野火
評判
野火の評価:
4.47/5点 レビュー 101件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全110件 61〜80 4/6ページ
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野火の評価:
4.47/5点 レビュー 101件。 B ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
私は30代で、はじめて本作を読んだのは大学時代でした。当時は、人肉食の問題や戦後のトラウマを扱った後半部のインパクトが強かったのですが、いま読み返してみると、主人公の田村一等兵が「不要物」として軍隊を追放される前半部が印象に残ります。
本作は戦争文学に分類されますが、そもそも既に戦争の体を成していない状況から始まります。「戦争」と言いながら、敵との戦いや争いはほとんど描かれません。作戦は存在せず、組織の命令系統は完全に崩壊していて、極度に腹を空かした男たちが食糧を求めている「だけ」です。
肺病を患った田村は、中隊からも病院からも見捨てられて、熱帯の広大な原野にひとり放たれます。六本の芋を手にして、彼はあてもなくさまよいます(と、書くのは不正確で、彼には死という明確な「あて」があります)。
「名状し難いものが私を駆っていた。行く手に死と惨禍のほか何もないのは、既に明らかであったが、熱帯の野の人知れぬ一隅で死に絶えるまでも、最後の息を引き取るその瞬間まで、私自身の孤独と絶望を見究めようという、暗い好奇心かも知れなかった。」(前半部より)
戦争を描くというよりも、共同体に棄てられた人間の行く末を描いているのがこの小説なのかもしれません。国家に棄てられ、仲間に棄てられ、神に棄てられる。そんな状態に陥った者はどんな人間性(または非人間性)を見せるのか・・
そして、「戦争を描くというよりも」と書いた上の段落に自分でツッコミを入れると、むしろこの「共同体が個人を見捨てる」ことが、辞書的な意味ではすくい取れない、戦争の本質なのだと思いました。
「若者を戦争に行かせる国」はコワいかもしれませんが、もっとコワいのは、共同体の存続を目的とする戦争は、若者だろうが何だろうがその成員を見捨てる、という社会的/精神的な暴力性かもしれません。野火を読み返して、物理的な暴力や飢餓と同じくらい、この暴力性に恐怖を感じました。