淡々と語る。

そして章が変わる時に、「日記」や「手記」などで入れ替わる。

上巻は4人の女性が通う、Q女子高を中心にして
下巻は、ガラリと変わって成長した「今」を描く。

和恵の手記が、何よりも印象に残った。
彼女の愚かさが痛々しくも、完全に理解出来ない訳ではない自分に驚いた。
昼はエリートOLで、夜は娼婦として町に立つ彼女のことを。
彼女は、ただ人に優しくされたかったのだ。

そして美貌のユリコ。彼女が一番悟っていたのかもしれない。
思えば、彼女には何も執着が無く飄々としている。
そして、中年になり醜く変貌してしまった自分を、嘆く訳でもなく
冷静に見ている。
「私達は怪物よ。そしてその怪物を愛でる怪物に、いつか殺されるわ」と
簡単なことのように言うユリコに、感嘆さえ覚える。

そして、もうひとつ印象に残ったのは、中国人のチャンの語り。
デフォルメされているとはしても、壮絶な国だ。
中国という国を、少し理解出来たような気がする。

読み終えて「グロテスク」の意味が、よくわかった。
題名の意味が理解出来て、唸らせてもらえた。
人は「怪物」にもなる。それも、ごく自然に。
誰にでもある「悪意」。その質と量に、個人差があるだけなのかもしれない。

長々とレビューを書きながら、自分でも一体何が言いたいのかわからない。
巧く表現できないのがもどかしいが、色々な意味で強烈な余韻が残る本。
最後の展開は賛否両論あれど、そういう意味では★5つです。
グロテスク〈下〉 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: グロテスク〈下〉 (文春文庫)より
4167602105
No.144
(4pt)

まぁまぁ

家族に出稼ぎで日本に来た者がおり、夜の和恵と同じ職業についたものがある人間として…涙なしには読めない作品だった。

和恵が副業を始めた心情が、当時の自分の心情とまるきり一緒で、封印していた思い出がどんどん蘇り途中読むのを何度も中断してしまった。

最終章からは、ストーリーの雰囲気が少し変わってきて星新一のようなブラックユーモアも感じさせる作りで、
結局何だったのかが掴めないで終わってしまった。


美君のように深く愛されたい。
グロテスク Amazon書評・レビュー: グロテスクより
4163219501
No.143
(4pt)

まさにグロテスク

あとがきで、文芸評論家の方が書いている内容がぴったりくる。読み終えた後は、とにかく、人間の持つ負の面を吐き出しきった感がする。読み進めるうちに面白いと感じるのは、自分にもいつか起こりうる人生の悲劇だからであろう。私は思うが、社会、世間という枠の中で、順調にはいあがっていける人には感じれない悲哀をもつ人がいる。それをこの小説はあぶりだしている。だから私は面白いと感じた。それはここでは女ということだが、それ以外にもさまざまなマイノリティな方がいる。世間から弾き飛ばされているのにそれでも前を向いていき続けられるかどうか。前を向いて行き続けるのは決して用意ではない。若いころには希望にあふれていて、できるのものがあると思ってはいても、思いのほか、世間の風は強く、はげしい。それでもなおかつ、はいあがって上り詰めて、自分流の幸福を世間の上に築ける人もいるであろうが、それは非常に険しき道であり、わずかだと思う。 世間の荒波に疲れ、やっぱり無理だと思い始めてときから、徐々に転落の人生が待つ。どんどん自暴自棄になり、次第には自分自身のことすらわらかなくなる。佐藤和恵の人生は、その転落する人生をリアルに描いている。 また、この小説が心に刺さるのは、作者自身の心象風景を描きだしたのにしても、多くの人間が自分の問題としてとらえるほどこの人間の堕落さを多くの人が共感するほど持っていることにほかならない。 私自身、転落人生は、ごめんだが、こうならないとは思えないため、この本を教訓にして、人生の光を必ず見つけ、進みゆきたいと念じずにはいられなかった。勉強にはなったので☆4つ。これを機会に桐野作品をほかのも見てみたいと思う。
グロテスク Amazon書評・レビュー: グロテスクより
4163219501
No.142
(4pt)

