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(短編集)

父と私の桜尾通り商店街



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【この小説が収録されている参考書籍】
父と私の桜尾通り商店街 (角川文庫)

父と私の桜尾通り商店街の評価: 3.69/5点 レビュー 29件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.69pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全21件 1~20 1/2ページ
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No.21:
(4pt)

だんだんと抜け出せない世界から脱出する?

Amazon商品紹介より以下。

違和感を抱えて生きるすべての人へ。不器用な「私たち」の物語。

桜尾通り商店街の外れでパン屋を営む父と、娘の「私」。
うまく立ち回ることがきず、商店街の人々からつまはじきにされていた二人だが、「私」がコッペパンをサンドイッチにして並べはじめたことで予想外の評判を呼んでしまい……。(「父と私の桜尾通り商店街」)
全国大会を目指すチアリーディングチームのなかで、誰よりも高く飛んだなるみ先輩。かつてのトップで、いまは見る影もないなるみ先輩にはある秘密があった。(「ひょうたんの精」)
平凡な日常は二転三転して驚きの結末へ。
『こちらあみ子』『あひる』『星の子』と、作品を発表するたびに読む者の心をざわめかせ続ける著者の、最新作品集!

収録作品
・白いセーター
・ルルちゃん
・ひょうたんの精
・せとのママの誕生日
・モグラハウスの扉(書き下ろし)
・父と私の桜尾通り商店街

 *

最初に疑問に感じたのは、表題作が何故に最後かということ。
最後に分かった気がした。最初からの5編は、日常から異質な世界へいつの間にか入っていっているような、抜け出せない穴にハマってしまっている。
しかし(ネタばれます注意)、最後の表題作で、そこから抜け出せるようなニュアンスでもって、全てが終わる。
鑑みてみれば、最後だけが、これまでとは違った結末なのかもしれない。
作家さんの本をずっと読んできてみれば、暗い要素の持ち味を失うことなく、明るい未来や希望を持てた終わり方だったように思う。

巧い作家さんです。
明るい表紙などの見た目で、反対である暗さ、そのギャップがまたいい味がして、面白い。個性派なので、嫌い、合わないという方も勿論ありでしょうね。
人間だって、好きな人間と嫌いな人間がいます。

一生懸命さが痛々しいというか、見ていられない、でもそこが魅力だと思うと作品に対し、作家さんは振り返りでそう述べています。
誠実で、真っ直ぐなんですよね。危うい場面もしっかりと見ている。
あまり人前に出てきそうにない作家さんでもありますが、マイペースでも、書き続けてほしいです。
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No.20:
(4pt)

いつもですが

このかたの書く物語は、なぜいつも読み終わった後気持ち悪いと言うか、エグくて不快な気分になるんでしょうか?これは、作品を悪いと思っているのではないです。そういう類の感情を巻き起こす力が、この作者にはあると言う点で、本としては価値があると思っています。
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No.19:
(5pt)

もっと読みたい、と思わせる。

今村夏子さんの作品は、短いものが多く、ちゃんと話を「落として」くれるので、好きです。
次も読みたい、と思わせてくれる作家さん。
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No.18:
(5pt)

面白かった。

人間社会のレプリカ。
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No.17:
(4pt)

少し毒のある感じの人々

短編集です。人の本性が描かれていたり、関わりたくないような人々が出てきます。
自分に降りかかると嫌だけど、少し毒にある感じの人々の話が好きな方は楽しめると思います。
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No.16:
(4pt)

