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密告の件、Mへ



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【この小説が収録されている参考書籍】
密告の件、Mへ (講談社文庫)

密告の件、Mへの評価: 5.00/5点 レビュー 1件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点5.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(5pt)

法曹界の光と影

昨今、女性の活躍がめざましい。ある分野で目立った存在になればなるほど、妬みを買いやすい。その妬みが集約されるとどうなるか。
 本書は、有名な美人女性弁護士がおとしめられた陥穽とそこからの再生を描いている。
弁護士が所属する弁護士会という組織も、所詮はひとりひとりの人間の集合体だ。内部には、よこしまな思惑が渦巻き、成功の裏には他者からの妬み、嫉みの感情がつきまとう。そんな苛烈な競争の中で、人生のどん底につき落とされた女性弁護士・丘野が復活を遂げる逆転劇に、思わず引き込まれてしまった。男の再生を描いたミステリーには、バリー・リード『評決』などがあるが、女の再生を描いたものは、本書のほかに私は知らない。
 丘野をはじめとして、この作品で描かれている人々には、それぞれ口には出せない暗い秘密がある。解説で、学習院大学教授の中条省平先生も書いておられるが、脇役の黒沼シランという女性が、陰翳があって、何とも魅力的だ。人物同士の対立、ひとりの人物の現在と過去など、さまざまな光と影の対比が印象深い。このことが、本書に、単なる謎解き小説とはちがう厚みを与えている。
 文章も短文の連続で、冗長なところがなく、硬質な文体である。印象的な名台詞が、随所に嵌めこまれている。それが、リーガル物にはめずらしい独特のリリシズムを生んでいる。
 法曹界で生きる人々の光と影を描いた、文学の香り高いミステリーといえる。味わい深い一冊だった。
密告の件、Mへ (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:密告の件、Mへ (講談社文庫)より
4065280443

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