対比

レビューを読んでから、本を手に取ったので内容を予想しつつ読みました。女性たちの葛藤の生々しさは、もうたくさんの人が書いているので省略します。私にとって印象に残ったのは(あまり誰も触れていないけど)犯人である張の告白です。女性の内面をむせ返るように描いたこの作品にうんざりしなかったのは、彼の生い立ちのくだりがあったからだと思います。階級社会の優越感バトルで泥試合を余儀なくされる女たちの対比として描かれる中国内陸部の実態。ただ人間らしい暮らしを求めることに伴う想像を絶する壁、壁。彼の視点から描かれる、物質的には豊かな日本で内破するように噴出する毒が、妙にふわふわと軽く感じられるのはなぜでしょう。最終的に、私は張に一番興味を惹かれました。手記でのまじめでひたむきな青年像と、和恵の視点で語られる悪人っぽさの対比も面白い。彼の人物像や、盆栽好きの祖父の存在は、ぎらぎらした女の匂いをうまく中和させてくれていて助かりました。
グロテスク Amazon書評・レビュー: グロテスクより
4163219501
No.141
(5pt)

膨らんだ悪意、その犠牲者

「東電OL殺人事件」を題材にした小説「グロテスク」の下巻。
下巻では2人の街娼を殺害した容疑のある中国人・チャンの反省文(?)から、主人公の語り、そしてQ女子高時代の主人公の同窓であった和恵の「売春日記」、主人公の語りで構成されている。
チャンの反省文は朴訥そのものだ。このような運命にある中国人が、犯罪を犯すまでになるのも致し方ないと思えるほどだ。
上巻での悪意に満ちた主人公の語りに圧倒されていたため、こちらの中国人の文章は、殺人犯でありながらも「悪意のなさ」に、ある意味清涼な文章とも感じた。
しかし。
後の和恵の手記などから、この「朴訥そうな」男が書いた文章は根底から破壊される。
この男は、文章から悪意さえも見せないが実際は悪と善を使い分けていたのである。こうなると、何を信じてよいのかわからなくなる。
そして和恵の手記。これは主人公の語り・ユリコの手記・中国人の反省文とまったく違う。
死に向かって壊れていく一人の女が壮絶にもがく姿が赤裸々だ。それまでは汚い言葉などの表現はほとんどなかったが、ここでは存分に使われている。
汚らしい行動もここにはある。
そして、他人から投げかけられた言葉にまともに取り組み、傷つき、虚勢をはりますます壊れていく女。
和恵だけが、他の3人と違う弱者だった。
上下巻を通すと作者の筆力が圧倒的なものであると、より感じる。
結末も、私個人は「救いのない」と感じるものであった。
が、作者の作り出す雰囲気の中につかりこめた。その余韻が今もある。
作者によるほかの小説では、作者・桐野夏生氏がどのような世界を作り上げているのか読んでみたいほどだ。
グロテスク〈下〉 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: グロテスク〈下〉 (文春文庫)より
4167602105
No.140
(5pt)

悪意の増幅していくさまの表現が秀逸

読み始めてから止まらず、一気に読んだ。
上下巻を通し、下巻の一部をのぞきすべてがそれぞれの人物の立場からの一人称でかかれている。
上巻は主人公の語り、主人公の妹であるユリコの「手記」などから彼女らの幼少期、名門と呼ばれるQ女子高での出来事などが描かれている。
この巻からすでに「主人公の言い分」とユリコの「手記」に記された事実とが微妙に異なっていることがわかる。
何を信じていいのかわからなくなってくるが、一つだけ明確なのは小説の根底にある「悪意」だ。他人と比較して生ずる悪意、他人に己の姿が投影されたためにその他人に向けられる悪意、それらの悪意が抑えきれなくなり無関係の他人にまで及ぶ悪意。
一見悪気のない行動も主人公の語りを通すと悪意が見えるような気がする。その悪意を吸い取りますます巨大化する主人公の悪意。
泥沼のような悪意の連鎖を一見冷静な文体で表現する作者の筆力は賞賛に値するだろう。汚い言葉、罵詈雑言で悪意に満ちた表現をするのは容易だが、上巻にはそういった言葉もほとんどない。そのために主人公の語りを通して浮き彫りになる悪意がますます強烈になる。
実際にあった「東電OL殺人事件」もテーマになっているようだが、それを忘れて読み込める小説だ。
グロテスク〈上〉 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: グロテスク〈上〉 (文春文庫)より
4167602091
No.139
(4pt)

リアル?