これ、しいたけだ。

『こちらあみ子』『あひる』『星の子』『むらさきのスカートの女』と読んできて今村夏子5冊目の本作でしたが、これまで読んできた作品と比較すると、少し物足りなさを感じてしまいました。
 ひょっとして今村夏子の才能が枯れてしまった?
 しかし、実際には本作が執筆されたのは『むらさきのスカートの女』よりも前であることからすると、本作の後に執筆された『むらさきのスカートの女』の完成度の高さからして、才能枯渇説はありえない。
 すると、受け取る側の自分が、今村夏子の文体に慣れてしまったことによる新鮮な驚きを失ってしまったのか?
 それでも文庫に収録されている解説で、著者今村夏子が本書に収録された個々の作品につき、丁寧にインタビューに答えており(このあたり今村夏子の誠実さが見て取れます)、それぞれの作品が生まれた背景事情を知ると、作品一つ一つに愛着のような感情を覚えます。
 たとえば、本書冒頭の『白いセーター』。
 本書の中では、一番過去の作品に近さを感じる短編(それは『こちらあみ子』『あひる』『むらさきのスカートの女』同様、登場する子どもたちの描かれ方に、共通する子どもらしい残酷さを感じるから)ですが、この作品の主人公は、現在独り身との設定だということ。
 作品中、そのような説明はどこにもなく、ただ確かに昔の思い出を語るとの構成になっていることから、それもあり得るかなとは思いましたが、作者の中ではしっかりその設定になっており、だから白いセーターは、かつて婚約者だった人との唯一の思い出の品なのだ、と説明されています。
 『せとのママの誕生日』では、手術で摘出した出べそだと言って見せられた際の周りの反応「これ、しいたけだ」には、『あひる』での名セリフ「これは、のりたまじゃない」を思い出し思わず吹き出してしまいます。
 「他の人をかいているつもりでも、書き終えたものを読み返したら、いつも同じ人を書いているような気がします。一生懸命さが痛々しいというか、見ていられないです。でもそこが魅力だととも思います」との今村夏子の自己作品に対する振り返りは、まさしく今村夏子作品の魅力を的確に表現していますね。
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No.15:
(5pt)

面白い

難しい言葉も表現もなく…何かが起こりそうで起こらない…その結末の透かし方が絶妙なんだと思います。
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No.14:
(4pt)

非日常的な逸脱した言動が…

短編が7編。
どれも日常のヒトコマを切り取ったような短編だが、冒頭の『白いセーター』から非日常的な逸脱した暗い狂気にアッとなる。
小学生たちが主人公の『モグラハウスの扉』は少しSF的でもあり楽しめた。
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No.13:
(4pt)

新品ですので綺麗ですよね。

本のレビューって、よくわかりません。感想を書くのですか?
商品としては、新品ですから、綺麗ですよね。
内容について言えば、小川洋子寄り。私は好きです。
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No.12:
(5pt)

人間

今村さんの作品には、ちょっと変な人が集結しがちです。人のえぐみや、一途で不器用な人を描かれていることが多いです。
今村さんは仰います。「一生懸命さが痛々しいというか、見ていられないです。でもそこが魅力だとも思います」そうなんですよね。読者はその柔らかさに触れられる今村作品が好きなのだと思います。
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No.11:
(5pt)

読みだすと止まらない

『むらさきのスカートの女』を読んだ時にも感じた、(だからなんなんだ?)という感覚をこの本でも味わいました。読み終わったからどうこう、という本ではなく、読んでいる過程がとてつもなく面白いんですよね。
この人、なんなんだ?
どういう意図をもってこんな行動を?

という疑問が浮かぶと、先が気になって読むのをやめられません。『むらさき〜』もそうですが、特にオチがあるわけではないお話だと思います。

不穏な感じがずっと続いていく短編集。でも本当に面白い。
初めてのタイプの作家さんです。目が離せません。
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No.10:
(5pt)

心揺さぶられる物語達

自分セレクトでは今村夏子さんの短編集で1番好きな本です
最初の「白いセーター」から思わず本を閉じたくなりますが
これこそがこの作家さんの真骨頂です
なんでもかんでも道理や損得勘定で考えがちな自分が
これでもかと、めったうちにされていきます
不条理でオチさえも曖昧なのにこのエモーショナルさ
また文章の上手さとかとは対局にある筆致ですが
文学というものが持つ力をこれ程までに感じたのも久々です。
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No.9:
(5pt)

匂うお水のような。

今村さんの著作を初期のものから順に読んでいます。どれも体に自然と染み込むような読後感があります。この一冊もそう。でもなんだかじわじわと不穏な後味もある。言うなればやや匂う水道水をちびちび飲む感じ。
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No.8:
(5pt)

