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手のひらアストラル



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【この小説が収録されている参考書籍】
手のひらアストラル (創元推理文庫)

手のひらアストラルの評価: 3.00/5点 レビュー 2件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(4pt)

奇跡の色と奇跡の価値は?

世界中の<闇>と向き合うような物語ばかりを読んでいると、その色彩は限りなく黒に近いグレイの奔流となって、溢れかえります。休息は必要なのだと納得させながら「手のひらアストラル "The Way She Goes"」(吉野泉 創元推理文庫)を読みました。五つの物語が収められた連作短編集です。舞台は著者が良く知っていると思われる福岡のどこか。主人公<吉野泉>は高校二年生。将来の進路を決める大切な時間。彼女はその高校生活の中で見ることになる、或いは感じることになる現象を探偵役=大学院生の飛木さんの力を借りて、解き明かそうとします。

(1)彼女たちの行方
 「奇跡」は何色?公立高校の進路。同級生が落とした生徒手帳。その何故を解き明かす二人。論理と推理。デリケート・バランス。
(2)蟹使いのリベンジマッチ
 音楽にも色はあるのだろうか?Q大学、オープンキャンパス。ロボット相撲大会。オランダの物理学者。問題はフェアに提示されている。
(3)夏休み明け前
 「形がにているからこそ色も同じに見える」。「銀河鉄道の夜」。大学の付属図書館。大切なこれからの進路。<吉野泉>と飛木さんのダイアローグが素敵だ。そして、<吉野泉>と芽衣子の会話に、その暖かさにもらい泣きするところだった(笑)
(4)手のひらアストラル
 表題作ですが、おそらくこの作家にしか書きえない秀作だと思います。程よくバランスの取れた<吉野泉>の価値。
(5)黄色い駅へ
 夢。黄色い駅で降りるはずの黄色い合羽を着た少年。そして、ふたたび「奇跡」は何色ですか?

 「新参者」(東野圭吾)以降、連作短編集と言いながら、一つ一つの短編に仕掛けられた伏線が(5)で見事に収斂します。そして、表題作でもある(4)、そして(3)の推理とそれを裏打ちする透徹した感性のようなものがとても心地良いものでした。
 言ってしまっていいのか、「臨床真理」(柚月裕子)、「読書嫌いのための図書室案内」(青谷真未)と同様のテーマが清冽な音楽のように奏でられていますが、中では本作が最もしっくりとおさまりが良かったと思います。
手のひらアストラル (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:手のひらアストラル (創元推理文庫)より
4488452124

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