1番面白かったのはQ女子高時代の描写でしたね。「わたし」の悪意と和恵の愚鈍さ。和恵の言動、家庭(家族)、初恋に対する「わたし」の目を通した描写。グロテスクというよりコミカルさすら感じました。下妻物語思い出した位。(笑)つまり上巻は面白かった。下巻はがっかり。ユリコですら、必要なキャラクターだったのかなと疑う。「わたし」と和恵、スパイスとしてミツル、この三人だけで良かったんじゃないか?「頭が良くても顔が良くても年とったら女は不幸」なんて浅いメッセージがテーマでもあるまいに…。
グロテスク〈上〉 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: グロテスク〈上〉 (文春文庫)より
4167602091
No.138
(5pt)

この半端ない重みに圧倒される

文章のみで、人をこんなに物語の中に飲み込ませる力が発揮できるとは、本当に凄いとしか言いようがありません。和恵に、思わず共感してしまう所もあり‥‥夢中でページを捲りました。この小説に漂う重すぎる空気や迫力に、耐えられない方もいるだろうなとは思います(笑)。しかし、こんな小説は他にないのではないでしょうか。私は軽い気持ちで読み始めたのですが、この物語に出会えたことはいい"経験"であったと捉えています。オススメです。
グロテスク Amazon書評・レビュー: グロテスクより
4163219501
No.137
(4pt)

複雑・・・

所感は、他の方が書かれている事とほぼ変りませんが、ひとつだけ。
実際に起きた事件がモデルになっている部分がありますが
実際の被害者のご遺族のお気持ちを考えると
主人公の悪意のある目線から描かれた和江の印象や和江の日記の記述は
どのように受け止められるものなのだろうか、と複雑に感じられました。
実際の被害者は既にお亡くなりになっているため、忌憚無い言葉で表現すれば死人に口無し状態ですから
愛のある視点での描写(もしくはあとがきなどでのフォロー)も欲しかったかな・・・。
桐野さんは大好きな作家だし、彼女ならではの感性が爆発している傑作だとは思うのですが
「作品にしてみたかった」という作家のエゴだけが際立っている印象が、なきにしもあらず、ということで☆は一つ減らしました。
グロテスク Amazon書評・レビュー: グロテスクより
4163219501
No.136
(4pt)

女だからこそ

女だからこそかける女の嫌らしさ。
男性作家には、やはりここまでは書けないでしょう。
自分の中にも確かにある嫌〜な部分を和江や百合子の姉である私の目線から気付かされる。
女である自分の中のグロテスクに気がついてしまうそんな作品。
グロテスク Amazon書評・レビュー: グロテスクより
4163219501
No.135
(4pt)

「自身の存在意義の究極の追及=「グロテスク」」を描いた力作

所謂「東電OL殺人事件」を借景として、人間の持つ悪意や嫉妬、淫蕩と言った負の本性を抉り出した著者らしい作品。意図的に進化論や遺伝の概念を取り込んでいるようだ。物語は前述の事件の被害者をモデルとした和恵の高校時代の同級生の"私"の事件後の回想談や複数の手記で構成される。二人が通ったQ女子高は初等部から大学まで揃えた名門学園。二人は高校からの入学で、特に和恵は柔軟性に欠け、その階層社会に適応出来ない。私の父は在日スイス人で貿易商をしていたが、私の母と妹を連れて帰国する。妹のユリコは重要人物で、怪物的な美貌の持ち主に設定されており、私の悪意の原点となる。私は他者の悪意の記述者ではなく、悪意そのものなのだ。ユリコは母の自殺を機に日本に戻り、Q中等部に編入し、その美貌で他の生徒に圧倒的な影響力を行使する。和恵もその一人と言う意味だろう。ユリコも事件の一年前に同様な状況で殺されると言う設定。
ここで、ユリコの手記を挟んでQ学園での女の嫉妬、イジメ、天性と努力、ユリコ自身の淫蕩性等が描かれる。描写が人工的に過ぎる感があるが、ユリコ自身が"玩具"である事を初めから認めている、即ち、一種の諦観を持っている点に強い印象を受けた。先天性・後天性、運命の問題を論じている様。兎に角、モデルの事件から、被害者の高校時代を描くという発想に作者の独創性を感じた。事件の遠因を探ると言う意味と、事件当時の会社生活を描くより、物語の凄惨・酷薄性が増す効果がある。事件の容疑者張の出身地を中国の地方に設定する事で、作品の幅も広がっている。張の描写にも、ある種の運命論を感じる。オウム事件にも言及する貪欲さ。ラストの和恵の手記のリアルな禍々しさは圧巻。
単細胞生物から突然変異の積み重ねで進化して来た人類そのものが「グロテスク」と言っているかのような、骨太の力作。
グロテスク Amazon書評・レビュー: グロテスクより
4163219501
No.134
(5pt)