感覚のズレをもった登場人物たちをサラッと書きあげる筆力の確かさ

今村夏子さんの短編集です。表題から感じられるようなほのぼのとした内容の小説ではありませんでした。読書前の予想を良い意味で裏切ってくれる作品ばかりでした。

主人公や登場人物たちの日常をサラッと描いているように見えて、奇妙に歪む世界へと読者をいざなう上手さと少しの怖さが独特の個性だと感じました。この読者の受ける感覚が作家の個性となって伝わってきます。
良い意味で、当初の期待を裏切るような風変りな今村ワールドを提示しているわけです。あまり類を見ない作風です。それだからこそ、純文学を味わう楽しみを読者に与えているのでしょう。
それぞれ作品の内容や感想は、未読の方もおられますので差し控えます。

第161回芥川賞を始め、太宰治賞、三島由紀夫賞、河合隼雄物語賞など数多くの優れた純文学賞を受賞した作家ですから、その力量の確かさはすでに定評のあるものです。

寡作だということですが、これまで読んだことのない香りが漂う小説群を紡ぎ出す独特の世界観をもった作家です。次回作の登場を待ち望む作品群でした。
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No.7:
(4pt)

日常に題材を求める名手

淡々とした文章ですが、読み終わって心に残りますね
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No.6:
(4pt)

誰も真似できない異常な感性

とうとう芥川賞にまで到達しましたね。芥川賞作家では美辞麗句を並べて美文で唸らせる作家とその瑞々しい感性に驚嘆させられる作家に大別されるような気がしますが、今村さんは後者でしょう。一般的には前者の方が評価を得やすく、後者はその感性が陳腐と言われてしまえば元も子もありません。正常な感覚を持つ一般人は美文を並べた作品の方が素晴らしいように感じてしまうのものです。
この六編の短編はいずれも、その正常な感覚を持つ者と異常な感性を持つ者の対立、もしくは止揚によって成り立っています。そしてその正常と異常の境界が曖昧になり時に逆転することで、読者は自分の当たり前の地盤がグラついていることに気づく。そうなるともう、正常な感覚を持っているが故にこの異常をはっきりと自覚します。日頃美辞麗句に唸っているような一般人こそ、自分の境界が浸食され、違和感を持ってしまうようにできている。この感性のすごさよ。
ようやく芥川賞選考委員のみなさまも、自分の正常が揺らいでしまったことを認めざるをえなかったのでしょう。
表題作のラストで主人公がみんなの元にあの状況の中行ってしまう所なんかは、現代では非難轟々の行為でしょうが、「いや、そういう子もいてもいいやん」と今村さんは必死に抗っているような、こんな他人に厳しすぎる時代だからこそ光が当てられるべき作家だと思いました。
分断や対立(男女の違いや信条の違い)を肯定するような雰囲気が文学界にもありますが、そこから一つ飛び抜けているような高みにこの作家はいるような気がしました。生涯読んでいきたい作家です。
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No.5:
(4pt)

何かひきつけられる

芥川賞受賞作家だ。

この人の作品を読んだことがある、と気づいた。

ほっこりしそうなタイトルにひかれて読み始めた。
だいぶ想像とはちがったが、どこか、最後まで読まないと気が済まない感じがした。
読んでいる間、そして、読み終えてしばらくたった今も、
情景やら雰囲気やらがとても印象に残る作品だったな、と思う。

心がざらつくとか、ふしぎな世界ばかりを描いているわけでもない。
とても感動する、というわけでもない。
でも、今村夏子という作者をきっと認知する本だと思う。
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No.4:
(4pt)

買いですが・・・。

何か来そうな来なさそうな、結果的に来たり来なかったりの短編集であったような印象です。
自分の日常に起こったら起こりそうだったら既に起こってしまっていたら、と思わされた時点で、優れた作品であると思います。
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No.3:
(5pt)

(2019年―第45冊)落ち着かない思いをさせられる5つの掌編と、想定外に爽やかな幕切れが待ち構えている表題作による短編集

『 こちらあみ子 』と『 あひる 』を読んで以来、とても気になる作家のひとりとなった今村夏子の最新短編集が先月(2019年2月)出ました。今回は全部で6つの作品が収録されています。

◆「白いセーター」
:ゆみ子はフィアンセの伸樹と暮らしている。ある日、伸樹の姉ともかに、幼子4人の面倒を見てくれるよう頼まれる。引き受けたものの大声を上げる陸に手を焼き、思わず口をふさぐと胸をこっぴどく叩かれてしまう。やがて幼子たちの証言が曲解されてともかに伝わってしまい、ゆみ子は……。

◆「ルルちゃん」
:ヤマネは10年ほど前、図書館で安田さんという40前後の女性と知り合いになる。安田さんに自宅に招かれたヤマネはそこで幼児の知育用人形「よちよちルルちゃん」が飾ってあるのを目にする。安田さんは幼児虐待のニュースに接すると突然ルルちゃんを抱きしめて悲嘆し始める……。

◆「ひょうたんの精」
:チアリーダー部のなるみ先輩はかつてひどく太っていた。しかしある日、<神社の女性住職>に、あなたの中には七福神がいると言われた途端、食べる物をその神様たちに吸い取られるようになり、みるみる痩せていった。そして見事なジャンプ力を見せるようになり、部の主力選手になっていくのだが……。

◆「せとのママの誕生日」
:かつて「スナックせと」で働いた経験のある女性たちがママの誕生日を祝うために店にやってくる。今はねずみの巣と化した店の奥でママはひとり居眠りをしているが、女性たちはおかまいなしに酒盛りを始め、昔話を語り合う。ママは女性たちの身体的特徴を売りにしては客を喜ばせようとしていた。そしてその特徴が失われた途端に女性たちを首にしていたのだが……。

◆「モグラハウスの扉」
:道路工事のおじさん「おぐら」は自分を実はモグラだと称している。子供たちは半信半疑ながらモグラおじさんを学童保育の松永みっこ先生に紹介する。先生はせっせとお弁当を作ってモグラおじさんのもとへと持参する。そして先生はマンホールの地下に降りていき、モグラおじさんの暮らす大きな部屋がそこにあると言い出す……。

 ここまでの5編は、その語り手である主人公が世間一般、常識の範疇に暮らす者として登場します。私たち読者は語り手と同体となって物語世界に足を踏み入れるのです。だからこそ、眼前に現れる狂気に満ちた存在――言うことを聞かない幼子、常軌を逸した形で子供用の人形を慈しむ中年女性、自分の中に七福神がいると信じる先輩、従業員の乳首をペンチで締め上げるスナックのママ、地下にもぐらおじさんが暮らしていると主張する学校の先生――との出会いを介して、ぱっくりと口を大きく開いた異界へ迷い込んでいきます。
 こちらの制御が利かない事態を目の前にして読者は、戸惑い、臆し、大いにたじろぐことになります。なんとも居心地の悪い思いをぬぐえない物語ばかりですが、なぜか魅惑されてならないのです。自分の良識や感性がこの物語群によって試されているといえるかもしれません。そしてまた、あるべき域内に自分がかろうじて踏みとどまれていると確信できる点も魅力なのかもしれません。

◆「父と私の桜尾通り商店街」
:表題作である6編目は他編とは少し趣が異なりました。
 桜尾商店街で長年パン店を営んできた父娘の物語です。母が商店街組合の役員と不倫した末に出奔してしまったため、父娘はずっと組合から切り離されて店をやってきました。しかし、父は年を取り、店じまいを考え始めます。そんなある日、物腰のやわらかい女性客がやってきます。ここまでの5編を読めば、この女性客がまたしても主人公を異界へと連れ去ろうとするかのように予想して身構えてしまったのですが、物語は意外な方向へと舵を切ります。
 よくよく考えれば、この主人公こそが商店街の常なる世界と時間から切り離されて生きてきたのです。むしろ異界で暮らしてきた主人公が、多数の読者が日常世界だと考える時間と空間へと帰っていく物語であると私には感じられました。その世界が明るくぬくもりある場所であることを強く信じさせてくれる幕切れであり、爽やかな思いがしました。

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 居心地の悪さを感じさせる奇怪な物語で編まれた短編集として下記の書を紹介しておきます。