買いです。

東電OL事件をこの視点から描くことを思いついた時、すでにこの作品の成功が約束されたのだと思います。ただ、そこからの必然なのでしょうが、それぞれの人物の自立性を約束するためにそれぞれの人物に語らせる構成ゆえやむなしといった側面があるにしても、「ユリコ」にはあえて語らせなかったほうが作品に深みが生まれたような気もします。しかし、そうやって生まれた「深み」もまた、男性と男性社会を憎んだ登場人物たちにとっては戦わなければならない敵だったような気もするので、この作品の長さと相まって作者と登場人物たちの必然であったかもしれません。良くも悪くも女性の書いた、男性必読の作品だと思います。
グロテスク〈下〉 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: グロテスク〈下〉 (文春文庫)より
4167602105
No.133
(4pt)

買いです。

東電OL事件をこの視点から描くことを思いついた時、すでにこの作品の成功が約束されたのだと思います。ただ、そこからの必然なのでしょうが、それぞれの人物の自立性を約束するためにそれぞれの人物に語らせる構成ゆえやむなしといった側面があるにしても、「ユリコ」にはあえて語らせなかったほうが作品に深みが生まれたような気もします。しかし、そうやって生まれた「深み」もまた、男性と男性社会を憎んだ登場人物たちにとっては戦わなければならない敵だったような気もするので、この作品の長さと相まって作者と登場人物たちの必然であったかもしれません。良くも悪くも女性の書いた、男性必読の作品だと思います。
グロテスク〈上〉 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: グロテスク〈上〉 (文春文庫)より
4167602091
No.132
(5pt)

買いです。

東電OL事件をこの視点から描くことを思いついた時、すでにこの作品の成功が約束されたのだと思います。ただ、そこからの必然なのでしょうが、それぞれの人物の自立性を約束するためにそれぞれの人物に語らせる構成ゆえやむなしといった側面があるにしても、「ユリコ」にはあえて語らせなかったほうが作品に深みが生まれたような気もします。しかし、そうやって生まれた「深み」もまた、男性と男性社会を憎んだ登場人物たちにとっては戦わなければならない敵だったような気もするので、この作品の長さと相まって作者と登場人物たちの必然であったかもしれません。良くも悪くも女性の書いた必読の作品だと思います。
グロテスク Amazon書評・レビュー: グロテスクより
4163219501
No.131
(4pt)

描写は圧巻ですが悪意を書いた小説としては・・・

不十分のように感じました。
悪意を書いてる小説なのに決定的にこの小説から欠けているもの。
それは善意。
善意が欠如した悪意にはリアリティを感じません。
不幸を知らない幸福がないように、強烈な悪意の裏には強烈な善意が
あるからだこそと思うのですが。
またここで語られている悪意は、女性が持つ種類のものよりも
男性に近いものを感じました。
もう一つ気になったのが、ところどころ視点を変えてはいるのですが、
全体を通してユリコの姉と同じ目線で書かれている物語のように感じました。
語り口は違えど全員が同じ人間に見えました。
上記はあくまでこれが人の心の闇をリアルに書ききった小説と言うならばです。
なまじ、現実の事件をモデルとしてる分悪意の解釈が不十分に感じてしまうのかも
しれません。
ノンフィクションとして読めば秀逸な作品だと思います。
グロテスク Amazon書評・レビュー: グロテスクより
4163219501
No.130
(5pt)

人間の悪意の深さ、恐ろしさ

とてつもないホラーだった。母や、妹や父を捨て、裏切り、告発し、最後は自分の悪意の深さに溺れ、売春という自分を貶める道を選ぶ主人公。妹を殺し、二人の娼婦を殺す中国人。セックスを通じてしか、他人との関係を気づけない女たち。人殺しの宗教団体で人殺しを実践する女。同性愛者で、女衒として生きる男。どの登場人物も恐ろしい人間的欠陥を持っているが、読者は読んでいるうちに、引き込まれ、その原因が自分にもある悪意や、欲望や、絶望をこの本の登場人物たちと共有していることに気がつくだろう。主人公たちに、いつか同化しかかっている(あるいは共感しかかっている)自分に気がついたとき、戦慄するだろう。参った。悪い夢を見そう。 
グロテスク Amazon書評・レビュー: グロテスクより
4163219501
No.129
(4pt)