◆津原 泰水『 11 eleven 』(河出書房新社)
:11編はいずれもが他編とは趣を異にしていて、次に現れる物語がどのように自分を震わせるのか、それは心地よい共振なのか、はたまた激しい震撼なのか、先が見通せないままの読書を続けることになります。体力のない時に手にすると受け止めきれない物語が多く、壮健な読者にのみ許された一冊であるということを注意喚起しておきたいと思います。

◆ジェフリー ディーヴァー『 クリスマス・プレゼント 』(文春文庫)
:登場人物が憂いに満ちた表情を浮かべていれば、そっと駆け寄って、悲しみにくれるその人物のために力を貸したいと思うことでしょう。平穏な日常を切り裂く事件に娘が巻き込まれた父親が、決死の覚悟で決着をつけようと奔走する姿には、やはり心寄せたくなるでしょう。読者のこうした「当然至極な思い」を梃子にして、思い切り遠くへ投げ飛ばす物語群が詰まった580ページの書です。次から次へと繰り出されるディーヴァーの巧みな投げ技に感嘆のうなり声を抑えることが出来ません。
 投げ飛ばされた後に読者をじわりと襲ってくるのは、自分がいかに思い込みに満ちた存在であるかと恥じ入る思いです。世間や他人を単純明快な図式に当てはめて判断することのなんと無邪気で剣呑であることか。そしてさらに思い知るのは、信じている家族や友人ですら十全に理解することの絶望的な不可能性です。どんなに相手に心を開いても、その言動を信じても、その心の奥に闇が広がっていることを知りえない場合がある。最後はそんな底なしの悲しい思いに駆られる短編集といえます。

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父と私の桜尾通り商店街 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:父と私の桜尾通り商店街 (角川文庫)より
4041118964
No.2:
(4pt)

ネタバレ的なものあります

タイトルと表紙の絵から、どちらかというと爽やかな感じや温かな感じがしますが中身は違います。
あみ子ほどの衝撃はありませんが全ての作品に著者の独特の世界が広がっています。
どの話も結末的なものは具体的には書かれておりません。
でもそこが、それぞれの話の結末や、どのような解釈や推測をするかで読む人それぞれでこの本の楽しみ方が変わってくるのかなぁと思いました。
じっくり何度も読めば見えないものが視えてくるのかもしれませんが。

個人的には、

「白いセーター」は、とにかく胸が痛い。
話の中で出てきた出来事やキーとなる全ての単語をゆみ子にあてがうと、とにかく色々と胸が痛くなる。

「ルルちゃん」は、安田さんの旦那さんって…
安田さんが作ったチキンカレーが怖いです。
どうして安田さんは食べないんだろう?本当にチキンカレーなんだだろうか?

「ひょうたんの精」は、「ピクニック」の世界観や後輩が思い浮かびました。
何度かプッてなる場面があるのですが純粋に笑っていいのか、それとも深い部分に何か真実が隠されているのかわかりませんでした。
一つ言えるのは、なるみ先輩が途中から、ちび○子ちゃんの永沢君のようになってしまうんじゃないかって心配でドキドキしました。

「せとのママの誕生日」では、女の子達のノリに「ピクニック」の"ルミたち"が頭に浮かびました。
そして主人公たちの行動と現場の状況にちょっとゾクッとします。
『生きてるの?』『まだ生きてる』の会話に凄く違和感を感じました。

「モグラハウスの扉」のみっこ先生も、同じく「ピクニック」の七瀬さんと少し同じニオイを感じました。

そして表題の「父と私の桜尾通り商店街 」は、ホッコリするようなタイトルから珍しく最後は少し心が穏やかになるお話なのかなと思いきや、やはりやはり違いました。
ラスト、お父さんは逝っちゃってるんじゃないかと…
「大人になったあみ子のパン屋さんバージョン」的なものを私は頭の中で咄嗟に浮かべました。

幾つかのお話は序盤の方に大事なものが書いてあって、中盤からラストにかけてじわじわと何かがおかしい。何かおかしくないか?ってなります。
主人公たちは基本的にズレてる感じがするんだけど、どこか愛おしく感じる人物も。
ズレてるって感じる自分も実は気付かないだけで他者からするとズレちゃって見えているのかもしれない。
父と私の桜尾通り商店街 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:父と私の桜尾通り商店街 (角川文庫)より
4041118964

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