グロテスクさ

それぞれが、状況を告白する文章を淡々とつづっているだけなのだが、
まるでホラー映画で人間がドロドロとゾンビ化していくような不気味さがあった。
「他人からどうみられるかに囚われる」ことにこだわりすぎた結果
幸せになれなかった人たち。
「わたし」の語りで始まった物語だが、実は一番奇妙で滑稽だったのは
ユリコでも、和恵でもない「わたし」なのではないかと本人は気づくことはあるのだろうか。
「わたし」の悪意は物語がすすむにつれエスカレートし、不快などころか
子気味よささえあった。
本を閉じ、他人からどうみられるかに囚われず生きたいものだと床についた。
夢の中で幼なじみの親にスーパーで偶然合い「今何をしているの?」と聞かれ、
必死に頭の中で「自分は良い仕事をし、努力している」と上手く伝えようと
する自分がいた。
グロテスク〈下〉 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: グロテスク〈下〉 (文春文庫)より
4167602105
No.128
(5pt)

桐野さんがすごい

読んでいてむかむかしてくるような意地悪な表現が度々ある。
何もそこまで・・・。と言いたくたくなるような悪意。
裕福な人に対する表現は本当にあてはまり、今まで出会った「裕福らしい」人は
そうそう、こういう事を平気でする。とうなずき、思い出してはムカムカする。
昨今、格差社会と言われているが見えない格差社会は前からある。
美少女の描写は大抵、読んで綺麗な様子を想像するが、
ユリコは綺麗というよりも気持ち悪いと読者に感じさせるのも悪意。
こんなに意地悪な読んでムカムカさせられる小説を書ける桐野さんがすごい。
下巻も楽しみだ。
グロテスク〈上〉 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: グロテスク〈上〉 (文春文庫)より
4167602091
No.127
(5pt)

生物学的にハードなルイ=フェルディナン・セリーヌのような大傑作!!

繊細な"わたし"が自己陶酔して苦悩ごっこする似非文学ではなくて、
ルイ=フェルディナン・セリーヌ に匹敵する真実の文学!
無駄な苦悩、無駄な努力をしたくない人は必読。
努力が必ず報われると信じている世間知らずの人は、
挫折する前にこれを読んで世の中の真実に気付いて下さい。
語り手の"わたし"は翻訳家に成る夢が破れた37歳の処女のフリーター。
超美少女でモテモテの妹と、
名門女子高時代の同級生達の数奇な人生が彼女によって語られる。
彼女が毒舌で語る美少女や天才少女のエピソードがメインだが、
彼女に語られた人物の手記(彼女に言わせると嘘ばかり)も挿入され、
何が事実なのかを推理するミステリとしての楽しみもあるが、
語り手が捏造してるとしても世の中の真実を訴えた素晴しい文学である。
語り手の"わたし"が、『ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語』 で
有名になったバージェス動物群のファンなのが素晴しい。
ルイ=フェルディナン・セリーヌ が訴えた人生の無意味さを
生物進化論で補強しようとする素晴しい知的興奮に溢れる本。
日本の女流作家にこんな知的レベルの高い人がいたとは驚きだ!
友人も恋人もいなくても楽しく生きていけることを教えてくれる
生命体のバイブル。
突然変異して生き残ったものが、
生命体として進化したとされる勝利者である。
ハルキゲニアのような素晴しい人生になりますように…。
グロテスク〈上〉 (文春文庫) Amazon書評・レビュー: グロテスク〈上〉 (文春文庫)より
4167602091
No.126
(5pt)

とことん堕落すること

 和恵の「堕ち」方は,読んでいてつらくなった。最初はホテトルで身を売っていたのに,年をとったからと解雇され,渋谷で立ちんぼうに身を落とす。8000円で身を売り,その男の指示で,さらに2000円で2人の男に身体を売る。にもかかわらず,自分はQ大を卒業して,G建設に勤めていることをプライドにして生きている。最後のころには,会社でも話題になっていて,殺されなくても,早晩彼女は破滅していたに違いないと思わせる。
 和恵の日記である「第7章 肉体地獄」を読むためだけでも,この分厚い本に挑戦する価値はあると思う。分厚いけど,すぐに夢中になって,結局1日で読んでしまった。
グロテスク Amazon書評・レビュー: グロテスクより
4163219501